「臭うぜ~、争いを好む人間の血なまぐさい臭いが~」
怪しい黒装束の男が兵庫をうろついていた。
ところかわり、人気のない工場にて、ヤクザ同士の取引が行われていた。
「これが約束の品です」
複数人の男を連れた組の幹部が銃器を渡す。
「ふむ、良し、約束の金だ」
スーツケースに詰めた金を渡す。
「では互いに早々に立ち去りましょうか」
「待ちな!!」
唐突に大きい声が工場内に響く。
声の主は黒い衣装を羽織っている。
「武器は争いの元だ、争いが起きる前に俺様がお前らを始末してやる」
「なんじゃわりゃーー!!どこぞの組のもんじゃーーー!!」
「名乗るほどのものでもねえが、俺様はこの世を浄化する者達の一人『ランバージャッカー』だ」
唐突に一人の男がランバージャッカーに向かって銃を撃った。
バキューン!バキューン!バキューン!
しかし、ランバージャッカーと名乗る男は銃弾を指先でつまむように受け止めた。
「うわぁーー!!こいつ超人だーーー!!みんな逃げろーーー!!」
「そうれ、お返しだ!」
ランバージャッカーは銃弾をヤクザに被弾させるように勢いよく投げた。
その銃弾は男たちの体の急所を貫通し、大きなダメージを与えた。
「あぎゃぁぁ!!」
「ひぃぃぃ!!!」
「逃げろーーー!!」
「がはははは!!逃がすかよーー!!」
ランバージャッカーは鋭い蹴りで男たちの体を真っ二つにしていった。
「ばふぁーーーーーっ!!!」
「ぎょひゃあーーーーっ!!」
断末魔の悲鳴を上げて男たちは皆死んでいった。
あたりは血の海となり、一気に静かになった。
「これで全員始末したな」
静寂の空間を壊すかのように、ズシンズシンと誰かが歩いてきた。
「グロロロ、これは一体何事だ? 治安の悪いオレの祖国よりひどい有様だ」
大きな巨体を揺らして現れたのはデストラクションだった。
「ほう、おめえは確か超人オリンピックファイナリストの一人、デストラクションだったな。イラクの超人がどうしてこんなところにいるんだ?」
「超人委員会からの命令でな、新世代超人が手薄になった日本が狙われる可能性が高いとのことで俺が変わりの日本駐屯超人を任されているのさ」
「なるほどな、ではたった今悪行を働いた俺様を倒すってわけかい?」
「もちろん、こいつら以上に血祭りにあげてやろうじゃないか!」
「ガハハハハ!!!」
ランバージャッカーは笑いながら羽織っていた黒い衣装を脱ぎ捨てた。
キックボクサー姿の男が現れた。
背中には木こりの刺青がほってある。
「ん、お前どっかで見たことあるぞ。たしか人間じゃないか?」
「そう、俺様はかつて20世紀最強のキックボクサーと呼ばれた男だ。21世紀も最強でいてやろうと思ったが、21世紀になる前に死んだのさ」
「そういえば聞いたことがある、国内の戦争に巻きこまれ、銃弾を浴びて亡くなった若き天才格闘家がいたとか」
「そうさ、戦争が俺様の格闘家生命を終わらせたんだ。俺様はもっと戦いたかった……寿命を縮めても良い、廃人になっても良い、五体不満足になっても良い、俺様は強いやつに会いたかった……」
哀愁感を漂わせる顔をしてランバージャッカーは語った。
「死んだ俺を超人として蘇らせたのは現在の俺の主さ」
「なにぃ、死んだ人間が超人として蘇っただと!?」
「そう、超人の分類としては『転生超人』に属する」
「転生超人、初めてきくぜその名前は」
「そういえばおめえ確かさっき、血祭りにあげるとか言ってたな。俺様をなめての発言なら許しちゃあおけねえぞ」
「なめちゃあいねえさ、ちょいと血の気の多い性格をしているのさ」
「ガハハハ!!」
ランバージャッカーは突然笑いだし、楽しそうな表情をした。
「主の命令と俺様の信条で戦争の火種を作る人間を始末しているが、そんなことより、おめえみてえなやつと戦いたいっていうのが俺の本音だ!!だから面白い戦いをしてくれよ!!」
ランバージャッカーがアンテナのついたリモコンを取り出し、ボタンを押すと、突如リングが現れた。
周りにはカメラもついている。
「この戦いは全世界生放送で見られるようにした。本気出さねえと恥をかくぜ」
「グロロロ、いい舞台を用意してくれたな」
この二人にはゴングは必要なかった。
両者リングインし、戦闘態勢に入った。
「先手必勝だ!!グロロロ!!」
デストラクションは突進し、右腕でラリアートをかます。
しかしランバージャッカーは頭を下げてたやすくよけた。
「パワーはあるみてえだが、あてるセンスはねえな!おらぁ!」
ランバージャッカーは頭を上げながら右アッパーをデストラクションの顎に食らわした。
「ごふぅ!」
ランバージャッカーの一撃でデストラクションの体はよろめいた。
「そうら! 俺は腕っぷしも自信はあるが、一番得意なのはキックさ!」
ランバージャッカーの速く重いローキックをデストラクションの内脚の膝付近をとらえた。
「ぬおっ!! 今までくらったことのないとてつもなく重い蹴りだ!!」
「そりゃそうよ、だてにランバージャックのあだ名は名乗っちゃいねえぜ。そうら! 次はお前さんの自慢の触角をへし折らせてもらうか!」
ランバージャッカーのハイキックがデストラクションの触角をとらえた。
ガキーン!!
「なっ、なに!?」
ランバージャッカーのハイキックは確かにデストラクションの触角をとらえたが、当のデストラクションは平然とした顔だ。
「グロロロ、かつて俺はこの触覚を折ってしまったがために、相手をあと一歩まで追い詰めながら勝つことが出来なかった。俺はそれ以降、この触覚を折られないように徹底的に鍛えなおし、硬度をダイヤモンド並みにしたのだ!」
デストラクションはかつて自分を負かしたイリューヒンとの試合を思い出しながら語った。
「くっ! かえって足を痛めてしまった!」
ハイキックで体勢が崩れたランバージャッカーをデストラクションが攻撃した。
「くらえーー!! ツイスターアンテナ!!」
「ぐぉわぁ!」
デストラクションの触角がランバージャッカーの左肩をとらえた。
ランバージャッカーは苦痛の表情を浮かべた。
誇りの象徴は二度と折れはしない!!