『突然サタンが苦しみ始めた! 一体どうした事だ!』
ミスターノアも、この状況が飲み込めずにいる。
(ミスターノアよ)
ミスターノアの頭に聞き覚えのある声が聞こえた。
(その声、ミスターUSBか?)
ミスターノアの前にミスターUSBの亡霊が姿を現した。
(そうとも、私以外の5人もいるぞ)
(ガハハハ、らしくねえじゃねえか主さんよ!)
笑い声とともに、ランバージャッカーの亡霊も現れた。
(ランバージャッカー!)
更にティアーマン、デッドシグナル、ビリーマン、ライトマン、バンデットマンの亡霊も現れた。
(ウルルル、僕たちはもう闘う事はできないが、君の力となりたい)
(ティアーマン!)
(グガギゴ~、サタンを倒すというのであれば、力を貸してやるぜ!)
(デッドシグナル)
(まだ闘いははじまったばかりさ! 歪みねぇ勝利を期待するぜ!)
(ビリーマン!)
(ピカカカ、未来への道を正義の光で照らさなければな!)
(ライトマン!)
(俺達にとっちゃ、お前さんの命が一番の宝だ、絶対盗ませねえよ!)
(バンデットマン!)
皆の声が一つになり、ミスターノアの耳に届いた。
(例え魂だけになっても、絆は不滅さ!)
転生超人達の亡霊は姿を消した。
一方、サタンの方も回復してきたようだった。
「おのれ~、ちっぽけな魂の存在で、このサタン様に苦痛を与えるとはな! だが、既に他の怨念の魂で俺様の力はお前を十分圧倒できるものとなっている!」
『サタン! 宙高く飛び、ドロップキック! しかし、ミスターノア! それを難なく受け止めた!』
「お前! 先程までグロッキーな状態だったのに」
「私一人の力では立ち上がる事はできなかった。私を立ち上がらせたのは、絆の力だ!!」
ブオオン ブオオン ブオオン
『ミスターノア! ジャイアントスイングで、サタンをリングロープに吹っ飛ばした! ロープの反動でサタンがかえってきたところで、ラリアットだ!』
ドガァ
「バゴァ! なんだ! 突然力が蘇りやがった!?」
「これぞ、悪魔を倒す正義の刃だ!」
『ミスターノア! サタンの首に左手刀を引っかけ、宙高く上昇! これはジェロニモを一撃で葬った
サタンは必死で技を逃れようとするが、ミスターノアの力が強すぎて逃れる事が出来ない。
(くそう、このままでは、俺の負けとなる……やむを得ん!)
『さあ、ミスターノアがサタンに裁きの刀を振り落とすぞ!』
「
ズガァァァァァン
『あまりの衝撃の強さに砂埃が舞った! 全くリングが見えない状態です!』
少しずつ砂埃が晴れ、やがて倒れているガゼルマンの姿があった。ガゼルマンの体はサタンが乗り移る前の状態となり、体も怪我なく比較的綺麗な状態である。それとは別にミスターノアの技も何者かに対して決まっている状態だった。
『なんと! サタンが技から脱出しているぞ! いや、ミスターノアも技をかけている相手がいる! これはどういうことだ――――――っ!!』
ハラボテが真っ先にリングの中がどうなっているか気付いた。
「よく見ろ! リングに倒れているのはまごう事なきガゼルマンじゃ! そして、ミスターノアに技をかけられている奴こそ!」
砂埃が完全に消え、ミスターノアに技をかけられた相手の正体が分かった。黒く、禍々しき容貌のサタンであった。その体には傷が多くついている。
『なんと、ガゼルマンの本体は無事だったが、サタンがミスターノアの技の餌食となった――――――っ!!』
ガゼルマンが目を覚まし、リングの中の状態に驚いていた。
「こ、これはどういうことだ……あっ、サタン! お前……まさか俺を助けたというのか!?」
「か、勘違いするなよガゼルマン……この試合は、ガゼルマンVSミスターノアである……悪魔はどんな手段を使ってでも勝たねばならぬ……ならば、ガゼルマンが最後までリングに立っている事が勝利には欠かせないと言う事だ……」
「サタン……俺にこの試合を託すというのか……」
ガゼルマンはサタンの似合わぬ自己犠牲行為にどういう態度をとればよいか分からなかった。
「ガゼルマンよ……この試合負けるような事があれば……貴様を末代まで祟る! ガゼル一族に未来はないものと思え……ゴバァ!」
サタンはそれだけ言って、力尽きた。やがてサタンは霧のように消滅していった。
ミスターノアもサタンの自己犠牲行為に反応を見せた。
「サタンめ、似合わぬ事をしおって。ガゼルマンのダメージを全て貰って退場したか」
その言葉を聞いてガゼルマンが気付いた。
「そ、そういえば俺の体に傷がほとんどない!」
ミスターノアの前に転生超人達の亡霊がまた現れた。
(ミスターノアよ、申し訳ないが私はガゼルマンに対して、敵対行動はできない。力を貸すのはここまでだ)
(僕も同じだ。OKANの考えに賛同できるものがあった。君の不利になるような事はしないが、正義超人の不利になるような事はできない)
(グガギゴ~! あんなんでも一応先輩だからな~)
(俺達はお前さんを見守っているから、大事なもん奪われないように後は頑張ってくれや)
(ああ、お前達のおかげでサタンは退治できた。後は私だけで大丈夫だ)
ミスターノアがそう言うと、転生超人達の亡霊は消えた。
一方、観客席の人間の客が騒がしい。
「ねえ、サタンが負けちゃったけど、ミスターノアが勝ったら私達殺されるんじゃないの」
「あいつ確かノアの箱舟のように人間を滅ぼすとか言ってたし、まじでやべえぞ!」
「で、でもまだ闘える超人はいるでしょ!」
「いるっちゃいるけど、正義超人の一軍メンバーは皆過去の世界に行っている。今の二軍メンバーじゃ無理がある」
「あのミスターノアはボルトマン、ジェロニモ、そしてサタンまでも倒し、酷くダメージがある。ケビンマスクや万太郎がいまきても、相討ちが良いところだろうな」
一方、超人委員会の方では
「ハラボテ委員長代理、まだ
「そうか……」
「ハラボテ委員長代理、どうしますかこの試合。もう、試合の決着はついたも同然の状態かと……」
ハラボテは態度を崩さなかった。
「どうするもこうするもない! ガゼルマンの目をよく見ろ!」
皆がガゼルマンを見た。ガゼルマンの眼に闘志の炎が燃えている。ミスターノアもその様子に気付いた。
「まさかとは思うが、まだ闘う気か? 私は酷く傷ついているが、お前を確実に殺す力はあるぞ!」
「何言ってやがる! サタンも言ってたろうが! この試合まだ終わっちゃいねえよ!」
「サタンに義理を感じたのか? それとも、サタンの呪いが怖いのか? もしくは、正義超人として人間をま守りたいのか?」
「どれでもねえよ! ここで逃げちまったら、またいつものガゼルマンになっちまうからさ!」
「貴様のプライドのためか。しかし、この場面で逃げても恥じる事はない。私に劣るとはいえ、貴様は平均以上の能力を持っている。だからこそミスターUSBが倒された。お前はもう休んで、過去から帰ってくるであろう万太郎やケビンマスクにバトンタッチした方が利口ではないのか?」
「それが一番気にくわねえんだよ!!!」
ガゼルマンは怒り、大きな声をあげた。その様子に観客たちも驚きを隠せなかった。
「てめえ同様、ここにいるやつら皆、万太郎やケビンマスクが何とかしてくれるだろうと思っていやがる! 俺に誰も期待なんざしちゃあいねぇ! それが最高に気にいらねえんだ!!!」
ガゼルマンの闘いはこれからだ!!