「グルゴオオオオオ!!」
ガゼルマンが獰猛な雄叫びをあげ、ミスターノアへ突撃した。
ドガァァ バキィィン ガゴォォ
ガゼルマンの素早く重いパンチがミスターノアの顔面を何度もとらえた。
「ぐふぁ~!」
『これは凄い! 今まで私も多くの超人の試合を見てきましたが、ガゼルマンの動きが速すぎて見えません! かろうじて分かるのは、ガゼルマンの攻撃がミスターノアへ大きなダメージを与えている事です!!』
バタァン
ガゼルマンの猛攻に、ミスターノアがダウンした。
『ガゼルマン! サタンの魂が離れてから初めてのダウンを奪った!!』
ミスターノアは身体へのダメージを我慢し、ゆっくりと立ち上がってくる。
「大したものだ。貴様は私をも越える力を引き出した。しかし、それは自身の体の限界を考えずに極限まで引き出したもの。いわば、貴様の寿命を大幅に縮める荒技だ」
ゴキ クキ ブチィ
ガゼルマンの全身から異音が鳴り響く。ガゼルマン自身の息切れも荒い。
「フォガアアアアア!!!」
今のガゼルマンには理性などなく、ただ目の前の敵を倒す事のみを優先した獣と化していた。ガゼルマンはサタンが残したダイヤモンド製のアントラーフィストを装着した。
「奴め、何をする気だ」
ガゼルマンは背中から勢いよくリングロープに突撃し、リングロープの反動を利用して、ミスターノアに高速で迫った。
「シャガアアアアア!!!」
ザシュ
ガゼルマンのアントラーフィストがミスターノアの体を切り裂いた。
「ぐおっ!」
ガゼルマンは再度リングロープに突撃し、反動を利用して、ミスターノアの身体を切り裂いていく。
ザシュ ザシュ ザシュ ザシュ ザシュ
『これは凄い! ガゼルマンがリングロープを利用して、アントラーフィストの連続切り攻撃だ!! ミスターノア! サンドバッグのごとく、やられっぱなしだ!!』
攻勢のガゼルマンだったが、唐突に苦しみ始めた。
「グファッ!!」
バタン
ガゼルマンは血反吐を吐き、リングに倒れた。傷だらけのミスターノアはかろうじてたっている状態だった。
「私が力尽きる前に、お前の体が壊れてしまったようだな。とはいえ、私にこれほどのダメージを与えたのは称賛に値するぞ」
超人委員会もこの様子を見て、ゴングを鳴らそうとする。ガゼルマンは明らかに戦闘不能な状態だからだ。
ザ ザ ザ ザ ザ
ハラボテはどこか遠くから聞こえてくる音に気付いた。
「なにやら、この会場に向かってくる大勢の足音が聞こえてきたな」
会場の人間や超人達もその足音に気付いた。辺りを見回すと、会場へやってくる集団がいた。段々とその集団の姿がはっきりとなり、会場の人たちの顔が明るくなる。
「おい、あいつらはもしや!」
「帰ってきたんだ!」
その集団は皆がよく知っている顔であり、過去の世界へ旅立った
『あ――――――っと、過去の世界へ旅立った
しかし、
「ガゼルマン!!」
テリー・ザ・キッドに背負われている万太郎が、リングのガゼルマンの状況を見て叫んだ。
「お前達! 帰ってきたのじゃな!」
ハラボテが新世代超人達のもとに駆け寄ってきた。まず話しかけたのはイケメン・マッスルであった。
「お父様、
「ああ、察しが良くてありがたい」
「私が見たところ、かなり重要度の高い試合、いや、世界の命運を握る勝負が今行われているのですね!!」
ネプチューンマンも彼らの元へやってきた。
「そうだ、お前達のいない間に攻めてきた転生超人と言う名前の一団だ」
新世代超人達が唐突に現れた男の姿に驚いた。
「ネ、ネプチューンマン!? お前もいたのか!!」
新世代超人達が改めて周りを見回すと、ボーン・コールド、ヒカルド、ボルトマンの姿もあり、さらには亡くなった超人の姿も多くある。
「現代に帰ってきて早々、お前が闘ってきた歴代の悪人どもがいるわ、死亡した超人も出ているわ、今闘っているガゼルマンが死にかけているわで、何が何だか分からないお前らの気持ちは分かる」
ケビンマスクがここで会話に入った。
「教えてくれネプチューンマン、一体今何が起きているんだ」
「長ったらしく説明する暇はねえから率直にいうぞ。今ガゼルマンと闘っているミスターノアと呼ばれる男を倒さねば、この世界は滅ぶ」
「なんだって!!」
新世代超人一行に衝撃が走った。
「世界が滅ぶとは人聞きが悪いなネプチューンマンよ」
ミスターノアも会話に入ってきた。
「この世界には腐敗した人間が多すぎる。そいつらだけを消すだけの事だ。そして、善なる魂を持つ人間によって、新たにこの世界のやり直しをさせるだけのことだ。もちろん、その世界を作るために私も協力するつもりだ」
「ちょっと待ってよ」
万太郎が会話に入る。
「君がやろうとしていることは物騒だけど、根っからの悪人でない事は分かった。でも、どうやって悪い人間と良い人間を区別するのさ?」
「良い質問だな。過去に私がノアの箱船を作り、多くの善なる生命体を救った際、私の眼力で良い生命体だけを選別したつもりだったが、やはり根っからの悪もいてな、結局は腐敗した人間が多く存在する世界となってしまった。私がこの世界をダメにしてしまった、その責任を強く感じている」
テリー・ザ・キッドが何かを思い出したようだ。
「そういえばパパに聞いた事がある。ノアの箱舟は神話ではなく、本当にあった話だと、そしてノアの正体はジェロニモを超人にした超人の神であると!」
「さすがテリーマンの息子だな。良く教育されている。いかにも私は超人の神である。さて、話を戻すか。結論から言えば、そこにいる二階堂凛子に用があるのだ!」
新世代超人一行の中にいた二階堂凛子が驚いた。
「わ、私に用?」
「そうだ、マグネットパワーを管理する力を持ったお前にしか頼めない仕事がある」
「ちょっと待ってよ! 私はただの女の子よ!」
「ただの女の子でない事は貴様自身がうすうす感していたのではないのか?」
「うっ」
二階堂凛子は、自身が他の女の子に比べて身体能力が高かった事を、少しおかしいかなと思っていたのだ。さらには出生が不明で、彼女自身が本当に人間から生まれたのかもはっきり言えなかったのだ。
「マグネットパワーを本当に使いこなせれば、悪しき心を反発し、善良なる心を引き寄せる事が出来る。それを応用し、再度ノアの箱船に善良なる人間だけを選別するのだ!」
新世代超人一行だけでなく、観客の人間や超人達が驚いた。
「そして、マグネットパワーの力を利用し、天災を起こし、ノアの箱舟へと入らなかった生命体を抹殺する!」
二度目の衝撃が走った。ただ、そこにいる者は驚いて話を聞くだけであった。
「もちろん、その後は責任を持って、滅びた世界の復興に私も尽力しよう」
「ふざけた話ぬかしてんじゃねえぞ!!」
スカーフェイスに肩を貸して貰っていたケビンマスクが激高する。
「確かにお利口ちゃんだらけの世の中なら、暮らしやすい世界さ! でもな、腐ったやつらに出会ったからこそ、分かった事もあった。自身が恥ずべき存在になっていた事、いかに自身が狭い世界にいたかをな!」
ケビンマスクは自身が悪行超人として活動していた事、そして彼が幼い頃、ロビンマスクの家庭で毒の無い世界しか知らなかった事を思い出した。
「そしてな! 腐った奴らに敵としてぶつかったからこそ、心からわかり合えた! それが自身の成長にもつながった! この世から悪人が消えちまったら、俺はまたつまらねえ男に逆戻りするだろうな!!」
仮面の鬼公子復活!!