ガゼルマンの死に、皆が泣き悲しんでいたところ、弱々しい声が聞こえてきた。
「うう……」
それはミスターノアの声だった。かなりのダメージを受けた状態ではあったが、かろうじて生きていたのだ。
「ミスターノア!」
アヌビ・クレアがミスターノアの元へ駆け寄った。
「もうお前は自分の思うままに生きろ……私の事など気にするな……」
「嫌よ! あなたはいつものように無茶な命令しなさいよ! あなたを守れというなら、ここにいる皆を敵に回してでも私は闘うわ!」
「ちょっといいかのう」
二人の元にハラボテがやってきた。
「まずは、ミスターノア殿、見事な試合でありました。人類の存続がかかった試合とは言え、超人レスリング歴代屈指の名勝負と言っても過言ではない内容でした」
「ありがたい……」
ミスターノアは弱々しく返事をした。
「超人委員会として、今回の騒動の責任をとってもらいたいと思いますが、ミスターノア殿の死以外の方法でお願いしたい」
「……私を生かすというのか?」
「今回はあなた様は敗北したものの、実質休みなしの三連戦でありました。超人委員会として、ミスターノア殿ほどの高い実力を持った方をこのまま死なすにはとても惜しいと思っております」
「何を言うか……私は命を賭して闘った……私のために亡くなった者もいるのに、私だけおめおめと生きていられるか……」
「それは違うよ!」
会話に万太郎が入ってきた。
「確かに僕達正義超人は敵対する者達と命懸けで闘っている! だからといって、負けたら死ぬなんて事は強制しない! 死んじゃったら分かり合う事なんてできないじゃないか!」
「万太郎の言う通りだぜ」
ケビンマスクもまた会話に入ってきた。
「あんたが亡くなった仲間のためにけじめをつけたいという意思があるなら、俺達正義超人の考えを分かり実行していていただきたい。分かり合うってことをな。それで納得してもらえねえか?」
ミスターノアの元に転生超人達の亡霊が現れた。皆がミスターノアにむかって笑顔でうなづいた。
「なるほどな……分かり合うために生かす……私は人間同士の分かり合いが不可能と考えた結果、悪なる人間の抹殺を実行した……今一度人間を信じ、世を見守っていこうと思う……」
万太郎、ケビンマスク、ミスターノアの三人が笑顔で握手をかわした。
「では、そろそろ私達なりのけじめをとらせて貰います」
アヌビ・クレアが真剣な面持ちになって話し始めた。
「今回の闘いで、多くの超人が亡くなられました。通常死人が蘇るなんて事はあり得ない事ですが、彼らを蘇らせる方法があるかもしれません」
「えっ!?」
その話を聞いた者達は、皆が驚いた。しかし、一名だけ驚かない者がいた。
「なるほどな、マグネットパワーを使うのか」
ネプチューンマンはアヌビ・クレアの言いたい事を察した。
「そういえばお前、かつて完璧超人の秘術によって蘇ったんじゃったな」
キン肉マンも会話に入ってきた。
「そうだ。その秘術というのがマグネットパワーを超人強度に変換することなんだ。かつて、悪魔将軍が破壊した超人墓場も同様の原理だった。俺達超人は亡くなっても超人強度を与えればまた蘇る事ができる。そして、マグネットパワーを操れる奴は一人だけいる」
アヌビ・クレアが二階堂凛子を見た。
「二階堂凛子、私達転生超人側の後始末のために協力願えますか?」
「うん、いいけど、私上手くできるか分からないよ」
「ご心配なく、オメガの民の力を使えば容易な事です。私には隠された力を引き出す能力もあります」
「待った!」
突然、万太郎がストップをかけた。
「凛子ちゃんがもしもマグネットパワーを扱えるようになった場合、これまでと同じ生活をできなくなるんじゃないかな?」
一同が万太郎の話を聞いて、納得の態度をとる。
「確かに、普通の女の子が突然特異なる能力を持ったら、周りの人間からは異様の目で見られ、マスコミからも注目され、もはや平穏な日々を過ごせなくなる可能性が高い」
キッドが二階堂凛子がマグネットパワーを扱えるようになった場合どうなるかの解説をした。
「俺達正義超人の仲間を蘇らせたい意思はあるが、かといって凛子フロイラインの平穏な日々を壊すような事はしたくない」
ジェイドが葛藤する思いを口にした。
「私いいよ」
凛子がそう答え、周りが驚いた。
「私の人生はね、ママや皆が私のために頑張ってくれたから、いっぱい幸せな思いが出来たと思うの。だから今度は私が皆の幸せのために頑張らないと!」
凛子は笑顔でそう言った。
「分かりました。あなたの決意を尊重します」
アヌビ・クレアが凛子の頭に右手を当てた。
バババババババ
凛子とアヌビ・クレアの体が白く発光した。
「ま、まぶしい!」
一同あまりのまぶしさに目をつぶった。やがて、発光が徐々に弱くなり、皆が目を開けられる状態となった。
「これで終わりました」
アヌビ・クレアがそう言い、凛子が自身の状態を確認した。
「あれ? 何も変わったような感じがないけど」
「私には力を引き出す能力もありますが、それを奪い取る能力もあります。私とてあなたの平穏な日常を壊したくない。だから、あなたのマグネットパワーを管理する力をいただきました」
「え――――――っ!?」
一同、アヌビ・クレアの発言に驚いた。
「じゃあ、私は?」
「いつも通りの二階堂凛子です。あなたは普通の人間となったのです」
凛子の目から大粒の涙がぽろぽろとこぼれた。
「良かった……本当の事言うと、皆とこれまでのように暮らしたいという気持ちの方が強かったの……」
一同が二階堂凛子がこれまでと同じように普通の人間として生活できると知り、安心した。
「では、早速、亡くなった者達を蘇らせましょう」
アヌビ・クレアが両手を天にかざした。
シュイーン
アヌビ・クレアの両手から大きな白い光の球が生まれた。その光は、細かく分かれて、亡くなった超人や傷ついた超人の元へと向かった。その光は時間超人との闘いの傷が癒えていない万太郎やケビンマスクの元にも向かった。
「これはすごい、さっきより大分体の状態が良くなった!」
「大した力だぜ」
ズズズズ
ガゼルマンの体に分かれた白い光が入り込み、ガゼルマンの体が闘う前の綺麗な状態に戻っていく。
「ん? 俺は確か死んだはずじゃ?」
ガゼルマンが生き返った。
「ガゼルマン!」
正義超人達が喜ばしそうにガゼルマンの元へ駆け寄った。
「おい、俺は確か死んだんじゃ?」
ガゼルマンは状況が読み込めずにいる。
「とりあえず、胴上げだ! バンザーイ!!」
正義超人達がガゼルマンを胴上げをし始めた。
さて、正義超人とは別に他でも動きがあった。ヒカルドとそのサポーター2人の元にネプチューンマンがやってきた。
「おい、ヒカルドよ」
「なんだ、ネプチューンマン、何か用か?」
「お前の考える正義超人の考えに俺も賛同できるところがある」
「何が言いたいんだ?」
「お前達を俺が鍛えてやるよ。立派にアウトローな正義超人にな」
「そいつはありがたい話だ。まだ俺達の仲間は少ないからな。しかしいいのか? 俺達相手だと、年寄りの死に水になるかもしれねえぜ」
「心配いらん。お前達が束になっても、負けねえだろうよ」
「やろ~、伝説超人だからといって敬意は持たねえぞ」
「ああ、俺は敬意を持たれるような超人じゃねえからな。そうだ、一言挨拶せんとな」
ネプチューンマンが巨体を揺らして向かったのは万太郎の元だった。
「喜んでいるところ悪いが報告がある」
「うわっ! ネプチューンマン!」
「驚くのは早いぜ。俺はヒカルドを育て上げる事にした。アウトローな正義超人としてな」
「なに!」
万太郎の顔つきが変わった。
「お前達の前にまた現れるときは敵としてだろうな。特に万太郎!」
ネプチューンマンが万太郎の胸に左拳を突き、
「てめえは練習をサボりがちなところがあるからな、腕がなまらねえようにしとけよ。こっちもカオスの遺言守って指導していくからよ」
「ネプチューンマン……」
ネプチューンマンはヒカルド達をつれてどこかへ去って行った。
落ち着いていたボーン・コールドの元にハラボテをはじめとした超人委員会がやってきた。
「ボーン・コールド! 直ちにお前を超人牢獄に再送還する!」
ボーン・コールドは様子を乱さず、たばこを吸っている。
「更にサタンの協力があったとはいえ、脱獄や違法的な報酬金に関して超人委員会として見逃せない! 厳正な処罰に値する!」
「まっ、当然だろうな」
ボーン・コールドは開き直った態度をとった。
「生意気な態度をとりおって。だがな、今回の転生超人との闘い、お前の活躍もあり、人類の平和は守られた。だから特別に寛大な処置を施そう。脱獄や報酬金に関してはおとがめなしじゃ!」
「ほ~う、ハラボテにしては寛大な処置だな」
「ただし、報酬金のほとんどは返して貰うぞ」
「ちぃっ、金にがめついジジイだな」
「そう言うな、更に監視つきの条件で、定期的に牢獄から外出できる許可をしよう」
「監視つきか? 俺は監視を殺っちまうかもしれないぞ?」
ボーン・コールドが不気味な顔をした。
「な~に、信用できる奴に頼んださ」
ハラボテ達の元にキン骨マンがやってきた。
「子供の監視を頼んだぞ、キン骨マン」
「ああ、分かった」
キン骨マンが軽くうなづいた。
「なるほど、親父つきか。それよりも直ちに超人牢獄に再送還と言ったが、一つ用を足してからでも良いか?」
ハラボテがボーン・コールドが何を言いたいかを察した。
「ニルスの義手の事じゃろ? お前さんの手で返しに行くが良い」
「分かっているじゃねえか」
キン骨マンとボーン・コールドはニルスの入院する病院へと向かった。
アヌビ・クレアの力により、ミスターノアをはじめとした転生超人の一団も蘇る事となった。
「今後お前達はどうしていくんだ?」
その質問をしたのはガゼルマンであった。
「私はお前達を信頼することにし、この世界を見守っていく事にした。しかし、我々もトレーニングを積み、今度会うときはお前達を越える力を身につけるであろう。今度は超人オリンピックあたりで出会うかもしれんな」
「ああ! もちろん正義超人達も今後もっと強くなっていくぜ!」
ガゼルマンとミスターノアは強い握手を交わした。
ところかわって超人KO病院、入院中のブロッケンJrのもとに1人の見舞客がやってきた。
「レーラァ!」
見舞客はジェイドであった。ブロッケンJrは思わぬ客に驚いた。
「ジェイドか、久しぶりだな、来てくれてありがたいぜ。また見ない内に一段と逞しくなったようだ」
「いえ……俺は自分が思うような活躍が出来なかった……」
「そうか……なぁジェイド、また俺の弟子にならないか?」
「えっ!?」
思ってもいなかった提案にジェイドが驚いた。
「俺ももうろくしててな、お前に授け忘れた事があったんだ。それを教えようと思う。どうだ、やってみるか?」
「はい! もちろん喜んで!」
後にこの2人の師弟関係は復活したそうだ。
さて、病院内には他にも患者がいる。
「ニルスよ、久しぶりじゃな」
入院中のニルスの部屋にジージョマンがやってきた。
「ジージョマンか、お見舞いに来てくれたか」
「お前さんの転生超人との闘いの話聞いたぞ。なんでも大善戦したそうじゃないか。勝利こそ得られなかったが、昔のお前だったら相手を追い詰める事すらできんかった。成長したな」
「ありがとう、ジージョマン」
「邪魔するぜ」
室内にボーン・コールドとキン骨マンが入室した。
「お前の義手だ。取り返してやったぜ」
「ありがとう、ボーン・コールド」
「礼を言われるほどの事はしちゃあいねえ。それじゃあ俺は超人牢獄へ戻るとするか」
ボーン・コールドはすぐに室外へ出て行った。
「あいつはあれでもこういうことにはシャイじゃからな」
「くそ親父! 余計な喋ってんじゃねえぞ!」
「むひょひょひょ」
室内は一気に賑やかになった。
ところかわり、カオスの墓前に万太郎と凛子がいた。万太郎がカオスの墓を新しく作り直していた。
「タッグトーナメント直前の時期、僕がワガママなために仲間から見放され途方に暮れていた。そんな時にカオスに出会えて、本当に幸運に思った。辛い闘いだったけど、一日一日が楽しかった。僕は決して君を忘れないよ」
万太郎の手により、カオスの墓は壊される前の綺麗な状態となった。
「しかし、君には負けるな。僕の凛子ちゃんが未だにべた惚れだし、死んでしまったら一生かなわないじゃないか」
「何言っているのよ万太郎!」
二階堂凛子が少し不機嫌気味に言った。
「確かにカオスが死んでから数日間はカオスの事しか考えられなかったわよ。でも、決勝の万太郎の試合見たら、なんかふんぎりがついちゃったみたい」
「え? それってどういう事だい?」
「教えな~い♪」
凛子が舌をぺろっと出して、小悪魔的な態度をとった
「え~、教えてよ~」
万太郎が凛子の真意に気付くには、もっと先の事であった。
次回は最終回!?