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……これは去年の出来事か…親友から見限られ、クラスメイトの態度が変わったのは。
『死んじまえ!』
始めは抵抗していた、いわれのない誹謗中傷を言われるのが嫌だった。助けが欲しくて手を伸ばしたけど、その先には誰もいなかった。
『おいおい、気絶してんじゃねえよ!オラ立て!』
『嫌だ〜、きったなーいwさわんなよクズ』
大人は宛にならなかった。
『何言ってんだ、あの○○がそんな事する訳ないだろ。成績がお前よりもはるかに上の彼がそんなことする意味もメリットもないだろうが。出鱈目言うな!!』
そんな事より、と話を続けた。
『最近、素行不良が目立つぞ。無断欠席、遅刻、それになんだその傷は、喧嘩か?校外で勝手なことしないでくれよ。学校の評判に傷がつくんだからな。そもそも、成績をもっと上げてくれ。担任の俺の責任になるのは御免だからな!』
その時にわかった。駄目だと。
助けなんて望むべくもない物だと。
その日から自分は外に出ることもやめた。
人と関わる事をやめた。
……。
また夢を見ていたようだ。たった一年前のことだというのに遠い昔のように感じられるあの悪夢を。
そっと体を起こして目尻から零れた涙を拭う。まだ、血も涙もない人間にはなっていないようだ、なんて考える余裕も残っているならまだ大丈夫だ。顔を洗おう、そう思い洗面所へと向かった。
鏡に映った自分を見て自嘲する。
ボサボサになった髪の毛、生気の感じられない目、腕についた大量の切り傷。
「酷い顔だ…」
そう呟いて1日を始める。意味も味気もない無駄な1日を。
とは言っても、俺は家に引きこもっているだけだ。
別にパソコンと向かい合うでもゲームをするでもなく本を読む。
延々と、何度も何冊も。本はいい、人が生み出すものでも本は時に作者の意図をも超えうる。人との関わりを絶った俺がまだ本を読むというのは、心のどこかで望んでいるのだろうか。他者と繋がることを。アホらしいと一蹴したが、その感覚は胸に突き刺さったまま抜ける気配がない。
…読書にも興が乗らない。今読んでいるのは某作家の半私小説である本であり、始めて読んだのは去年のことではあったがそれ以来愛読している。そのはずなのだが、今日は読書をするべきではないのだろうか、やはり外に出るべきか。
「仕方ない…外に出るか」
そう言って、フード付きのパーカーを羽織って戸締りを確認するとカーテンを締め切って外へ出る。
自分は基本外に出ることは無いが、だからといって外出をしない訳では無い。自分が食う物はスーパーで選ぶし本も本屋でしっかり選ぶ。俺は「学校」という枠で誰かといるのが嫌なのだろう。傷つけられるのが怖いのだろうからな。
俺は内職をしている。つまり、自分は世間でいうところのニートでは無くフリーターだ。別にコミュ障でもなく、ただ人と接するのが嫌いなだけだ。
「まあどの道社会不適合者であることは変わらな──」
呟いていると後ろから軽い衝撃。振り向いてみると赤い髪の少女がぶつかってしまっていたようだ。
「あ…ごめんな……さ…い……彰馬…?」
………ナンデコノヒトハジブンヲシッテルノダロウカ。
「いえ、人違いです……ぶつかってすいませんでした」
そう言ってこの赤髪少女を通り抜け…
ガシッ!
られなかった。親の仇でも見るような目でこちらを睨みつけてくる少女。
「貴方彰馬でしょう?倉持彰馬よね?」
「さ…さあ……自分は違いまs…「まーきちゃん!何してるにゃー?」…にゃー?」
決して語尾がうつったわけではなく、思わず反復してしまっただけだ、断じてうつってないので勘違いしないように。誰に言ってるんだ俺は…。
「り、凛っ!何でもないわ」
「この人だあれ?真姫ちゃんの彼氏さん?」
…この猫娘(仮)は地雷を踏み抜くのがお好きなようで。ほらほら赤髪娘(適当)が顔を髪に負けず劣らず真っ赤にしてるじゃないか。
「ちょっと彰馬!適当って何よ!」
「地の文に割り込むな……!…俺は急ぐのでそれでは失礼しま…「ねえねえ、真姫ちゃんの彼氏さん」…?」
このどさくさに紛れて離脱したかったのだが、猫娘(仮)に止められたので誤解を解こうと振り向く。
「真姫ちゃんの話を聞かせてほしいのにゃ!」
「「は?」」
赤髪と被った。
「いや、君は何か勘違いをしている、俺はこの人とは無関…」
「否定するところも怪しいし、何よりさっき真姫ちゃんが顔を真っ赤にするなんてこれはもう当たりに違いないにゃ!」
「え、いや…だから……」
「それじゃあいっくにゃーーー!!!」
「ちょっと凛!彰馬!待ちなさい!!」
手を繋ぐなんて甘いものではなく、引きずられる形で俺はこの猫娘(仮)に連れていかれるのだった。いや…俺は誰とも関わらないで一人でひっそりといるつもりだったのにどうしてこうなった…と思ったが外に出ようと思った自分を呪いながら引きずられるのも嫌なのでとりあえず猫娘(仮)に合わせて走るのだった。それにしても走るの早くねえか…?それに付いてきてる赤髪もなかなかにすごいと思うんだがな…。
あれ…おれは今日平日だから外に出たつもりだったんだが……。
全力で走る所約5分、周りの人に色々変な目で見られたけど元々極力外に出るつもりは無いので俺は構いやしない。
「ここにみんながいるから紹介するにゃ!」
「いや、みんなって誰?まず何回も言うけど俺はこの赤髪の人とは無関係で…ってあれ?」
後ろを振り向いてみるが誰もいない。赤髪娘──毎回こう呼ぶのは面倒だから西木野と呼ぼう──は流石にこの猫娘(仮)について来れなかったのか…。
「あれ?真姫ちゃん居なくなっちゃったにゃ?あと、凛は猫娘じゃないにゃ。凛は、星空凛!宜しく!真姫ちゃんの彼氏さん!」
「いや…何回も言ってるけど俺は西木野の彼氏でもなんでもない。あと、西木野と言い君といいエスパーなの?なんで心を読んでくるのかな?」
「でも、真姫ちゃんの知り合いっていうのはわかるのにゃ!だって凛は1回も真姫ちゃんの苗字を話に出してないのに知ってるのにゃ!」
ガン無視ですか…。
「俺に話せることなんて…」
「いいから早く行くのにゃ!!」
「いや…西木野は良いのか?」
「場所はわかってるはずだからすぐ来るにゃ!」
もはやこの子──星空さんには何を言っても通じないか…俺は元々気は弱いので逆らえるわけもなくファストフード店に入る。星空さんは迷わず9人がけの席に向かった。7人座っているところを見ると西木野と星空さんを入れて9人の集まりということだろうか?その中でツインテールを生やしている年下であろう少女が星空に視線を向けて、俺に視線を向けると不機嫌そうな顔でいった。この顔どこかで見覚えがあるような…ないような…?
「ちょっと、凛遅いわよ…まったく何をやって……その男誰?」
「真姫ちゃんの彼氏だにゃ!」
いや………違うのに……なぁ…。
案の定ザワザワと7人が反応を示す。
「彼氏!ハラショーね!」
いや、何がだ素晴らしいんですかな?!
「へぇー、真姫ちゃんも隅に置けないなぁ」
西木野ってどんなイメージなんだ…?
「ぇええええ!!話を聞かせてください!」
初対面の男によくそこまで話しかけられるな…。
「か、彼氏なんて破廉恥です!!」
破廉恥なのか?
「真姫ちゃんに彼氏イタノォォ?!」
そんなに驚く事ナノォォ?!
「やんやん♪真姫ちゃんクールな顔してそんな事してたんだ♪ねえねえ彼氏さん?どこまで進んでるのかことり気になるな?」
何も無いですよ…。
「な…アイドルが恋愛なんて…そんなの駄目よ!!」
いや、アイドルなの?
何というか…個性の塊みたいな人達だな。というか皆さん美少女というか…西木野と同レベルかそれ以上の人ばかりじゃん。流石に緊張するし目のやり場に困る…。と、見覚えのある様な気がするツインテールさんが話しかけてくる。
「皆さん、アイドルなんですか?」
当たり障りのない範囲で聞いてみる。内心早く帰りたいが西木野に会ってしまった時点で俺の負けか…。
「ええ!そうy…「スクールアイドルやけどね」割り込まないで!」
「何故に関西弁…しかも似非…」
「まあまあ、気にしたら負けやで、あっと自己紹介しとこか?ウチは東條希、君の名前は?」
「俺は倉持彰馬です。歳は16歳です。あと西木野とは何の関わりもありませんし今後も持ちません、全てそこの星空さんの勘違いです」
えぇーーー!と周りで非難するような声が聞こえるが無視する。どうせここまで来たらはっきりと物言って嫌われてしまった方が遺恨も禍根も残さなくていいだろうという判断だったのだが…。
「やっと追いついたと思ったらなんでみんな叫んでるのよ?」
軽く肩を上下に揺らしながら西木野が店に入ってきた。そんな西木野に誰だろう、ツインテールの小学生か?が話しかける。
「ちょっと真姫!あんた、彼氏がいたのに報告しないなんてどうしてよ!少しくらい教えなさいよ!」
ツインテールさん俺の話聞いてたのか…?
先程、星空さんに言われた時と同じくらい顔を赤くする。あ、頭から湯気が出てる。そっちは放置して先程話しかけてきた東條さんに疑問をぶつけてみた。
「あと、東條さん。スクールアイドルって小学生でもやれるんですか?ほら、あそこのツインテールの人」
一瞬目を見開くと次の瞬間腹を抱えて笑い始めた。西木野と言い合ってるツインテールさんを指さして笑い転げてるよこの人…何がそんなに面白いんだろう?
「ぷっ…あはははははは!!にこっち言われとるよ!!くっくくく…君、本当に面白いなぁ…くくっ…」
「え?!違うんですか?!」
「に、にこっちはうちと同級生よ?流石にそこまで純粋に間違えられるなんて…ブフッ!」
なんだろう…後ろからものすごい殺気を感じる。
「あんた…希に何を言ったのかしら?って…あー!!あんた!」
は?なんだよ…俺はこんな人は知らな…知ら…。
………。
「……お久しぶりです。矢澤先輩、お元気そうでなによりです」
「彰馬!倉持彰馬!!本当に久しぶりじゃない!どうして気づいてくれなかったのよ!」
「いえ、あまりにも身長が変わらなかったので似てるとは思ったのですが…痛!」
足を踏まれた……普通に痛い。
「どうせ私は晩年チビですよー!それと、今更かしこまらないでよ、やりにくいわ。小学校の頃と同じでいいわ」
「そっか…わかった、にこちゃん」
「よろしい!」
いきなり親しげに話し出したのが意外だったのか、周りはぽかんとしている。西木野は──不機嫌そうだな。一応あいつの気持ちはわかってるつもりだがそれでも俺は──。
「よし、それじゃあ、自己紹介始めましょ?」
にこちゃんが仕切ってくれたお陰で何もなくて済んだ。終始西木野が不機嫌だったけどな…。
いつ以来だろうな…人といて、こんなに楽しいって思えたのは。ずっと本を読んでいる間も、他の事をしているあいだも楽しいって思えなくなっていたのはいつからかな。柄にもなくセンチメンタルな気持ちになりながらふと気になったことを聞いてみた。
「そういえば、今日は平日ですよね?皆さんは休みだったんですか?西木野やにこちゃんの性格からしてサボるようには思えないのですがそれとも二人ともグレた?」
「「グレてないわよっ!」」
「わかったから拳向けるのはやめようか?2人とも可愛いんだからそうやって暴力的になっても得しないぞ?」
「「か…可愛い…//」」
「というか、ここにいる9人全員可愛いと思いますけどね。アイドルをやってるって言われても納得できます」
脇の2人がなんか落ち込んでるけどスルーで。
「私達の高校で、土曜日にオープンキャンパスがあったんだ!だから今日はその振替休みなの。そういえば彰馬君はなんで?学校はお休みなの?」
「俺は学校に行ってませんよ、高坂先輩」
何やら西木野はメールを見て顔を青くしてるが何だ?まあ、いいか。とりあえず、関わらないに越したことは無い。
「え…なんか、ごめんね?」
「?謝らなくていいですけど?あ!もう3時か…俺一人暮らしなんで。そろそろ失礼しますね。飯とか作らにゃならんので」
「そっか、それじゃ「彰馬!今から着いてきなさい!」…真姫ちゃん?」
「あ?やだよ。なんで俺がお前に──」
「事情は後々話すから早く!」
お、おい…ちょっと待て…そういう前に俺は外に引きずり出された。あまりに突然のことに8人はほうけているが俺も内心処理しきれていないまま引きずられていった。
……To be continued
次回、第2話「令嬢の悩みと許嫁」