こちらの更新の方が先に始めた作品より早いですって?
あちらは全力で作ってますのでもう少々お待ちを…。
何やかんや、かなりの方に読んでいただけたようでとても嬉しく思います。感謝の方は改めて後書きに書かせていただきますので本編へどうぞ!
前回のあらすじ
過去の出来事により、引きこもり気味で学校に通っていない少年倉持彰馬。気まぐれに外に出た彼が出会ったのは赤い髪を持つ少女西木野真姫だった。そして、真姫の仲間に成り行きで引き合わされ、彰馬も楽しいと感じる時を過ごしたものの、1通のメールに顔色を変えた真姫に連れ出されてしまう。
真姫が彰馬を連れ出した理由とは?
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西木野に引っ張られて5分くらい立っただろうか?いい加減説明を求めようと腕を振り切って西木野に問いかける。
「おい、西木野!いい加減説明してくれ。お前は何をしようと俺を連れてきたんだ?」
西木野はハッとして、俺に向かい合う。その姿は、今まで見せていた強気な態度とは違い、何処か物憂げな…それでいて力強く自分の運命に抗いたいという思いが滲み出ていて、驚いた。
「貴方に…助けて欲しいのよ、私の事」
「どういう事だ?」
「長くなるから、何処か座りましょう。急いでいると言っても多少の時間はあるから」
西木野に言われるまま、一度コンビニに寄ると辺りにあった公園に座って西木野に話を促す。
「…ほらよ、これ飲んで落ち着いてから話せ」
ミルクティーを手渡して俺はコーヒーを啜る。
「ええ、ありがとう」
しばらくの間は無言が続き、深呼吸した後に西木野は話始めた。
「私ね……許嫁がいるみたいなの…」
「は?」
「だ、だから許嫁よ!結婚相手!」
「は、はあ…」
話が見えてきた気がするけどまさかな…。
「で、その相手嫌な人なのか?」
「いえ、とても紳士的で優しい人よ?誰かさんと違ってね」
「ならいいじゃねえか。いい人なんだろ?」
「でも、嫌なのよ」
「へえ、なんでまた…」
「私の初恋は…まだ終わっていないからよ」
「!!……そうかい」
…物好きなやつだな、お前も。叶わなかった初恋なんて忘れちまえばいいのに…。なんて言葉も思いついたがもう今の俺にそんな事を言う権利はない、と喉に押し込む。
「で、お前の依頼は?」
「…引き受けてくれるの?」
「俺は真姫の依頼じゃなくて西木野の依頼を受ける…それでいいか?」
「ええ…貴方、やっぱり私が知ってる彰馬だわ、安心した」
「馬鹿な事言うな。俺はお前の知ってる奴じゃねえよ。乱暴でガサツで口も悪い、こんな奴はお前は知らないだろ?」
「確かに驚いたわ。でも、それでも貴方は変わらないわ」
「馬鹿言え…詮無いこと言ってないで依頼を確認する。今回はその縁談を無かったことにする。それでいいんだな?」
「ええ、そうよ、もうあまり時間も無いし。許嫁の名前は日野海叶、年齢は私達の二つ上の18歳。大手会社の社長の息子よ。作戦とかあるのかしら?」
「お前は何か考えてるんだろ?ならそれで行くしか無いだろ」
「え、ええ。本当にそれでいいの?」
「ああ、作戦があるなら話せ。イレギュラー相手には俺が対応してやるからお前はお前の土俵でやれる最善策を出してくれ」
「……わかった、じゃ、歩きながら手短に話すわ、行きましょ」
「…」
やれやれ…旧知に会うってのはここまで大変な事だったか?あ、本屋に寄るの忘れてた…めんどくせえけど明日改めて本買いに行くか…。
緊張感がなさすぎだって?こうやって直談判しに行くのは始めてじゃないしな。そもそも小学校の頃からずっと他人を論破するのは得意だった。たとえ相手が教師であっても俺は納得いく事しか従わない人間だったからな…。
まあ、要するに慣れてたって話だ。
お、西木野邸に着いたか。なんでわざわざ豪邸みたいに言うのかって?実際に豪邸なんだよ、ここ。中2の夏頃に来て以来か?まあ何にせよ、西木野の家は豪邸と呼べるレベルの家だ。お手伝いさんも何人か雇ってるし、病院の院長の家ともあるとこうなるのかね…。
「彰馬!何ぼーっとしてるのよ!早く行くわよ!!」
…このお嬢様は俺が一般庶民である事を忘れてるよな?
「はいはい、わかったからあんまり走るなよ?品が無いと思われるぞ」
「別にそんなのはいいの!彰馬がまた私の家に来てくれたのが嬉しいのよ!!」
……この無自覚は、どうすればいい?
「?彰馬、顔が赤いわよ?熱でもあるの?今日泊まっていく?」
「ここは遠慮しておくよ。それじゃ、さっさと終わらせるか」
「あなた…かなりすごい事に片足突っ込んでるのに……相変わらず図太いわね、流石だわ」
「お前それ褒めてねえだろ」
そんな馬鹿みたいな話をしながら俺達は門内に入っていった。
「まあ…まあまあ、彰馬おぼっちゃま!またお越しくださったのですね!ばあやは嬉しく思います!それに、なんとまあ頼もしくなられて…!」
「お久し振りです、ばあや。お変わりなさそうで安心しました」
屋敷に入るやいなや声をかけてきたのはここのお手伝いさんのまとめ役をやっている斉藤さんだ。俺や真姫はばあやと呼んでいて斉藤さんもまたそれを喜んで俺達をまるで孫のように可愛がってくれていた。中学に行くのをやめてからここにも来なくなったので二年ぶりくらいだな。この人は変わってない。柔らかい笑顔もその話し方も。
昔を懐かしんでいると真姫がばあやに尋ねた。
「ねえ、ばあや。もしかしてあの人もう帰っちゃった?」
「いえ、お父様と話してますわ。彰馬おぼっちゃま、申し訳ありませんがまた後日に…」
「ばあや、今日の俺は、その縁談を──真姫が嫌がるこの縁談を壊しに来たって言ったら怒る?」
ばあやは目を丸くして、少し迷った後に耳打ちしてきた。
「…ばあやは、賛成ですよ。大声ではいえませんけど、彰馬おぼっちゃまと真姫お嬢様が一番お似合いだと思いますから」
「な〜〜っ!!ば、ばあやっ!!」
「ふふっ、ばあやは曾孫を見るまでは死にませんので、期待しておりますよ?」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
声にならない悲鳴をあげて涙目になっちゃったよ…そんなに顔赤くして大丈夫なのか?
「死ぬだなんて物騒な事は言わないでくださいな、ばあや。それに今の俺達にあるのはそんな甘い関係じゃ──」
「真姫?帰ったならこっちに来なさい」
少しだけ流れていたゆるりとした空気が一瞬で凍りついた。真姫もびくりと肩を動かすと深呼吸をしている。俺も一応緊張はしているものの、少し目を閉じれば収まる程度だな。
「おい、真姫」
「な、なに?彰馬。わ、私は緊張してないわ…」
「ほれ」
「!……」
真姫があまりに緊張しているので、頭を撫でて落ち着かせる。いつかも俺がそうしてやったのと同じように。多分このくらいなら許されてもいいよな…。
「しょ、彰馬、もういいわ。その…恥ずかしい……」
「ああ、そうか。行けるか?」
「勿論!さ、いきましょう」
元気を取り戻した──実際はそうでもないだろうが──真姫に手を引かれて俺は真姫の父親──西木野 健が呼ぶ部屋へと入っていった。
西木野 健。45歳。22歳の時に医師免許を取得し、驚くべき事にその2年後に独立。西木野診療所を経営する。そして五年の歳月を経て名前を西木野総合病院へ変えて、診療所時代に小児科しか無かったものが一気に拡大する。医療技術は日本最高峰の大学病院にも匹敵するレベルと言われており、近隣住民から地方の有力者まで幅広い患者を、平等に診察している。
そんな所謂エリートに、俺はこれから挑まねばならない。本当ならこんな大物に逆らおうと思う人間も中々居ないのだろう。
「パパ?入っていい?」
「ああ、入りなさい。おかえり、真姫。それと君は──」
「…お久し振りです、健さん」
それでも、逆らってやるさ。例え、それが不利な事であったとしても俺は…。
次回、第3話「激情と爆発」
今回はとても短くしました。なにせ、キリがよかったので。
基本的に自分は5000〜6000文字で収めたいのでそれを超えるとどうしても分けたくなるのです。
ここからはお礼を。
お気に入り登録を早速してくださった緋炉さん、悠貴さん、ありがとうございます!!
そしてここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました。なるべく早く更新できるよう頑張ります!
評価や感想もお待ちしております。