ラブライブ!〜引きこもりとツンデレな女神〜   作:黒っぽい猫

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第3話「激情と爆発」

前回のあらすじ

 

真姫から事情を聞き、許嫁との縁談を破棄させるために動き始めた彰馬。二人が考えた作戦とは?果たして二人は説得する事が出来るのだろうか?

 

________________________________________

 

 

「お久し振りです、健さん。倉持彰馬です」

 

改めて名乗ると健さんは笑顔で迎えてくれた。

 

「久しぶりだね、本当に。君と会うのは二年ぶりかね?」

 

「ええ、その位は経つかと思われます」

 

「懐かしい話に花を添えるのはまた今度にして紹介しよう。真姫の将来の夫である、日野海叶君だ」

 

健さんの紹介にこちらも人当たりよく微笑みながら手を差し出してくる日野さん。

 

「始めまして、彰馬君。日野海叶です。気軽に海叶と読んでくれて構わないよ、歳も近いだろうし」

 

そっと握り返しながら俺も微笑を貼り付けながら挨拶する。なぜだか、この人は確かに『いい人』なのだろうとは思うのだが、どこか空虚な──俺と似た人であるような気がした。

 

「いえ、こちらこそよろしくお願いします、海叶さん」

 

ふっ、と3人が笑いあうと、口火を切ったのは俺だった。

 

「お2人にお話したいことがあります。真姫を含めて人払いをお願いできますか?」

 

「おお、構わんとも。日野君もそれでいいかな?」

 

「勿論、構いません」

 

ここで異を唱えたのは真姫だった。

 

「ちょっと!彰馬!何勝手に話を進めて…」

 

(俺を信じろ、真姫)

 

目だけで合図を送って途中で言葉を制する。不貞腐れながらも部屋から出ていくのを見届けて2人に目を向けて、本題に入る。

 

「それではお、今日伺った理由を説明します」

 

俺は、言葉通りに説明した。とは言っても、要点だけをまとめると以下のようになる簡単なものだが。

 

・真姫が許嫁とのこのような結婚を拒んでいること。

 

・そして、俺に相談されたこと。

 

・自分が、今日この縁談を破棄させようとして来た事。

 

これらを聞いている2人は無言だったが真っ先に反応を示したのはやはり父親の健さんだった。

 

「ほう…真姫がそんな事を。これは初耳だな」

 

「そうだと思います。ですが俺はこの事を聞くのは初めてではありませんでした」

 

「…続けたまえ」

 

「中学の時…俺が不登校となる直前に、真姫から一度相談を受けていました。望まぬ結婚をさせられるかもしれない、と」

 

ここで一息つく。そこで日野さんが割り込んでくる。いささか驚いている様だ。

 

「ま、待ってくれるかな彰馬君。僕と彼女の縁談は今年になって唐突に聞かされた話なんだ。それを前々から感じていたなどそんなことがあるわけが──」

 

無言ではあるが健さんも同じ意見のようで俺の先を促している。

 

「確かに、真姫もそう言っていました。ただ、中学の頃の真姫は誰かとピンポイントで分かっていたわけではなく、感じていたそうです。健さん、貴方が自分の結婚相手を探して──否、決めてしまっているように振舞うことが増えた、と」

 

「!!」

 

「真姫の言葉をそっくりそのまま言うとこうです。『最近のパパはどこか、私じゃない何かを見てる事が多いの。それに──よく男子生徒との関係についてしつこく聞かれることも増えて…今まではうるさくなかったのに急に勉強に集中するように、とか。とにかくおかしいのよ』普通であればその言葉は勉強もおろそかにするな、という意味に取れるはずです。だが、真姫はずっと中学は成績がトップであったはずです。それでは、この発言はおかしい」

 

頷きながら健さんはまるで試すかのように含みのある言葉を投げかけてくる。

 

「…それで仮に真姫がそれを望んでいないとしよう」

 

だが、と健さんは断言する。

 

「結婚は、家庭内の問題だ。君のような部外者が立ち入っていい話ではないだろう?」

 

癪に障るが確かに、俺は彼らからしたら部外者だ。そんな事はわかっていふるが、ここで後に引いてしまっては頼んでくれた真姫に申し訳が立たないと奮い立たせる。

 

「俺は真姫から頼まれてここにいます。それは、当事者に関わってくれと言われたという事です、であれば俺が関わるのは当然の事かと。それと、真姫に自分の意見を押し付けるようなことをするのは何故です?」

 

簡単な事だ、そう言って健さんは続ける。

 

「私は成功者だ。真姫がその道を進んで間違えるはずがないだろう。あの子は私の娘なのだから。日野君、君はどう思うかな?」

 

いきなり話を振られて面食らっている日野さん。話の振り方は強引だが、ここは俺も聞いてみよう。

 

「僕からも聞きます。日野さん、貴方のしたい事はなんですか?」

 

「え…」

 

「先程言っていましたよね、これはいきなり決められ、決定事項として伝えられた事だと。それに対して貴方は何も思わなかったのですか?まして、その言い方だとこの縁談そのものは望んでいないように思えますが」

 

「!…何かを思うだって?」

 

「ええ、例えば…『自分にはもう心に決めた人がいる』とか」

 

「…!!」

 

「貴方の人生は一体誰のものなんですか?そのまま親の言いなりで生きることが本当に自分の人生と言えるのですか?」

 

「…僕は社長の息子だ。そうやすやすと自分の判断で周りを振り回すことは出来ない。君のような一般人とは違うんだよ」

 

「たったそれだけの事ですか?」

 

「…え?」

 

「貴方は両親が死ぬのを目の前で見たことはありますか?それが原因で住むところを失ったことがありますか?身寄りがない子供が一人暮らしをし始めたばかりの頃を知っていますか?進便器に顔を押し付けさせられたことは?蹴られ殴られて意識を失った事は?それによって成績も不振になり出席日数が足りず進学する希望をすら失った事は?」

 

この人も…多分迷ってるんだろうな。自分のやりたい事と自分の持って生まれた宿命に。だから、あえて自分の人生の一端を暴露した。健さんも海叶さんも呆気に取られてるが、俺はもう慣れているので何も思わない。これが普通の人の反応だろうな。

 

「貴方は自分の人生を、社長の息子だからという理由で自分から捨てるのですか?」

 

俺は選ぶことすら出来なかった…戦う強さも勇気も持ち合わせる前に何もかもを失ってしまった。

 

「そもそも、親は貴方の人生とは何一つ関係もない!貴方は自分で責任を取るのが怖いから親にそれを押し付けてるだけだ!それでは貴方の人生であるとは言えない!!親の傀儡だ!!」

 

気が付けば怒鳴りつけていた。真姫のためであるという事の前に今、俺の目の前には自分の人生を棒に振ろうとしてる人がいるという事が俺には許せなかった。

 

「いい加減に自分の責任で何かを選び取ってみてください!そうすればきっと今まで見えなかったものが見えてくるはずだ!!」

 

……。言い過ぎた。

 

 

 

 

 

「あ…いきなりすいません。怒鳴ってしまって」

 

 

 

海叶さんは暫く唖然としていたが、健さんに向かい合うと口を開いた。なぜ健さん?

 

「…僕はもう貴方の悪ふざけに付き合わなくていいですか?」

 

「ん、まあそうだね。充分だよ、彼の気持ちも真姫の気持ちも君の気持ちも知る事が出来た。これは私にとってとても良いことだ」

 

…いきなり雰囲気が緩んだな。どういう事だ?申し訳なさそうな顔をした海叶さんが今度はこちらを向くと

 

「…すまない!!君に不快な思いをさせてしまったようだ!!」

 

綺麗な角度で謝罪を繰り出してきた!

 

「は?いや、え?どういう事ですか?」

 

「じ、実は……」

 

チラリと健さんを見ると、健さんは苦笑──否、ニヤニヤしていた、物凄くニヤニヤしていた。

 

「いやあ、すまないけど勝手に君を試させてもらったよ」

 

「…いや、説明してください。最初から全部」

 

ああ、と頷いて健さんは胸を張って話し出した。

 

「元々、今日海叶君はこの縁談を無かった事にするために来たのだよ。ああ、反論は後で聞こう。そして、その話を打ち明けられてすぐに妻から君達が来ていると聞いてね。2人とも目が怖いと妻が言っていたものだから、この縁談を破棄させに来たのだろうと予想し、海叶君に協力してもらって君がどれだけのものかを確かめさせてもらったというわけさ」

 

「で、お眼鏡にかかったと?」

 

「勿論、大満足だ。多分少し前の私なら無理矢理にでもこの縁談を進めたのだろうけど…少し前、真姫にμ'sを辞めるよう話をしたら同じ様に8人がかりで押し掛けられてね。面食らったものだがその時に彼女たちに気づかされていたのさ。何も一つのことを極める事だけが生きる道ではないのだと」

 

「そうでしたか……」

 

「改めて私からも…すまなかった、無粋な真似をしてしまったことを謝罪する」

 

「僕からも…すまなかった!!」

 

「二人とも顔を上げてください。俺は気にしてませんよ」

 

明らかに安堵の表情を浮かべる2人に俺はスマートフォンの画面を見せつける。

 

「お、れ、は!気にしてませんけど…真姫はどうでしょうね?」

 

「「え゛……」」

 

そこには、『西木野真姫 通話中』と書いてある液晶画面が表示されていた。

 

「さて、真姫?俺は別にいいけど、お前はどうする?今回の一番の被害者はお前だからお前が決めていいと思うぞ」

 

『ええ、そうよね……決めたわ!』

 

一呼吸置いてから真姫は死刑宣告を2人に突きつける。

 

『まず、パパとは一ヶ月口を聞かないわ!それと、日野さんには苦手な食べ物オンパレードの炒めものを作らせるからそれを完食してもらうわ!!』

 

「そんなに軽いバツで懲りるとは思えないんだが……そうでもないのか?」

 

俺の目の前には跪いて許しを乞う海叶さんと、絶望によりソファーで燃え尽きてる健さんの姿があった…。

 

「とりあえず、話がついたのなら俺は帰りますね。それでは」

 

なんとか復活したのだろう、健さんが声をかけてくる。

 

「真姫のことをこれからも宜しく頼むよ」

 

 

 

……何か勘違いされてるみたいだな?

ここではっきり言っておくか。

 

 

 

 

「え?俺はただ真姫の依頼を受けただけです。では、失礼します」

 

唖然とした2人を尻目に俺は西木野邸から出る。後ろからついてくる影はあえて知らぬふりをする。門の前で後ろの影の正体である真姫が声をかけてくる。その声は悲しげに、それでも強く響いてきた。

 

「彰馬!!」

 

「…何だよ、真姫」

 

「絶対に!また貴方を振り向かせてみせる!」

 

「俺とお前はもう会わねえよ。次はもっと用心して外に出る」

 

「見つけるわ!貴方がどこにいても!!」

 

「……じゃあな、西木野」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……俺があいつに釣り合うはずがない。今回はたまたま会ったから成り行きでこうなっただけだ。

 

俺は、なるべくならもう人と関わらない。今回はたまたまだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彰馬…もし本当にそう思ってるなら、どうしてそんなに悲しそうな顔をしてるのよ…」

 

その呟きは、誰に聞こえるわけでもなく消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回、第4話「世間は狭い」

 

 




お久しぶりです、黒っぽい猫でございます。

気が付いたらお気に入り登録が増えていて小躍りしておりました。次回の更新も未定となっておりますがなにとぞこの作品を生暖かく見守ってやってくださると幸いです。
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