ラブライブ!〜引きこもりとツンデレな女神〜   作:黒っぽい猫

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どうも、こちらも書き溜めです、黒っぽい猫です。

今回はだいぶシリアス濃いめです。また、偏見的な発言も見て取れるとは思いますがあらかじめご了承ください

それでは、どうぞ


第8話「真相は──」

「どこから話したものか…まずは中学二年の冬だな、覚えてるだろうけど、俺たち六人でライブハウス開催のプチライブに参加してただろ?」

 

「あの後からだった。俺がそんな扱いを受け始めたのも」

 

ポツリポツリと俺の口から零れ落ちていく言葉が段々と一つのストーリーへと記憶を紡ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー!いいライブだったよ!六人とも、今日は急なお願いだったのに出てくれてありがとね!」

 

ライブハウスの店長──高橋さん──が笑いながら俺の背中を叩いてくる。大柄な人なのでこの人にとっては軽くのつもりなんだろうが、どちらかと言えば小柄な俺にとっては強烈に痛い。

 

「ちょっ、高橋さん!痛いよ!!」

 

「おおっと、ごめんごめん。彰馬君の体が脆いのを忘れていたよ」

 

カラカラと愉快そうに笑っているところを見るに絶対反省してない…。

 

「六人とも、バンドを組んだ当初からは想像もできないほどに思え息もピッタリあってるね!」

 

その言葉に当初協調性の欠片もなかった二人──健人と真姫は気まずそうに目をそらす。気の強い二人はなにかある度に言い合って最終的に諒也に説教される場面が多々あった。

 

「た、高橋さん!!その事は言わないでっ!!」

 

「別に今は仲良いんだから良いだろ?!」

 

「ははは、健人君の言う通りだな!まあ、また今度も是非とも君たちにライブを頼みたいんだが良いかな?」

 

その問いに俺達が何かを言う前に真姫が先んじて言ってしまう。

 

「当然よ!!私達の歌、もっとたくさんの人に聞いてもらうんだから!ね、彰馬♪」

 

「唐突に俺に話題を降りながら自然に腕を絡めようとしてくるな真姫!!お前らも高橋さんもニヤニヤ見てないで真姫を引き剥がすの手伝ってくださいよ!!公衆の面前だぞ!!」

 

「でも、本当にお二人はお似合いですよね〜。真姫ちゃんもあんなにデレデレして…小学校とはまるで別人です〜」

 

「まあ、別にええんちゃう?我がバンドのツンデレ姫のご機嫌を彰馬が取らんと話も進まんやろ」

 

くすくす笑っている黒嶋(くろしま) 美優(みゆ)とそれに大きく頷く本間(ほんま) 颯太(そうた)に対して真姫が顔を真っ赤にしながら噛み付くが、その前に俺の腕を離してほしい。意識している訳じゃないが色々当たってる……。

 

「誰がツンデレよ!!」

 

「まあまあ、真姫ちゃん、そんな事より彰馬君の腕解放しなくていいの?嫌な音が鳴ってるよ?」

 

「男として同情するわ彰馬…そんなに女の子と密着してるのになんも出来へんのは辛いやろなぁ……」

 

「黙れ颯太俺は何もしねぇよ!!真姫もそんな目で俺を見るんじゃねえ!お前に手を出しはしない!!その前に腕がミシミシ言ってるから解放しろ!!」

 

いじる対象を見つけたと言わんばかりに少し嗜虐的な顔をした真姫はいきなり首に腕を巻き付けてくる。腕が緩まったのはいいが近い!!フワリと、かすかな薔薇の匂いが鼻腔をくすぐる。

 

「ふぅん……彰馬は変な事考えてるんだぁ…?」

 

よく見ると真姫の耳が赤くなってる…恥ずかしいならやるなよ。

 

「真姫、耳が赤いぞ。無理すんな」

 

「────!!!彰馬のバカ!!」

 

それを指摘してやっとのこと開放されたかと思えばポカポカと肩を叩いてくる。

 

「あー、そういえば颯太」

 

「ん?なんや彰馬」

 

「この前お前が一緒に出歩いていた女の子、随分と可愛かったが付き合ってるのか?」

 

「な、何を言うてはりますのん?!おおお、俺は別に誰かと出かけてなんか…」

 

「恥ずかしがるなって。恋人繋ぎまでして仲良さげだったじゃないか」

 

もちろん嘘だ。でも、本人の慌てようから推察するに図星のようだな。灸を据えられやがれ。

 

「へぇ〜…何やら面白いお話ですねぇ…颯太クン?」

 

「ち、違うで美優!お、おお、俺はそそそんなことはしとらん!」

 

「へえ……じゃあその肩についてる茶色い髪の毛は誰のですかねぇ?」

 

「なっ?!嘘や?!ちゃんとコロコロで取ったはず……あ」

 

「はい、嘘です。でも、マヌケは見つかったようですね?」

 

ニッコリと笑う美優に腕を掴まれる颯太。

 

「さ、少しお は な し しましょ?颯太クン♪」

 

「ご、後生や……諒也…健人ぉ……こ、殺されてまう」

 

「「浮気者は殺されて、どうぞ」」

 

「この薄情者ぉおおおおおお!!!そもそも俺らは付き合っとらんわぁぁああ!!」

 

「高橋さん、奥のお部屋借りますね〜」

 

「ごゆっくりどうぞ〜」

 

「嫌やァァァあ!!死にとう無いぃぃぃぃ!!」

 

悲鳴が聞こえなくなったあと俺たちは話をまとめる。

 

「さて、美優が颯太をシバいてる間に俺たちは帰りますか」

 

「そうね、あれ始まると時間かかるし」

 

「なぁ諒也、マック寄ってこうぜ」

 

「僕は行こうかな。彰馬君達はどうする?」

 

「だってさ、どうする?真姫」

 

「今日はごめんなさい、勉強しないと…」

 

「そうかい。んじゃ、俺も帰るわ。わりぃな」

 

再びニヤニヤを始める健人と諒也の視線を無視して俺は真姫と帰途につく。電車に乗り込むと空いてる座席に真姫を座らせる。中学の学区内にいると知り合いに見つかるかもしれないということも考慮して俺達は少し離れたライブハウスに通っているのだ。

 

「彰馬は座らなくていいの?」

 

「ん?ああ、別にいいんだよ。にしても今日のライブは疲れたな」

 

あまり体力の無い真姫には辛いんじゃないかと思って改めて目を向けるが本人に疲れた様子はない。

 

「疲れたけど、楽しかったわ♪あんなに沢山の人達の前で歌うのって、初めてだったもの。そのワクワクがまだ収まらないわ」

 

満面の笑みを浮かべる真姫。俺は口元が緩むのを感じながらそれを抑えるために真姫の頭をクシャクシャと撫でる。

 

(こんな風な日々が続いていくんだろうな…きっと。いつまでもこいつらと色んなことがやれたら楽しそうだ)

 

その時の俺は、まだ信じていた。

この日々がずっと続いていくのだと。

 

その時の俺は、まだ知らなかった

その幸福が崩れるということを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライブ明けの月曜日。俺はいつも通り学校に向かっていた。俺の家は小六から俺しか住んでいないから一人で食パンを焼いて食べる。味気ないが仕方ない。

 

(みんな朝は家族で食ってたりするのかなぁ?)

 

自分にはわかるわけもない、と結論づけて家の戸締りを確認すると玄関に立つ。

 

「……行ってきます」

 

何故だか、今日はそう言いたい気分だった。勿論返事はない。

 

鍵を閉め、ポケットに鍵を突っ込むとそのまま学校へ向かって歩いていく。空を見上げると雲ひとつ無い晴天だ。真冬の空気が制服の布地にも染み込むがそれが少し心地いい。

 

中学校は徒歩5分程度のところにあるのでさほど時間もかからずに到着する。

 

「よう、おはよう。皆」

 

「おー彰馬。おはようさーん」

 

「今日もイケメンだなクソ……氏ね!」

 

「おーおー、モテないからって嫉妬はよろしくないぞ〜?おはよう彰馬」

 

こんな風に馬鹿な返しをしてくる三人と談笑をしていた、日常のよくある一コマに一石が投じられたのはその日の昼休みだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弁当をつっついている昼休み。友人達と話をしていると後から話をしたことのあまりない女子から話しかけられる。

 

「あの〜、倉持君。呼んでる人がいるみたいだよぉ?」

 

「ん?ああ、そうなの?ありがとね。ええっと──」

 

「香澄は、花巻香澄だよぉ」

 

それぢゃあねぇ、と言って去って行く花巻さん。個性的な人だ。おっと、それよりも人がいるんだったな…。

 

「お前か?倉持って男は」

 

赤い上履き……3年か?

 

「はい、僕が倉持ですが。何か御用ですか?先輩」

 

「…屋上まで来い。まさか、先輩の命令に逆らわねえよな?」

 

「わかりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、御用とはなんですか?先輩」

 

屋上に着いた俺は人数を確認する。ドアの付近に二人。目の前に三人…いや、四人か。その中でもガタイのいい先輩が話しかけてくる。この人は確か、元剣道部の主将のはずだ。

 

「ああ、この写真について聞きたいんだが、お前、西木野と付き合っているのか?」

 

ライブの後、俺が抱きつかれてる写真だ。ったく…わざわざ校内で別行動してるのは面倒を避けるためだってのに、なんで露見しちまうかなぁ…。

 

「見間違えかなにかなんじゃないですかね……ガハッ?!」

 

「真面目に答えろザコが!」

 

突然腹に拳がめり込んだ。脇にいた二年生が殴ってきたようだ。いきなりの不意打ちに息が一瞬止まった。確かコイツは剣道部の現部長だったか?

 

「先輩……。犬の躾くらいはしっかりしておいてくださいよ。こうやって噛みつかれては……困りますのでね!!」

 

こちらも殴ってきた奴の顔にストレートをぶち込む。

 

「ガッ…?!てめェ…!」

 

それだけでは終わらせない足を払ってそのまま倒れ込む腹の軌道上に勢いをつけた足を沿わせる。

 

ドスッ!

 

一撃で昏倒させると溜息をついて先輩に話しかける。

 

「それで、条件は?」

 

「西木野に近づくな。アイツは俺のものだ」

 

「馬鹿馬鹿しい、そんなもの俺が呑むとでも?それとも、いうことを聞かなければ暴力で脅しますか?」

 

「……丁度来たみたいだ。連れてこい」

 

ドアが開いた方を見ると髪の毛を掴まれて引きずられている花巻さんの姿。申し訳なさそうにこちらを見てくる。

…仕方ない、か。殴られよう。

 

「逆らったらコイツがキズモノになるけど、それでいいか?」

 

あくまで淡々と、感情の籠らない声を出す主将。気がつけば主将以外の四人に囲まれていた。

 

「自分の立場は、分かっているな?」

 

「えーえー、どうぞ。降参はしませんけどね」

 

教師にバレてしまっては堪らないからなのか、顔を避けて暴力が振るわれた。確かに痛むことは痛むが、別に耐えられないほどでもない。

 

「何でコイツ倒れないんだ……?!」

 

息が上がっている四人を前にして、俺は立っていた。本当は今すぐ倒れそうではあるが、なんの関係もない花巻さんにここで手を伸ばしたことを考えると誰に飛び火するかわからない以上は、倒れるわけにはいかなかった。

 

流石にしびれを切らしたのか主将は立ち上がり俺を突き飛ばすと後ろにいた花巻さんの制服を破り捨て俺のいる方に花巻さんのことも投げてくる。慌てて受け止めて俺のブレザーを花巻さんに着せる。いきなりのことに彼女は顔を埋めて嗚咽をこぼしていた。

 

そして大声で階下にいる教師に言葉を投げかける。

 

「倉持が花巻を犯そうとしています!!」

 

「なっ──!」

 

「ッ!!」

 

すぐに教師が屋上にまで上がってくると俺のことを拘束する。

 

「待ってください先生、俺は──」

 

「黙れ!!言い訳は指導室で聞いてやる!!さっさと来い!!」

 

胸ぐらを掴まれて俺は進路室へと連行された。

 

 

 

 

 

「何でこんなことをしたんだ、倉持?」

 

「俺はやっていません」

 

顔を殴られた。それだけじゃなく、腹に蹴りを入れられる。

 

何度釈明しようとしても聞き入れてもらうことすらもできなかった。反論しようとするたびに殴られ、蹴られた。

 

「いい加減認めろ。花巻本人もお前にやられたと言ってるんだ」

 

脅されでもしたのか?花巻さんは。それとも巻き込んだ俺を恨んでいるのか。まあどちらにせよ俺の言うことは変わらない。

 

「ふざけないでください。やっていない事を認めることなどできるわけがないではありませ──ガッ!」

 

「ふざけているのはお前だ!!被害者から言われているのにまだシラを切るつもりか?!」

 

それでも俺は決してやったと認めなかった。これでやっていないことを言ってしまえば本当に認めたことになってしまう。それは絶対に嫌だった。

 

そして、午後6時半頃まで取り調べという名の拷問の後、俺には一週間の謹慎処分が与えられた。俺は決して認めなかった。

 

「お前の席が教室にあるとはもう思わないことだ」

 

その言葉の意味を知るのは一週間後の話になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一週間がたって月曜日。俺はいつものように学校に向かった。先週教師に受けた傷も癒えていたので特に体が痛むようなこともない。

 

「おはよう」

 

ドアを開けた瞬間、一斉にクラスメイトに見られる。

 

全員、軽蔑するような目をしている。花巻を見ると怯えた様子で目を逸らされた。

 

(ちょっと、今の見た?花巻さんのこと見てたよね?)

 

(こんなことになったのに反省してないんだ…最低)

 

自分の座席を見ると、そこにはぶちまけられたガラス片と水に浸った花があった。

 

そこまでして俺はようやく理解した。担任教師が一週間前に言った言葉の意味を。

 

それから、クラスメイトからちょくちょく嫌がらせを受けるようになった。

 

上履きがなくなっていたり、先程のように机の上に花瓶が置いてあったり、ものが隠されたり、など当たり障りのないものがほとんどだったが。

 

そのうちそれは直接的なものに発展してきた。

 

「おーっと、わりいわりい、気づかなかったぜ」

 

掃除をしていると後ろからバケツで水をかけられた。

 

トイレから戻ってくる時に足をかけられそうになった。

 

挙句の果てにプロレスごっこと称してこちらに殴りかかってくるようにすらなった。

 

一度反撃をした所教師に別室まで連れ込まれて反省文を書かせてください、とこちらに言わせるまで殴られ、蹴られた。どうやら俺は彼らにとって最早ストレスを解消するための機械だったようだ。

 

 

(どうせ、卒業して遠くの高校に行ってしまえばいいだけの話だ)

 

 

それまでは耐えればいい。遠くの高校に行けば関わることもなくなるだろう。

 

そう思っていた。学年末の成績が帰ってくるまでは。

 

学年末のテストの後、返ってきた成績表を見て俺は愕然とした。

 

全ての評価に「1」が付けられていたのだ。

 

これでは私立はおろか、公立すら受けられない。

 

「………先生、これは?」

 

「あぁ、お前には言わなかったけどお前カンニングの疑惑をかけられてたから全科目参考点、ってのにしたから成績にお前のテストは繁栄されないんだわ」

 

クラスメイトはクスクスと笑っている。誰一人として味方はいなかった。

 

「お前、この成績じゃあどこにもいけないからな?もっと頑張らなきゃダメだぞw」

 

何もかもが馬鹿馬鹿しくなってしまった。真偽の確認すらせず人の言うことを真に受けるクラスメイトのことも、数を頼りに正しさを決める教師のことも。

 

この頃から俺は真姫を避けるようになった。校外でも決して近寄らなかった。

 

一応、形式ばって教師に相談はしてみたが当然相手にもされなかった。

 

「は?いじめ?そんなのあるわけないだろ?そんなことよりも勉学にもっと集中しろよ、倉持。お前ただでさえ先生達の評価最悪なのにそんなことに気を回してる余裕あるのか?」

 

(最初から宛になんかしてねえよ…クソが)

 

あれから主将は真姫に告白してフラれたとかいう情報も一時は流されていたが、もはやそんなこともどうでもよかった。

 

あと一年、その事がより一層俺の心を暗くさせた。

 

そして三年に進級してからも状況は改善されるどころか悪化する一方だった。

 

「キモイんだよ!死ね!!」

 

そう言いながら教室で蹴られた。教師はニヤニヤして見ているだけで止めようとすらしない。

 

「なんで学校やめないのwマゾなの?キッモwww」

 

「お前なんか学校来るんじゃねえよゴミクズが!」

 

そして五月の中旬に中間テスト終了後にカンニングで呼び出されて以来、学校に行くのはやめた。

 

(多分、人間は信じてはいけなかったんだ。自分のことすらも信頼してはいけなかった。馬鹿みたいに信じていたからこうやって騙されたんだ)

 

 

自分を信じることをやめた。自分のことを嫌いになった。他人に嫌われる自分が何より許せなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その証が、これだよ」

 

俺は、腕をたくしあげると諒也と健人だけに見せるように自傷の傷跡を見せる。二人は目を見開いて息を呑む。

 

「これは、自分を信じられない俺が付けた戒めだ。人を二度と信じることのないように、ってな」

 

「……今の話、全部本当なの?彰馬君」

 

「本当だよ、諒也。嘘ついたって仕方ないだろ?」

 

「真姫の話は?お前、真姫に別れ話をしたんじゃないのか?」

 

「それは、あいつの塾が終わる時間に合わせてあいつの家の前に行って言ったんだよ『お前の事なんて元からなんとも思ってなかった遊びだったんだ。もう飽きたから別れよう』ってな」

 

「そうか……で、なんで教師はお前にそんなことした?普通なら止めるだろう?」

 

「それに関しては、後に調べてわかったことだが俺が最初に倒した男がどこかの社長の息子だったんだ。大方その社長が教師に賄賂でも送ったんだろうさ」

 

「そうか……どうして俺達に相談しなかったんだ?」

 

「それは、僕も気になるかな?」

 

悲しそうな目をする二人を見て罪悪感が湧いてくるが、ここで嘘を吐くのはもっと嫌だ。

 

「信頼出来なかったんだよ……周りの全てが敵に見えて。敵だって見ないと、学校にいる事に耐えられなかったから…」

 

そう言っても俺も目を伏せる。まともに二人の顔が見れない。弱い自分があまりに情けなくて。

 

「まあまあ、そんなに落ち込まなくてもいいじゃないか彰馬君。二人も責める気は無いみたいだよ?」

 

背後から海叶さんの声が………ん?

 

「海叶さんっ?!何故ここに?!」

 

「いやあ、制服を着た彼らと君がここに入ってくのが見えたし君の顔は暗かったからなにか脅されてるのかと思ってねぇ」

 

いつでも警察を呼べるよう近くに座ってたのさ。と微笑んでから呆気に取られた二人を取り残して真面目な話を始める。

 

「君の話を聞いた所で僕の意見を述べようか──君は悪くないよ」

 

「…え?」

 

「君は何一つ間違っていない。たとえ君が君自身を信じなかったとしてもそれだけは揺るがない。君は何も悪くない。そちらのお友達も同じ意見じゃないのかい?」

 

振り返って二人を見ると苦笑いしていた。

 

「そこにいる不審な人に全部言いたいこと言われちゃったな…」

 

「俺もだ……ったく。お前は悪くないぜ、彰馬」

 

「まあ、まだ正直僕達の事を信じ切るのは難しいのかもしれないけど、僕達は彰馬君のことを信じてるからさ。またみんなで一緒に演奏しよう──って、あわわ?!な、泣いてるの?!」

 

「どうした彰馬!後ろの不審者が怖いのか?!」

 

「どうして君達は僕を不審者扱いするんだい?!」

 

「「グラサンマスクは不審者でしょう(だろ)!!」」

 

「ゴバッ?!」

 

無意識に、涙が出ていたようだ。気がつけばそれは嗚咽に変わっていた。恥も外聞もなかった。ただ嬉しかった。

 

「別に海叶さんが怖いわけでもねえよ……嬉しかったんだよ。ただ許されたことが…ずっと一人だったから。勿論遠ざけたのは俺だけど、それを見つけて欲しいって心の底では思ってたから…」

 

やっと、言葉を繋いで言い切った。

 

「わりぃっ、やっぱトイレいってくるわ……」

 

 

 

流石に周囲に不審な目で見られるのに耐えられなくなって俺はトイレに逃げ込んだ。個室に鍵をかけると蹲る。

 

「……やっと、誰かに話せたんだよな…全てを」

 

あんなにも心の奥底で燻っていたモノが、全て溶け落ちていくような、そんな感覚にとらわれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は嘘をついた。一つだけ、小さな嘘を。それが後に悲劇を生み出すということを誰もまだ知らない。




いかがでしたでしょうか?
凄惨、その一言だと思います。

ただ、今回はあくまで彰馬君が自分の記憶を頼りに思い出して作られたものです

記憶とは、完全なものではありません。どこかで欠落もあるものです。

この事をご留意くださると幸いです。

最後にはなりますがここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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