The Old Gang   作:TFTRDH

3 / 5
TOG2*乗員全員の名前が3話目にしてようやく明らかに。


第三話「ロイヤリスト」

 

 TOG2*を始めとする英国の誇る歩兵戦車が並ぶ中、今日も赤いタンクジャケットに身を包んだ少女達が訓練に励んでいる。但し、汗一つ流さず優雅にだ。

 

「TOGを夏の日に例えようか。いや、TOGの方がずっと美しく、穏やかだ。・・・」

「シェイクスピアですか?ダージリン様」

 

 毎度お決まりのダージリンの世迷いごとに、些か呆れた顔をしたオレンジペコが律儀に合いの手を入れる。いつものように紅茶を手にしたダージリンが指揮し、アッサムがドラムを叩き、オレンジペコが旗を持つ前で、聖グロリアーナ女学院戦車隊の面々は、一糸乱れぬ横隊を組んで行進していた。一見戦車道とは関係ないように見える光景だが、こうした訓練は聖グロリアーナ女学院の戦車道において重要な位置を占めている。生身で隊列を組むことすら出来ない者が、戦車に乗って隊列を組むことが出来るだろうか?否!断じて否である!故にこそ、聖グロリアーナ女学院の戦車道は、行進に始まり、行進に終わるのだ。

 号令と共に横隊が停止し、各員が射撃姿勢をとる。どこかで見た事があるような茶色の服を纏った人型標的までの距離は僅かに50歩程だ。

 

「Make ready!」

「First line,fire!」

「Second line,fire!」

 

 号令一下、赤いタンクジャケットに身を包み、模擬銃を構えた生徒たちが一斉に発砲する。緊張のあまり新入生が外れたタイミングで発砲した音が散発的に聞こえてくるが、よく訓練された上級生の行う一斉射撃の音は何とも心地の良い物だ。

 

 「そろそろスコーンが割れる頃合いね。Fix bayonets!」

 「Charge!」

 

 楽隊の演奏とダージリンの号令に従い、これまでの優雅で整然とした様子とは一転、赤いタンクジャケットに身を包んだ少女達が喊声を上げて突撃を開始する。お嬢様学校とは一体何だったのか、優雅とかお淑やかとかそういった言葉をかなぐり捨て、人型標的に襲いかかる少女達。特にどこかの大学附属高校に恨みがあるわけでは無いのだが、哄笑をあげて狂ったように何度も標的を銃剣で刺突する様はとても親御さんには見せられない光景だ。聖グロリアーナ女学院はお嬢様学校であって、英国擲弾兵(British Grenadiers)の養成校では無いはずなのである。

 

 さて、良くも悪くも聖グロらしい訓練が終了した後、殆どの隊員は自分の戦車に向かってゆくが、例外も存在する。訓練中隊列を乱した者や無断で発砲した者、突撃の際に勇気を欠いた者はその日中は戦車に乗る事を禁じられ、弾薬を担いで演習場を走る罰が与えられるのだ。これは毎年の1年生の通過儀礼のような物で、何人もの1年生と少数の上級生が2ポンド砲弾や6ポンド砲弾を担いで走り出していく。が、今年は少々様子が異なった。そう、TOG2*の乗員達である。TOG2*はマチルダやクルセイダーとは違い17ポンド砲を装備しているが、17ポンド砲の徹甲弾の重量は8kg近く、僅か1kg程度の2ポンド砲弾や3kg程度の6ポンド砲弾に比べて格段に大きく、重い(※1)。ましてこの訓練の趣旨から、砲弾単体では無く弾薬筒をまるごと抱えて走る事が要求されており、走者の列から明らかに脱落していたTOG2*の乗員達は抱えている弾薬の大きさも相まってとても目立っていた。

 

 「皆さん頑張ってください」

 「洋子さんは装填手だけあって流石に慣れていらっしゃいますね」

 「・・・・・・」

 

 集団からは後れつつも、先頭を走って乗員達を励ますのは装填手の杉田洋子。中学の頃から戦車道を嗜んでおり、装填手として普段から17ポンド砲弾を扱っているため比較的余裕がある。続いて走る砲手の港南(みなと・みなみ)も、中学時代からの経験者であるため言葉遣いを崩さない程度の余裕はあるようだ。逆に操縦手の花子はしゃべる余裕も無い。TOG2*はハンドル操作のディーゼルエレクトリック方式なので、操縦に比較的力が要らない事が仇になったのだ。

 

 「そろそろあの子達も練習試合に出しても良い頃合いでは無いかしら」

 「基本的な動きは出来るようになりましたけれど、ダージリン様のお供をさせるにはまだ早すぎますわ。」

 

 ティーカップを片手に訓練を監督しながら、そろそろHome Fleet(本国艦隊)の面々をお披露目できないかとダージリンは思案していた。気分は新しい玩具を見せびらかしたい子供の心境である。車長のリプトンは当然のように反対するが、今はちょうど良い練習相手からの練習試合の申し込みがある。

 

 「練習試合と言えば、最近戦車道を復活させたばかりの学校から練習試合の申し込みがありましたね、ダージリン。そこならば新入生の相手をさせるにはちょうど良いですが」

 「大洗には私がルクリリ達と直接出向きますわ。」

 「ではまさか・・・」

 

 まさかの対戦相手にアッサムが戦慄する。

 

 「・・・札幌市立 幌市露譜高校!」

 

 次回に続く




※1:同じ砲でも砲弾の種類により重量は違います。目安程度にお考えください。


「同志、言い訳をさせてください。艦これとアズレンとWoTとWoWsのイベントが忙しかったのです」
「よろしい、シベリア送りだ」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。