それはこじんまりとした、平凡な小屋。鈍いテカりを残す外装の木材には防水の為にブルー・パインの樹脂が塗られており、それが自然に溶け込んだ景観を演出している。
唯一の光の取り込み口となる、入り口にはめられた硝子板からは、普段とは違って中の様子を窺い知ることが出来ない──謎の紫色の
これは、ツユカスミソウの花の香り……?なんだか複雑ね。中では今、どうなっているのかしら。
ノックの形をつくった手が扉を叩く前に、その小屋を自身の作業場にしている私の妹、ファムが目元に涙を溜めて飛び出してきた。
「お姉さまぁ~~っ!」
「きゃっ!?……どうしたのよファム。ほら、落ち着いて」
陽の光の下に出て、まるで鉱石のような輝きを湛える瞳の、目尻を人差し指の甲で優しく拭ってあげると、この子は安心しきった、ほんわりとした微笑を浮かべている。この子の笑顔はまるで花開くリリーのよう、なんて愛らしいのかしら。
妹の自立心を尊重してあげようといつも自分に言い聞かせてきたつもりだけど、こうして咄嗟に胸に受け止めてしまう私も、五十歩百歩って、ところかしら。私の方から一歩身を退いて、私に寄り掛かっていたのを足のつま先でなんとか踏みとどまった様子の妹は、一度唇を丸めて目を伏せ、それからは上目遣いでばつが悪そうにしながら、中での出来事を話し始めた。
「じつは……誰でも簡単に、服に香りをつけて楽しめれるような、そんな素敵なお香を目指して作っていたんです。でもそれが失敗してお部屋が……。私は調合の配分を間違えたのでしょうか?お姉さま」
「そうなの、そのアイディアは私も興味深いから夕食の時にでもゆっくり聞かせてもらうとして、今はとにかく小屋の中に入らせてもらうわ。私が中に入っても、扉は開けておいてね。もし気分が悪いなら、新鮮な外の空気を吸って待っていればいいから」
「いいえお姉さま!私は平気です。ですから一緒に原因を探りましょう」
「──ふふっ、そうね。それじゃあ入りましょう」
ファム、あなたはもう一人前よ。いつの間にか、そんな勇ましい顔つきが出来るようになっていたのね。妹を成長させてくれた、奇縁に感謝しなくちゃ。
紫色の靄の中、ゴトリと重い、音がして──
これは別の話だが、この失敗から生まれたお香は後に、アウヒト香(逢ふ人)と名付けられ、その靄は<歪み>から異界へと流れていった。
十中八九、後で書き足します。すみません
※私事ですが、思い出深いメーベルのバレ限を引けました。タケミカヅチの枠がメーベルになっていたら、メーベルがタケミカヅチを自身に降ろしていたとか、都合よく解釈してください()