27XX年、人類とセイレーンの戦争が終結してから一年が経過した。
人類達ーアズールレーンを裏切り軍事独裁国家
ここは、重桜首都『トウキョウ』。今ここから、一つの英雄譚が始まる…
トウキョウ駅改札、朝の8時。
スーツを着たサラリーマンやらOLやらが出勤の為にぞろぞろと改札の外に出たり中に入ったりしている。その中に明らかに場違いな格好をしている男がいた。
真っ赤な野球帽に黄色いTシャツ、緑のズボンを履いた20代辺りの男は、背中に登山家が背負うような大きいリュックを背負って辺りをキョロキョロと見回しながら歩いている。そのあまりの奇怪さに、すれ違う人は皆
(信号機カラー野郎!)
と心の中で罵倒していた。そうとも知らずにこの男は、
「うお〜!すっげえ!トウキョウってこんなに人いるんだな!」
…と大声で田舎者丸出しの感想を述べていた。
「ここなら俺の事知ってる人がいるかも…!地図どこにやったっけ…」
改札から駅の外に出た後、ばかでかいリュックを地面に下ろして地図を探すこの男の名は…
無い。
「えーと、この記号が交番で…これが消防署、これが…」
正確には本人が自分の名前を覚えていないのだ、いわゆる『記憶喪失』である。
彼は、自分の事を知っている人を探す為に重桜で最も人が集まるであろうトウキョウまでやってきたのだ。
「…全然わかんね、まあいいや!ここに来る時やったように人に聞きながら行こう!」
「っと……その前に飲み物買おうかな」
首を横に動かし自動販売機を探す、これもここに来るまでに通行人に教えてもらった事だ。
すると自動販売機の前でうずくまっている人を見つけた。通行人はその人物に目をやる事はあるが面倒事を避けたいためか、すぐに目線を逸らして逃げるように歩いていく。
「えーっと…どれにしよーかな」
だが、記憶喪失にとってはそんなもの関係ない。100円硬貨を販売機に入れて商品の選出を始めようとしたその時…。
「あナたァァーッ!!」
突然うずくまっていた人が奇声を発しながら脚に掴みかかってきた。その人は声から
「うわあビックリした!なんだよいきなり!?」
「ビックリしたのはこっチの方よ!女の子がうずくまっているっていうのに何も声かけないでジュース買おうとスるー!?」
「そ、そうなの…?ごめん、俺記憶喪失で」
「記憶喪失で誤魔化せると思うナー!!」
両手を合わせて謝罪の意を示す男。だが女の怒りは収まらぬ様子だった。
「今この自販機の下に!私の全財産が転がっテしまったのよ!」
「ぜ…ぜんざいさん!?それは大変だ!」
「あんた記憶喪失のくせに『全財産』の意味は分かるわけ?」
「旅の途中で教えてもらったから…よおっし!!」
男は両手で自販機の端を持つ。
「…?何してんの?ユニオンコミックのヒーローみたくそれを持ち上げるつもり?ハッ、馬鹿じゃないの!あのねぇ、そんなことしてる暇あったら…」
「どりゃああああー!!」
女がうだうだ言ってること間に男は自販機を持ち上げていた。
「……………」
それを見て呆然とする女。通行人すらも足を止めて携帯端末で写真や動画を撮影したりしていた。
「い、今のうちに………はやく…」
「あっ、そうだったゴメンゴメん!」
素早く自販機の下から『100円硬貨』を拾い上げる女。
「やったあーー!!帰ってきたワ!私の全財産ちゃーん!」
「え、ええー!?全財産ってそれだけぇ!?」
ショックで力が抜けて手を離してしまう男。ドシーン、ととてつもなく重い音が響く。
「それだけって何よ失礼ネ!100円を笑う者は100円に泣くのよ!」
「い、いやあの、さぁ?全財産って言うからもっと多いのかと…」
「何よ嘘は言っテないでしょ?」
「…それもそうだけど……」
二人が言い合っていると、辺りに集まっていた野次馬が後方を見る。
「皆さん、道を開けてください!我々は重桜政府軍です!」
「道を開けてください!」
野次馬を払いのけながら二人の白い軍服を着た男達がやって来る。
「いた!見つけたぞセイレーンΩ!」
「チッ、もう嗅ぎつけたのかよ…」
「え、どういうことだ?セイレーンってなんだよ!?」
「逃げるよ、あんた!」
「お、おい!?」
「逃すな!追え!」
女に手を引っ張られながら逃げる形となった男。
「おい!教えてくれよ!さっきの奴らはなんだよ!?」
「重桜政府軍!あたしは奴ラに追われてるんだ!」
「じゃあセイレーンってのは!?」
「はあ!?あんたマジで記憶喪失!?あんたら人類と戦争した悪ーい奴らを知らないの!?」
「お前、そんなことしてたのか!?」
「失敬だナァ!あたしは戦争終結時に幼体だったのをあいつら、軍に保護されただけだよ!それを抜け出したんで追われてるって訳さ!」
「じゃあ、俺が逃げなきゃなんない理由は!」
「あの場で逃げなかったらあんたが一週間拘束されて質問漬けにされる恐れがあるから!せっかくの観光を台無しにしたくないでしょ?」
「……なるほど!!」
「いたぞ!逃すかセイレーンΩ!」
セイレーンΩを追っていた政府軍が懐から一つの
「射撃、状況開始!」
と叫んだその時。
『了解、ガンモード移行』
という機械音声と共に箱が銃の形になる。その後、政府軍の男がセイレーンΩに照準を向け引き金を引くと、銃口から青い光弾が発射される。
「ッ……!?」
「!おい、大丈夫か!?」
「痛ェ…ヤつらここまでやるの…?」
セイレーンΩの足から『白い血』が流れる。
「…これは、血なのか…!?」
「見たかね、そのセイレーンの血を。」
いつのまにか政府軍の男達がすぐそこまで迫っていた。
「さあ、セイレーンΩ!『ドライバー』をどこにやったか言うんだ!」
「ハン……誰が言うもんか!あんたら人間にアレを渡したらどーせロクなことにならないね!」
セイレーンΩが口をイーッと言わんばかりの形にしてささやかな反抗をするが、その程度で引き下がる政府軍ではなかった。
「貴様…自分の立場をもう一度分からせてやる!」
政府軍の男が銃口をセイレーンΩに向ける。だが、その前に信号機カラーファッションの男が立ちふさがった。
「邪魔だ、どいていなさい!」
「どかないね!あんたら…なんだってこんな事するんだよ!?」
「そのセイレーンは、我々人類の敵!生きているだけで我々に害を及ぼす存在だったが…温情によって生かしてやったものを。そいつは我々の開発したドライバーを奪って脱走したんだ!」
「だからって…だからって撃つ必要があるのかよ!?」
「言ったはずだ、立場を分からせると!そいつは本来殺されるべき存在なのだと!だからそこをどけ!」
政府軍の男が銃を前に突き出す、その腕は怒りに震えていてまるで照準が合っていない。
「どかないと言うなら…実力行使だ!やるぞ!」
「ああ!」
二人がもう一つ
「「変身!!」」
『了解、バイオコマンド』
二人が叫ぶと同時に箱から白い強烈な光が発生する。数千メートル先にも届きそうな光の強さに目が晦みそうになる。
「なんだ…この光!?」
「クソッ……『バイオコマンド』…完成してタのか!」
光の発生が止まると同時に、二人の政府軍人は消え、代わりに二人の全身白いスーツに黒いプロテクターを装着した戦士が現れた。
…いや、『変わった』のだ。
真っ黒なモノアイが二人を冷たく見据える。
「変身完了、バイオコマンド!」
「状況開始!いくぞ!」
二人のバイオコマンドがセイレーンΩ達に向かって走り出した。
「くっ!」
「おいバカ!あいつらはお前より何倍も強い!逃げろ!」
「ハッ!」
バイオコマンドが右ストレートを繰り出す。それに対して両腕を使って間一髪で受け止める。
「ぐっ……!なんて力だ!?」
「ほう、バイオコマンド化によって強化された私のパンチを一発だけでも止められただけ褒めてやろう!…だが!」
バイオコマンドがガラ空きになっていた左の脇腹に回し蹴りを食らわせる。
「ぐああっ!」
「相手は一人だけじゃないぞ!」
もう一人のバイオコマンドと一緒にもう一度パンチを繰り出す。男は先程の回し蹴りのダメージが残っていた為反応できず両方のパンチを胸に食らい、4〜5メートル程吹き飛ぶ。男はうつ伏せになって悶え苦しんでいる。
「………!」
「フン、大人しくどいていれば痛い目に遭わなかったものを…」
「あんたっ……!大丈夫か!?」
「くっ……大丈夫に、見えるかな…これ?」
セイレーンΩが痛む脚を引きずりながら男の方へと寄る。
「…なんで、なんでアタシなんかを庇ったんだよ!あんたはさっき会ったばかりで!アタシが勝手に巻き込んだだけで…!アタシは…!あんた達人間にとって憎むべき存在のはずなのに…!」
セイレーンΩの瞳から涙が溢れる。そうこうしている間にバイオコマンドもジリジリと距離を詰めてきている。
「…旅の途中で教わったんだ、この世に憎まれるだけの存在なんているわけないって」
「…え?」
「そしてもう一つ教わったんだ、女の子は絶対泣かしちゃいけないって…!絶対に!守らなくちゃならないんだって…!」
男が限界を迎えているはずの身体に無理を言わせて、立ち上がる。
「バカな、まだ立ち上がると言うのか!?」
「俺には記憶が無い…でも守るものの為なら!たとえ敵わなくても!何度でも立ち上がってやる!」
「…わかった。」
セイレーンΩがどこかからベルトと三個の
「!やはり持っていたか、ドライバー!」
「何、それ?」
「『シーズドライバー』!まずはこれ巻ケ!」
男は言われるがままにベルトを腰に巻く。ガチャッ!と装着完了の証を鳴らすそのベルト中央部には先程手渡された箱三個が丁度入りそうな窪みとすぐ横にレバーが付いていた。
「そこの窪みに三つの箱入れろ!」
「あ、ああ…その前にこのリュック持っててくんない?」
「わかったから早くしロ…って重っ!?何入ってんだヨ!?」
「させるか!」
バイオコマンドが光線銃を撃つ。
バチィッ!!
しかし着弾手前で見えない何かに阻まれたかようにかき消された。
「何!?」
この隙に三つのキューブを窪みに入れていく。
『LOCUST』
『KICK』
『WIND』
はめると同時に、男性のものと思しき音声がベルトから流れる。
「レバーを下に下げれば、あいつらみたいに変身できる!」
「わかった!」
「……その前に。あんたの名前なんて呼べばいい?いつまでも『あんた』は呼びづらくてさ」
「え?ウーン…記憶無いから、テキトーでいいよ?」
「じゃあ、カイで!怪力だからカイ!」
「…いい名前!それじゃあ行くぜ!」
「変身!」
カイがシーズドライバーのレバーを下げる。窪みにはめた三つのキューブが光を放つ。
『
その時、カイの周りに旋風が巻き起こり、道路に落ちていた塵や枯葉を吹き飛ばしてゆく。
新たな戦士の誕生を祝うかのように。
「くっ、なんだこれは…!?」
「強い風だ…!まともに前を見れん!」
「ハッ!」
風の中心で緑色の脚が回し蹴りを放ち、風が止む。現れたのは、エメラルドグリーンに輝く鎧を纏い、真っ赤に燃える闘志を宿した二つの眼。首に巻いた赤いマフラーを風になびかせる…。
『仮面ライダーシーズ』であった…。
アズールレーン題材にしてるくせに艦船少女出ねーじゃねーか!