仮面ライダーシーズ   作:べりある

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シーズ、戦闘

「すっげえ…本当に変わった!」

 

仮面ライダーシーズに変わったカイは、まず両腕を見る。黒のグローブを付けた両手を握ったり開いたりしてみる。変身前よりも明らかに力が加わっていくのがわかる。

次に足を、首を回して背中を見る。肩と太腿辺りにギザギザとした赤いライン、普通の人間はまず履くのを躊躇うであろう銀色の長いブーツが見える。

 

「ねえ見て!本当に変わった!」

 

カイは右手の人差し指で自分の顔を指差しすぐ隣にいるセイレーンΩに猛烈なアピールをする。その様子は運動会やら学力テストだかでいい成績を取った小学生のようだった。

 

「んナこたぁわかってるよ!あれ見ろあれ!」

 

セイレーンΩが指差す方向では、先ほどのバイオコマンド二人がファイティングポーズを取っていた。

 

「おっとと…そうだった!じゃあ、いくぜ!」

 

シーズが思い切り地面を蹴り、バイオコマンドの方向目掛けて走り出す。それに追随するように、突風が発生してシーズの背中を押す。変身したことのよって得た莫大な脚力と追い風によって、凄まじいスピードを生む。

 

「は、はやい!?」

「どりゃっ!」

 

シーズがバイオコマンドに向けて右手のストレートパンチを繰り出す。バイオコマンドはそれを両手で受け止め、そのままシーズの右手を掴む。

 

「く…残念だったな!戦闘訓練を積んだ我々に、素人の、その上記憶喪失の奴が勝てるわけがない!」

「……『一発だけでも止められただけ褒めてやる』よ」

「なに!?」

 

シーズはまず左足でガラ空きになっていた相手の右大腿部に回し蹴りを放つ。

 

「ぐああっ!」

 

肉が張り裂けそうな痛みを感じ、蹴られた場所を反射的に抑えるバイオコマンド。この時、頭の位置を下げたうえに、視線を落としてしまっていた。

 

「はっ!」

 

その隙を見逃さずにバイオコマンドの右側頭部に左回し蹴りを打ち込むシーズ。

 

「ぐえっ!」

 

丸太で殴られたような衝撃に、バイオコマンドはよろめく。そこにさらにシーズは右足でバイオコマンドの腹部に横蹴りを放つ。食らったバイオコマンドが4〜5メートル吹っ飛び、大の字になって倒れた。

 

「さっきのお返しだ!」

「いいぞー!カイ!押せ押セー!」

 

セイレーンΩの応援を受けながら、シーズがもう一人のバイオコマンドの方を見やる。

 

「何をやっている!射撃、状況開始!」

『了解、ガンモード移行』

 

もう一人のバイオコマンドが先ほどセイレーンΩを撃った銃で反撃に転じようとする。光弾がシーズの身体に3〜4発命中し、火花を散らす。

 

「うわああっ!く、遠い距離の相手にどうやって戦えば…」

「よし!遠距離攻撃は有効だ!いける!」

 

そのまま銃を連射するバイオコマンド。シーズはなすすべなく撃たれ続けてしまう。

 

「カイ!レバーを一回上げて!下ろせ!」

「!レバーだな、わかった!」

 

セイレーンΩの助言に従い、シーズはレバーを操作する。

 

CCC(シーズ)!RIDE A BREAK!』

 

風が吹き荒れ、バイオコマンドの銃撃をことごとく弾いていく。

 

「バカな、弾が全て弾かれる!?」

 

「フッ!」

 

シーズが目にも留まらぬ速さでバイオコマンドに急接近する。

 

(速い!?まさか、弾丸以上のスピードを出しているというのか!?)

 

動揺するバイオコマンド。その隙を見逃すシーズは見逃さない。強烈なサマーソルトキックがバイオコマンドの顎を強襲し、宙に浮く。追撃とばかりにシーズも高くジャンプし、空中のバイオコマンドに飛び蹴りを放つ。

 

「どりゃああああーっ!!」

 

必殺の蹴りが命中し、地に叩きつけられるバイオコマンド。シーズも自然と落下していくが、突如風が吹いてクッションのようにシーズの身体を受け止めた。

 

「くっ……これがドライバーの力…?」

「撤退するぞ!転送!状況開始!」

『了解、テレポート』

 

バイオコマンド二人が持つ水色のキューブから光が発せられ、シーズは思わず目を覆う。光が収まった時には二人の姿は消えていた…。

 

「あのキューブ、そんな事も出来るのか…」

「おつかレ!ベルトからキューブを外せば変身を解除できる。」

 

シーズはドライバーからキューブを取り外す。ギュウウン……と音を鳴らしてベルトが眠った。

 

「そういえば!足の怪我は大丈夫なのか!?」

「ん?ああ、()()()()()()

 

その言葉通り、先程撃たれて出血していたはずの足からは血が出ていなかった。それどころか傷痕が一切残っていない。

 

「生まれつき治りが早い方なんだ、アタシ。……怖いと思った?」

「…ちょっとだけ」

「よかった、全く怖くないと言われたらどうしようかと。…そうだ、アンタこれからどうすんの?」

「え?うーん…取り敢えず、俺の事を知ってる人を探そうかなーと…」

「泊まるアテは?」

「…………ない」

 

「じゃあ」とセイレーンΩが指をパチンと鳴らしながら言うと、カイにこう提案する。

 

「アタシの隠れ家、くる?」

「え。いいのか?」

「もちろん、ドライバーを持った奴を手放しにするわけにはいかねーかんな!」

「マジか!?やった!ありがとう!ホントありがとう!」

 

カイはセイレーンΩの右手を両手で握るとそのままブンブンと音が鳴りそうな勢いで上下に振る。

 

「うおお!?い、いいから!離せって!」

「ご、ごめん…」

「ったく…ついてきな!」

 

セイレーンΩに追従して歩いていくカイ。

 

 

…その様子をビルの屋上から見つめる影が一人。

 

「ほう…重桜の軍人二人を倒せるとは、中々に興味深い」

 

それは、黒の燕尾服に身を包み、片眼鏡をかけ、黒いシルクハットを被った紳士風の男だった。

 

…その顔はカラスの頭そのものであったが。

 

「あの者であれば私の目的も果たせるだろう…峨山(がさん)君はいるかね?」

 

「ここに」

 

いきなりカラス男の背後に現れ、スタッと着地する赤髪ショートボブの女性。その様はまるでアニメやゲームでよく見る忍者のようであった。

 

「近々あの者に挨拶に行く。あのセイレーンが言っていた隠れ家の場所を調べておきたまえ」

「かしこまりました」

 

音もなく姿を消す赤髪の女。

 

「さてさて…私も準備をしておくかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…おい、人気(ひとけ)が全然ないけど、本当にこんなところに家があるのか?」

 

カイ達は街の裏通りを進んでいく、表通りとは打って変わって通行人もほとんどおらず、立ち並ぶシャッターと日が差さない場所ゆえの薄暗さが不気味だった。

 

「バカだなぁ、こういう場所に隠れ家を作っておくもんだろ!」

 

こういった景色は見慣れているのか、セイレーンΩはズンズンと先へ進んで行く。

 

「そーいうものなの?」

「そーいうもノ!」

「……そっか」

「なんだ、ひょっとしてこーいうの怖いのか、カイ?」

「こ、怖いわけじゃないさ!ただちょっと苦手なだけで…」

「ふーん……お、付いたぞ」

 

裏路地の突き当たりにたどり着く。そこには風化故か若干ボロくなっていた木造のドアがあった。

 

「気をつけろヨ?ここ建てつけ悪いからな…よい…しょっと!」

 

若干手こずりながらセイレーンΩがドアを開ける。

 

「ただいまー!赤石(あかいし)ー!」

「お、おっかえっりにゃ〜」

 

小学校高学年〜中学生くらいの女の子の声が家の奥から出迎えの言葉を綴る。隠れ家の名前にふさわしく、床や机や椅子に至るまで工具が乱雑に置かれていた。

 

「ここが隠れ家…」

 

その中でカイは辺りを見回していた。

 

「見ろよ赤石!ベルト適合者だ!」

「うぉ?マジかにゃ!?」

 

奥から緑髪の少女が駆け寄ってくる。

 

「……え!?()()()!?」

 

カイは驚きを隠せなかった。なぜならその少女の頭上には猫の耳が生えていたのだ。その上飾りでは無いらしく、ピョコピョコと動いている。

 

「ん?オメガ、この子に私の事話してないにゃ?」

「アーしまった…どっから説明するかな…」

 

 

10分後。

 

「…えーと、つまり。赤石さんは昔、セイレーンとの戦争のために開発された軍艦の力を持つ人型兵器『艦船少女』の一人、『工作艦 明石』で…」

「にゃ。終戦後は『赤石(あかいし) 直子(なおこ)』と名乗って修理工やらせてもらってるにゃ」

「で、猫耳はその時の名残りと」

「そーなるにゃー」

 

机と椅子の上の工具を全てどかし、セイレーンΩが淹れたレモンティーを飲みながら説明を受けるカイ。

ちなみにレモンティーは何故か物凄く甘ったるいが、カイはあえて言わない事にした。

 

「そういえば旅の途中でそんな話聞いたことあるかも…」

「そろそろアタシ話していいかー?赤石ー?」

「どーぞにゃ」

 

赤石に譲られ、オメガが話し始める。

 

「よっし、カイ。今の内にこのドライバーの事を話しておく」

 

オメガがシーズドライバーを机の上に置く。オメガが『危険』だとして、重桜政府からわざわざ奪ってきたものだ。

 

「まずこのドライバーは、『リーダー』用として開発されたものだ」

「リーダー?」

「そう、こいつの耳見ただろ?」

 

オメガが赤石に生えている猫耳の先をつまむ。

 

「いだだだだ!!フシャー!耳引っ張るなにゃー!!」

 

赤石がお返しにオメガに爪攻撃を食らわせる。目にも止まらぬ必殺の一撃。オメガの右手に綺麗な切り傷の線ができ、白い血を流す。

 

「おい、血…!」

「心配すんなって、すぐに治る。それより、すげー速さだったろ?」

「あ、ああ…」

「実は重桜の艦船少女は、アタシらセイレーンの技術を身体に応用して()()()()()んだ。キューブによる身体能力の大幅向上…軍の奴らはそれに目をつけた」

「それ説明するために耳つまむやつがあるかにゃー!フーッ!」

 

赤石の威嚇をよそに、オメガが説明を続ける。

 

「普通の人間にキューブの技術を使い…『デストロイ』と名付けた超人兵士の部隊を作ろうとした」

「…でも、それとリーダーに、何の関係が?」

「簡単さ。動物の群れは、『その中で一番強い奴』に従うだろ?もし、普通の人間がデストロイを従えようとしたなら、反乱された時に何もできない」

「つまり、普通の人間じゃ手に負えない奴を()()を付けた奴に何とかしてもらおうと考えたわけか…」

 

カイが机の上に置いてあるシーズドライバーに視線を落とす。先程オメガを救ったこの力が、元々は軍事利用目的で作られたものだった。カイは頭を抱える。

 

「やっと平和になったって言うのに、さらに強い軍団を作ろうってんだから酷い話にゃ〜。」

「でも、リーダー用のドライバーを奪った後、その…デストロイ?とかいう奴らはどうなったんだ?」

「それは…」

 

オメガが回答を始めようとしたその時だった。

 

ビーッ!ビーッ!ビーッ!

 

一人用のデスクに置かれていたパソコンからけたたましくサイレンが鳴る。

 

「デストロイ出現情報にゃ!?」

「何!?」

 

赤石とオメガがパソコンの画面に駆け寄る。

 

「場所は、ここから北東に二キロ!地下鉄の駅がある場所にゃ!」

「っ!」

 

カイは反射的にドライバーを手に取り、家の玄関に向かって駆け出す。

 

「おい待テ!まだ説明が…!」

「後でお説教も説明も聞くよ!今は…行かせてくれ!」

 

『LOCUST』

『KICK』

『WIND』

 

「変身!」

 

ベルトのレバーを操作し、カイは、仮面ライダーシーズへと変わっていく。

 

CCC(シーズ)!RIDE A CHANGE!』

 

「ハッ!」

 

突風と共に駆けてゆくシーズ。普通の乗用車以上のスピードを出している。

 

「熱い男だにゃ〜。オメガが彼にドライバーを渡した理由もわかる気がするにゃ。」

「全く…まだ説明する事山ほどあんのニ…そうだ、赤石!例のキューブもうできたか?」

「あー、できてるにゃ。彼に持ってってやるといいにゃー。」

 

赤石がデスクの引き出しの中から一つのキューブを取り出し、オメガに投げ渡す。

 

「うおっと!?オイ、丁寧に扱えよ!」

「クジラがのしかかりでもしない限りキズもつかないようにしてあるにゃ!とっとと行くにゃ!」

「ったく…」

 

オメガがシーズの後を追って走る。

 

「さ〜て、あいつらが帰ってきた時のために、赤石特製ドリンクでも作ってやるかにゃ〜」

 

 

 

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