仮面ライダーシーズ   作:べりある

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皆様、お久しぶりです。
年末年始はアズールレーンのイベントや仕事で忙しく、中々筆に手がつかない状況を送っておりました。

新年一発目(というか一月終わってるけど…)から血生臭い内容で申し訳ありませんが、今年も『仮面ライダーシーズ』をよろしくお願いいたします


夜見川新聞社

「……なに、これ?」

 

スパイダーデストロイを撃破した日の夜、一般家庭では夕食を食べている時間帯の時、カイ達が暮らす赤石家(仮)も夕食の時間が訪れていた。

ところが、出てきた料理といえば半径5センチ程度の小皿に茹でたもやしが乗っているだけであった。冒頭の台詞はそんな粗末にも程がある料理に唖然としたカイが漏らした言葉である。

 

「何って、茹でもやしに決まっているにゃあ?」

 

エプロンと三角巾を外しながら赤石がそう言う。この様子からすると、この家畜の餌同然の料理を作ったのはこの赤石らしい。

 

「…えっ、本当にこれだけなの?」

「オイふざけんじゃねーよ今日もこれだけなのかよー!?」

 

未だに信じられないと言いたげな表情で小皿に乗った茹でもやしと赤石に視線を交互に移すカイとあからさまに不満だという声を上げるオメガ。二方向からの反発に思わず赤石は掌を机に叩きつける。

 

「だまらっしゃいにゃあ!修理工は稼ぎが不安定なんだからこうでもしないとやっていけないんだにゃ!」

「で、でも俺デストロイと命懸けで戦ったのにこれだけなの!?」

「まー、100歩譲ってカイが不満を垂れるのは許してやるにゃ…でもオメガ?ロクに働いた事がないお前が文句を言う筋は無いにゃ」

「しょーがねーだロ!元艦船少女だと言うだけで再就職が難しくなるこのご時世、元人類の敵セイレーンなんて誰も雇ってくれねーんだからヨ!それに、アタシは今指名手配犯だぞ!試験受けに行ったら真っ先に通報されルわ!」

「というかセイレーンは元々水飲んでるだけでエネルギー補給できる構造になってるからこのもやしすら要らないはずだにゃ!」

「はあぁー?ざけんじゃねーよ、美味いもん食ってこそ生きてるってもんだろうガ!」

「あの…俺はもういいからさ…もうやめよう?」

 

この怒り狂う猫の様な二人を止めないと夕食(もやし)にありつけない、そう考えたカイは仲裁に入る。赤石とオメガはしばらく睨み合った後それぞれの利き手に箸を持つ。

 

「いただきまス!」

「どーぞ!お粗末ですがにゃ!」

「よかった…止めてくれて」

 

こうして赤石家の夕食は騒がしい始まりとなった。

 

「カイ、お前箸の持ち方わかるんだナ」

「ああ、旅の途中で立ち寄った蕎麦屋さんで他のお客さんに教わったんだ、あまりにも汚い食い方だから見てられないって事でさ。ん?このもやし美味い!」

「へえ…記憶喪失と言っても何から何まで分からないって訳じゃないのか……おっ、ホントだ美味いなこれ!」

 

(あれだけ文句言っておきながら調子のいい奴らだにゃ…というか、味付けは塩だけなのにそんなに美味いかにゃ?)

 

「おかわり!」

「おかわリ!」

「はいはい追加で作ってやるから待ってるにゃー。」

 

今この場には人間、艦船少女、セイレーンの三種が食卓を囲み、和気藹々と夕食を楽しんでいる。

 

 

例え違う生物だとしてもこうしてわかりあうことができるはずなのに、どうしてデストロイは人間を憎むのだろう?とカイは頭の隅で苦悩していた。

 

コンコンコン

 

突然、入り口の扉から三回ノックする音が聞こえる。時刻は午後7時47分、夕日は落ちて窓の外は真っ暗闇の世界だった。

 

「夜分遅くにすみません、夜見川(やみがわ)新聞社の者ですが」

 

扉の外から女性の声が聞こえる。

 

「あー?新聞ならもう間に合ってるにゃ…カイ!帰ってもらってくれにゃ!」

「えっ、せっかく来てくれたのにすぐ追い返すのか?」

「覚えておくにゃ、こーいうのはすぐに断っておかないと他の訪問販売業者に情報が行き渡ってカモにされるにゃ!」

「……そういうものなの?」

「そういうものにゃ!ほら分ったならさっさと行くにゃ!」

「うわっ!分かった!分かったから押すなって!」

 

赤石に背中を押されて扉の前まで歩くカイ。

 

「えっと…新聞はもう間に合ってる?らしいので…」

 

そう言いながら扉を開けるカイ。その瞬間、ドアの隙間から異形の腕がそこに存在していた。闇の中でも確かに光る、白い鱗がびっしりとした腕が。

 

「!?」

 

カイは開きかけていたドアを素早く閉める。バターンという音がその場に轟き、空気が冷える。

 

「何があったにゃ!?」

「何だよカイ、勧誘業者がデストロイだったのカ?」

「デストロイだったんだよ!」

「……マジかヨ」

 

カイはベルトと変身用の三つのキューブを手に取ったその時、またドアの外から声が聞こえる。

 

「全く…私の声を忘れてしまったのですか?」

 

その声の主人はそう言うと、許可もなくドアを開け、赤石邸に侵入して来る。猫の様な頭、コウモリの翼とフクロウの翼を背中に生やし、尻尾の先端が蛇の頭を模しているおぞましい全貌があらわになる。

 

「で、デストロイにゃあ!?ホントにデストロイにゃあ!?」

「チクショウ、この隠れ家がバレたのか!?」

 

赤石は左手で鍋の蓋の取っ手部分を持ち盾代わりにし、右手には調理器具のおたまを持って臨戦の意思を見せる。オメガも箸を持ちながら腰を低く落とし似非(えせ)格闘技の構えを取る。だが、侵入者は人間を遥かに超えた戦闘能力を持つデストロイであり、二人の武器ははっきり言って役に立ちそうにもない。

 

だが、カイにはこの侵入者に見覚えがあった。

 

「……ちょっと待って、もしかしてあなたは!?」

「コイツのこと知ってるにゃあ!?」

「うん、この人は昼間デストロイと戦ってた時俺の事を助けてくれた人だよ!」

「にゃあ!?コイツが!?」

 

「『コイツ』……ですか、私の事を忘れてしまったのですね、『明石』…」

 

デストロイが赤石の艦船少女をしていた時の名前を呼ぶ。その瞬間、デストロイから白い蒸気が吹き出し何も見えなくなるほどに部屋全体を蒸気が覆う。

 

蒸気が晴れていくと同時に先程までデストロイが立っていた位置には赤髪ショートボブの女性が立っていた。順当に考えれば、デストロイが人間の姿に変わったと考えるのが妥当だろう。

 

(デストロイは、人間の姿にもなれるのか…)

「お………おまえ………………」

 

赤石が震えながら赤髪の女性を指差す。どうやら少なくともこの女性の事を知っているらしい。

 

「『サンディエゴ』……にゃ?」

「ええ…お久しぶりです、『明石』」

 

 

………

 

「どーぞにゃ。こんなものしか出せないけど…」

 

そう言って赤石は水を注いだコップを机に置く。

 

「いえ、お構いなく…急に押しかけたのは私ですし…」

 

綺麗にお辞儀を返す赤髪ショートボブの女…赤石が『サンディエゴ』と呼んだ彼女も、赤石と同じく元艦船少女の一人だったらしい。

 

「…アンタ本当にあのサンディエゴにゃ?」

「先程もそう言ったはずです」

「そっか…『あの頃』のお前は少なくとも赤髪ツインテールでムカつくほど無遠慮な話し方をする奴だったんだけどにゃ…」

「フフッ、酷い言われようですね…さて、本題に移りましょうか。まず、『何故ユニオンの人間がここにいるのか』についてですが…」

 

ユニオンとは、科学と自由を重んじる連邦制国家の事であり、かつてセイレーンとの戦争の際、王政国家『ロイヤル』、軍事国家『鉄血』、そして君主制国家『重桜』と共にセイレーンと戦う国家軍事連邦『アズールレーン』を設立した国でもある。

 

サンディエゴは、そこに所属している。

 

「我が国のアトランタ空港にて、テロが発生した事を知っていますか?」

「ああ…確か自爆テロって奴だったかにゃ?6人死亡、2人が重軽傷で…」

 

「オメガ、『てろ』って何のこと…?」

 

カイがオメガに小声でそっと聞く。

 

「ハ?えーっと…」

「政権の奪取や撹乱・破壊、政治的・外交的優位の確立、報復、活動資金を獲得する、などといった政治的目的の為に暗殺・暴行・破壊活動などといった手段を行使すること、またそれを認める傾向や主張の事を『テロリズム』と言います、その『テロリズム』を略してテロ、と言うわけですね」

 

唐突にオメガを遮ってサンディエゴが解説を始める。辞典を思わせるようなきめ細やかな解説にカイは感嘆の声を漏らす一方、オメガは目つきを厳しくさせていた。

 

(コイツ…蚊が鳴くような声だったカイの言葉を聞き取っタだト…?)

「私、耳がいいんですよ…本題に戻りますが、自爆テロというのはウソです」

「にゃ?」

「出現したんですよ…三体の『デストロイ』が」

 

瞬間、空気が一気に冷たくなる。

 

「出現した三体のデストロイには通常の銃器はほとんど効果が無く、出動した警官にまで死傷者が出てしまう始末でした。その後どうにか拘束に成功し、『拷問(トリシラベ)』を行ったところ…」

「重桜出身者だった…ってところかにゃ?」

「察しが良くて助かります」

「でも、どうしてデストロイがユニオンに渡ってそんな事を?」

「その大事件が、重桜では捻じ曲がって伝わっている理由も分かんねーナ」

「それを調査する為に私はユニオンから渡って来ました」

 

デストロイと重桜政府、それぞれの謎に包まれた思惑にカイとオメガはただただ困惑するばかりであった、赤石は一回ため息をついた後サンディエゴを見つめ、口を開く。

 

「一つだけ…分からない事があるにゃ」

「どうぞ」

「何でオマエはデストロイになったにゃ?」

 

最初から赤石が聞きたいことはたった一つだけだった。アトランタ空港の事件の真相など今の赤石にとってはどうでもよかったのだ。『かつての戦友が何故怪物に身を堕としたのか』、赤石が聞きたいのはそれだけであった。

サンディエゴはコップに口をつけ、少しだけ水を飲む。そしてテーブルの上にコップを戻すと、ため息混じりに語り出す。

 

「重桜の『コトワザ』に、『毒をもって毒を制す』というものがありますよね?ユニオンではまだシーズドライバーのようなデストロイへの対抗手段を開発するに至っていないのです。ならばデストロイに対抗する術はたった一つ、デストロイ化。」

「それに選ばれたのがオマエって訳かにゃ?」

「…少し違いますね、私が『選んだ』んです。………アトランタ空港事件でデストロイに殺されてしまった『大切な人』の為に…ね」

 

そう言うと、サンディエゴは右手を虚ろげにかざす。その薬指には鈍く光る銀色の指輪がはまっていた。

 

「…あなたも、報復の為に戦うんですか?」

「カイ…?」

 

「デストロイも、自分達を支配してきた人間に反逆、つまり報復の為に戦っているってオメガに聞きました…俺、思ったんです。報復の為に戦っても、悲しいだけなんじゃないかって、だから…」

 

カイがそう言いかけたところで突然、サンディエゴが立ち上がり向かい側に座っていたカイの襟首を左手で掴んで引き寄せる。

 

「ちょ、チョット何してるにゃ!?」

「だから…報復の為に戦っている私は間違っているとでも…言いたいんですか」

 

サンディエゴの目は先程までの空虚な目つきとは違い、怒りに燃えていた。

 

「ぐっ……ええ、そうです」

「ふざけるな!」

 

サンディエゴは怒りのままにカイの頭をテーブルに叩きつける。その部屋中に轟音が鳴り響く。

 

「ッ……!!復讐の為にデストロイになる事を…その人は望んでいないはずです…!」

「お前に…!お前に私とあの人の何が分かる!私の事を分かってくれたあの人の為に復讐をする事が間違ってるだと!?記憶喪失の分際で全部分かったような口を聞くな!」

 

赤石とオメガはサンディエゴの剣幕に圧倒され、2人の戦いを止めることも出来ず、ただ見守っているだけであった。

 

するとその時、どこからともなくパチパチと手を叩く音が聞こえた。

 

「はい、そこまでだよ」

 

その時、サンディエゴの背後に音もなく二メートルはあろうかという金髪青目で黒い燕尾服に身を包んだ大男が現れる。

 

「……!夜見川(やみがわ)社長!」

 

サンディエゴは180度向きを変えて深々とお辞儀をする。

 

「全く…君は『あの人』とやらが絡むとすぐこれだ…念のために来ておいて良かったよ…」

「はじめまして皆様、ユニオンからサンディエゴと共に派遣された夜見川(やみがわ)清二(せいじ)。この名前は重桜(こっち)で活動する為の偽名だ。ちなみにこっちのサンディエゴにも峨山(がさん) 冷華(れいか)という偽名がある。そうそう、君達の名前を教えて貰えるかな?」

 

「……赤石 直子にゃ」

「……セイレーンΩ…オメガだ」

「……カイ…です」

 

突然現れた紳士風の大男、夜見川に自己紹介を促された三人であったが、その異様な雰囲気にあてられ、警戒心を解かずにはいられなかった。

 

「ふむ…どうやら僕にビビってしまってるらしい…オーライ!ならばその緊張をほぐしてあげよう!」

 

夜見川はズイッと言う擬音が聴こえてくる勢いでカイに詰め寄る。それから逃げるようにカイは身体を引く。

 

「キミ……名前はカイ…と言ったね?」

「は、はい…!」

「今から君に大事な質問をするとしよう…女性の一番魅力的な部位はどこだと思う?」

「はい?」

 

至極真っ当な顔をしながら心底下らない質問をする夜見川にキョトンとするカイ。尤も、カイは『そっち』方面の知識が全くと言っていいほど無い為、質問の意味をよく分かって無いせいでもあるが。

 

「ほら、あるだろー?顔とか胸とか手とか足とかさー!男なら誰でも持ってる『フェチ』ってやつだよ!」

「な、何ですかそ…」

「五つカウントするうちに答えろ!ファーイブ!フォー!」

 

カイの言葉を遮り、わざとらしく大声を出してカウントダウンを始める。

 

「えっ、ええっ!?」

「スリー!」

「手!手です!」

 

カイがやけっぱちになって叫ぶと夜見川がカイを見る目がまるで希代の天才を見るような目に変わり、女性三人は危ない人を見る目でカイを見ていた。

 

「……えっ、何ですかこの反応」

「………ハッハッハ!そうか!『手』か!変わった所に目をつけるんだな君は!」

「うワ……」

「そんな奴だったのかにゃ、オマエ…」

「ハァ……あの時助けない方が良かったかもしれませんね」

「ちょっと!?これ、どーいう意味なんですか!?これ!?」

「あー?意味なんて無いさ!だがこれで分かったろう?僕は普段こんなどうでもいい事しか考えないオジサンだってこと。じゃあ、本題に移ろーか!峨山君!書類!」

「ここに…」

 

テーブルの上にA4サイズの紙が軽く50ページ分はあろうかという厚さの冊子が乗せられる。赤石が冊子を開くと、そこにはデストロイの物と思しき顔写真がズラリと並んでおり、中には赤いインクでバツ印を付けられているものもある。

 

「それはデストロイのリストさ。バツ印が付いてるのは既に退治したヤツ。僕達はこいつらを倒して本国から報酬を貰ってる…んだけど、数が多すぎてね。協力を頼みたいんだ、デストロイへの圧倒的な対抗手段となり得るシーズドライバーを持つカイ…君にね」

「勿論タダでとは言わない、協力してくれたら本国からの報酬を山分けしよう…どうかな?」

 

「……分かりました」

「おや、決断早いねえ。じゃあこれを渡しておこうか」

 

そう言って夜見川が渡したのは、『夜見川新聞社 代表取締役 夜見川 清二』と書かれた名刺と四つのキューブ。キューブの内一つには『バイク』、残り三つには『スマートフォン』が描かれていた。

 

「この二つのキューブは、ドライバーにセットして使うとそれぞれ特殊なバイクとスマートフォンを出す能力を持っている、移動と我々との連絡に有効活用してくれたまえ」

「でモ、こいつ記憶ねーからバイクの運転なんてわからねーぜ?」

「心配はいらないよオメガ君、いわゆるオートパイロットってやつだ」

「ユニオンの技術ってすげーんだにゃー……」

「世界有数の軍事大国ユニオンを舐めてはいけないよキャットガールアカイシ?そうそう、重要な事を言い忘れてたんだけど…」

 

ビーッ!ビーッ!ビーッ!

夜見川の言葉を遮るように赤石のパソコンからけたたましい音が鳴り響く。

 

「デストロイ出現情報にゃ!?」

「赤石さん、場所は!」

 

パソコンの画面に駆け寄るカイと赤石。画面にはトウキョウのマップと8個の赤い点が映し出されている。この赤い点がデストロイの現在位置を示している。

 

「8体のデストロイが同時に…!?一番近い反応はここから北東600メートルにゃ!」

「っ!分かった!行ってきます!」

 

カイは家を飛び出し、三つのキューブを腰のシーズドライバーにセットする。

 

『LOCUST』

『MOTOR BIKE』

『WIND』

 

「変身!」

 

CCC(シーズ)!RIDE A CHANGE!』

 

カイの身体がシーズへと変貌を遂げたその時、カイのすぐ隣に緑色の光が集っていき、オートバイを形作る。

 

「早速僕がプレゼントしたキューブの出番のようだねえ!」

「これ、ホントにオートパイロット…何ですよね?」

「大丈夫だって!騙されたと思って乗ってみな!」

 

半信半疑でバイクの座席に跨るシーズ。その時、カイの脳内に響くように声が聞こえてきた。

 

『搭乗、確認しました。ようこそいらっしゃいやがりました、シーズ。現在地より一番近い、デストロイ、までオートパイロットを開始いたします』

「えっ、何この声…うわあっ!?」

 

シーズ本人の意思を無視してバイクは走り出す。

 

『精々、振り落とされないよう、しっかり掴まりやがってください』

「うわああああーっ!?」

 

バイクはどんどん加速し、シーズの姿はあっと言う間に見えなくなってしまった。

 

「さて…我々も仕事だ、峨山クン」

「ええ、六波羅(ろくはら)藍田(あいだ)に連絡したところ、彼らはもう既に現場に向かっているとの事です。」

「さすがに彼等は早いねえ…ところでカイ君が言っていたアレ…僕達もやってみないかね?」

「変身…ですか?意味が無いと思うのですが」

「いーじゃん!気合い入りそうじゃん!」

「ハア…分かりました」

 

峨山は、懐からキューブを取り出す。それはいくつもの立方体が無造作に組み合わさったような形をしており非常にで、もはや(キューブ)と呼べるかも怪しい代物だった。対して、夜見川が取り出したのは六面全てが黒く塗りつぶされたキューブ。二人はこのキューブを前に突き出すように構えを取る。

 

「……変身」

「変身!」

 

峨山は気だるそうに、夜見川がノリノリで掛け声を挙げると、二人の身体から黒いオーラのようなものが発生する。それが収まったと思われたその時、二人の身体は怪物に変わっていた。デストロイになったのである。

 

「よし、相手は多い!ここは別行動を取るとしようか!」

 

服装は変わらないものの、真っ黒な瞳と凶器のように尖った嘴が見るものを震え上がらせる怪人がデストロイとなった峨山に命令する。消去法と喋り方から考えてこの鴉のデストロイは夜見川である。

 

「了解…」

 

峨山は命令を受け取ると、驚異的なジャンプ力でビルの屋上を飛び移っていく。夜見川は翼を羽ばたかせて夜空へと消えていった…。

その一連の様子に、オメガは度肝を抜かれていた。

 

「なんだよあれ……あの夜見川ってヤツもデストロイだったのかよ…」

 

「うーん…どうにも気になるにゃ…」

 

そのオメガをよそに、赤石はパソコンの画面を睨みながら唸る。

 

「ア?何が?」

「このマップにあるデストロイの現在地にゃ…よく見るとみーんな『コンビニの所在地とまるっきり一緒』なんだにゃ…」

「あン?人が集まりやすいから狙っただけじゃねーのか?」

「うーん…?本当にそうなのかにゃ…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

16マート。コンビニエンスストア、略してコンビニの一つであり、この時間帯は仕事終わりの社会人や、学校の部活動が終わって帰る時間が遅くなった高校生など様々な年齢層の客が多く入る時間帯だ。

 

ところが、客は一人もいない。

 

店員は『多くの血を吹き出して横になっていた』……。

 

「グルゥ!グルルゥ!」

 

そこに、右手の鋭利な爪『だけ』が赤黒く染まった白い狼を模したような姿をしたデストロイが、血塗れになった店員など知ったことかと言わんばかりに一心不乱にレジの奥にある大量の『何か』を奪い取っている。

 

それは、人間には処理しきれぬだろうと言う量の『煙草』であった……。

 

「グル……」

 

狼のデストロイは満足げにその大量の煙草の箱を抱え、コンビニを出る。その過程で、店員が作り出した血溜まりを踏んだのだが、そのデストロイは気にも留めなかった。

 

「待て!」

 

その現場にシーズがたどり着いた。デストロイは瞬時にシーズを敵と理解し、抱えていた煙草の箱を全て投げ捨てて腰を低く落とし臨戦態勢に移る。

 

『LOCUST』

『KICK』

『WIND』

 

CCC(シーズ)!RIDE A CHANGE!」

 

負けじとシーズもキューブを入れ替え、両腕で八の字を作るように戦闘の構えを取る。

 

「グルルゥ………」

「…………!」

 

しばらくその状態で睨み合いが続く。その時、重桜政府がデストロイ発生を知らせる警報のサイレンが街中に鳴り響く。

 

「ガァァァァァァッ!!」

 

それを合図に、デストロイがシーズに飛びかかる。

 

「……………っ!!来いっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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