ガハマさん視点のお話です。
それではどうぞご覧ください。
Another view Yuigahama
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「ねえ…ヒッキー…聞いて…」
「なっ、何だよ、由比ヶ浜…」
「わたし、ヒッキーのことが好きみたい。よかったら、わたしと付き合ってくれないかな。」
わたしは、ヒッキーに、今の自分の気持ちをぶつける。でも、ヒッキーは、私の気持ちを分かってくれることはない。
だって、ヒッキーは、酷く優しい、わたしのヒーローだから。
ヒーローは、みんなを幸せにしなくちゃいけないから。
「由比ヶ浜、無理して俺みたいなやつとつきあう必要はないじゃないか。お前には、もっといい奴を選んで、幸せになる権利がある。」
「犬を助けたのだって、別にお前だから助けたわけじゃない。あと、お前が俺と付き合ってるなんてことになれば、被害を被るのはお前なんだ。それなのに、なんで…」
「他の人じゃダメなの。私は、ヒッキーが好きだからヒッキーに告白したの。だから、ヒッキーは、俺みたいなやつなんかじゃない。」
「だから、もう一度言います。わたしはあなたが好きです。わたしと付き合ってください。わたしだけの、ヒーローになってください。」
わたしは、ヒッキーに言い訳の時間を与えないように、さらに言葉を接ぐ。
ヒッキーは、とても優しい、わたしのヒーローだから。
ヒーローは、女の子を絶対に泣かせないから。
だから、あと一言踏み込めば、ヒッキーは、絶対に受け止めてくれると、確信していたから。
「やめてくれ、由比ヶ浜…」
でも、わたしはやめることはない。今を逃せば、チャンスはないことが分かっていたから。
ああ、私はずるい女だ。そして、とても我が儘で、馬鹿な女だ。
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いやな夢、みちゃった。
高校を卒業した私たち奉仕部員は、全員大学へと進学した。わたしは絶対浪人すると言われていたけれど、高校三年生の一年間、ヒッキーとゆきのんがつきっきりで勉強を教えてくれたから、無事志望校に進学することができた。でも、三人が集まってできた温かい空間は、大学進学とともに無くなってしまった。大学デビューしてから、いろいろなサークルに誘われたけど、どのサークルも、全然面白くなかった。恥ずかしそうに照れ隠しでヒッキーに文句を言うゆきのんも、嫌そうにしながらもわたしたちを受け止めてくれるヒッキーも、そこにはいなかった。
思えば、奉仕部の関係は、奇跡みたいなものだったのかもしれない。ヒッキーは教室ではだれとも関わらないようにしていたし、ゆきのんは国際教養科の高嶺の花だった。わたしのような、クラスのグループに所属しているような女の子には、とても贅沢な夢だったんだ。
わたしがヒッキーの本物を壊してしまった。壊れた器から流れ出た私たちの時間は、二度と戻ってくることはなかった。だから、わたしには、ヒッキーを求める権利はない。だから、ヒッキーのことはあきらめたはずなのに。ヒッキーのために染めた髪を黒く戻し、彼を忘れることができるようになったと思っていたのに。
わたしは、ずるくて、わがままで、馬鹿な女だけど。この気持ちだけは、今度こそ、伝えてはいけないから。本物は、求めてはいけないから。だから、私は、恋をしてあなたを忘れることにしました。ごめんね、ヒッキー。
今日は、わたしが新しい恋をする日。小町ちゃんに頼んで、今日の合コンに参加させてもらうことにした。小町ちゃんは、奉仕部のことも知っていたから、少し残念そうな顔をしながらも、快く受け入れてくれた。早く相手を見つけなきゃいけない。今日はしっかりしなくちゃ。いつものように支度をして、私は職場に向かうのだった。
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「結衣さん、おはようございます。」
「あら、小町ちゃん、おはよう。仕事でわからないことがあったら、遠慮なく聞いてね。」
「分かりました!結衣さん、ありがとうございます!」
大学を卒業して、都内の企業の事務に配属された私は、実家と職場を往復する毎日を繰り返していた。もともと奉仕部で培った経験もあって事務の仕事も手際がいいと評価されている。そのおかげか、新入社員の教育係を担当することになってしまった。そして、奇妙な縁もあるものなんだろう、私が担当することになったのは比企谷小町ちゃんだった。小町ちゃんは仕事もできて愛想も良くて、とてもいい子だ。私は、小町ちゃんと知り合えてよかったと思う。
このようにあれこれと考えていると、
「結衣さん、どうしたんですか、もしかして、夕方のことですか」
やっぱり小町ちゃんは優しい子だ。兄にわたしがしたことを分かっていて、こんなにも優しく私に接してくれるのだから。だから、私も、小町ちゃんにもう迷惑をかけることはできない。
「ううん、大丈夫だよ、もう私、ちゃんと決めたから。」
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仕事を終えたころには、かなり遅い時間になっていた。普段はまっすぐ家に帰る私は、小町ちゃん達といっしょに居酒屋に向かった。しかし、いざ店に入るとなると、どうしても足が強張ってしまう。私は、小町ちゃんの助けを借りて、店に入るのだった。
店に入って席に着くと、すぐに私は好奇の視線に晒される。やっぱり、私の体が目的なんだろうか。ヒッキー以外の男の人は、いつも私の胸ばかり見る。でも、わたしは、がんばらなくちゃいけない。ごめんね、ヒッキー。私は、どんどん溢れてくる後悔と怯えを我慢して、合コンを始めるのだった。
「それじゃあ、まずは乾杯してから自己紹介いきましょー!」
ああ、ついに始まってしまった。
自分のことで心がいっぱいな私は、目の前にいる男達のことなんて、まったく気にも留めていなかった。だから、私は、気づくのが遅くなってしまった。
ああ、なんてわたしは、馬鹿なんだろう。
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Another view end
次回の投稿は年明け2週目くらいになります。