星輝子と学ぶキノコ講座   作:一反目連

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15時限目 「荒木比奈とPseudotulostoma japonicum」

輝子「こ、こんばんわ……尊敬する人は森喜作、星輝子です」

比奈「こんばんは~、荒木比奈っスよ」

輝子「今日も皆が茸の面白さに触れて、少しでも興味を持ってくれたらな、と思って講義をするぞ……今日のお題はこちら」

 

『コウボウフデ』

 

比奈「コウボウフデ……その和名って、やっぱりことわざの『弘法も筆の誤り』から来てるんスか?」

輝子「だと思うな……コウボウフデ、漢字で書くなら弘法筆……ツチダンゴ科コウボウフデ属の不食菌で、夏から秋にかけて広葉樹林の地上に発生して……長い間日本固有種と考えられてきたキノコなんだ」

比奈「……違ったんスか?」

輝子「うん……詳しい話は後ほどするね」

 

輝子「幼菌は黄白色の球形から卵形で、成熟すると黄白色の表皮は破れてつぼに……そこから灰青色の柄を伸ばしていくんだ。そして、柄はある程度まで伸びると先端部から不規則に崩れてしまう」

比奈「……あっ、もしかしてその崩れた後の姿が筆っぽい見た目なんスか?」

輝子「その通り……周囲の自然環境や発育ステージによって子実体の形状に大きな差異が出るものの、筆っぽい見た目になるからと、菌類分類学者の川村清一博士がこの和名を命名したんだ。もちろん、弘法というのは弘法大師こと真言宗開祖の僧、空海のことだな……」

 

輝子「本種は長い間日本固有種であると考えられてきたんだけど……実は2000年に、南米ブラジル西部のパカラミア山で本種とよく似た姿のキノコが見つかったんだ……」

比奈「ほぉ、でもそんな騒ぎ立てることでも……? ブラジルっスか?」

輝子「そう。ほとんど地球の反対側と言っても良い場所で、同じ属のキノコが見つかった……それも、それ以外の場所では見つかってないのに、だ……これは凄いことだぞ」

比奈「そう言われると凄い気がするっスね……」

輝子「なお、以前は腹菌類と考えられていた本種……最近子嚢菌類と判定して、2004年に現在の学名であるPseudotulostoma japonicumになったんだ……学名のjaponicumは日本で見つかったからとかじゃなく、川村清一博士の功績に配慮しての名前みたい……」

 

輝子「ちなみにだけど、このキノコはとても希少であることで有名なキノコ……いわゆる『珍菌』というもので、環境省の絶滅危惧種にも指定されてるほどだ……」

比奈「マジっスか……」

輝子「正確に言うと……全国各地で採取可能なんだけど、連続して毎年発見される場所――『シロ』がとても少ないのが特徴なんだ。現在時点でほぼ毎年発生が確認されているのは、福島県・栃木県・富山県・京都府など日本全国でもごく少数……」

比奈「うーむ、中々やるっスね……あ、不食と言ってましたけど、毒は無いんス?」

輝子「分からないな……ただ、食毒を考えること自体が失礼なほど希少なキノコだし、不食となってるから味か食感に致命的な部分があるんだと思う……だから食べない方が良いと思うぞ」

 

輝子「今日の講義はここまで。この話で少しでもキノコに興味を持ってくれる人がいたら……う、うれしいな……」

比奈「今回は珍しいキノコの話でしたけど、次は美味しいキノコの話みたいっス。それじゃあ、ここまでお付き合いいただき……」

「「ありがとうございました」」

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