星輝子と学ぶキノコ講座   作:一反目連

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18時限目 「一ノ瀬志希とTuber」

輝子「こ、こんばんわ……尊敬する人は森喜作、星輝子です」

志希「はいはーい♪ ケミカルアイドル志希にゃんこと、一ノ瀬志希だー!」

輝子「今日も皆が茸の面白さに触れて、少しでも興味を持ってくれたらな、と思って講義をするぞ……今日のお題はこちら」

 

『トリュフ』

 

輝子「トリュフ……和名でセイヨウショウロ、漢字で書くなら西洋松露。セイヨウショウロ科セイヨウショウロ属のキノコの総称だな……」

志希「んー? 総称ってことは、トリュフにも色々あるってこと?」

輝子「うん……イタリアの『白トリュフ』と呼ばれるTuber magnatum、フランスの『黒トリュフ』と呼ばれるTuber melanosporum、日本だと『夏トリュフ』と呼ばれるクロアミメセイヨウショウロ――Tuber aestivumなど……トリュフと言っても色々あるんだ」

志希「そっかー♪」

輝子「志希さんのことだから、ある程度の知識はあると思ってたんだけど……」

志希「んー、あたしの専門は化学(ケミストリー)であって生物学(バイオロジー)ではないからね……特にキノコの話なら輝子ちゃんには勝てないなー♪」

輝子「そうなんだ……じゃあ、続けるね。トリュフは種類によって発生時期が異なっていて、夏に発生するもの、秋に発生するもの、冬に発生するものと様々なんだ。そしてヨーロッパ以外でも、アジアの中国や日本でも何種類か見つかってるみたい……」

 

輝子「トリュフの見た目で共通してるのは、かさ・ひだ・柄がなくて、歪んだ球状または塊状であること……そして、大理石状の模様を形成することだね。色は黒色やクリーム色だけでなく、赤褐色、灰白色のものも存在するみたい……」

志希「ふんふん♪」

輝子「そしてトリュフは、成熟するにつれてその特有の芳香が強くなり、老熟するにつれて弱くなるんだ……そしてこの芳香には、雄豚の交尾期に分泌する性フェロモンに似た物質――α-アンドロステロールが含まれているんだ。それが理由で古くからトリュフ探しに雌豚が使われてきたんだって……」

志希「なるほどにゃ~♪」

 

輝子「トリュフの歴史は、紀元前16世紀にまで遡るんだ……ギリシャの数学者にして哲学者、ピタゴラスが健康への効能を説いたのが始まりとされるよ……ただ、ローマ時代を過ぎるとトリュフは一度忘れられた存在となって――再び脚光を浴びたのは14世紀フランスからみたいだ」

志希「へぇ~」

輝子「そして1808年、フランスのジョゼフ・タロンという人がオークの木の下から集めたドングリをその根の間に播く方法を思い付き……トリュフの人工栽培が始まったんだ」

志希「……あれ? 人工栽培、できちゃうの?」

輝子「実はトリュフはマツタケなどと同じ菌根菌ではあるけれど、マツタケよりも栽培が簡単みたいなんだ。そして、このトリュフ栽培はフランスでtrufficulture(トリュフィキュルテュール)と呼ばれ、18~19世紀の一大産業にまでなった……」

志希「……実際、どのくらい採れたの?」

輝子「1892年のフランス全体でだったら……2000t以上、となってるね。1890年のトリュフ園の広さは750平方キロほどもあったらしいぞ……」

志希「あれ? その割には、トリュフは高級なイメージがあるけど……」

輝子「そう……20世紀に入ったとき、フランスの工業化とそれに伴う郊外への人口の移動が原因のトリュフ園廃棄、第一次世界大戦による男性の大幅な減少によるフランス田園地帯への打撃、さらに2つの世界大戦の間にトリュフ園の寿命が尽きたこと……それらの要因の結果、1945年以降のトリュフ生産量が急減し、現在20t前後の生産量になったんだ」

志希「えっ! そんなに減ったなんて……」

輝子「現在、トリュフの生産量を回復させようという試みはあるものの、地方の農家はトリュフの価格を下げてしまう大量生産への回帰へ猛反発してて……前途多難と言わざるを得ないな」

 

輝子「トリュフは種類によって香りが違う……だから、調理方法も変わってくるみたいだ。白トリュフのその芳香は極めて強烈で、生のままをスクランブルエッグやパスタ、サラダなどに削ってかけるやり方が主流であるのに対して、黒トリュフの香りは白トリュフのそれよりもはるかに刺激が弱く、新鮮な土やマッシュルームを彷彿とさせる……だからか、加熱して使われることが多いみたい」

志希「なるほどね~♪」

輝子「香りに差があるから、黒トリュフよりも白トリュフの方が高価になっていて……2007年に発見された過去50年間で最大級の大きさである、重さ1.5kgの白トリュフなんかはオークションによって22万ユーロで落札――当時のレートで、約3600万円になったほどなんだ……」

 

輝子「それと、最初にトリュフはヨーロッパ以外……中国や日本などのアジア圏でも見付かったって話をしたけど、実はトリュフは『ヨーロッパ種』と『アジア種』に分かれていると考えられていて……アジア圏で見つかる『アジア種』は香りが薄く、評価は低いみたいだな……」

志希「それは残念だにゃ~……」

輝子「それでも、もしも高級菌である白トリュフが、香りを弱めることなく人工栽培できるならば……それを為した人は、表彰されるであろう程度に偉業であることは間違いないな……」

 

輝子「今日の講義はここまで。この話で少しでもキノコに興味を持ってくれる人がいたら……う、うれしいな……」

志希「今回はとっても高いキノコの話だったけど、次はかわいい見た目のキノコの話なんだって~♪ それじゃあ、ここまでお付き合いいただき……」

「「ありがとうございました」」

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