輝子「こ、こんばんわ……尊敬する人は森本彦三郎、星輝子です」
まゆ「ふふふ、お久しぶりですね……佐久間まゆですよぉ」
輝子「今日も皆が茸の面白さに触れて、少しでも興味を持ってくれたらな、と思って講義をするぞ……今日のお題はこちら」
『ツキヨタケ』
輝子「日本の三大誤食キノコ……食菌と誤って食べ、中毒事故になりやすい3つのキノコ。その頂点に君臨するのがこのツキヨタケだ……フヒッ」
まゆ「それは……見た目が、食菌と似ているということですか?」
輝子「そうなんだ……ツキヨタケ、漢字で書くなら月夜茸。ツキヨタケ科ツキヨタケ属の毒キノコだな……夏から秋にかけてブナなどの広葉樹の倒木に発生して、国外でも韓国やロシア沿海州、中国東北部などで確認されているみたいだ……」
輝子「かさは扇形から半円形に開き、ときに不正円形をとる……そして、大きさは径10~25cmほどだ。色は成菌だと紫褐色から暗褐色で表面が蝋状の質感があって平滑、幼菌だと汚黄褐色で鱗片に覆われる……」
まゆ「はい」
輝子「ひだは汚白色で柄に垂生し、やや疎。幼時は黄土色をしているぞ……柄は、太く、長さは1.5~2.5cmと非常に短く、中実だ。基本的にはかさの縁近くにつく、偏心生だな……それと、上部に黒褐色の帯状つばがあるぞ」
まゆ「はい……わりと、地味なキノコなんですね」
輝子「よく似た食菌としてシイタケやムキタケ、ヒラタケなどが挙げられるな。どれも優秀な食菌として知れわたっているから、余計に誤食されるみたいだ……」
輝子「ツキヨタケの主な毒成分はイルジンSおよびイルジンM……イルジンSは15分間100℃の加熱を行っても15%しか分解されないうえ、水にある程度の溶解性を示すんだ。だから、鍋などにしたとき……汁だけでも中毒する可能性がある」
まゆ「キノコそのものを食べなくても中毒するんですね……」
輝子「このキノコを食べると、30分から1時間ほどで嘔吐・腹痛・下痢などの胃腸系の症状、重症の場合は脱水・痙攣……アシドーシスを引き起こすこともあるみたいだ」
まゆ「アシドーシス、ですか?」
輝子「アシドーシスは酸性血症とも呼ばれる……血液が酸性に偏る状態のことみたいだな。健康な人の動脈血中のpHは7.35~7.45と弱アルカリ性を保たれているみたい……」
まゆ「なるほどぉ……」
輝子「ツキヨタケは、少数ながらも死亡例も確認されてるから猛毒キノコと言えるけど……身体が衰弱しきっていたりしない限りは1本食べた程度じゃ死なないとは思う。ただツキヨタケは、地域によってその毒成分の含有量に差があるから過信は禁物だな……」
輝子「ツキヨタケの最大の特徴は、ひだに発光性があるということだな……」
まゆ「えっ、光るんですか?」
輝子「胞子を飛ばすまでの若い間、暗闇の中で青白く光るんだ……そこから月夜茸と呼ばれるようになったらしいな。あと、別名でも『ヒカリダケ』や『ヒカリゴケ』というド直球なものまであるし……」
まゆ「でも、光るなら食菌との誤食なんてしないんじゃ……」
輝子「ただ、この発光性はかさが十分に開いて2~3日ほどでピークを過ぎてしまう……それに、光るといっても本当にぼんやりとだから、暗闇に目が慣れた状態じゃないと発光してることに気づけなかったりもする……」
まゆ「そう、ですかぁ……ヒラタケなどの食菌とツキヨタケとの判別の方法って、他にはないんですか?」
輝子「裂いてみた時に根本の肉内部に黒い染みがあるならツキヨタケ、と言う判別方法もあるけど……これも染みが無かったら絶対安全とは言えなくて、ツキヨタケの個体によっては黒い染みが凄く薄かったりするんだ……だから、確実に判別したいなら専門家に頼むべきだな……」
輝子「ツキヨタケの別名は先程言った『ヒカリダケ』と『ヒカリゴケ』以外にも色々あって……青森の『カタハキノコ』、鹿児島の『カタハタケ』、秋田の『ドクアカリ』、岩手では『ドクキノコ』なんて呼び方もあるみたいだ……」
まゆ「本当に沢山あるんですねぇ……」
輝子「また、古典でもその存在が確認されていて……今昔物語集では『
まゆ「はい、今度調べてみることにしますねぇ」
輝子「今日の講義はここまで。この話で少しでもキノコに興味を持ってくれる人がいたら……う、うれしいな……」
まゆ「今回は不思議な毒キノコの話でしたが、次は美味しい食菌の話みたいですよぉ……それじゃあ、ここまでお付き合いいただき……」
「「ありがとうございました」」