輝子「こ、こんばんわ……尊敬する人は森本彦三郎、星輝子です」
美玲「お前ら久しぶりだなっ、早坂美玲だぞ!」
輝子「今日も皆が茸の面白さに触れて、少しでも興味を持ってくれたらな、と思って講義をするぞ……今日のお題はこちら」
『シャグマアミガサタケ』
輝子「シャグマアミガサタケ、漢字で書くなら赭熊網笠茸……フクロシトネタケ科シャグマアミガサタケ属の猛毒菌だな。おもに春に針葉樹林地上に発生するんだ……国外でも北半球温帯以北で確認されるみたいだな」
美玲「猛毒、なのか……」
輝子「うん。でも……種小名のesculentaは『食べられる』という意味なんだ」
美玲「へ? 猛毒ってことは、致命的な毒なんだよな? それが……食べれる?」
輝子「それについては、後程解説するぞ……」
輝子「このキノコは大まかに、類球状から不規則に歪む、著しいしわや大小の凹凸がある脳状の黄土褐色から暗赤褐色の頭部……それと下方に太く、不規則で大まかな縦じわや窪みのある淡黄褐色から肌色の柄で構成されてるな。頭部も柄も中は空洞で、肉は厚みがなく、弾力があって表面色と同色だな……」
美玲「う~ん……いまいち、分かりづらいな」
輝子「私も文章だけで伝えるのは、無理がある気がするな……検索をかければ画像は出てくると思う。少し、気味の悪い見た目だから自己責任で、な……フヒッ」
輝子「その毒成分はヒドラジン類の一種であるギロミトリンを主としているな……食べると7~10時間ほどで吐き気・嘔吐・激しい下痢と腹痛・痙攣などを引き起こし、重症の場合は肝障害や脳浮腫、様々な臓器の出血などをきたして……最悪、2~4日ほどで死ぬんだ」
美玲「ひえっ……どうしてこんな危険なものが、学名で食べられるってなってるんだよ!?」
輝子「それはギロミトリンの沸点が143℃と低く、沸騰水中では速やかに加水分解される……10分ほどの煮沸処理で99~100%分解・失活させることができるからなんだ……」
美玲「それはつまり、適切な処理をしたら食べれるってこと……なのか?」
輝子「そういうことみたいだ……ただ、煮沸処理で発生する蒸気にも毒性はあるから、うっかり蒸気を吸い込むと中毒起こすぞ……」
美玲「やっぱり危険じゃないか!」
輝子「このシャグマアミガサタケ、日本では基本的に食べられないけど……フィンランドではポピュラーな食材なんだって」
美玲「嘘だろ!?」
輝子「フィンランドではKorvasieni――『耳キノコ』の名で呼ばれ、毒性の明示と調理法に関する説明書きの添付を条件に、例外的に販売が許可されているみたいだ……缶詰でも売られていたりするみたいだよ」
美玲「その缶詰って、毒抜きは……」
輝子「されてる……ものもあるし、されてないものもある」
美玲「こ、怖い……」
輝子「フィンランドではオムレツ・バターソテー・ベシャメルソースの素材などで使われているみたいだ……勿論、調理法は調べれば出てくるけど、手順通りに出来る自信がないなら食べるべきじゃないな……」
輝子「地方名としては秋田の『ぐにゃぐにゃ』や『しわあだま』、東北で『しわもだし』……英名ならFalse Morel――『ニセアミガサタケ』やElephant’s Ear――『象の耳』なんて名もあるぞ」
美玲「ぐにゃぐにゃ、って……凄く分かりやすいような、抽象的すぎるような……」
輝子「それと、一応栃木県下では要注意種としてレッドデーターブックに載ってるみたいだ。だから、見つけたとしてもそっとしておいて、良いかもしれないな……」
美玲「そもそも猛毒菌だから下手に近づこうとも思わない気がするんだが……」
輝子「今日の講義はここまで。この話で少しでもキノコに興味を持ってくれる人がいたら……う、うれしいな……」
美玲「今回は食べれる猛毒菌の話だったが、次は言わずと知れた食菌の話だそうだぞ。それじゃあ、ここまでお付き合いいただき……」
「「ありがとうございました」」