輝子「こ、こんばんわ……尊敬する人は森本彦三郎、星輝子です」
奏「キスしてみる? ……ふふっ、冗談よ。速水奏よ」
輝子「今日も皆が茸の面白さに触れて、少しでも興味を持ってくれたらな、と思って講義をするぞ……今日のお題はこちら」
『クチベニタケ』
輝子「クチベニタケ、漢字で書くなら口紅茸……クチベニタケ科クチベニタケ属の不食菌だな。夏から秋にかけて広葉樹林の草地に接する場所や土の崖などに発生して……国外では中国の一部で確認されたみたい」
奏「口紅、ね……たしかにそれなら私が呼ばれるのも分かるわ」
輝子「この名前はその見た目の特徴から取られているんだぞ……フヒヒ」
輝子「直径1~2cm……大きくても径3cmほどの球体の形をしていて、球の頂点以外の大部分は黄褐色をしているんだ」
奏「頂点以外……? 頂点部分は色が違うのね」
輝子「そうなんだ。その頂点には真紅の星型があって、これが名前の由来になってるんだって……そして成熟すると、この星型の部分から球の内部に詰まっていたクリーム色をした粉状の胞子を噴出するんだ」
奏「そう……崖地に発生すると言ってたけれど、どうやって崖にくっついているのかしら?」
輝子「星型のある逆側……キノコの下部には『偽柄』という菌糸の束が複数本あって、それが土中に埋めて球を支えているらしいぞ」
輝子「クチベニタケは日本では珍しくない……比較的よく見られるキノコなんだけど、国外だと中国の一部のみでしか確認されない世界的にはとても珍しい種なんだ」
奏「そうなのね……」
輝子「うん。海外の研究者の中にはクチベニタケを見ると感激する人まで居るみたいだ……それと、キノコの中では長寿の方で――3ヶ月もキノコとしての姿を保つらしいぞ……」
輝子「ちなみに学名のCalostoma japonicumの意味は『日本の美しい口』――日本特産種で口紅のように綺麗に色付いた胞子の噴出口があるからだな……」
奏「ふぅん……」
輝子「近縁種にはタイワンクチベニタケやミナミクチベニタケが挙げられ……前者は西表島・台湾・ヒマラヤに、後者は東南アジア・屋久島に分布するみたいだな……」
輝子「今日の講義はここまで。この話で少しでもキノコに興味を持ってくれる人がいたら……う、うれしいな……」
奏「今回は口紅を塗ったようなキノコだったけれど、次は通好みの高級菌みたいね。それじゃあ、ここまでお付き合いいただき……」
「「ありがとうございました」」