輝子「こ、こんばんわ……尊敬する人は森喜作、星輝子です」
卯月「島村卯月です、精一杯頑張らせていただきます!」
輝子「今日も皆が茸の面白さに触れて、少しでも興味を持ってくれたらな、と思って講義をするぞ……今日のお題はこちら」
『オオワライタケ』
輝子「漫画などでワライタケの名前は聞いたことがある、そんな人もいるかもしれないな……」
卯月「えっと……食べると笑っちゃうキノコでしたっけ?」
輝子「詳しくない人は大体そういう認識らしいな……オオワライタケ、漢字で書くなら大笑茸。科は未確定、チャツムタケ属の毒キノコだな……以前はフウセンタケ科とされていたけど、今は撤回されてまだ決まってないんだ……」
卯月「そうなんですか!」
輝子「初夏から秋にかけて枯れた広葉樹、まれにウラジロモミなどの針葉樹の枯れ木にも生えるんだ。国外でも全世界的に見つかってるみたいだね……」
輝子「かさは半球状から平らに開き、色は黄金色から褐色で、中央部は色が濃くなっているぞ。そして、細かな繊維状紋に覆われるんだ……結構大型化してかさの径は5~15cmほど、ややまれに径20cmほどのオオワライタケが見つかって話題になったこともあったらしい……」
卯月「あ、ニュースで聞いたことがあるかもしれません!」
輝子「ひだは直生からやや垂生の、黄褐色から淡錆褐色。柄は下方が太く、中実……上部に黄褐色で膜質のツバがあって、柄のツバより上側は淡黄色、下側はかさより淡くて繊維状だな……長さは5~15cm、太さも6~30mmと柄の部分も大きくなるぞ。肉も淡い黄褐色で、強い苦味と汗臭いと形容される不快な臭気を放つんだ……」
卯月「全体的に黄色っぽいけど……毒っぽくは、見えませんよね?」
輝子「まあ、な……フヒ」
輝子「毒についてだが……先に言っておく。キノコはその地域地方によって、その内包する成分などに違いを表すことがあるんだ。だから、外国では食べられるキノコだからと言って安易に食べることはしてはいけないぞ……どうしても食べたい場合は、直接その国に行って食べるべきなんだ」
卯月「え、えっと……それは分かりましたけど、なんで今回の講義でそれを?」
輝子「このオオワライタケというキノコ……実は、ヨーロッパで発生したものでは、シロシビンが検出されたんだ」
卯月「シロシビン……?」
輝子「シロシビン、あるいはサイロシビン……中枢神経系に作用する毒で、幻覚剤に分類される成分……分かりやすく言うなら、『麻薬』と呼ばれるものなんだ」
卯月「えっ、ま、麻薬ですか!?」
輝子「このようなシロシビンやシロシンなどを含有し、幻覚作用を起こすキノコをマジックマッシュルームと呼び、2002年6月から麻薬原料植物として規制対象となり、これらのキノコを持ってるだけで麻薬同様、麻薬及び向精神薬取締法違反として処罰されることになっているよ……」
卯月「な、なんでそんな危ないものを紹介してるんですか!」
輝子「――とは言っても、日本で発生したもからはシロシビンを検出できず、マジックマッシュルームには指定されてないから、日本に居るかぎりはそこまで過剰に反応しなくても大丈夫だな……」
卯月「そうなんですか……良かったです」
輝子「オオワライタケを食べると幻覚作用が起こり、神経が異常に刺激されて、致命的ではないにしても非常に苦しいみたいだ。あと、食後5分から10分ほどでめまい、寒気、悪寒、ふるえなどの神経症状、多量に摂取することで幻覚、幻聴、異常な興奮、狂騒などの症状が出るぞ……名前の由来については、食べることで顔面神経も刺激され、顔が引きつって笑っているように見えるから、だって……フヒヒ」
輝子「ちなみに、よく似た名前のキノコでワライタケというのがあるんだけど……これは別に分類学的に近縁なわけではないみたいなんだ」
卯月「えっ、名前から近縁種だと思ってました……」
輝子「ワライタケはオキナタケ科ヒカゲタケ属に分類されていて、こっちの方はきちんとマジックマッシュルームに指定されているぞ。だから、見つけても採ったり食べたりしないようにね……」
輝子「今日の講義はここまで。この話で少しでもキノコに興味を持ってくれる人がいたら……う、うれしいな……」
卯月「今回は危険な毒キノコの話でしたけど、次はとても美味しい、食用のキノコみたいです! それじゃあ、ここまでお付き合いいただき……」
「「ありがとうございました」」