星輝子と学ぶキノコ講座   作:一反目連

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6時限目 「佐久間まゆとAmanita caesareoides」

輝子「こ、こんばんわ……尊敬する人は森喜作、星輝子です」

まゆ「こんばんわぁ、佐久間まゆです」

輝子「今日も皆が茸の面白さに触れて、少しでも興味を持ってくれたらな、と思って講義をするぞ……今日のお題はこちら」

 

『タマゴタケ』

 

輝子「優秀な食菌、タマゴタケ……私も一度食べたことがあるけど、中々美味しかった」

まゆ「へぇ、そうなんですかぁ」

輝子「タマゴタケ、漢字で書くなら卵茸……テングタケ科テングタケ属の食用のキノコなんだ……夏から秋にかけて広葉樹、針葉樹林の地上で発生するんだ。国外だと韓国や中国、セイロン、北アメリカなどで確認されているみたいだ……フヒ」

 

輝子「かさは幼菌の時は外被膜に包まれ卵状、そのあとまんじゅう形から中心部の盛り上がった平ら……これは中丘のある平ら、と呼ぶけど、そんな形をしてるんだ。色は鮮やかな赤から橙赤色で径6~18cm、周辺部に放射状の条線があって、かさの表面からは弱い粘性も確認できるよ」

まゆ「なるほどぉ……」

輝子「ひだは黄色で離生……柄は下方がやや太く、上部に橙黄色の膜質のツバが垂れ下がってる。基部には白い膜質のツボがあって、柄の表面はツバより上が平滑で黄色で、ツバより下には黄色地に橙黄色のだんだら模様があるぞ……それと、柄の長さは6~18cmで、中空だな。フヒッ」

まゆ「あまり、美味しそうな見た目ではないですね……というより、毒々しい色合いと言いますか……」

輝子「食べれるんだ、それが……」

 

輝子「このキノコは壊れやすいという特徴から一般に流通してないけど、優秀な食菌として世界中に知られているんだ。味は強いうまみがあって香りも良い……汁、煮る、茹でる、炒める、焼く、揚げる、色んな食べ方ができるぞ。私のオススメは炒める、または焼く、だな。茹でると煮汁に黄色が移っちゃうし……」

まゆ「わぁ、お腹が空いてきちゃいますねぇ」

輝子「このタマゴタケの近縁種に、セイヨウタマゴタケというものがあるんだけど、こっちは海外で『帝王のキノコ』なんて呼ばれるらしい……でも、タマゴタケを食べるとこの呼び名も納得しちゃうんだ……フヒ」

まゆ「人工栽培とかはしてないんですかぁ? 私も一度くらいは食べてみたいかなぁ、なんて……」

輝子「このタマゴタケは菌根菌とよばれるもので……植物とキノコで共生関係を築いている種類のキノコなんだ。だから、生きてる植物じゃないと生えなくて……こういう菌根菌は今の段階だと人工栽培できないと考えた方が良いみたいだ……」

まゆ「人工栽培ができないキノコ、ですかぁ……もしかして、マツタケもそうなんですか?」

輝子「うん、そうなんだ……ちなみに、タマゴタケの栽培研究は信州大学で進んでるみたいだね……」

 

輝子「このキノコで注意するべきなのは、ベニテングタケと誤食してしまうことなんだ……ベニテングタケのかさに付着してるイボは、雨で流されてしまうこともあるから、うっかり間違える人もいるみたい」

まゆ「そうですかぁ……それは、怖いですね」

輝子「ベニテングタケは柄が白くて基部のツボは環状、かさの周辺部の条線も短い……タマゴタケは柄が黄色のだんだら模様で基部のツボは膜質、かさの条線はベニテングタケのそれよりはっきりとしていて、少し長めなんだ……同じテングタケ属のキノコだけど、特徴を知っていれば間違えることはそうそうないぞ」

まゆ「なるほど、勉強になりましたぁ……」

輝子「それと、この際だから言わせてもらうけど、『鮮やかな色のキノコは毒』なんて迷信は信じないでくれ! この迷信のせいで『地味な色のキノコは食べれる』なんて勘違いをする人が出て、何件もの中毒事故が起きてるんだからな!」

 

輝子「今日の講義はここまで。この話で少しでもキノコに興味を持ってくれる人がいたら……う、うれしいな……」

まゆ「今回は美味しいキノコの話でしたけど、次はとても不思議な毒キノコみたいですよぉ。それじゃあ、ここまでお付き合いいただき……」

「「ありがとうございました」」


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