ボクはカルデアで生き残りたい。   作:LinoKa

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オルレアン2

 

 

竜牙兵の群れが襲い掛かってきた。それを見るなり、マスターは早速ボク達に指示を飛ばした。

 

「マシュは私と一定の距離を保って戦闘開始、マロとアストルフォは兵士の皆さんを守りながら迎撃!」

 

その指示に全員が返事をした。中々に妥当な判断だ。戦闘に関してはどちらかというと臆病なマシュを自分の近くに配置し、比較的に戦闘への恐怖が薄いボクや、英霊であるアストルフォを自由に戦わせるのは良いと思う。

それに追加して、兵士達を庇いながら、というのも悪くない。これから先、情報を得るのにこの兵士達からの情報は有益なものになるだろうし。

 

「よし、やろうか」

 

今回は手加減無しだ。ボッコボコにして追い返してやる。竜牙兵の群れに向かって、盾を構えながらホルスターから拳銃を抜いた。

3〜4発ほど狙撃したが、少し怯んだ程度で撃破には至っていない。だが、それで良い。隙を作るには十分だ。すぐに接近して、盾で殴り飛ばし、倒れた竜牙兵を上から盾で叩き潰した。

ふと顔を上げると、兵士達が竜牙兵に襲われているのが見えた。そっちに向かってたたき壊した竜牙兵の剣を拾って投げつけた。

投擲で竜牙兵をぶっ飛ばすと、好機と見た兵士は反撃し、何とか助かった。

直後、後ろからガギッと音がした。振り向くと、ボクの真後ろでマシュが竜牙兵を破壊していた。その後ろにはマスターも控えている。

 

「背中がガラ空きです、マロ」

「ご、ごめんね」

「お礼は後です。片付けましょう」

「りょ」

 

そんなわけで、周りの竜牙兵達を見回した。二人でマスターを挟んで、半分の盾を構える。

一匹の竜牙兵が剣を振り上げて襲いかかって来た。その剣を盾で受け止め、拳でボディを殴って退がらせた後に、縦の下の部分で顔面をブチ抜いた。

すると、後ろからマスターがボクの肩を叩いた。横から別の竜牙兵が襲いかかって来ていたので、右手でホルスターのピストルを抜いて怯ませ、顔面を盾で殴り飛ばした。

ふとマシュを見ると、ボクの後ろを眺めていた。そのマシュの後ろから敵が来ている。それだけで挟み撃ちされてるのをお互いに察し、マシュは盾の先端で姿勢を低くしながらボクの後ろに突きを入れ、ボクは盾を地面に突き刺し、身体を思いっきり上に振り上げて上から踵落としをお見舞いした。

ザッと辺りを見回し、残りは5体。右手のピストルをリロードしてると、マシュがボクの肩に手を置いて引き込みながら、横に回転しながら盾を振り回した。ボクの後ろの竜牙兵に盾による殴打を二発直撃させた。

 

「気を抜かない」

「ごめんね」

 

謝りながら、右から来た攻撃を盾で受け止めてピストルをぶっ放して怯ませると、武器を持つ竜牙兵の右手を蹴り飛ばした。ピストルをホルスターに引っ込め、宙に舞う剣を掴んで竜牙兵に振り下ろした。

お、これは伝説のあの技ができるのでは?そう思い、剣を構えると二人に叫んだ。

 

「マシュ、マスター!しゃがんで!」

「「えっ?」」

 

言われるがまま二人がしゃがんだ直後、剣と盾を360°に力付くで振り回した。残りの竜牙兵三体に直撃し、バギバギバギッと鈍い音を立てて粉砕した。

辺りを見回すと、竜牙兵の群れは粗方片付いていた。ようやく気が抜ける、そう思って剣を地面に突き刺して一息ついた。

 

「………ふぅ」

「ふぅ、じゃありません!危ないじゃないですか⁉︎」

 

マシュがボクの胸ぐらを掴んで来た。

 

「私は盾を持ってるからまだしも、もしマスターの反応が遅れたらどうするつもりだったんですか⁉︎」

「ま、まぁまぁ。勝てたんだし良いじゃん」

「良くありません!」

「お、落ち着いてよマシュ。私なら大丈夫だから」

 

マスターがそう言うと、マシュは渋々手を引っ込めた。

すると、横から聞き覚えのある声が割り込んで来た。

 

「二人とも息ぴったりだねぇ」

 

全部片付けて来たアストルフォが、少し感心したように言った。

 

「本当にサーヴァントになりたて?」

「まぁ、マロとはいつも一緒にいますから」

「ね、考えが分かるよね何となく。サーヴァントになって身体能力も上がって、なんか……こう、やりたい動きってのも出来るようになったし」

 

空中で半回転して跳び回し蹴りなんて普通の人には出来ないからね。

そんな話をしてる時だ。兵士達から「来たぞ!」と声が上がった。ふと振り向くと、ドラゴンの群れが飛んで来た。

 

「………は?何あれ」

「ドラゴン、だね」

「いえ、正しくはワイバーンです」

「なんであんなものが……」

 

間違いない、こんな時代にドラゴンがいるわけがない。いや、竜牙兵の時点で間違ってるけどね。

 

「あらー……どうすんのあれ?」

「ボクに任せてよ」

 

アストルフォはそう言うと、剣を鞘に収めて詠唱し始めた。

 

「キミの真の力を見せてみろ!『この世ならざる幻馬』!」

 

直後、何処からか鷲の頭と翼にライオンの身体の化け物、ヒポグリフが姿を現した。そういえば、この子ライダーだったな。

 

「すごい……」

「でしょでしょ?すごいでしょ?じゃあ、ボクはちょっと行ってくるから、二人はマスターを守ってて」

 

そう言いながら、ヒポグリフに跨るアストルフォ。マシュは仕方なさそうに引き下がったが、ボクはそうはいかなかった。

 

「待った、ボクも行くよ」

「えー、ヒポグリフ重たいから嫌だと思うよ」

「いやいや!ボク軽いからね⁉︎……マシュと違って余計な所に脂肪いかなかったし」

 

いや、まだ諦めてないけど。まだ十代だからね。まだ成長期はあるはず。

 

「アストルフォ一人じゃキツイでしょあの量は」

「そうでも無いよ?すぐ終わらせるから」

「いやいや!他の人への被害もあるしボクも乗った方が良いって!」

「変に食い下がってくるなぁ……。もしかして乗りたいの?」

「………」

 

そうとも言う。そんな答えが表情に出ていたのか、アストルフォはニマーッと意地悪そうな笑みを浮かべた。

 

「じゃあ、乗せてあげたら何してくれる?」

「こ、交換条件⁉︎それはズルいんじゃないの⁉︎」

「関係ないもーん。ねぇ、何してくれるの?」

「〜〜〜ッ!マスター!」

「いや、どっちでも良いから早くして。もう兵隊さん達は襲われ始めてるし」

 

グッ……!意外とドライだな、立花は。仕方ないので、交換条件を飲むことにした。

 

「分かったよ。後でなんでも一つ言うこと聞いてあげるから……」

「言ったなー?よし、許可しよう」

 

覚えてろよチクショウ。内心悔やみながら、マシュにボクの盾を渡した。

 

「はい、これ持ってて」

「へっ?マロはどうするのですか?」

「剣とピストルがあるから平気。地上にいられるわけじゃないから、いざという時のために持っててよ」

「わ、分かりました」

 

地面に突き刺しておいた竜牙兵の剣を抜いて、ヒポグリフの上に跨った。ふわあ……フカフカしてる……心地良い……寝ちゃいそう……。

 

「よし、行こう!」

 

直後、ヒポグリフは飛び上がった。一頭目のドラゴンに向かい、早速と言う感じで突撃。

 

「ちょっ、はっ、早くない⁉︎」

「まず一匹目!」

「待って待って待って!」

 

手に持っていた剣を投げ捨てて、アストルフォの腰にしがみついた。は、速い!思ってたより全然!泣きそう!何これ、どういうことなのこれ⁉︎

ただただ、涙目でアストルフォの腰にしがみついてること数分後、「マロ、マロ?」と声が掛かった。

ふと顔を上げると、アストルフォが少し照れたような表情でボクを見下ろしていた。

 

「……さ、流石にそこまでくっつかれると照れるなーって……」

「へっ?」

「も、もう終わったから離れてくれると嬉しいんだけど……」

「っ、ご、ごめんねっ」

 

慌てて離れて、ヒポグリフから降りた。ふぅ、いくら女の子同士でもあまりくっ付くのは良くないよね。

あー、怖かった。にしても怖かった。寿命が10年縮んだよ。今だに早鐘のごとく鳴り響く鼓動を抑えてると、マシュがボクの肩を掴んだ。

 

「ただいまー……って、どうしたの?」

「マロ、さっき持っていった剣はどうしました?」

「へっ?あー、いつの間にかどっか行っちゃったね」

「アレを見なさい」

「?」

 

マシュの指差す先を見ると、脚を開いて座り込んでるマスターの脚の間に突き刺さっていた。

……あれ、もしかして途中で手放したのがマスターに紙一重で刺さりそうになった感じ?

 

「………」

「マロ、今日は晩御飯抜きです」

「すみませんでした!」

 

ていうかマスターは大丈夫なの?なんか白目剥いてるように見えるけど。

そんな話をしてる時だ。兵士達の方から大声が聞こえた。

 

「逃げろ!竜の魔女が出たぞ!」

 

竜の魔女?何それ?

 

「今回の特異点の原因と思われる方です。処刑されたはずの彼女は蘇り、先ほどの怪物たちを呼び出してるそうですよ」

 

ボクの考えてることを見透かしてか、マシュが説明してくれた。

 

「ですが、聞いていた感じの少し違うのが気になりますね……」

 

すると、兵士達に怯えられている金髪の女性はボク達の方に歩み寄って来た。魔女、と言うのなら交戦の可能性もある。ボクは盾を構えつつ、ホルスターのピストルに手を掛けてマスターを庇えるように退がった。

アストルフォも同じように腰の鞘に収まってる剣をいつでも抜けるように手を掛けて、マシュの横に移動した。

金髪の女性は、マシュの前に立つと頭を下げた。

 

「あの、ありがとうございます」

「………はっ?」

 

ボクから声が漏れた。急にお礼?どういうわけ?

二人の会話に耳を傾けてるときだ。後ろから起き上がったマスターがボクの首を締め上げた。

 

「マロー!よくもやってくれたなぁ!死にかけたっつーの⁉︎」

「ぐえっ……!い、いまはぞんなばあいじゃ……!」

「ごめんなさいは⁉︎」

「ごめんなざいごめんなざいごめんなざい!」

 

締まってる締まってる!死ぬっつーの!ボク、肺活量そんな多くないんだから………!

 

「次やったら『私は貧乳です』って看板を首から下げさせるからね」

「………自分も大差ない癖に」

「何か言った?」

「ぐえぇ!ごめんなざいなんでもないです!」

 

そんなバカやってると、マシュとアストルフォと金髪の女の人が歩いて来た。

 

「先輩、こちらサーヴァント・ルーラー、ジャンヌダルクさんてす」

「ちょっと待ってね。こいつ今やっつけるか……今なんて?」

 

手の力が緩んだ隙に、ボクは咳き込みながら抜け出した。ジャンヌダルクって、竜の魔女になったとかいう………?

 

「とりあえず、付いて来てもらえませんか?詳しい話はそれからします」

 

言われて、ボクがむせてる間について行くことになり、砦から離れる事にした。

 

 


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