CEO「やっぱり高い買い物だったよ、思って思い切って正解だった」
エドワーズはジョセフのトラックの中で品物を見ながら悩んでいた。メインアームをもう1丁買うためである。行き当たりバッタリで見たは良かったが、いかんせん思いのほか高かった。
「おい若造。さっさと選びやがれ」
「貧乏人が迷う時間ぐらいくれ」
「4時間眺めて何言ってやがる、北海道のドミニクより時間掛かりすぎだ。俺が選んでやる」
見かねたジョセフは適当に選んだ。スイスB&T社のMP9サブマシンガン、イタリアフランキ社のPA8ショットガンを渡す。
「マケてやるからさっさと降りやがれ」
2か月分の報酬が飛んでいき、エドワーズは渋い顔をしながら事務所に戻っていった。
「戻ったか。お前が選んでる間に仕事が入ったぞ」
「犬探しの仕事よ。黒柴のわたあめちゃん、これ写真ね」
写真を渡され、準備を始めるエドワーズ。
「俺は密入国した麻薬カルテルの捜査任務があるから、エドワーズだけでやってくれ」
「私は記者の仕事で事務所を開けるわ。何かあったら連絡してね」
「了解した、ところで依頼人は?」
「有名喫茶店の主人だ。依頼内容を確認したいなら、店に寄ってくれ」
エドワーズは写真の裏に記してある住所をもとに移動。詳細を聞く。普段、人なつっこい性格なのだが、白人男性の客が来た際、珍しく店の裏に隠れ、帰るまでずっと震えていた。今朝散歩に行こうと思ったらいなくなっていたという。
「その客の写真、もしくは映像はありますか?」
「カメラはないんです。申し訳ない」
「他のお客さんはいましたか?」
「常連の、確か曜ちゃんもいたから彼女にも聞いてみたらどうでしょう?」
聞き込みを終えると、今度は渡辺邸に足を運ぶ。その門の前に見たことある犬がお座りして待っていた。
(あれは、わたあめ・・・どうして彼女の家で待ってんだ?)
門から曜が出てくる。
「わたあめちゃんだ、どうしてここにいるのかな?迷子になったの?」
彼女がわたあめを抱き上げたのを確認して声を掛ける。
「やぁ曜ちゃん、覚えてる?デビット・エドワーズだ」
「今度はデビットさんだ。何かありました?」
「実はその子を捜索してたんだ。今から依頼人の家まで一緒に来て欲しい」
「いいですよ?」
犬探しの仕事が想像以上に早く終わり、曜に失踪理由を話す。
「怖いお客さんがいたから逃げたって言うけど、何で私の家に行ったんでしょう?」
「それが判ればいいんだが・・・怖い客の特徴、覚えてる?」
「あの白人男性でしょ?金髪角刈りでスーツ着てたビジネスマン風の方でした、結構爽やかそうでしたよ?」
特徴を聞き出すとペンとメモ用紙を取り出し、似顔絵を書く。警察時代に似顔絵の訓練を受け、それをもとに事件解決へ導いたことが複数回あった。
「こんな感じ?」
「・・・そんな感じそんな感じ、似てますねぇ」
「スコットランドヤードで培った技術だ。忘れられんよ」
依頼人から報酬を受け取り、事務所に戻ることにした。
任務完了を報告し、似顔絵をケビンに見せる。
「これは?」
「わたあめの失踪した理由だ。なんでも、彼が帰るまで隠れてたって話だ」
「また来るんじゃないかって怯えてたんだな。かわいそうに」
ブラックリスト名鑑を開き、ひとりひとり照らし合わせる。
「二人似たような奴がいるな、パリ麻薬元締めのカルナックにブルガリアの裏商人のジュール。元締めが失踪したって情報は入って来ていないから、ジュールがこの町に来てる可能性が高い」
「そうと決まればアサルトライフルもしくはサブマシンガン携帯、宏美は引き続き警戒。警察にも知らせておこう」
「この街を火の海にする気か?」
「えっと・・・何の話してんの?」
宏美がタイミングよく帰ってくる。
「ちょうどいい、ジュールについて話しておくか。彼はブルガリアに巣くってる裏世界の商人、売り物は臓器・麻薬・武器はもちろん、誘拐してきた生きてる人間、ワケ有りの戸籍も売るクソッタレだ。しかもカリブに別荘立ててるイヤミな金持ち仕様ときた。ちなみに懸賞金3000万ドル、デカイ仕事だ。逮捕できなくても無力化すればブルガリア政府から報奨金がもらえるかもだ」
「なんかとんでもない奴が入国してきたわね。この国の入国審査は大丈夫かしら?」
「密入国なんて、やろうと思えばできるさ。っでだエドワーズ、何買ったんだ?」
PA8とMP9を見せる。
「いいもん買ってるな。・・・そういや、ロンドンで何してたんだ?」
「向こうじゃ銃携帯禁止だったから持ってなかった」
「UKより治安悪いのかよ日本って」
ジュールは内浦の田舎を歩いていた。もちろん、商品を入荷するためだ。しかし
(ここまで人間いないんじゃダメか。噂じゃとびっきりの美少女達が登校する学校があるって話なんだが・・・)
スマホを見てうなだれる。日曜日と表示されているからだ。
「当たり前か、日曜に学校行くことなんてないしな」
バスに乗り、駅前に移動する。アイドルショップを覗き見ると、赤い髪の少女を見つける。
(高級品発見。チビだし肉付きはいまいちだが素材がいい。さてと)
何食わぬ顔で入店し、少女に声を掛けた。
「こんにちはお嬢さん。ちょっとい」
少女は泣きそうな顔になり、ジュールの至近距離で特大級の悲鳴を上げ、物凄い速さで逃げ出した。両耳を塞ぎながら走って追いかける。
「(なんだと・・・人間にそんな声が出るのか!?別の意味でも逸材だ)話だけでもいいかな!ねぇ!」
聞く耳持たず少女は走っていく。10分ぐらいの追いかけっこをし、彼は諦めた。
(俺も齢ってか?こ、ここまで厳しい入荷は初めてだぜ)
周りも見渡し、気まずい空気になったことがわかると拠点の小さなホテルへと戻って行った。戻ってみると部下達が数名を人質にし、完全に占拠していた。
「ボス。潜入捜査の奴が混じってまして」
「ソイツをどっかに閉じ込めとけ、敵が突入するだろうから交戦準備」
部下からAKMを渡され、いつでも撃てるようにした。
事務所のドアをけたたましく叩く音が聞こえる。ジェリコを握りドアを開ける。
「ピギャ!」
入ってきたのは赤髪の少女だった。
「?君は」
「ルビィちゃんじゃない、どうしたの?」
宏美を見るなり彼女に抱き着いた。身体が震えているのがわかる。
「怖い外人さんに声掛けられた・・・追いかけられました」
「その人はどんな人?こんな人かしら?」
似顔絵を彼女に見せる。すると、思わず耳を塞いでしまうぐらい大きい悲鳴を上げる。鍛えられたメンバーですらめまいを覚えた。
「ビンゴだな」
「こりゃまずいが、さすがのジュールもこれには驚いただろう」
「もう大丈夫よ、怖いおじさんは絶対に捕まるわ」
優しく抱きしめ、ルビィを安心させる。
「・・・ごめんなさい」
「いいのよ、私もちょっと頭痛いけど平気だから。それよりもお母さんとお姉ちゃんに電話して、ここで泊っていって」
「気にすんなよ。奴は俺らが捕まえてやる」
警察から電話が掛かってきた。どうやらジュールの居場所がわかったらしい。ケビンとエドワーズはそれぞれの得物を握り、セダンを走らせた。
予想を超えた事態になっていた。交渉は難航しSATが突入したが、張り巡らされた罠によって殲滅し再突入が難しくなっている。ホテルは2ヶ所侵入ポイントの正面と裏口あるが、正面はもちろん裏口はすでに使用されたため入ることができない。だが、ケビンは地図と構造図を見て方法を思いついた。
「西側のトイレの窓が手動で開けられる。ちょうどビルの谷間だし、奴らの盲点だろうな」
「狭そうだがそこしかないな」
エドワーズをポイントマンに、ケビンが続く。事務所待機の宏美から連絡が来た。
「カメラはもうハックしたわ。セキュリティーの関係で数十分しか持たないけど、大丈夫よね?」
「あぁ。敵の数と人質は?」
「敵20に5人の人質。人質には一般人とブルガリアの捜査官がいるわ、気をつけて」
足音に気をつけて歩く。すると、ロビーの方から足音が聞こえる。エドワーズはPA8を向け、ケビンは彼の背中を守るようにR5を構えた。案の定、敵数名がケビンの向いている方向から現れ、R5の餌食になる。
「4人やった、そっちは?」
「こっちも3人。思ったより賢い連中だ」
エレベーターではなく階段で移動する。待ち伏せされたら危険なためだ。
15人倒したところで再び宏美からの連絡。
「ジュールは4階の413号室。このホテルがこじんまりしててよかったわね」
「大方片づけた、さぁメインディッシュといくか」
413号室の前で待機し、持ってきたC4をドアに貼り付ける。スイッチを押し、ドアが破られ、エドワーズはフラッシュバンを投げ入れたと同時に突入。待ち構えていた敵が眩しそうにしながら銃口を向けるが一瞬で撃ち抜かれ、制圧してみせる。ソファに足が引っ掛かり派手にコケたジュールは撃たれずに済んだがPA8によってAKMが破壊された。
「お前がジュールだな。一緒に来てもらおうか」
「き、貴様らは何者だ!?」
「・・・ただの傭兵だ、ちょっと強いけどな」
ジュールを捕らえその日のうちに強制帰国に成功し、トライデント・アウトカムズはブルガリア政府から多額の懸賞金を受け取り、今まで買えなかった装備や訓練施設建設に当てることになった。ケビン達も普段より多くの報酬を受け取るのだった。