浦の星女学院に新しい理事長が就任した。まだ全校生徒に挨拶していないらしく、我先にと千歌と曜、梨子は理事長室をノックする。
「はーいどうぞ」
男性の声だった。3人はそろって入室する。齢は食ってるが無駄な脂肪のない身体の黒人男性が笑顔を見せて迎えてくれた。
「ハーイ。僕が新しい理事長、ロバート・ハミルトンだ。よろしくね」
「あ!この前のおじさん!」
「あ・・・あぁ~君らはケビンのとこに入り浸ってる、千歌ちゃん達Aqoursのメンバーじゃないか」
「え、えへへ・・・でもどうして理事長に?」
「いやね、ブローノの営んでる学校がピンチって聞いて出資したらさ、理事長してくれって頼まれちゃって」
「ブローノ?」
「ブローノ・ルチアーノ。今は小原ブローノって言ったらわかるかな?小原鞠莉のお父上だよ、僕の部下だった男でもあるんだ」
「「・・・え!?」」」
ロバートは感慨深く思い出話をしてくれた。
「シールズの現役だった頃、ソマリアで仕事があったんだ。僕が観測手で彼がスナイパーの2人制の狙撃任務があってね、アイツさ外して位置がバレた時はホント死ぬかと思った。彼らは鉛玉はもちろん、爆弾やロケットランチャーをぶっ放してきて、もう生きた心地はしなかったよ。帰ってきたらもう上官がカンカンでさ、減給されちゃったんだ」
(((げ、減給で済んだんだ・・・)))
「他にもいろいろあったけどさ、彼は何故か小原のお嬢様と結婚して資産家として生き、僕はPMCを立ち上げて業界でも1,2を争う規模にまで成長させた。娘のボディーガードには元シールズばかりなのは、そんな出自が理由なんだ」
聞いてもないのに他人の家事情を話すロバート。一息つき机に座るとシグP226を懐から取り出し、メンテナンスを始めた。
「なんか探偵さんも急に銃のメンテナンスするけど、理事長もするんですね?」
「あぁ。本職はこれがなけりゃやってられないからね。君達もアナコンダ事件を忘れたわけじゃないよね?」
「あれは・・・」
「この国にもああいった危険な連中が不法入国する時代だ。君達はああなってはいけないよ、もちろん、僕達みたいな連中にもなっちゃダメだ」
メンテナンスを終え、懐にしまう。
「さて、そろそろ授業じゃないのかな?急ぎなさい」
「そうでした!理事長先生、また今度!」
笑顔で見送ると経営者の目に戻り、予算案及び新事業の計画書に目を通すのだった。
その頃、宏美は自分の部屋で買ってきたアニメDVDを見ていた。
(友達のところで見てたんだけど、やっぱいいわね。7人の個性豊かな男に囲まれて一緒に戦っていく少女。最初はなかなか馴染めなかったけど、過ごすうちに深まる絆・・・アァ~ン、カ・イ・カ・ン)
旦那のケビンは自分の部屋で新しく買ったレースゲームを楽しんでいた。
(前作販売から13年ずっと待っていた、音速超えたレースゲーム・・・動体視力が鍛えられるな)
何故このようなことをしているのか、久々に休みにしたからである。事件の頻度も東京時代より少ないかつスピーディーに解決できるためだ。
「いけ、ブーストファイヤー!」
「ちょっとケビンうるさい!いいところだったのに!」
今までではありえない、和気あいあいの空気。この日はこのような感じで時間が過ぎていった。
仕事を終え、帰ろうとしようとしたその時、何者かがドアをノックする。
「理事長先生、いいですか?」
「どうぞ入りなさい」
「えへへ、来ちゃいました。早速ですけど、シールズって何?」
「それなのにわかったみたいに頷いちゃったのか・・・アメリカ海軍の特殊部隊で、世界最高峰の実力を有したエリートだ。僕達は上陸任務が多くてね、そこから人質救出から敵への襲撃、破壊工作等を行う。訓練も厳しかったのなんの」
「えぇっと・・・物凄いって言うのはわかりました。理事長先生も軍人さんだったんだ」
「僕の最終階級は大将。すごく偉い人だったんだけどさ、オフィスに座って書類を見つめるのが嫌になってね、名誉除隊してPMC立ち上げたんだ。もう歳だけどトレーニングは続けてんだよ」
「なんかすごいなぁ。Aqoursで頑張ってたのが小さく感じる」
「そんなことない。僕と違って君達は人々に勇気と笑顔を歌とダンスで届けているじゃないか。とてもじゃないけど真似できないよ。・・・おっと、もう時間だ。明日来てくれたらちょっとした昔話をしてあげよう」
ロバートは学院をあとにし、ケビン達に重要書類を手渡し用事を済ませた。
一番短い話、だと思う