深夜。浜竹と共にクルーザーを調べることにした。彼を先に行かせ、R5を装備し辺りを警戒する。
「(異臭がひどいな。まだ体液が残ってんじゃないか)誰にも言ってないよな?」
「当たり前だ、一番勘の鋭い日野下さんは警察に連れてかれたから問題ないよ」
「言ったらアンタもやられるぞ。このクルーザーごとドカンだ」
「その・・・銃なんて簡単に手に入るのか?」
「拳銃なら簡単なルートで手に入る。ライフルやマシンガンは難しいがな」
ラウンジの箱を開ける。中には食品と共に、ケースに入った弾薬が大量に入っていた。
「え!?ど、どうして」
「見せろ。これは45ACPだな」
「そうか凶器の弾がここに」
「早とちりだ、弾の種類が違う(45ACPか、好んで使うのはアメリカ人ぐらいだ。サンズが使うとは思えん)」
普通食品と共に入れないハズのものがそこにある。弾を入れた人間は素人か真犯人しかいない、ケビンはそう思いながら捜査を続行した。しかし目ぼしい証拠は何一つ出なかった。
夜が明けてケビンは車の隅々まで確認し爆弾が仕掛けられていないことがわかると、宏美から電話が入る。
「ケビンどうかしら?」
「容疑者以外の生徒は実家に帰ってるらしいし、邪魔こそいないからな。まぁ時間が掛かりそうだ」
「そう。あ、そうだ、十千万の放火事件が少し進展したの。板前さんがスポーツバック持って出てきたの千歌ちゃんが見てたんだって」
「ソイツの顔は?」
「残念ながら見てないわ」
「そうか。エドワーズは?」
「武装して警戒に当たりながら調査してる。ティブロンの斥候を逮捕したわ」
「何か吐いたか?」
「CEOが尋問したおかげで、面白いことがわかったわ。あのスクールを拠点にしてるってことをね」
「やはりか。実はな、クルーザーの中に45ACPが見つかった。確実にハンマーヘッドはいる」
「わかったわ、頑張ってね」
電話を切り、M629に持ち替える。
「おいおい大丈夫か?」
「日本人の尋問は直線的でいい気分になれる」
正面からサンズが現れた。かなりやつれていることから、相当事情聴取が長かったと思われる。
「どうしてアンタほどの男が、あんな奴の下についたんだ?」
「・・・車内で話は出来るか?」
サンズを助手席に座らせ、話を聞くことにした。
「さて、アンタが聞きたいことなんだがな。私は軍を退役後、ガイドの仕事をして稼いでいたんだが、同時に秘密諜報員としてテロを警戒していたんだ。ハンマーヘッド候補の群島が俺に近づいてきたのはチャンスと思ったさ、なにせ指令が来たからね」
「アンタはキューバのスパイってところか」
「まぁ007とはいかない。多くの青少年を見殺しにしてきたんだ、罪悪感が無いと言ったらウソになる。私と組んでハンマーヘッドを捕まえて欲しい。祖国のためだ」
「・・・いいだろう。だが、ゴーストが入国してるから気をつけろ、表立って動くのも禁止」
「よし、成立だな」
「最後に質問だ、どのように武器を新調してるかわかるか?」
「私もわからん。張り込んでみるしかない」
調査3日目。北上と栗森に聞き取り調査を行う。
「まず栗森さん、群島に提出した意見書は、給与向上のものと言っていましたが?」
スーツを纏ったあごひげが目立つ男が豪快に答える。
「おうよ。群島先生は教育に熱心な割には金銭感覚が非常にケチで、残業手当含めて20万しかもらってない。これじゃ職員もやる気なくして指導できん。だから意見書を出したんだが、内容も見ずにゴミ箱へ捨てられたよ」
実際にゴミ箱から彼の書いた意見書が発見されている。
「北上さんは炊事番みたいですが、どんなものを食わせてんのです?」
身体の太い男が答えた。
「みなさんの食べているものと同じものです。しかし、教員全員は高級品を召し上がっていましてね、おかげで不健康でした。彼にも健康的なものを食べてもらおうと質素で栄養価の高い食材をピックアップした書類を提出したんです」
(しかし、よく腹立たないで続けたな)
評判とは裏腹にえげつない行為をしてきたのが見えた。栗森が意味ありげな証言をする。
「そう言えば筑前の野郎、実家はどこなんだ?」
「え?」
「以前、元々住んでいた住所が気になって訪ねたはいいんだ、そこはよぉ更地になってんだ」
「何時ぐらいから更地になったか知ってます?」
「10年前に更地になって買い手がいないって近所の婆さんが言ってたな。貧弱なくせに先生に意見するし他の職員からも不評だった。3年前は真面目な生徒だったんだがな」
住所不明の筑前という少年。彼が何故、豹変したのか興味を抱いた。
「きっかけはありましたか?」
「知らん。特別親しい生徒もいないって話だしな」
ケビンは彼に会うため捜索に向かおうとすると、背後に長袖を着た細身の16歳ぐらいの青年がいた。
「筑前!お前脱走を謀ったな!」
「僕の住んでた場所はもうないんでここの寮にいましたよ。どうします?」
本当に16とは思えないほど冷静な少年。右手が血色ないことに気がついた。
「右手は動いてないけど、どうしたんだい?」
「この前、海上訓練の授業で脱臼しまして。動かないんです」
「本当かい?明らかに作り物の右手なんだけど?」
「・・・探偵さんの言う通り、これは義手です。ですが腕は本物ですよ」
見せびらかすように右手を外した。ネジ式になっており、外そうと思えば外せるようになっている。
「しかし、あのじいさんより賢明そうな方だ。他の方は盲目に信仰してるのに」
「貴様何言って!?」
「栗森さん、落ち着きましょう。どうやら君に殺しは出来そうにない、本質が臆病だ。だからこうやってわざわざ俺の目の前に現れたんだろ?」
「・・・ちっ、これだから大人は。もういいさ、僕は寮で寝るよ。じゃ」
堂々と立ち去って行く彼を見送った。ケビンは彼に対して違和感を覚える。袖から尾びれの刺青が見えたからだ。
(彼に違和感がある。それは、彼が非常に臆していないこと。普通、人を殺めたのならすぐに逃げ出して姿をくらますが、彼はそんなことをしていない。このパターンは逃げきれる自信があるからだ、拳銃も見つかっていないしな。だが彼は持っていないだろう、どこかに捨てたんだからな。だとしたら何処が一番隠しやすいか)
ケビンは北上に質問した。
「事件のあった日、仕込みは終わってましたか?」
「校長先生の部屋を出て、すぐに調理を始めたんですが・・・なぜか既に献立が出来ていたんです」
「心当たりは?」
「そう言えば、筑前君が率先して手伝ってくれます。入校からすぐに手伝いを進んでしてくれて助かっていますので」
「調理場へ案内してもらっても?」
北上に案内され、調査を始める。鍋の中や排水溝、果ては冷蔵庫も開けて調べた。先生用と書かれた冷蔵庫を調べると、長さ70センチ・厚み10センチほどのローストビーフを見つけた。
「教員用の献立です。事件のあった日に作ったものです」
不自然な切れ込みに気づいたケビンは、冷蔵庫から取り出して切れ込みに手を入れた。すると、サプレッサー付きのPPKが出てきた。
「な!?」
「え!?」
「とんだ宝が出て来たな」
ケビンは確信した。誰が実行犯で誰がハンマーヘッドかを。
次回、対決