合計人数400名のうち
軍関係70%
警察関係20%
その他10%
その他の内訳。多い順に、教師・記者・整備士がいる
ケビンは役所に海苔田弟の死亡届を提出し、事務所に帰ると自分のテーブルの上にチョコチップが練り込んであるスコーンが置かれていたを発見する。
「帰ったかケビン。俺特性のスコーンでも食ってくれ」
「ありがと、そういやお前どうすんだ家?」
「近くにアパート借りて通勤するんだ。おかげで帰ってきたら早速大家さんに心配されてね」
「そっか。早々すまなんだな」
少し昔のことを思い出していた。東京時代もこうやって少しづつメンバーが増えていって、4人で仕事することが多かったことを。
「そうだケビン、紅茶は切らさないでくれ。ロンドンじゃ欠かさなかったからな」
「安心しろ、俺も紅茶派だ。専門の店で買って美味しく淹れてる・・・どうして大家さんはお前の顔知ってんだ?」
「実は大学時代、大家さんのところにホームステイしたんだ。だからその好でね」
ものの数分後、例にもよって見覚えある女子高生3人が事務所に入ってきてくつろぎ始めた。
「あ、あの、お嬢さん達?」
初めてみるエドワーズは困惑し、あたふたする。
「?なんですか?」
「ここってさ、特別警備会社の事務所だって知っててやってんの?」
「知ってますよ?探偵さんも問題なさそうですし」
「そうじゃなくってさ、そう、他の依頼人のこと考えたことある?」
「まあまあそう言ってやるな。彼女達もわかってるだろうしさ」
女子高生3人組のリーダー格の千歌は遠慮なくテーブルのみかんに手を伸ばした。
「あ!そういえばお兄さん誰?」
「・・・デビット・エドワーズ、ここの職員だ。君達は高海千歌・桜内梨子・渡辺曜、だったね」
「すごいよ!有名になったんだね私達!」
「雑誌の表紙になってるのに知らないわけがないだろ。それはいい、くつろぐついでだ、スコーンでも食っていけ」
持ってきたスコーンを振る舞い、3人に食べさせる。とてもご満悦な顔を見たエドワーズは思わず安心したのだった。
ドアが開く音が聞こえる。若い日本人男性だ。
「ここがトライデント・アウトカムズの事務所でしょうか?」
来客に気がついた3人組は気を利かせ外に出る。
「そうですが?」
「ここはなんでもしてくれる事務所ですよね?」
「我々ができる範囲なら」
「彼を見つけていただきたい」
懐から写真を取り出す。人混みの中を歩く、眼鏡を掛けた真面目な雰囲気の男がいた。
「尾田和人。テールファイナンスの社長で裏では多くの不法労働を斡旋しているクズです、高校生だった妹は奴の毒牙にかかりレストランでバイトを始めてから3ヶ月後行方不明になった・・・」
「妹さんの写真はあります?」
黒のセミロングで笑顔の似合う制服姿の少女が写っている。
「尾田さん、この依頼引き受けます。ですが、望むような結果にならない可能性が高い仕事です。報酬は後払いで結構。これにサインをお願いします」
契約書にサインする。名前を見てケビンは落ち着いた口調で質問した。
「本藤充彦、ですか。職業は法学部の学生25歳。証明のため学生証の提示を」
学生証カードを見せ、顔写真と照らし合わせる。
「これをお返しいたします。ちなみにどなたから尾田の写真を手に入れたのですか?」
「写真が好きでして、ビル前で待ち伏せして撮ったんです。カメラも持ってます」
肩に掛けていた銀色の専用ケースを開け、一眼レフカメラを見せる。
「・・・わかりました、あとのことは我々に任せてください」
本藤は納得した顔で事務所をあとにする。
「さて仕事だ、駅前のバス停付近にあるようだな」
「しかしケビン、俺はどうも気に入らん。本当に学生か?」
「違うだろうよ。カードは薄いがカメラは本格的、おそらく記者だな」
時間差で宏美が帰ってくる。
「ただいまケビン、さっき事務所から出てくる知り合いとすれ違ったんだけど?」
「彼は記者か?」
「そ、そうだけどどうしたの?」
先ほどの経緯を話す。
「本藤ちゃんがウチにねぇ・・・妹がいるのは本当よ、彼女は確か浦の星女学院に通ってるって話」
「え?・・・外で待ってる3人に聞いてみよう」
3人組の話によれば彼女は同級生らしいが最近姿を見ないらしい。特に変わった様子はなく、突然休学が知らされ驚いたらしい。
「(休学、か。それも気になるが)ねぇ、変なアルバイトを紹介してくる人、見たことない?」
「うーん・・・確か、喜子ちゃんが眼鏡の男性に声掛けられて、怖くなって逃げたって話聞いたことあるような・・・」
「ふむ。その喜子ちゃんをここに呼べる?」
「ダメだと思いますよ、怖がっちゃうから」
仕方なく津島邸に宏美を派遣することにした。幸いなことに梨子も同伴してくれるらしく、アポを取って情報を集めることにした。彼女の母親らしい女性に案内され、自室前に立つ。
「喜子、入るわよ」
ドアを開けると黒い悪魔をモチーフにした衣装を着た少女が現在進行形で動画を撮っていた。自分達に気がついたのか大急ぎで閉めようとするが母親はそれを阻む。
「ちょっと開けなさいよ!」
「ヨハネ!」
「喜子ちゃん、話があってきたのよ。変なアルバイトを紹介する男の人の話」
宏美が目的を告げると嘘のようにドアを開けてくれる。
「紹介が遅れたわね。菊地宏美、トライデント・アウトカムズの情報収集担当よ」
「つ、津島喜子です」
目が泳いでいる。
「あぁでもね、銃は持ってないの。だから安心して、ね?」
「あ、はい。・・・先日、バスに乗って帰っていたら、黒のスーツ姿の男性が座ってきて、気さくに話しかけて来たんです。ちょっとした雑談だったんですが降りようとしたら手を掴んできて、折られたA4の紙を握らされたんです、怖くなって急いで帰って・・・」
「その紙、まだあるかしら?」
机の引き出しを開け、それを宏美に見せる。書いてあったのはアルバイトの求人票で内容は倉庫の掃除だった。畳8畳分の広さで1棟6万円という、なかなか良い稼ぎに見える。
「場所は・・・伊豆の別荘地か。確かアクセスが悪いし、今は春だから人は来ないわね。急いで逃げ出してよかったわ」
「でもどうして人が避けるような宣伝をしたんでしょう。普通、勧めるなら連絡先を聞くとかもっと甘い言葉使って推してくると思うんですが」
「うーん。ちょっと不思議よね、確かに。こういう行動したら普通、寄って来ないと思うんだけど」
愛用のカメラを手にふと窓の外を見る。すると、路地裏にスーツ姿の男がこちらを見ていた。風景を撮るフリをして男を撮ると、気がついたのか急いで逃げていく。
「マヌケね。こちらに戦闘員配置するよう頼むから安心していいわよ」
「あ、ありがとうございます・・・でも写真撮れてます?」
画像を見るとフェイクで急に動かしながら撮ったためかかなりブレている。
「・・・やっちゃった・・・」
一旦事務所に帰り、画像の処理をすることにする。
「追っ手がいたのか?とりあえずエドワーズ派遣したけど、何があった?」
「スーツ姿の男がいたの。撮ったのはいいけどしくじっちゃって」
「直せそうか?」
「えぇ。PCは任せて」
「俺は心配だ。エドワーズが上手くやってるといいけどな」
ところ変わって津島邸にて護衛任務に就いたエドワーズ。家族とは仲良くやっていたが肝心の喜子とはうまくいっていない。
「えぇっと、俺はどうすればいいの?」
「あ、あまり近づかないでほしいです・・・」
「勘違いされちゃ困るよ、俺達全員が粗暴ってわけじゃないんだ。君が以前頼んだ時に来たオマルがちょっと乱暴だっただけで」
「ででででででも銃持ってんじゃないですか!」
「仕事道具だよ、元警官だからそんなに撃たないって」
一般的な感覚なら、元工作兵だったオマルより、警官だったエドワーズの方が安心できると言っていい。故に彼女の怯えようは異常に感じる。
「ね、俺も宏美さんも君の味方だ、絶対に裏切らない。必要以上に近づかない」
「ほ、ホント?」
「あぁホントだ。だから安心してほしい」
外から大きな物音が聞こえ、外へ出る。ジェリコを抜き狭めの庭から裏側まで探すが何もない。
「何もないな、気のせいか?」
気を取り直し喜子のもとに戻る。
「ひとつ質問していいかい?アルバイトの内容はこの内容だけかな、他の人のは知らないかい?」
「ほ、他にもあったかもしれない。わかりません!」
「そっか。ケビン達に知らせよう」
高額バイトの種類を調査するため、ケビンはあえてバスで浦の星女学院に向かった。怪しい人物が乗っている可能性があるからだ。
(特に問題ないようだが・・・釣竿ケースにR5入れてきて正解だった。違和感がない)
最寄りのバス停に降り、登校中の生徒に聞き込みをする。得られた情報はバス通学してくる子に声を掛けていたこと、内容は清掃から荷分けまで様々だがどれも伊豆の別荘地に向かっていること、声をかけてきたのは男性だけでなく女性もいたこと、常に単独ではなくペアでいたことだった。
(エドワーズの話によると相手は一人だった。つまり、尾田とは関係はあるが敵対する人間の可能性が高い。だったら何者か。まだわからないが、現時点では本藤の可能性がある。それに)
バス停にスーツ姿の男女が待っている。女の手にはA4サイズ紙を挟む大きさのファイルがある。
「ちょっといいか?」
「?なんでしょうか」
「オタクらは何者なんだ?こんな片田舎にはふさわしくない格好だが?」
「伊豆にある、瓜輪広告の者ですが」
「瓜輪・・・知らないな。ここに求人票を出しにきたのか?」
「えぇ、終わりましたから帰ろうと」
ケビンは男の懐を見て大きく出た。
「その求人ってのは伊豆の別荘地で倉庫の掃除やウエイトレスのバイト求人じゃないのか?」
具体的な内容を聞いた男は懐に手を入れ、サバイバルナイフを取り出した。
「少なくともカタギじゃなさそうだな。来いよ、遊んでやる」
ケビンもファイティングポーズをし、厳戒態勢をとる。鋭い突きや横切りを躱し、右腕を掴んだかと思えば投げ飛ばし、倒れた相手を勢い良く蹴飛ばした。男の口から汚物を噴き出している。
「説明してもらおうか。拒否権はない」
「えぇっとその、あの・・・」
宏美に迎えに来てもらい、女から事情を聴く。瓜輪広告は最近できた企業らしく、社長の尾田の正体もわからないという。しかし、ガムテープを口に巻かれ手足を拘束されトランクに積まれた同僚の男はカタギではなかったらしい。
「出入りしている人間の特徴は?」
「なんて言ったらいいんでしょう、とても品の良い人間ではなかったですね。マフィアみたいな人達、でしょうか?」
「・・・伊豆は観光地だ、外国人がいてもおかしい話じゃないが頻繁にとなると別だな。アンタは消えた方がいい、危険なにおいがする」
「え、で、でもやっと就職できた」
「いいのか、スケープゴートにされて二度とシャバに出れなくなっても?」
「とんずらします」
会社の場所を教えてもらい、そこで張り込みを行うことにした。結果、観光客に扮したマフィア連中が出入りしていることが確認され、その日の晩に突入作戦が実行されることとなった。敵戦闘員は全滅、主要人物は尾田を除く数名死亡、残り全員は逮捕された。ちなみに津島喜子は特別警備会社に対しての印象が変わったとか変わらなかったとか。
今年もよろしくお願いします。