元ネイビーシールズのトライデント・アウトカムズCEO
ロサンゼルスの古いアパートで独り暮らしを満喫している
経営の幅を広めるためか、某女学園に多額の出資をするだけでなく、補助金として高校受験を援助する活動を始めた。結果、廃校を撤回させるまでに至るミラクルを引き起こしたのだった
この日、特に案件がないため、朝の日課である訓練を終え、ようやく業務に移る。書類仕事に掃除、紅茶などの消耗品の買い出し、暇さえあれば銃のメンテナンスをし、1日が終わろうとしたその時、依頼人が事務所を訪れた。
「あのぅ、少しよろしいでしょうか?」
「?き、君は確か」
異動前に何度か会ったことのある黒髪ロングが非常に似合う少女、黒澤ダイヤがいた。
「あの事件以来、家族一同お世話になりました。探偵さんには感謝しかありませんわ」
「あぁあの蔵爆発の件からだったね。今日はなんの用?」
「三上さんはご存知ですよね?」
「彼がどうした?」
「事故に遭いましたの。何者かに跳ねられたのです」
「なんだと!?」
南村の件で世話になった人物が、今度は何者かによって重傷を負わされいた。
「何時なんだ?」
「昨日の23時ですわ。帰宅途中、左から」
「左か・・・」
彼女から続きを聞くと、無灯火の車が突っ込んできて交差点を渡ろうとした三上が跳ねられたらしい。ブレーキ痕がないことから端から殺すつもりだったことがうかがえる。
「見た人間はいないのか?」
「夜ランニングされている方が発見しまして、その方が通報して下さったそうです。すいませんそういうことしか」
「そうか。三上さんに家族は?」
「独身です。両親もいらっしゃらないとか」
「・・・法律事務所の場所は?」
「駅の南口にあるビルにありますわ。そこから、黒澤家に通ってますの」
(通いだったのか・・・さぞかし大変だろうな)
翌日。入院中の三上から鍵と許可を得て事務所を訪れ、彼が請け負っていた案件を調べてみる。机に置いてあった資料から、昇学園被害者の会の弁護士として動いていたことがわかる。
(まだあったんだなこの案件。まだ学校法人あるのかが微妙だが)
ふと足音が複数聞こえる。机に身を隠し、スーツに隠していたUMP-9を取り出す。
「ここが赤尾先生の顔に泥を塗らんとする輩を弁護する人間の事務所か・・・証拠を探せ。そして足跡を残すな」
「その必要はない」
UMP-9を構えながら現れ、清掃員姿の男達を無発砲で抑える。
「全員手を上げ壁に張り付け。さもなくば撃つ」
「き、貴様はケビン菊地!?」
「何故そこまでこの件に首を突っ込むんだ?もう赤尾はいない、元警官に殺されたんだぞ」
他のメンバーはそそくさと壁に張り付いたがリーダー格の男はせず、ケビンを前に堂々と振る舞う。
「あの方は絶望した若者に未来を与え、日本の行く末を憂いていた。だからこそ泥を塗る輩に天誅を下す。それがカラスの役目だ!」
「(カラス・・・神の使いって言いたいのか?)じゃあ廃人になり得るマジックマッシュルームを栽培し大儲けしたことも導いたって言いたいのか?」
「それは・・・」
黙りこんだ。都合が悪くなったのと同義語と捉え、尋問を続ける。
「この任務もアレを吸うなり飲むなりして挑んでんのか?」
「アレはなくなったさ。前ので使い切った」
「(前だと?)何時無くなった?」
「それは言えない」
男の右肩と左足を撃つ。
「もう一度言う。最後は何を成すために使った?」
「し、処理任務だ。三上を消すために使ったんだ!」
都合が良すぎる。そう脳裏に横切るが、今一度冷静になる。
「最後だ、お前ら仕事は何してんだ?まさかカタギの仕事して真っ当に働いてるって言うんじゃないだろうな」
またしてもだんまり。あの男の元で育ったのだから当たり前とも言える。
「まぁいい、この会話はウチの事務所に転送されて証拠になる。切り札を失ったな」
数分後、警察が到着し連行されていく。ふとリーダー格の男が笑みを浮かべるのが見えたが見ていないフリをした。
(今度は俺にターゲットを絞ったってか?)
必要な資料と証拠をダンボール箱に入れ、自分の事務所に持ち帰った。
箱の中身を確認していると、ケビンにとって興味深い資料を発見した。
「昇学園、否、赤尾を守る部隊は複数いる模様。ひとつはカラス、彼らは街に紛れて諜報を担当。フクロウはネットなどで誹謗中傷する書き込みを監視、時にサイバーテロを行う。現在解散した模様。最後にハゲタカ、彼らが最も危険と言っていい部隊だ。常にカラスと共に行動し敵対した人間及び脱走した生徒の確保や拷問、果ては暗殺も担当している。・・・この資料からして、三上さんはハゲタカって連中に襲われたらしい。エドワーズ」
「奴らもカタギに化けて三上氏を襲撃する。入院先に向かって護衛をしよう、病院関係者の学歴資料を頼みます宏美さん」
「問い合わせるわ。ケビンは?」
「俺も俺で調査してみる。各自で動いてくれ、宏美は特に気をつけるんだぞ」
それぞれ任務に戻り、ケビンはM629に持ち替え昇学園跡地まで向かった。
地元民によると、今までと違って静かになり過ごしやすくなったものの、時々ではあるが夜中にスーツ姿の連中が昇学園を悪く言うな、赤尾を評価しろと忠告してくるらしい。写真は無いため住人の協力を得て、ホームステイの学生と受け入れ先の家族という設定にして待ち伏せすることにした。太陽が沈みきり、星が良く見える深夜。何者かが激しくノックする。
「はーいどちらさま?」
「お前だれじゃ、ここに住んでる婆さんはいるんか?」
とても礼儀正しいとはいえないガラの悪そうな男が玄関に入る。ケビンはとぼけた声で答えた。
「今寝てますよ、もう日付変わる時間なんですけど・・・」
「わかっとるわ!タレコミがあったから来たんじゃ!赤尾先生が亡くなられてせいせいしたって言った婆さん家がここって聞いて来たんじゃ、どかんかボケ!」
「まぁ大変ですねぇ。訪問時間を考えない人間を育てた教育者を悪く言うなと・・・そりゃ無茶ですね?」
途中から普段の口調に戻りM629を抜き、男の眉間に向ける。当然男は腰を抜かしてしまう。
「おおおおおお前だれじゃ、何もんじゃワレ!」
「ただの学生だ。アメリカのライターはすごいぞ、火も着くし頭も吹き飛ばせる。さっきからうるさいその頭、ザクロにしてやろうか?」
悲鳴とともに男は逃走、乗ってきた車を走らせ逃げようとするが44マグナム弾に似せた発信機を車のバンパーに撃ち、弾を通常弾に入れ直した。
「さっき銃声が聞こえたけど大丈夫か?」
「ごめんね婆ちゃん、俺の方が近所迷惑だったみたい。これ、息子さんやお孫さんに使ってください」
謝礼として100万円の金額が書かれた小切手を手渡し、男を追跡することにした。
発信機から発せられる情報をもとに追跡すると内浦にある、今は使われていない廃倉庫で停まったのがわかる。少し離れた場所で止め、R5にサイガ12を装備し徒歩で向かう。入り口にはCR21アサルトライフルを装備した兵士がいるのが見える。
「あの方は何故亡くなられたのだ、マジックマッシュルームなぞ嘘に決まってる、誰かの陰謀だ!」
「先生に恨みがある人間は多いぞ。どうする気だ」
「決まってるさ、囲って刷り込ませる」
今回、サプレッサー付き装備を持っていないため、木の陰から動くか否か観察する。一人が裏の方へ向かったためトレンチコートを羽織って武器を隠し、酔っぱらったフリをして兵士に近づく。油断した隙に豹変し気絶させ、身を低くして裏に続く道へ進む。腰ほど草木が生い茂っていたため匍匐で進む。先ほどの兵士が帰ってきたのを確認すると背後から忍び寄り拘束する。
「言え、お前らはハゲタカか?」
「それを知ってどうする・・・」
「コリをほぐしてやるから言え」
「い、今はいない。○○病院へ向かった」
用済みと判断し首のコリと人生のコリをほぐしてあげた。倉庫へ入り、警戒しながら進んでいくと先ほどの不審車両や弾薬箱、暗殺に使われるであろう薬剤が保管されていた。休憩室らしき部屋にフラッシュバンを投げ、雪崩れ込み一気に制圧してみせた。
「こちらエドワーズ、謎の武装集団に襲われたが鎮圧した。三上氏は無事だ」
「主犯格はどうした?」
「逮捕した、あとは尋問だけだ」
「了解。任務完了だ」
こうして、赤尾の置き土産は全て消滅することとなった。彼は死してなお、一般人を苦しめていたがそれも終わりを告げる。裁判は被害者の会側の完全勝利となり、昇学園は倒産するのだった。その様子をテレビで見ていたケビンは昼飯のうどんを啜った。