精霊使いの剣舞 〜偽る剣舞姫〜   作:パカロー

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お久しぶりです。
なお今話はなぜなに剣舞祭はおやすみです。
では楽しんでください。


第12話 討伐! 巨人精霊

 

封印を破った巨人精霊(グラシャラボラス)は封印されていた石柱から姿を現し闘技場へと足を踏み入れる。

 

「ちょっと失礼するわね」

 

「ふぇ、レン様?!」

 

「しゃべっていると舌をかむわよ」

 

巨人精霊が石柱から出てくるのと同時に破片も飛んできたため、すぐに動けそうにないクレアを抱えて観客席まで避難する。さいわい石柱がそれほど大きくなかったため飛んでくる破片の量も少なく、楽に回避できた。レンは巨人精霊から離れた観客席に着地し、抱えていたクレアをおろす。おろした際にクレアの顔がすこし赤くなっていたのでどこか怪我をしたのかと心配になり声をかけた。

 

「顔が赤いけどだいじょうぶ?」

 

「(・・・・・・レン様にお姫様抱っこしてもらえるなんて)」

 

声をかけるがどこかボーっとしているクレアを見て少し心配になったが怪我はなさそうなので巨人精霊に向き直る。

 

「クレア」

 

「は、はい!なんでしょうか」

 

今度はちゃんと返事してくれたことに安堵したレンはクレアここで待機するように指示する。

 

「これから私はあの巨人精霊を討伐するからあなたはここでまってなさい」

 

「レン様一人では危険すぎます!私も・・・」

 

途中で言いよどんだクレアをみてレンは否定の言葉を告げる。

 

「今の自分の状態は理解しているでしょう。そこまで消耗したあなたではまともに戦うことはできないわ」

 

「ならせめて風精霊騎士団(シルフィード)が来るまで待ってください。一人では危険です」

 

クレアのその言葉をきいてレンは首を横に振った。

 

「だめよ。あの巨人精霊はなぜか狂乱しているから騎士団がくるまでまっていたら巨人精霊は町に出て暴れるわ。それに、もう待ってくれそうにないわよ」

 

「え?」

 

ウォォォォォォォオオオオ

 

クレアが疑問の声を上げた瞬間、巨人精霊がおたけびを上げた。

その咆哮は空気を揺らし、今まで封印されていた恨みをこめたような咆哮であり、またどこか狂ったような咆哮でもあった。

 

「完全にお目覚めね。時間もないからそろそろ行くわよ」

 

「レン様!」

 

クレアの不安な叫びを聞いてレンは安心させるために自信に満ち溢れた声で言う。

 

「大丈夫だから安心して待ってなさい。私は、レン・アッシュベルなのよ。たかが軍用精霊くらい楽に討伐してみせるわ」

 

そういしてレンと巨人精霊の戦闘がはじまった。

 

 

巨人精霊に近づいたレンに対して巨人精霊は左手を振り上げてレンを叩き潰そうとする。

当たればぺしゃんこになるそれをレンは右へと避けた。叩きつけた衝撃で破片が飛んできたがかまわず左手を斬りつける。しかし巨人精霊はたいしてダメージを負ったわけではなくかまわず攻撃を続行。叩きつけた左手をそのままレンへとむけ、なぎ払う。レンはジャンプしてそれをさけ、避けるついでに自分の下を通る手を斬り付けた。その後もレンに巨人精霊の攻撃は当たらず、レンは巨人精霊を斬り続ける。一見レンの有利に進んでいるがレンの表情は厳しいものだった。

 

「(このデカブツ(巨人精霊)タフすぎる。このままじゃ倒す前にこっちの神威がきれる)」

 

ここに来てレンの弱点である火力不足が露呈した。レンは真実の剣という精霊魔装を失ったために三年前と比べ火力が大幅に低下している。ここ三年間は劣化した絶剣技や精霊魔術で補えており、かつ対人戦がほとんどだったのでレンの技量でどうにかなっていた。また、レンは術士ではなく剣士なので精霊魔術の火力もそれほど高くはない。

そして巨人精霊は見た目通りタフなので低火力のレンとは相性が悪い。レンがいくら斬ったとしてもその巨体に傷はつけれるが大したダメージにはなっていない。その上今まで狂乱した精霊を相手にしていたため神威の残りも少ないため絶剣技などの大技を放てば気絶する可能性もある。それはレンにとっては避けなければならかった。

だが、手がないわけではなかった。

そして、レンがつぶやいた。

 

「そろそろ仕掛けようかしら」

 

 

 

レンと巨人精霊の剣舞を闘技場の観客席で見ていたクレア・ルージュはただ圧倒された。巨人精霊のなにもかもを潰すという圧倒的なパワー、それをすべて紙一重のところでかわし、逆に切りかかるレン。今の自分では絶対に届かない領域にいるレンの剣舞に見とれていた。

そして見とれると同時に疑問が浮かぶ。

 

「(なぜ、精霊魔装を使わないんですか、レン様)」

 

クレアは優秀な精霊使いである。ゆえに技量で圧倒しているレンが巨人精霊と拮抗している原因が火力不足だということにも気づいていた。そして火力不足の原因が精霊魔装を使わずに精霊魔術で創った魔剣を使っているからだと。三年前、レンの手にあった最強の精霊魔装、真実の剣(ウォーパルソード)。それさえ使えばレンの火力不足も解決されて一気にレンへと戦況が傾く。真実の剣でなくともこのまえに契約した魔王殺しの聖剣(デモンスレイヤー)と思われる精霊でもかまわないだろう。剣精霊なので精霊魔装も剣タイプのはずなのだから。それをしないということにクレアは疑問を持った。

 

「(レン様が契約精霊を使わない理由・・・・・・)」

 

契約精霊がいるのに使わない、そんな出来事が最近なかったか(・・・・・・・・・・・・・・)

そこまで考えが及んだとき、クレアのなかで一つの推測が浮かび上がる。

 

「(まさか、契約精霊を使わないのでなく使えないの! あのレン様が!?)」

 

そのことに思い至ったクレアはまさかと否定する。大陸最強の精霊使いであるレン・アッシュベルが契約精霊を使えないなんてことがあるはすがない。だが一度浮かんだ考えは頭から離れることはなかった。

 

「(もしそうだったらあのときに言った言葉は)」

 

無謀にも魔王殺し聖剣を挑んで助けてもらったときにレンに言われた言葉をクレアは思い出し、本当の意味で理解した。三年前、レン・アッシュベルは大陸最強の座にいた。しかしそれは強力な契約精霊がいたからこそだ。現在、契約精霊が使えないレンは大陸最強とは呼べないだろう。それでもレンは契約精霊がいない状態で大陸最強に限りなく近い所にいる。下手をすれば契約精霊が使えない状態の今でも大陸最強と呼べるほどに強い。それほどレン・アッシュベルという精霊使いは強かった。学院生を秒殺といえる早さで倒し、封印されていた高位の剣精霊とわたりあい、魔精霊を討伐し、今もまた軍用精霊である巨人精霊を討伐しようとしている。契約精霊が使えない状態でそれほどの強さを得るにはいったいどれほどの過酷な修練をしたのか。そしてなにがレンを支えていたのか。クレアはその答えをすでに知っていた。

 

「精霊使いわね、精霊と信頼関係を結んでちゃんと修練すればいくらでも強くなれるものよ、か。私も、強くなれるのかな?」

 

「にゃお」

 

不安そうにつぶやいたクレアを抱かれていたスカーレットが励ますようにかわいらしくないた。

 

「そうよね、スカーレット。なれる、じゃなくてなるしかないのよね」

 

クレアは決意し、盗める物はなんでも盗むといった姿勢でレンと巨人精霊の剣舞に見入る。それからほどなくして巨人精霊が咆哮した。

 

 

 

グォォォォォォオオオオオオオオオオオオ

 

いくら攻撃してもかわされ、逆に反撃される始末に巨人精霊は怒りの咆哮をあげ。レンに襲いかかった。

 

「(巨人精霊は精霊とはいえ構造は人間と似ている部分が多い。なら弱点も人間と同じはず)」

 

レンをたたきつぶそうと振り下ろされる左手、それを跳躍してかわし、巨人精霊の腕に着地して今度は巨人精霊の顔まで跳躍。そして跳躍と同時に魔剣をふた振り創り、巨人精霊の目に突き刺した

 

グォォ、ォォオオオ。

 

巨人精霊が苦痛の悲鳴をあげるがかまわず突き刺した魔剣を足場にして再び跳躍する。頭上まで跳躍したレンは巨人精霊にとどめをさすべく精霊魔術を詠唱した。

 

「『闇より来たれ、死を運ぶ剣――――――<闇魔爆刀(ノクト)>』」

 

レンの詠唱と同時に巨人精霊の頭上に一振りの魔剣が出現し、巨人精霊へと頭へと突き刺さり、爆発した。

 

「これもオマケよ『影すらも焼き尽くせ――――――<暗黒の炎(イビルフレイム)>』」

 

追加として放たれた黒い炎弾が巨人精霊へと命中し、巨人精霊のいた場所はもうもうと煙が立ちこめた。

 

「(これに耐えられたらもう無理だけど、さすがに大丈夫よね?)」

 

レンの不安は的中せず、煙がはれた場所には何も残っていなかった。

 

「これにて巨人精霊討伐完了っと」

 

レンは一息ついて制服についた砂埃を払おうとしたが制服の惨状をみて一言つぶやいた。

 

「……この服、どうしましょう?」

 

レンの着ていたアレイシア精霊学院の制服は砂埃で汚れており、袖やお腹部分も一部、破れていた。レンの着ていた制服は巨人精霊との戦闘で飛んできた闘技場などの破片はさすがのレンも避けきれなかったようでボロボロになってしまったのである。

 

「(……とりあえずグレイワースに換えの制服を用意してもらうか)」

 

ついでにミニスカートはスースーして苦手だからロングの特注品にしてもらうかとか冬服はロングだったらそれで代用できるかなとかいろいろ制服について考えていた。世界に名をとどろかせた黄昏の魔女も今のレンの中では便利なサイフという認識である。あわれグレイワース。

 

そうこう悩んでいるうちに観客席に避難していたクレアがレンの所までやってきた。

 

「レン様、大丈夫ですか」

 

「ええ、服はこんな有様だけど大丈夫よ」

 

よかったとつぶやいたクレアは少し緊張した顔つきでレンにいう。

 

「レン様、すみませんでした」

 

突然謝罪されたことにレンは困惑した。

 

「ク、クレア。いきなりどうしたの?」

 

「あたしは、とても未熟です。自分が弱い理由を精霊に押しつけました。そしてレン様にそのことを指摘されても目を背けて逃げ出しました」

 

たぶん、クレアにとって大切な話をしているのだろうと理解したレンは続きを促す。

 

「目を背けた結果、あたしはスカーレットを失いました。その後も自分の精霊の状態も把握せず、ただ言われるままに、差し出された力にすがりました。スカーレットがそばにいてくれていたにもかかわらずに。大切な契約精霊を失いかけ、再びレン様に救ってもらいました」

 

苦しそうに話すクレアの話を少し引っかかりながら続きを聞く。

 

「あたしは愚かです。ですが叶えたい、叶えなければならない願いもあります。ですから」

 

そこでクレアは一度しゃべるのをとめて顔をさげた。おそらく、いまから言うことがとても無謀でとてつもない恥だと自覚しているのだろう。だが、レンにはそれで十分だった。

 

「クレア・ルージュ、私とパーティーを組んでくれませんか?」

 

クレアはレンがなにをいったかわからないといった表情で見上げた。

 

「今、なんて……」

 

「パーティーを組んでくれませんかって言ったのよ」

 

「なんでですか。レン様はあたしとチームを組むのは論外だって」

 

それをきいてレンは少しバツが悪そうに返した。

 

「あのときは私も冷静じゃなかったからやつあたりしちゃったのよ。ごめんなさいね」

 

それを聞いてクレアは少し呆ける。

 

「レン様でもやつあたりとかするんですね」

 

「私だって人間よ。やつあたりくらいするわ。だから―――」

 

レンはクレアに手を差し出して言う。

 

「私に謝罪する機会をくれないかしら」

 

それを見たクレアはこらえきれなくなったのか、涙をあふれ出させレンに抱きついた。

 

「レン、さま。ごめんなさい。あり、がとうございます」

 

レンは抱きついたクレアを髪をなでながら先ほどの出来事について考えを張り巡らせる。

 

狂精霊の混乱の後に軍用精霊の復活、さらに復活した背一例が狂乱して暴れ出すなどここ3年間の旅でもなかった珍事だ。偶然の一言ですまされる問題ではない。

 

「(狂精霊の混乱の後に軍用精霊の封印がとかれた? そんな偶然がつづくものなのか? それにクレアは精霊を失ったと思いこんでいた。そんな状態で精霊の森に足を踏み入れるほどバカじゃない。それにクレアは差し出された力(・・・・・・・)と言っていた。ならばこの事態を仕組んだ人物がいるはずだ。ならばその狙いはなんだった? それに闘技場に落ちていた彼女の羽はもしかして……)」

 

クレアに狂精霊をあげた人物はだれなのか。このことに彼女はかかわっているのか。レンはこれからのことを不安に思った。だが目の前で泣いているクレアを見て結論を出した。

 

「(難しいことについては彼女のことだけ考えるか。後の難しいことはグレイワースに任せることにするか)」

 

レン・アッシュベル、難しいことは普段は自分で考えるが今回はグレイワースに放り投げた。

 

 

 

クレアがレンへと抱きついている姿を上空から見ている者がいた。その手元には黒い固まりと小さい石柱があった。

 

「へぇ、昔と比べてずいぶんと精霊魔術の使い方がうまくなったわね」

 

彼女が一緒に旅をしていた頃、彼は精霊魔術を基礎の基礎と呼ばれる物しか使用できなかった。その彼が<闇魔閃雷(ヘルブラスト)>といった高度の精霊魔術の練度はまだまだといえるがあそこまで精霊魔術の力量を上げているとは思わなかったのだ。

 

「これも私が離れた影響かしらね。それにしてもあれが覚醒しているかは結局わからずじまい、か」

 

彼女はそう残念そうにつぶやき、自身の手にある石柱をみた。

 

「まあ私はどうでもいいとはいえ彼女から頼まれた物が手に入ってしまったから再会はまたの機会ね、カミト」

 

そう言ってレスティアはどこかへと飛び去ろうとしたが再びカミトを見て不安そうにつぶやいた後に飛び去った。

 

「お願いだから癖になっていないでね」

 

カゼハヤ・カミトの契約精霊であるレスティアは三年前と違って違和感なく、むしろそこらの女性より女性らしくしている己の契約者を見て、自分が離れていた三年間に何があったのか少し不安になっていた。

 




さてさて巨人精霊はレスティアさんの手に渡ってしまいました。それに加えてレスティアさんはカミト君に会わないという事態に・・・(微原作崩壊?)
実はこれが1巻最終話かどうかも決めていません(おい)
次回はED、もしくは間話かのどちらかにしようと思っております。(プロットって大事ですね)
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