私は今、魔導士官学校にて勉学に励んでいる。
軍人としては3年のキャリアがある私だが、魔導師としてのキャリアはない。
空軍でもないのに航空機を撃墜したところでそれは空軍として優秀という訳では無いのと同じく、陸軍の工兵としてどれだけ優秀でも魔導師としては小娘同然だ。
自作の銃をもっている、という事以外は基本的に周りと変わらない。
自作の銃というのは、まぁ自分で言うのもなんだが、ゲテモノだ。
短機関銃を三つ、合体させたのだ。
旧式の短機関銃が余っており、廃棄品ならば寄越せと上へ言い、貰ったものだ。
トリガーを一つにし、銃身を切り詰め、反動を抑えるためにグリップを付けて、上部にある弾倉を取り替えやすくするために色々と形を整えて…等としていたら、原型がなくなった上に取り回し辛くなり、機動戦に向かないゲテモノになったわけだ。
まぁ正面への瞬間火力なら随一だが。
もちろん重く、移動速度は遅くなり、弾倉を持つためにガチャガチャとうるさいし、目立つし、弾倉に誘爆する確率は高くなるしでいいところは火力が高くなる以外はない。
だが、それでいい。
「クラビス少尉候補生、なにをボーッとしている。」
おっと、怒られてしまった。
そういえばいつの間にか廊下のど真ん中にいたらしい。
それで考え事をして、ボーッとしてたわけだ。
「申し訳ありません。」
「ところでクラビス少尉候補生…その背中に背負った対空砲はなんとかしてくれないか?」
「嫌です。」
「まぁ、そうだろうな…なぜ持ち歩いているんだ?」
と、グラント大佐は変なことを聞いてきた。
「何故と言われましても…何時攻撃されても反撃ができるように、でありますが…」
「だがここは学校だ。攻撃されることなどあると思うかね?」
「はい。帝国がいつこちらに攻撃を仕掛けてくるかはわからないのです。油断は禁物です。……いえ、もしかしたら願望かも知れません。」
「願望だと?」
「はい。あの悪魔が…ラインの悪魔がここへ攻撃を仕掛けてきて、そして私の目の前に現れてほしい、という。」
「…そうだったな。君は確か悪魔に友軍を…」
「…はい。」
「…すまなかった、嫌なことを思い出させて。」
「大丈夫です…」
すると大佐は逃げるようにそそくさと行ってしまった。
私は速くここをでて、士官にならなくてはいけない。
全ては復讐の為に。
私は復讐の為に努力したからか、異例の速度で一号生へとなった。
一号生が習うのはより高度な戦闘技術や戦略等。
そして二号生教育。
本来は成績上位の者がやることだが、残念ながらこの国にそんな余裕はない。
だからこそ成績が普通な私が教育をすることになっているのだろう。
なにから言うべきか。
正直台上に立つ私より、私の背中にある銃───最近ヒドラと呼んでいる───に視線が集中している気がする。
とりあえず、威厳を見せておくことが大事だろう。
「はじめまして、諸君。まずは、魔導士官学校への入学、おめでとう。私はお前達の指導をする、レるぇぐっ!」
思いっきり舌噛んだ、こんないい辛い名前にした親を許さない。
威厳を見せるどころか笑い物になるぞこれは…
「こほん…レルェクト・クラビス一号生だ。さっきのことは忘れるように」
口の中に広がる血の味に顔を顰めながらそう言う。
そこ、笑うな
「私が女の身と侮るなよ。教育を緩める気は無い。共和国は帝国には何もかも劣っている。だが、その過程で一矢報いなければただの臆病者だ。ゴミだ、虎に怯えるネズミだ。一矢報いる力を、貴様らに私はつけたい。並の訓練ではすまなさい。以上。」
「大佐、この前ぶりですね」
「あぁ、クラビス一号生か。…そういえば、二号生の中でなぜか君のファーストネームを言えるかチャレンジする、というのが流行っているのだが、何かあったのか?いや実は私も一度もしっかり言え」
「………大佐、ちょっとそれ誰がやっていたか教えてください。」
「……あー…二号生は殆どやっていたな。特に君の下にいる者達は。ちなみに、私はやっていない。」
「情報、ありがとうございました。私はやることができたので。それでは」
「あ、あぁ。……………すまんな…私も自分の命が大事だ…」