「聞仲配下の
金鰲列島とは、元始天尊が率いる崑崙山脈と対をなす仙人界でのライバル的存在である。金鰲列島を率いているのは聞仲ではないが、仙道が慕うだけのカリスマ性が聞仲にはあるということだろう。
「金鰲とは流派が違うゆえよくはわからぬが・・・」
そう呟いて太公望は黄天化にぼそぼそと内緒話をし出した。それを聞きたそうにしている四不象、その頭には子猫になっている白額虎が乗っている。なんとなく彼に乗っているようだが、この場合四不象は太公望に訊くのではなく、白額虎に訊く方が有意義だ。だって彼女は順風耳持ち、要は地獄耳なのだから内緒話など筒抜けである。三里先の水が落ちる音も聞こえるらしいので偵察にはもってこいな能力である。
そして、金鰲島所属の張桂芳、風林は黄飛虎が朝歌を裏切った事実が信じられないらしい。どうやら黄飛虎の家族についての情報は広く回っていないようだ。彼女たちは妲己の傀儡である紂王に間接的であれ殺されたようなものだ。忠義を示していたにも関わらず、裏切ったのは朝歌であるというのに。王制ってメリットもあるけど面倒くさい。そうこう話しているうちに、太公望が先陣にたつ。
この打神鞭も活躍を望んでいるといってるのに炎の男爵って名乗るのは、果たして本気なのか自分は火を操るぞと故意にアピールしているのかどちらだろうか。
「御主人がこわれたっス」
「主さまはどうでも良いこと考えていますね」
騎獣コンビがなんか言っているが、無視だ無視。
「太公望よ動くなっ!!!」
という張桂芳の一声で太公望は静止。次に風林が持つ数珠の一つがパ◯クンのように巨大化して太公望が捕らえられた、以上。
どうやら捕獲系の宝貝で『紅珠』とメガホンは音波で呼ばれた者の動きを止める『呼名棍』というらしい。続いて、太公望の裏切りで四不象が捕らわれた。そして、彼の頭に乗っていた白額虎は冷めた目を向けていた。
「主さま、太公望さまに付いていくのが不安になってきました」
「大丈夫、たぶんこれからもっと不安になっていくから」
「それ、大丈夫じゃないです」
次いで名が知れている黄家一族の名前が呼ばれて、捕らわれていった。さて、残っているのは私と武吉くんと、彼である。武吉くんは持ち前の足の速さがあるので『紅珠』から逃げ回っている。そして私はというと、立っているだけである。
「宝貝の力は仙道が使う気に属性を付けて方向性を与えるもの。なら“生成する”私の『卦源魄』を使ってその方向性を変えれば問題ないです」
前から迫ってくる『紅珠』から気を奪い花弁に変えて、ただの数珠にしてしまう。ちなみに宝貝と言っているが、実際はただの能力なので形はない。まあ、私の気の塊を七芒星の髪飾りとして形骸的に宝貝として使用しているので、どこかの宝具オタクに研究されない限りはバレないだろう。花弁にした理由は自然に還るしなにより無害だ、見た目も綺麗だしね。名前も適当だ。
そうこうしているうちに風林が桂芳に向かって、秘湯混浴刑事エバラと言いて、それをメガホン宝具『呼名棍』を使って風林が復唱するという謎の行動に出た。どうせ太公望の嘘を鵜呑みにしたと思うのだが、何故それを名前と思いこんだのかがわからない。彼らは天然なのだろうか。たぶん私の名前を聞かれないのは動かなくても力を使えると判断されたためだろうが、「あの女のことは放っておこう」とは酷い。
太公望のマルヒアイテムである居眠り用強力耳栓を使い、難を逃れた彼こと黄天化も、『紅珠』に挟まれそうだった武吉くんを庇っていた。その二人にそっと近づくと、武吉くんは嬉しそうに笑った。
「祷暁さんも無事だったんですねっ!」
そのピュアさをどこかのじじいにも分けてほしいものだ。
「祷、・・・いや俺っちの身内だから姉貴って呼ぶさ。だがよ、これはまずいべ。あれだけ人質にとられちゃこっちから手をだせねぇさ」
「あー、たぶん大丈夫ですよ」
「何故さ」
「向こうの空から何か飛んできてます」
指差す空には確かな飛行物体が、って何か両手で構え始めた。気配的に宝具なのだが、植物っぽい感じもする不思議人物は敵か味方かもわからないが、原作通りなら宝具人間の彼だ。
「衝撃に備えましょうか」
三人と一匹を囲うように円形の水のベールを作り出すと、案の定不思議人物の両手から衝撃波が放たれて臨潼関の関所が音を立てて半壊した。土煙もある程度離れたここにも押し寄せたが水のベールが防いでいる。
「な、何事ですか!?」
「豪快さ」
「あの関所は呪われてるんでしょうか」
上から武吉くん、天化、白額虎の順だが、武吉くんは兎も角、天化は人物を予想して、白額虎はその能力のせいだろうか、この関所で起こったことを見ていたらしい。
「ぜんぶ破壊する!!」
「物騒だなぁ」
そんな雰囲気のなか、不思議人物の声に呑気に反応してしまった私は悪くないだろう。緊張感?そんなの皆無です。