「えーっと、あいつ味方さ?」
「僕もあったことない人です」
「まあ、少なからず敵ではないんじゃないかな」
攻撃対象はこちらではないので、妲己や聞仲の手下ではない。しかし、問答無用で攻撃とは、好戦的すぎやしないか。まあ、おかげで膠着状態からは抜け出せそうだけど。
「ナタク動くな!!」
メガホン宝貝持ちの林桂芳が彼に向かって言う。やはり、彼はナタクのようだ。リークは太公望だろう。ナタクと呼ばれた彼は赤い髪を鋼のヘッドギアで逆立てて両手足は宝具で『乾坤圏』と『風火輪』、腰布は『混天綾』だったか、あと背中に『金磚』と『火尖鎗』を備えている。・・・一人で戦争でもしに行くつもりなのだろうか。
「・・・何の遊びだ?」
メガホン宝具『叫名棍』は効果がないようだ。”ヒト”ではないから効かないのだろう。・・・よく考えれば私も名前を呼ばれようが、耳元に真空を作れば問題ないと思いついたが後の祭りである。それはさておき、ナタクの先制攻撃でメガホンを破壊したと思ったが、次は『紅珠』に捕まった、ばくっと捕まったのである。
「あらまー」
「ああっ!!」
「あっさり捕まりましたね」
上の黄天化と武吉くんはともかく、白額虎ちゃん、なかなか辛烈なコメントで。といっても、たぶんこの中での攻撃性は随一である彼はこれくらいでは捕縛は無理だろう。案の定、『紅珠』の一つが破裂して風林が余波に巻き込まれて封神された。
そして、余波は敵のみでなく背後の城壁までをも巻き込んで、崩れ始めた。元々ボロボロだった城壁にとどめを刺した形だ。あれだ、城壁のライフはもうゼロよ、とでも言えばよいのだろうか。そして、そこには下敷きになりそうになる『紅珠』があった。
お師匠様!!、と飛び出していく武吉くんは真っすぐ『紅珠』のもとに向かっていく。
「アレは武吉くんに任せても良さそうね」
「じゃ、俺っちはあっちに行くさ」
そう言って、黄天化はこっそり移動してナタクの背後から襲おうとする林桂芳をぶった切った。・・・私、やることなくないですか。
「まあ、主さまはどんと構えていれば良いと思いますよ。まだ序の口でしょうし」
「妲己は兎も角、聞仲相手だとそうだろうね。戦力はまだまだ多い」
西岐の方角をみる白額虎には、次の刺客が見えているようだ。あえて皆に教える気はない。どうせ、その方向に向かわなければ西岐へはたどり着けない。
そうして敵を倒した天化はそのまま『紅珠』を切り、仲間たちを解放していく。って、ナタクがこっちというか、天化を見つめている。
「もういいだろう?」
「何のことだ・・・?」
太公望が訊くと、天化はどうやら好戦的なナタクに因縁をつけられて喧嘩を売られたらしい。それを素直に買う天化も十分好戦的だが。太公望は戦いだす二人を尻目に呆れている。
「うう・・・、こやつらを一つにまとめるのは一苦労やものう」
「心底同情するわ、太公望」
「おぬしも手伝え」
「い・や」
むしろ私では標的がこちらに向くだけだろう。そうしていると、黄一族の方から一際小柄の姿が出てきて戦闘民族二人組のもとへ走り出した。
結果、天化の末の弟である天祥くんと武吉くんが、ナタクに懐きました。ナタクのことをただのマザコンではと漏らす太公望、たぶん正解。ああ、そういえば忘れてたわ。
「武吉くん」
「はい、どうしました祷暁さん?」
「はいこれ。さっき瓦礫が額に当たったでしょ。血は止まってるみたいだけど拭いておいて」
渡したのは水を湿らせた手ぬぐいである。先ほど、崩れる関所から『紅珠』を庇った際に額を切ったのは見逃さなかった。ありがとうございます、と丁寧に親切心を受け取る武吉くんはええ子やと老婆心を滲ませていると、視線に気づいた。
「えっと、ナタクだっけ。何か用?」
「・・・お前、なんだ?」
質問に質問を返されるとは斬新である。何だとはなんだと返したいが、彼が欲しいのはそういうことじゃないだろう。なんせ彼は蓮の花の化身で宝具を埋め込まれているある意味、一番宝具に近い存在だ。
「私は黄祷暁。黄一族の血縁で、太公望の同郷、天然道士よ」
「そういうことじゃない」
彼は確かにイラついているようだが何故か敵意を感じない。それに苦笑をした。
「俺は、お前殺せない。何故だ」
「難しい質問だけど、それは判らない」
「・・・・・」
「とりあえず、敵じゃないことはわかってほしいな」
逆立つ赤髪をあやすように撫でると、ぷいっとこちらから視線を外した。どうやら許してくれるらしい。なんか反抗期な弟を持った気分である。
「・・・・・もしや女に弱いのか?」
「御主人、男は誰しも女に弱いもんっス」
「おぬし、なに悟りを開いているのだ」
四聖初登場のシーンで祷暁・太公望の一言
「かわいがってもらってるって何!?修行のこと!??もしかしてドМの集まり!???」
「・・・おぬしはもう少し緊張感を持つがよい」
どこかにいるであろう四聖ファンのみなさま失礼しました。