子守唄を神様に   作:レヴィ

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一番好きなキャラは主人公です。それと、感想ありがとうございます。個別に返事できないほど筆不精ですので、不定期更新はお見逃し下さい。


テンメイ

 

 雄大な滝が流れ幾重にも流れ、壮大な瀑布から飛沫が散る。その滝壺からほど近い岩場に彼はいた。二人で話させてほしいという姫昌の言葉に従って、私はその一際大きな岩からは少し離れたところで待った。

 その岩は人の丈を優に四倍はあるというのに仙道でもない姫昌がすいすいと登っていくさまは年を感じさせない。よくよく考えてみれば、私もそうだが、あそこにいる主人公も年齢層はほぼ同じである。・・・なんか、微妙な心境になったから、この考えは止めよう。

 

 少し離れたところにいる彼を見ると、ああ成長したんだなぁとどこかおばさん臭い考えが過ったが、あれから六十年は経っているのだから老けたのかが正解だけど、仙道はこういうときはややこしい。そうこう考え込んでいると、話し終えたのか主人公がこちらを指さし、姫昌がこちらを見て微笑んでいる。無言の訴えでこちらに来いということはわかった。溜息を吐いてから、そっと地を蹴った。

 ちなみにいつも白額虎に乗っているが、私も飛べます。私の力は創造なのだから、風を編むなり、自分の周りだけ無重力空間を作ればよいだけの話だ。しかし、今回は風を使った。こんな飛沫が飛んでくるような場所で無重力空間を作ったら自分の周りに水が浮いて鬱陶しくなる、経験で学んだ。

 

 風で自分を運び岩の上まで飛ぶ。姫昌の隣で浮かぶが、主人公は目を見開いている。

 そして、その隣の・・・カバは唖然としている。

 

「太公望、彼女は私の旧友であり天然道士でもある。自由な気質ではあるが、優しい御仁だ。巻き込むのは忍びないが、少なからず力にはなってくれるだろう」

 

 姫昌は優しい眼差しで紹介しながらこちらに向かって微笑むが、こちらは複雑な心境である。なんたって、目の前の彼には出会ったことはあるのだ。まあ、その頃は呂望だったけど。

 

 そんな複雑な心境故に黙って相手の出方を伺っているのを他所に、先に動き出したのは太公望だった。

 

 ゆっくりとこちらに歩み寄ってくる彼は無言を貫いたままだが、隣にいた河馬は口をかっぴらいたまま主人公の方をガン見している。すまない、河馬くん、面白いんだけど、君の名前は忘れていたのよ。スープ―っていくカタカナ表記は覚えてるんだけど、漢字表記がわからないから通称カバくんで勘弁してくれ。

 私は浮いているといっても、姫昌の目線より少し高いくらいだ。近づいてくる主人公はそっと手を伸ばして私の頬に添えた。そこにどこかデジャウを感じるが、そうしてじっとこちらを見つめる視線は居たたまれない。一方、隣にいる姫昌はじっとこちらを観察していた。主人公が私に敵意がないことはわかるため、様子見をしているといったところか。

 

 ふと主人公が納得のいったように頷くと、顔を綻ばせた。

 

「おぬし、祷暁ではないか」

 

 こいつの記憶力どうなってる、会っているのも60年前、しかもたった数か月だぞ。それに加え疑問形でもなく、確定でそう言った。どうせこれで知らぬ存ぜぬと言っても否定はできないだろう。

 

「・・・呂望、私は、」

「おぬし、・・・どこへ行っておったのだ、探したのだぞ! 村は焼かれたが遠くに住んでいたおぬしが巻き込まれてはいないと確信しておったが、わしとほぼ同い年であるそなたが一人生きていくのは難しいと修行の間際にこっそりと探しに行ったが、どこにも居らず、殷の国中探しまわす羽目になったわ」

「は?」

 

 穏やかな表情が一変、険しい顔で捲し立てるように口から飛び出し、若干頬に添えていた手が顔を掴むにグレードアップしている。まだまだ言い足りないという表情の呂望に静止をかけなければと思うが、呂望は止まらなかった。

 

「どうせおぬしは自堕落に引きこもっておるとは思っておった。親がいなくなったと言っておったが、その後も誰にも頼らなかったおぬしが独りおっては儚くなるのは目に見えていた。・・・心配しておったのだ」

 

 その目は嘘を吐いているようには見えず、呂望は誰だコイツなそれはそれは優しい眼差しをしていた。それにしても、昼寝友達にここまで想われていたとは予想外である。いや、もしかしたら背伸びせず等身大でいられる彼の存在に甘えていたのは私の方で。

 

「ごめん、呂ぼうぉーう」

 

 添えられた手は頬をつねり、真横に伸ばされる。さぞ、私の顔はギャグマンガに相応しい顔をしているであろう。ほれ、名を呼ぼうとしたが既に言葉にはならず間延びしている。彼の顔は呆れたような白々しいさをしているが、先ほどの偽物をどこへやった帰ってこいシリアスよ。

 

「おぬしに謝れる謂れはない。わしが勝手にやっていたことだ」

 

 謝罪はお気に召さなかった様子だ。半ば戯れているように見えてきたのだろう。姫昌は微笑ましくこちらを見ており、そこのカバくんは素直じゃないっすね、ご主人とか言っている。・・・そういえば彼はカバじゃなくて霊獣だった、しゃべるんだな。

 そうして思う存分引っ張っていて、彼の気が済んだのだろう。頬から手を離すと呂望は目の前に右手を差し出した。その手に微笑むと私も右手を差し出した。そっと握った温かみは以前にはないものだった。

 

「話を戻すか。わしは崑崙の道士、太公望だ、おぬしは」

「私は黄祷暁、天然道士って呼ばれるのかな。姫昌とは友人関係と言って差し障りないよ」

 

 あの時からおよそ六十年、時も経て立場も変わり、果ては呼び名まで変わった。また会うことになってしまうとはなぁと感慨深く、昔を懐古ししみじみとしていた。

 

「やはり天然道士ではあったか。あの年で村からも離れて住めたのも頷けるわ」

「当たり。しっかし、六十年経ったっていうのによく覚えていたね私の事」

「金の目はなかなかおらんからの。・・・それと、黄と言ったか」

「あれ、言ってなかったっけ」

「もしや、武成王の血筋か」

「またもや当たり。最近発覚したよ」

「おぬし、軽いのお」

 

 呆れた眼差しを受けたが、その武成王との初対面が殺伐としていたことを知ったら、その心情はより深いものになるだろうと思ったから知り合った経歴を絶対話さないことを心の中で誓った。

 

「・・・どうやら紹介せずとも知り合いのようですな」

 

 姫昌は穏やかに言うが知り合いかぁ、まあ知り合いなんだろうなぁ。六十年前のだけど。

 

「姫昌、心は決まった?」

「ああ、・・・殷を討ち、新しき国を創る。それが私の忠義であり、民にできることだ」

「そっか。なら行こう」

 

 そうして握る姫昌の手は、確かな老いを感じた。友として最期まで見送ることは決め、最初に出会ったときからも覚悟していたことだ。そうして、渦中に巻き込まれることとなった。これが、私の因果であり、天命なのだろう。




四不象ってそういえばいましたね。

「初めまして、四不象っス。よろしくっス」
「あー、そんな名前だったか。・・・ゴメン、最初カバかと思った」
「ひ、酷いっス」
「やはりそう思うか、祷暁。わしも思った」
「ふ、二人揃って・・・」
「これこれ、動物を虐めてはいかんぞ御二方。・・・象の仲間ではないか」
「ぼ、ボクはカバでも象でもない、誇り高い霊獣っス―――ッ!」
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