よくよく考えてみよう。
私の白額虎は、最強霊獣と名高い黒点虎の妹である。
その霊獣に乗った私が、太公望を乗せた四不象、武吉少年と共に全速力で駆けるとどうなるか。そう、私と白額虎の独走状態、哀れ四不象の僕の立場がーーーっという嘆きが遙か後方に聞こえる。その声に振り返りつつ微妙な気持ちになる私たちであった。
「・・・・・・なぜか罪悪感を感じます」
「大丈夫、彼はそのうち身の内に秘める真の力を開放するから」
「そうは見えません」
こうして話している間も私たちは風を纏いながら空気抵抗なく進んでいるため、およそ新幹線並みのスピードはでているだろう。・・・空間転移を除いて最速なんじゃない、白額虎。
そんな思いに浸っていると、朝歌から西岐に至るまでの最初の関所である臨潼関が見えてきた。そういえば、以前にも難民救出のためこの関所で騒ぎを起こしたと太公望から聞いたが、不憫に思えてきた。西岐に至るまでの五つの関所の中の一つに謎の同情を覚えていると、関所の方角から封神される魂魄が飛んで行った。その合間を見ずに破壊音も響いてくる。
「急ごう、白額虎」
「わかりました!」
さらにスピードを上げると関所の門の上に人影が見え始めた。
あれは・・・妖怪仙人か。原作だと三人いたはずだ。さっきの魂魄がその一人だと考えると残りは二人か。確か人質もいたはずだ。
「このまま特攻するかな」
「ちょっと待つさ」
下から声が聞こえて視点を下げると、ものすっごいスピードで地を駆けるノースリーブがいた。それは見覚えのある色合いのである黄色いスカーフを額に巻いて、親近感のわく短い黒髪、鼻頭にある傷跡が印象的な青年だった。
「俺っちは黄天化。見た目と口ぶりから味方と思うけど、道士っすか」
「・・・いわゆる天然道士って奴です。私が祷暁で、こっちは白額虎。西岐の味方でいまから黄一族の助太刀に行こうと思ってます」
一瞬、姓も言いかけたがこの場で血縁関係があるってわざわざ言わない方が良い感じがした。
「目的は一緒さ。それにしても」
「なに?」
「なんかお袋に似てるさ」
二カッと笑うと、先に行ってくるさと言い残して臨潼関まで駆けて行った。
「仙道って私になに求めてるんだろう」
「すみません、私にもわかりかねます」
そうして、天化を追いかけたらどうやらご老人が人質として捕まっていた。その人物が原作通りならご老人は従兄弟である。私も七十歳超えているから、正直妙な気分ではあるが、果たしてカミングアウトしても良いのか考えるくらいには、仙道とはややこしいものである。
そうこうしているうちに、天化が妖怪仙人一人を討ち果たした。はやいな、おい。
「よお、おやじ元気にしてたかーーーっ!ずいぶんフケたなーーーっ!!」
「第一声がそれはどうかと思うわ」
「シリアスな雰囲気が台無しですね」
「俺っちはいつもこんなもんさ」
その声にうるせーと叫び返す飛虎なので、ある意味似た者親子なのかもしれない。
そのやりとりに呆れていると、残党である妖怪仙人が天化に向かって槍と突きつけようとしたが、天化はひらりと宙返りで躱しつつ、手に持つ莫邪の宝剣という名のビームサーベルで敵の背後から切りつけた。その敵の身から魂魄が飛んでいくが、これを目にした太公望が活躍の場を失ったことを知り、無表情のなかに哀愁を漂わせるところまで思い浮かんだ。
その天化が関所の上からふわりと飛び、黄一族のもとへと向かった。それにしても、せめて自分のお爺さんを縛っている縄くらい外していけよと思うけど、それは私が引き受けた。
「えっと、縄外しますね」
「すまない、年はとりたくないものだ、お嬢さんに助けられるとは。・・・私は黄滾という」
静かに笑うナイスダンディーなおじ様は、口髭を携え、面立ちは息子の飛虎に似ている。この人が母親からみて甥っ子だと思うと感慨深いものである。さて、名乗られたからには返答すべきだが、姓を言うと確実にばれる。かといって、偽名を言うのも何か違う。多少は悩んだが、ここは素直にいうべきだと腹を括った。どうせ、飛虎から言われるかもしれないが、自分が言った方がダメージが小さい。
「私は、黄祷暁と言います。あの、」
「・・・・・・予想が正しければ叔母様の娘さんじゃないか」
自分の見た目から精々母の孫か血縁といわれるかと思ったので少し驚いた。
「はい。この見た目は仙道なので・・・・・・」
「そうか。生きて叔母様の娘さんに会えるとは。亡き父も心配しておったよ」
会えてよかった、と私の頭を優しく撫でながら飛虎と似た喜色を漂わせて笑む様子に、私の中の枯れ専が歓喜した。
なんだ、この包容力。
飛虎のような元気を分ける感じでもなく、太公望のようにいつもそばにいる空気(この時太公望のほっとけといじける声が聞こえたが気のせいだ)のような感じでもなく、人生経験を踏まえた(主人公と年齢はほぼ同一ですby作者)余裕のある雰囲気は私の気づいていなかった一面を開花させていた。
そんな謎のトキメキを感じていると砦の下にいる一行が一点を見ていた。
「太公望どの!!」
「おお、武成王ではないか!偶然よのう!!」
「御主人・・・・・・」
やっと追いついたであろう太公望の言いように四不象がなにやらワザとらしいと太公望に言いたそうだが、黙っている。横にいる白額虎はなにやら同情めいた視線を寄こしていた。頑張れ、主人公。
そう考えているうちに、下から上がってきた黄一族がここにたどり着いたようだ。貴女は、と言われるが苦笑して砦から飛び降りた。正直、仙道にとってこれくらいの高さはわけないのである。説明は年長者に任せた。そういうところは叔母さまに似ているな、と微かに聞こえたが気にしないでおく。
黄飛虎、天化、太公望のもとに降り立つと、彼らへの挨拶をそこそこ太公望は急いでここを出ようと提案する。なんでも、妲己の手下は打倒したが次は黄飛虎のライバルというべき聞仲の追手が来るとのこと。
聞仲かぁ、最強の一角で殷の初代皇后に初恋を拗らせ、その遺言を守っている殷の守護者ともいえる存在である。
「―――———急いでこの臨潼関を向けるのだ! む?」
崩壊した臨潼関の門に二人の人影が見えた。見たところ、二人とも修行僧のような恰好をしている。
「むう。言った矢先にこれか! 妲己も聞仲もそつがないのう!」
「私は張桂芳」
「私は風林」
「聞仲様の命令によりここで足止めさせて頂く」
ところで、名乗りは良いのだが、武蔵坊みたいな恰好の人の数珠はともかく、片方の人のメガホンはもう少しどうにかならなかったのだろうか・・・・・・。
祷暁「よくよく考えればアラセブ(アラウンドセブンティ)な私だから、恋愛対象としては間違ってないのよね、従兄弟だけど」
太公望「仙道だと数百歳などゴロゴロおるからの」
黄天化「師叔、おれっちはまだ若さ!」
結果:仙道は年齢不詳が多い。