「うう………もう勘弁してくれ………」
放課後、織斑 一夏はうなだれていた。なぜなら……
「何言ってんだ。お前が教えろって言ったから教えているんだ、覚悟を決めて覚えろ」
俺が一夏に付きっきりで今日の授業内容を教えているからだ。
「なんで魁人はこんなの覚えられるんだ………」
確かにISは専門用語の羅列で覚えにくいだろう。そんな一夏のためにスペシャルな覚え方をご用意しました。
「簡単な方法はなくはない」
「本当か!?」
「ああ、教科書丸ごと覚えてしまえば簡単だ」
「すまん、俺には無理だ」
諦めるの早! いや頑張ればいけるって! 俺もう既に半分は覚えたんだからいけるって!
「ああ、織斑君、戦国君。まだ教室にいたんですね。よかったです」
「はい?」
呼ばれて顔を向けると、副担任の山田先生が書類を片手に立っていた。
「えっとですね、二人の寮の部屋が決まりました」
そう言って『1025』と『1050』と書かれた紙とキーをよこす先生。ちょっと待って部屋番号が違うんだけど俺達部屋一緒じゃないのか?
「俺らの部屋、決まってないんじゃなかったですか?前に聞いた話だと、一週間は自宅から通学してもらうって話でしたけど」
「あの……それと先生……番号がそれぞれ違うんですけど………」
「そうなんですけど、事情が事情なので一時的な処置として部屋割りを無理矢理変更したらしいです。ただ、とにかく寮に入れることを最優先にしたみたいで、お二人は別々の部屋になってしまったんです」
「え?てことはルームメイトは女子ですか?大丈夫なんですか?」
「一ヶ月もすれば部屋割りの調整もできると思うので」
まあ、それまで我慢するか……でもオルコットみたいなやつといっしょは嫌だな。
「部屋はわかりましたでも、荷物は一回家に帰らないと準備できないですし、今日はもう帰っていいですか?」
「あ、いえ、荷物なら――」
「荷物なら私が手配しておいてやった。ありがたく思え」
そう言いながら夕焼けに照らされた織斑先生が教室にやってきた。どうでもいい話かもしれないけど今織斑先生顔半分ぐらい影で隠れているんだけど、アニメとか特撮なら絶対強い奴の登場シーンだよね。実際強いけど。
「「ど、どうもありがとうございます……」」
「まあ、戦国はお前の母親が送ってきただけだし、織斑の方も生活必需品だけだがな。着替えと、携帯電話の充電器があればいいだろう」
一夏の方大雑把すぎないか?
「じゃあ、時間を見て部屋に行ってくださいね。夕食は六時から七時、寮の一年生用食堂で取ってください。ちなみに各部屋にシャワーがありますけど、大浴場もあります。学年毎に使える時間が違いますけど……えっと、その、お二人は今のところ使えません」
「え、なんでですか?」
「一夏お前、同年代の女子に囲まれて風呂に入りたいのか?」
「あー……」
「えっ、織斑君、女の子とお風呂に入りたいんですか!?だっ、ダメですよ!」
「い、いや、入りたくないです」
一夏が全力で首を振る。
「ええっ?女の子に興味がないんですか!?そ、それはそれで問題のような……」
山田先生の言葉に教室に集まっていた女子たちが沸き立つ。
「織斑くん、男にしか興味ないのかしら……?」
「それはそれで……いいわね……オリ×セン……セン×オリ……どっちもいいかも……」
「中学時代の織斑くんの交友関係を洗って!すぐにね!明後日までに裏付けとって!」
身の危険を感じた。お尻を隠しながら
「おい!なんで距離置くんだよ!」
「人の『好き』の形は人それぞれだ、それを否定するなら人間を否定することと同じだからな。だがな、それに俺を巻き込むな、一夏」
「何の話だ!」
一夏の否定が教室に響いたのでした。
♦
「1050室……ここだな」
一年生の寮の部屋の前にやって来た俺は先生から渡された鍵を取り出す。
「その前に…」
コンコン。
ノックだ。ノックは大事だ。
「…………」
返事は帰ってこない。誰もいないのか?
「失礼しまーす」
部屋に入ると、まずその豪華さに目を見張る。そこいらのビジネスホテルよりもよっぽどいい代物なのは間違いない。見ているだけでふわふわなのが分かる。しかし窓側のベッドには荷物が乗っていた。どうやら先客がいたようだ。
「…………」
「これは失礼、これから一ヶ月間同室となった、せんg「あなたとなれ合う気は無い」………はい?」
すまないもう一回言ってくれ。one more time。
「あなたとなれ合う気はない」
「…………」
「第一、私は今機嫌が悪い。あなたに言ってもわからないかもしれないけど、あなたのせいで私はとても迷惑している。ある人の言葉を借りるとするなら『お前の存在はノーサンキューだ』、といったところ。なぜここまであなたを毛嫌いするかというと………」
あー、これあれだ。多分たまったもん全部吐き出すまで終わらない感じだこれ。こういうときはあれだ、とりあえず相手を覚えることから始めよう。まず俺は人を覚えるとき人と会ったときは順に髪、顔、耳、首、肩、腕、手、指といって体に戻り、上半身、腰、下腹部、足、靴の順で見たほうが覚えやすいし変化に気付きやすいんだけどみんなはどうかな?
で、本題に戻るとこの子は、髪の色は水色で髪型は毛先が内側に跳ねている。そして眼鏡をかけていて頭には……アクセサリー? かあれ。まあ、とにかく眼鏡をかけたはかなげな少女……ってどっかで見たことあるな……もしかして………!
「私これでも日本の代表候補制で専用機を持つはずだったの。でもあなたという存在のせいで私の機体の技術者を全てあなたの機体に回されて「簪?」え?」
「よお、俺だ」
「? 誰?」
ああ、やっぱり気付いてなかったのか。髪切りすぎたかな?
「戦国 魁人だ」
「……………ご……」
ご?
「ごめんなさい!!」
土下座!?
「今の発言は織斑 一夏という人物に言うつもりで……」
「あーわかったわかった、簪が今の長文をよく練習をしたのはわかった」
「え?」
「だって、ベットの上のタブレットに今簪が言ったこと台本のように書いてあるぞ」
「…………あ……」
「………」
「ああああああああ!」
これは俺が悪いのかな!? 言っちゃいけなかったか!?
「うおおっ!?」
ズドン!ズドン!バキャ!
「…………?」
今の何?
「あ……ああ………」
簪はこうだしな……そっとしておこう。
「簪、俺今の音確認してくるから」
「…………うん」
じゃいってきまーす。
バタンと扉が閉められ部屋で一人になる簪。
「うぅ………なんか恥ずかしい……」
♦
「何やってんだ一夏?」
音のした方へ向かうとそこには野次馬と穴のあいた扉、そして一夏がいた。
「あ、魁人! 助けてくれ!」
「何があった……」
一夏に呆れつつ野次馬を軽く押しのけ一夏に近づく。
「実は部屋で箒が……」
「箒? ああ、篠ノ之さんか。その人がどうかしたのか?」
話が全く分からずそのまま一夏に近づく。そして穴のあいた扉の横に立った瞬間。
「あ! 危ない!」
「あ?」
次の瞬間ズドンッ! と扉の上に木刀が突き刺さりズガガガ! と力任せに扉を両断しながら振り下ろされる。
「ッ!!」
しかし、間一髪で気付き左肘のエルボーで止める。めっちゃ痛い………
「あっっっっぶねえ!!」
ズズズっと木刀が扉の向こうに消えてゆく。それはともかく……
「どうしてこうなった!?」
「それが……」
♦
「……というわけなんだ」
なるひどねー、それでたまたまお風呂上がりの篠ノ之さんにばったり遭遇しちゃった、と。
「お前、いっぺん死ねよ」
「ひどくないか!?」
全然ひどくねえよ、これを見た八割はそう思ってるよ絶対。
「とりあえずお前は寮長にこのこと説明して来い」
「わかった、それでその寮長がいる部屋ってどこだ?」
「この一年生寮の入口付近の部屋、寮長は織斑先生だ」
「サンキュ……え?」
「どうした? 早く行け」
「いやでも……」
「早 く 逝 け(誤字ではない)」
「うう……わかったよ!」
よし行ったな………さて。
コンコン
『誰だ?』
「戦国だ」
『……入れ』
そう言われもうほとんど原形のない扉を開けて部屋に入る。
「失礼する」
「なんのようだ?」
「いや、あのね、一言言いに来たの学校の備品壊すなって」
「あいつが悪いんだ」
いやそれ理由にならないからな。
「いやさ、説教するなりなんなりするだけで良いんじゃないか?」
「それであいつのあれが治ると思うか?」
………思わない。
「そもそもノックの音聞こえなかったの?」
「髪を拭いていたがノックの音は聞こえなかった」
はい
「大体、
「つまり嫌いってわけか」
「いや……そういうわけでは………なくてだな……別に嫌いと言うわけではなく………」
俺が一言で嫌いと決めつけようとすると篠ノ之さんは下を向き顔を赤らめる。
うわーなんだこのえにかいたようなつんでれはー。
「じゃあ好きなの?」
「そんな訳あるか!」
「じゃあ嫌いなんだ」
「そういうわけでは「どっちだよ」」
まあ、つまり、そういうことなんだろう。
「おい、戦国いま何を考えている」
「ナニモカンガエテナイヨー」
「嘘をつくな」
この状況で俺からいえることは一つだ。
「まあ、一夏はどうしようもなく鈍感な朴念仁だけど思いをぶつけ続ければそのうち気づいてくれるんじゃないか?」
「お前話を聞いていたのか!」
「きいてたよ篠ノ之さん、どっちかというと好きってことでしょ?」
「全く聞いていないじゃないか! あと篠ノ之はやめろ、箒でいい」
「あ、うん。 とにかく頑張って」
「話を聞けえ!」
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