「「…………」」
畳に寝転がり、黙り合う二人。
「……フッ」
「プッ……」
「「あっはっはっはっはっは」」
人間って極限を超えると笑いしか出てこないらしい。今それを実感した。
「はっはっはっは……ふう、ねえ」
「ははははは、ん?」
「君って友達思いの良い人なのね」
「そうか?」
「最初、簪ちゃんと一緒にいるのを見たときは不良に弱みでも握られたのかと思ったのだけど……」
俺そんな風に思われてたの!?
「だって、金髪で左右で目の色が違くて長髪なんて不良にしか見えないもの」
「髪は自前だ、あと目も」
「へえー」
うわ! 興味無さそう!
「………で?」
「?」
「簪と仲直りしたいんだろ?」
「……でも」
「問答無用。さっさと謝れ馬鹿野郎」
「ばっ……!?」
無理矢理でも仲直りをさせる。その一心で話を進める。あとごめん野郎じゃなかったな。
「言ったでしょ……………私には簪ちゃんと会う資格なんてないのよ」
「なんでだよ」
「更識の家はこの国の暗部の家なの。代々更識の家の当主は『楯無』の名を継ぐの。私も更識の当主を継ぐと同時に『楯無』の名を継いだわ」
「ああここに来る途中母さんからそれ訊いたな」
「このこと秘密っていったのに何やってんのあの人!?」
「で? それがどうした?」
「……当主を継いだ時、私は完璧であろうと、弱点をなくそうと努力した、そして気付いた。私の一番の弱点は最愛の妹の存在だったの」
自分の最愛の妹を弱点と思わなければいけない世界………馬鹿げている………でも事実なんだな。
「だから魁人君がきいた通り私は当主を継いだ時、あの子に言ったの。『あなたは何もしなくていい。私が全部してあげる。だから、あなたは無能なままでいなさい』って」
「その言葉であの子がどれだけ傷ついたのか、どれだけあの子に重荷を背負わせてしまったのか、私は理解している。だから、私はあの子と和解する資格なんてない。」
「それは……当主としてか?」
「そう」
そういうことか……
「馬鹿じゃないの?」
「…………へ?」
馬鹿じゃないの?
「自分の妹のこと弱点といって冷たい言葉で突き放して弱点を捨てた気になっていただけでなんも捨てきれてねえじゃん。実際妹の友達に手を出すほどのシスコンだし」
「う…………」
楯無は当主ゆえ、立場ゆえ謝れなかったと。ほんっと馬鹿だよこいつ。
「完璧になろうとして不完全になるなんて、笑えるな。人間なんて絶対完璧にはなれない。だから集まることでその欠点を補おうとしているのにあんたはそれを自ら欠けさせたんだ」
「ストーップ」
楯無が扇子で視界を奪うその扇子には『皆まで言うな』と書かれていた。だが断る。
「機械は精密であればあるほど多くの部品が必要となる。人間関係はそれと同じだ。一つ欠ければ大事に至る」
「ききたくn「聞け」」
楯無の扇子を払いのけ話を続ける。
「だから大事に至るまでに早めに手を打っておいたほうがいいんじゃないか?」
「…………」
はいはい、返事はなしですか。
「なあ」
「なに?」
「簪と仲直りしたいか?」
「……したい」
「だったら俺にいい考えがある……」
俺は子供が悪戯をしたかのように無邪気に笑うのだった………
♦
簪ちゃんの目の前に現れたその男。名前は戦国 魁人。
見るからに不良、でも簪ちゃんは私には見せない顔をする。それが羨ましかった、ちょっと妬ましかった、だからこれを機にちょっとお灸をすえてやるつもりだった。
でも私のほうがお灸をすえられちゃった………
ほんっとお節介な
「考え?」
「それはな……」
「それは?」
ゴクリとつばを飲み込み話に耳を傾ける。
「今の話、お前の思っていること、全部簪に話してくる」
………………は?
「じゃあ行ってくる」
「え? ちょ、待って! MA☆TTE!」
まるで風のように魁人君は去って行った………
「お姉ちゃん!!」
早! 来るの早!!
「「…………」」
先にどちらかが話さなければならいのはわかっているが話しづらい。
「「あの……!!」」
ようやく喋ろうと思ったけどお互いに言葉が重なる。
「お姉ちゃん、先にどうぞ……」
「いや、簪ちゃんのほうが早かったから先に……」
……………ああもうじれったい! 先に言えばいいのにって思った時彼の言葉を思い出す。
『頭一つ満足に下げられねえ当主の面なんて誰も見たくねえよ! そんなもんないも同然だ!! それに謝りたきゃ普通に謝れ!!』
……………
「簪ちゃん!」
「ひゃ、ひゃい!?」
「ごめんなさい!!!」
「は、はい! ……え?」
「私ね、更識の家を継いだ時に決めたの。完璧であろうと、弱点をなくそうと思ってたの。そうやって自分の弱点を見つめ直していて、私は自分の一番の弱点を見つけた」
「それが私……?」
「そう、でも捨てきれなかった」
「お姉ちゃん……」
「だから………あの………」
「お姉ちゃん?」
「あの時いった『無能なままでいなさい』って忘れてくれないかな?」
私の言葉は震えていた。少しだけ鼻声だった。自分でもわかる。私は今泣いている。
「お姉ちゃん……」
簪ちゃんの声も震えていた。
「私こそごめんなさい!!」
「…………え?」
「勝手なイメージで、勝手に壁を作って、ずっと…避けて……もうずっと昔から私のことなんか嫌いになってたと思ってた………」
その言葉を聞いた瞬間、私の中で何かが切れたかのように涙があふれ出す。
「私、ダメな妹だから」
「そんなことない!」
今にも泣き出しそうな簪を楯無は抱きしめる。
「あなたは、私の大切な妹よ。とても強い、私の自慢の妹……それに『人間なんて絶対完璧にはなれない。だから集まることでその欠点を補おうとしている』って魁人君も言ってたし……」
そう言い簪の頭をなでる。すると簪も我慢をしていたのだろうか、泣き出してしまった。
「お姉ちゃん……おねえちゃぁん……」
「うん」
二人だけしかいない道場。そこではやっと長年のわだかまりが解けた姉妹が、お互いの存在を確かめあう。
扉の後ろに隠れていた魁人だけが、二人を優しく見守っていた。
♦
時間にして三十分たっただろうか。もう外ではカラスが鳴いていた。
「ねえ簪ちゃん?」
「なに?」
「魁人君が出て行ってからここに来るのが早かったけどどうして?」
「あー、それはね、本音が『たっちゃんとゴックーが喧嘩するかも~!!』って私にいってきたから急いでここに来たの」
なるほどそういう理由ね………あれ? ちょっと待って!?
「か、簪ちゃん? 一応聞くけどいつからいたの!?」
「えっと……謝りたいのあたり?」
「あ……ああ……」
聞かれてたの!? 殆んど全部!?
「あ、そうだ。魁人! お礼言わないと!」
「ちょっとま、待って簪ちゃん!」
ああ! 行っちゃった!
♦
「よし! 大体終わった!」
楯無と喧嘩した後俺はほうり出したISの整備を終え一息つくところだった。
バァン!
「魁人ォ!」
「はい!?」
勢いよく扉を開け入ってきたのは簪、息を切らすほど急いでいたのか。
「ありがとう!!」
勢いよくこっちに抱きつき感謝の言葉を言う。しかし。
「痛ででででででで!!」
楯無との喧嘩の時はやせ我慢していたが実は結構掌打を受けた関節が痛い。
「あ、ごめん!」
「い、いや大丈夫だ。でなんかようか?」
「あ、そうだった。ありがとう! 魁人のおかげでお姉ちゃんと仲直りできた! 本当にありがとう! このお礼はいつか必ずするから!」
お、おう。それはそうと早く放してくれ、やっぱり関節が痛い。
「|M0)ジー」
ん? 誰かの視線を感じる。誰だ?
「|M0♯)ジー」
「Σ(0w0 )ヴェ!?」
楯無さんが見ていたどこぞのダイヤマークみたく俺をじっと見ていた。
「魁人? どうしたの?」
「(0w0 )ダ……」
「ダ?」
「(0w0 )
「え!?」
こちらが気づくと楯無さんはこちらに歩み寄ってきた。
「( ♯0M0)
え!? ちょっと待ってISは反則じゃない!?
「( ♯0M0)
「待て! 待って! 」
「だが断る。君も待ってくれなかったし」
「うわああああああああああああああああ!!」
「くたばりやがれええええ!!」
「(0w0 )
ドガアアアアアアアアアアアアアン!!!
けたたましい轟音が整備室に鳴り響くのであった………
最後のオンドゥル語ルビが読みにくい方のために翻訳をここに書いておきますね。
「(0w0 )楯無さん!! なぜ見てるんです!!」
「( ♯0M0)私は貴様をブッ殺す!!」
「( ♯0M0)簪ちゃんは渡さん!」
「(0w0 )ホントに裏切ったんですか!?」