「あー、痛ってぇ………」
試験で織斑先生に殴られた左頬がまだ痛い……それはともかく。
「来てしまったか、IS学園に」
幸か不幸かはわからないがここから俺の高校生活が始まるのか。
「お待ちしていました、戦国 魁人君」
IS学園につくとそこには試験会場にもいた山田先生が待っていた。
「えっと、戦国君ですよね?」
「? そうですけど……」
「ですよね。すいません、会場と見た時と比べてずいぶん雰囲気が違ったので……」
たしかに、俺は腰まで垂れていた髪をバッサリと切った。あの髪だと乾かすのも洗うのも面倒だしもう伸ばさないでおこうかな………
「それでは体育館まで案内しますのでついてきてください」
はーい。
♦
入学式が終わり今は教室で待機している。
「全員揃ってますねー。それじゃあSHRはじめますよー」
黒板の前でにっこりとほほ笑む女性副担任の山田真耶先生。
(ま、わかっていたがこれはきついな……)
誰だよ俺の席一番前にしたやつみんなの視線を背中に受けてもう気が気でないよ。隣の男子も災難だな。
「それでは皆さん、一年間よろしくお願いしますね」
「よろしくおねがいします」
山田先生の言葉に返事をしたのは俺だけだった。いやみんな挨拶ぐらいしようぜ。
「じゃ、じゃあ自己紹介をお願いします。えっと、出席番号順で」
俺が返事したことが嬉しかったのでしょうか、若干微笑みながら言う。
「それでは、相川さん」
「はい」
にしても自己紹介か、去年の今頃はロシアから帰ってきたばっかで日本語で自己紹介できるようによく練習したものだ。
「織斑一夏くんっ」
「は、はいっ!?」
順番になっても何も言わない彼に山田先生が呼び掛ける。それにより声を裏返らせてしまっている。クスクスと笑いが巻き起こる。
「あっ、あの、お、大声出しちゃってごめんなさい。お、怒ってる?怒ってるかな?」
副担任の山田先生はなぜかあたふたとしている。先生なんだからもっとどっしりと構えていればいいのですよ。
「えー……えっと、織斑一夏です。よろしくお願いします」
立ち上がって自己紹介をするもう一人の男子――織斑一夏。だが、いかんせん。そんな自己紹介では十代女子たちは満足するわけがないだろ。見てみろ。もっと喋ってオーラが半端ないじゃない。
「…………………」
織斑 一夏は無言。おっと、深呼吸した。何か言うのかな?
「以上です」
がたたっと驚いて思わず数名ずっこける。おいもうちょっとなんか喋れよ。
スパアンッ!
「いっ――!?」
するとそこに現れた黒のスーツにタイトスカートで鋭い吊り目の女性が織斑一夏の頭に出席簿が叩き込む。
「まったくお前は自己紹介もろくにできないのか」
「げぇっ、関羽!?」
パアンッと無慈悲な一撃が再び振り下ろされる。
「あ、織斑先生。もう会議は終わられたんですか?」
「すまなかったな、山田君。クラスへの挨拶を押し付けてしまって」
なんだ?さっきまで人の頭叩いてた人とは思えない変容だな。
「い、いえ、副担任ですから、これくらいはしないといけませんから……」
さっきの涙声はどこえやら、山田先生は若干はにかんでいらっしゃるし。
「諸君、私が担任の織斑千冬だ。君たち新人を一年で使い物になる為のIS操縦者に育てるのが仕事だ。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。私の仕事は若干十五歳を十六歳までに鍛え抜くことだ。逆らっても構わんが、私の言うことは絶対に聞け。いいな?」
なんという無茶苦茶な。これが教師のセリフですか皆さん?
「キャ~~~~~! 素敵ぃ! 本物の千冬様をこの目で見られるなんて!」
「お目にかかれて光栄です!」
「私、お姉様に憧れてこの学園に北九州から来ました!!」
すまない。今のセリフのどこに歓声を上げる要素があった?
「あの千冬様にご指導いただけるなんて嬉しくも本望です!」
「私、お姉さまの命令なら死ねます!」
あまりの声援に当の本人も鬱陶しそうにしている。あとそう簡単に命を捨てるな。
「……はぁっ。毎年毎年、よくもこれだけ馬鹿者共がたくさん集まるものだ。ある意味感心させられる。それとも何か? 私のクラスにだけ馬鹿者だけを集中させるように仕組んでいるのか?」
毎年これとは織斑先生も大変だな。というか、これだけ言われれば女子たちも目が覚めるだろ。
「きゃあああああっ!お姉さま!もっと叱って!罵って!」
「でも時には優しくして!」
「そしてつけあがらないように躾をして~!」
覚めないのかよ………
「で?挨拶も満足に出来んのか、お前は」
「いや、千冬姉。俺は――」
パアンッ!本日三回目。これで織斑 一夏の脳細胞は一万五千個死んだな。
「織斑先生と呼べ」
「……はい、織斑先生」
「え……?ひょっとして織斑くんって、あの千冬様の弟なの……?」
「それじゃあ、世界で男で『IS』を使えるっていうのも、それが関係してるのかな? あれ? でも、もう一人いるよね」
まあ、いるよ、一応。
「おい、お前も自己紹介をしろ戦国」
ん? 俺の番か。
「戦国 魁人です。趣味は音楽鑑賞とISの整備です。一年間よろしくお願いします」
これでいいはずだよな?
「織斑、これぐらいの自己紹介はやれ。それではSHRは終わりとする。諸君らはこれからISの基礎を半月で覚えてもらう。では五分後に授業を始める。いいな」
やっとSHRが終わった……
♦
一時間目のIS基礎理論授業が終わったが教室中の女子はともかく外から俺や織斑をまるでパンダのように見てくる。
「なぁ、ちょっといいか?」
「ん? えっと……織斑 一夏だっけ?」
「覚えてくれたのか?」
「まぁな、これからよろしくな」
「あぁ、気軽に俺のことは一夏って呼んでくれ。よろしくな戦国」
「あぁ、じゃあ俺のことは魁人でいい」
自己紹介を終えたあたりで一人の生徒が近づいてきた。
「ちょっといいか?」
声をかけてきたのはポニーテールの女子。
「すまないが一夏を借りていいだろうか?」
「どうぞ」
と返事をすると二人は廊下へ出て行った。
……あれ? みんな俺のこと見てる?
『ほら、早く行きなよ』
『ちょっと待ってよ……!』
まあ、あたりまえか俺と一夏以外は全員女、というよりこれまでISは女性にしか扱えなかったことからこのIS学園は女子高同然なのだから当然と言えば当然だな。
それによりあっという間に『女性=偉い』という構図は浸透、この十年でものの見事に女尊男卑社会の完成というわけだ。
そんな中に対立の立場である男がいるのだ興味がわかないほうがおかしいというものか………
「やっほ~、ゴックー」
「ん?」
声のきこえた方を振り向くと袖の長い制服を着た女子生徒がいた、間違いないな。
「本音か?」
「そ~だよ~」
『誰? あの子?』
『知り合い?』
「本音も一組だったのか、知り合いがいるってだけでなんか安心した」
「そうなの~? あっそうd」
キーンコーンカーンコーン
ここでチャイムが鳴り廊下にいる生徒達が蜘蛛の子を散らすように散らばる。
「本音、あとでいいか?」
「い~よ~」
スパアンッ!
「とっとと席に着け、織斑」
「……ご指導ありがとうございます、織斑先生」
何やってんだ
さてここまで書けたか………
次はいよいよあの金髪の子だな。