たったひとりの星   作:落葉 剛

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永劫を測る装置


梵天之塔

惑星ブラフマンにはひとつの装置がある。

名は梵天之塔。

三本の支柱があり、真ん中の柱に円盤が六十四枚あり、下から大きい順に嵌め込まれている。

単位時間に一度、円盤が隣の柱に移動する。

移動した円盤の上にそれより大きな円盤が乗ることはなく、円盤はひたすらそのルールにしたがって移動を続ける。

この六十四枚の円盤がすべて隣に移るまでの時間が永劫であり、要はこの永劫の時を測るのが梵天之塔である。

 

円盤一枚が移動するのに一刹那。

隣の柱に移動する手順の数は2^64-1(2の64乗マイナス1)回。

一刹那を地球で言うところの一秒にするとすべての手順が終わるのに約5856億年かかることになる。

 

これが永劫の時。

世界をあまねくすべてのものが完全に輪廻する期間である。

この永劫を測る装置と共にいると言うことはこの世の全ての循環を見届けなさいと言うことだと勝手に解釈している。

 

たまに梵天之塔を眺めながらブラフマンと語らい、永劫を待つのも良かろう。

 

私はただひたすらに待った。

だがこれを見るだけで5000億年も待てないので論理式望遠鏡を使って他の星の輪廻でも眺めてみることにした。

 

 

 

大犬座α星シリウス。

第五軌道上の第四惑星に論理演算処理上、文明の存在を確認。

早速覗いてみる。

知的生命体の群れを発見。

一応すでに国家が成立し国家間の争いが発生している頃か。

武器に火薬を使っている辺りようやく科学が発展し始めた頃のようだ。

この星には物質的ではない星に内在する情報としての梵天之塔がある。

論理式望遠鏡だからこそ捉えられる姿だがこの塔の刻む時はブラフマンの梵天之塔と違う。

 

次にオリオン座β星ベテルギウス第八軌道旧第六惑星。

この星の惑星は親星であるベテルギウスの経年変化による巨大化でもはやこの第六惑星と第八惑星しか残されていない。

第七惑星はもともと質量の小さい惑星だったため小惑星の衝突により粉々に砕けてしまった。

もともと文明があったのは第三惑星だったが巨星化によって第六惑星に移った。

つまりこの星の知的生命体は星間移動が可能である。

非常に高度な科学文明を築いてはおるが残念。

輪廻の節目を示す彼らの梵天之塔の刻む時はすでに残り少ない。残り数百年から千年の間に彼らは何をするのか楽しみでもある。

 

 

 

そう、梵天之塔を持つのはブラフマンだけではない。

万物になんかしらの情報として内在するリミッターだ。

 

各個がもつ永劫の時間はばらばらだがそれは各々がもつ時間の単位「刹那」が違うためであり64枚の円盤が移動しきれば次の輪廻へと移ろい行くだけである。

 

結局は永劫はみな必ず持っていても、永遠は誰も持っていないと言うことだ。

我々でさえそれは同じ。

だからこそ梵天之塔は真理のひとつである。

 

 

 

 




蛇足



刹那:定義は経典によって異なるため元来特定の時間を示す概念ではなかったようである。
現代語としての刹那は一瞬、非常に短い時間の事。

永劫:本来は始劫(しごう)・成劫(じょうごう)・壊劫(えごう)・終劫(しゅうごう)の四つの時代を繰り返すと言う観念から、この四つの時代を1セットにしたものを永劫と言う。
永劫の具体的な時間は作中にある定義の通りだが、刹那の定義によって具体的な数字は大分変わってくる。
約60億年と言う説もある。
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