戦姫絶唱シンフォギア 孤独な槍を纏いし者(修正中) 作:漣華
あの三人の少女達との戦闘から時間がたちノイズによって誰も使わなくなった古びたアパートの一室で少女が一人眠っていた。
この少女の名前は立花響、先程奏達と戦っていたもう一人のガングニール適合者。
この立花響は幼少期の頃親に捨てられ孤独となった。ある施設に保護された響はそこで地獄のような実験を受けていた。
奏と同様その体にLinkerを投与、激しいバックファイアに襲われるも何とか第三号聖遺物ガングニールの正規適合者となった。
しかしその施設はある完全聖遺物の暴走により数人を残し壊滅にまで至った。その際、響はガングニールを持って逃亡、そして各地で仕事を請け負いこなしていき今に至る。
私が今居るところは酷く暗く誰もいない孤独の世界だった。その世界で私はずっと暮らしてきた。あの地獄のような実験を耐えガングニールを手に入れた。
施設から逃げ出し生きるために仕事を請け負った。そんな私を誰も救ってはくれなかった。誰も助けてはくれなかった。
帰る所もいていい居場所もない私はずっと悪夢にうなされていた。その悪夢は深い闇の中で私の姿をした何かが私の声でこれまでやってきたこと、これからもそれが続くことそれが全て何もかも無駄である事を大声で笑いながら言ってくる。その後、闇にひきづりこまれそこで私は夢から覚める。
「ッ!?……クソッ!またこの夢か。」
私は激しく肩を上下しながら胸を抑えた。私の耳に心臓が激しく鼓動しているのが分かるほどバクバクと聞こえる。
しばらく深呼吸しやがて呼吸もうるさかった鼓動も治まり何事も無くなった。
「この国に来てこの夢ばっかりだな。この国なんか少しの間孤児院に居たくらいでここでは何もしてないはずだけど。嫌な汗をかいたから流してくるか。」
立ち上がり衣服を脱ぎシャワーを浴びにいった。ここは電気は通っていないが水道は通っていたので冷たいが汗を流すくらいは出来た。汗を流し終わり脱ぎ捨てた下着と黒いホットパンツ、黒のタンクトップに灰色のパーカーを着て必要最低限の荷物を持ちその部屋を後にした。
一方ある司令室では響との戦闘で体のあちこちに包帯などを巻いている奏、翼、クリスが目の前のモニターを見つめていた。そこにはある少女のプロフィールが写っていた。
「これがあいつが歩んできた人生かよ。」
「なんと…いう事だ。」
「こんなの見てられるか!?」
モニターには響のプロフィールが事細かく書かれていた。
「四歳の頃に親に捨てられ孤児院に入り、その一年後行方不明、その十年後各地で姿を確認されていましたが三カ月前行方をくらましていた彼女がまさかこの国にいるとは。」
オペレーターの男性、藤尭朔也がそう言った。
「彼女の姿を監視カメラで探していますが全く見当たりません。司令、どうしますか?」
オペレーターの女性、友里あおいが奏達の後ろに立っていた男、風鳴弦十郎に聞く。
「根気よく探すしかないだろう。彼女を確保しこの十年間何があったのか聞かなければならないからな。」
「旦那、あたしも探すよ。あいつの事が心配だからな。」
「奏!?」
「奏さん!?」
二人が奏の言ったことに驚いた。二人の反応を見て奏はその理由を説明した。
「あいつの目が昔のあたしに似てたからだ。翼達と出会う前のあたしはああやってひとりで戦ってた。その時のあたしはあいつと同じ目をしてた。だからほっとけない。旦那!あたしも捜索に参加させてくれ!」
奏は弦十郎に頭を下げた。しかし奏が捜索に参加する理由は他にある。二人はそんな事知る由もなく驚いていた。
弦十郎は組んでいた腕を解き奏の頭にその大きな手をそっと置いた。
「分かった。では奏君、お前も捜索に参加してくれ。」
「旦那ありがとう。」
「奏が参加するなら」
「あたしらも!」
「駄目だ。お前らには学校があるだろ?だからここはあたしに任せてくれ。」
「奏の言うとおりだ。お前達には学校がある。だから俺達に任せてもらおう。」
奏と男がそう言い翼とクリスは何か言おうとしたが口を紡いで頷いた。奏はモニターに振り返り響の幼少期の写真を見つめていた。
(こんな所にいたのか、響。)
私は先程までいた部屋を出て街をうろついていた。あまり顔を見られないようにパーカーのフードを深く被りポケットに手を入れて歩いていた。
しばらくうろついて公園のベンチに座りこれからの事を考えていた。
(これからどうするか?なんとなく故郷が見たくなったから帰ってきてみたけど全く懐かしさも何も感じないし敵は増えるし予想通りといえば予想通りだけど。)
私は再び立ち上がり当てもなく歩き出そうとした。しかし立ち上がった瞬間、軽い立ち眩みを起こし再びベンチに座り込む。
なぜ立ち眩みをしたのか原因が分からずどうしようかと迷ったその時、私のお腹から可愛い音が響く。
そこで私の立ち眩みの原因が判明した。
「ウッ、そういえば私、まだ何にも食べてなかった。」
そう、私は昨日の戦いの前から何も口にしていないのだ。その証拠に体に思うように力が入らなかった。
パーカーやホットパンツのポケットを漁り中から日本の硬貨を取り出すがそこにあったのは白い硬貨と茶色い硬貨だけだった。
「Shit!」
私は小さくそう言い、仕方ないと諦めて空腹の状態で町へと歩き出す。
途中、すれ違う人達にお腹の音を聞こえていないか気が気では無かったが次第にそんなことを考えるのもしんどくなってきた。
しばらく歩いて空腹も限界となり商店街の細い路地裏へと最後の力を振り絞り入ったのはいいがさすがにもう無理と思い壁にもたれ掛かる。
もたれ掛かって座ったのはいいが次第に落ち始める意識、ぼんやりとし始めた視界。
すると視界の中に黒い影が入り込む。私はお迎えが来たと思った。
「ちょ……ぶ!?ね……て!」
黒い影から発せられているだろう声らしき物が聞こえるがもうそんなのどうだっていい。
今はもう眠たい、ただそれだけだった。
そこで私は意識を完全に落とした。
再び目を開けるとそこは見たことない部屋の天井だった。
「知らない天井だ。」
起き上がろうとすると頭痛が起こり頭を抑える。
すると腕には丁寧に包帯が巻かれていてよく見ると黒いタンクトップの下にも包帯が巻かれていた。
「治療…されてる?でも、なんで?てかここどこ?」
私は今、自分が置かれている状況が分からず混乱するしか出来なかった。
外の景色を見ようと頭痛に耐えながら立ち上がろうとするも足に力が入らず音を立てて倒れてしまう。
するとドタドタと大きな足音を立てて黒い髪を白いリボンで結んだ制服らしき服装に身を包んだ私と同年代くらいの少女が焦ってやって来た。
「あ!ちょっとまだ無茶しちゃ駄目だよ!」
少女は倒れた私を支えて優しく布団に戻し水の入ったなんか茶色い丸い物に浸していたタオルを絞って私の体を拭いてくれた。
私の体を吹き終わり再びタオルを水の中へと戻した少女は布団をまた被せる。
「……Thanks you」
「え!?嘘、外国人!?でも顔は明らかに日本人だよね!?」
思わず英語で感謝の言葉を述べてしまい戸惑ってしまった少女。その様子を見ていて少し楽しいのでそのまま見ていようかと思ったその時、グゥ~という音を立ててお腹が盛大に鳴ってくれた。
私は顔を真っ赤にし、少女は少し動きが止まってやがて笑い出した。
「待ってて。すぐに美味しい物持ってきてあげるから。」
そう言って部屋を出た。その間、私はもう死にたくなってきた。
知らないししかも今日あったばかりの少女にお腹の音を聞かれたのだ。恥ずかしくて死にそうにならない訳がない。
そんなことを考えながら毛布にくるまっていると今度は穏やかな足音で少女がやって来た。
「はい。ふらわー自慢のお好み焼き。私の親友が好きなのを頼んできたけど大丈夫だった?」
少女の問いに頷くだけで答え、差し出されたお皿に載った料理を見つめる。
お皿と一緒に差し出された長い物を持つが使い方が分からなかった。
「あ、もしかして箸の使い方分からない?じゃあ食べさせてあげる。」
箸と呼ばれる物を器用に使い少女が切り分けた物、お好み焼きを口元に運ばれる。
毒を盛られている可能性があるため、警戒するもお好み焼きから発せられる匂いに空いたお腹が負けそうになる。
しばらく食べるか食べまいか葛藤するも結局は空腹に負けてお好み焼きを食べてしまう。
だが結構熱く昔から猫舌の私は非常に毒だった。
その事に気が付いた少女がお好み焼きを飲み込んだ後に水を飲ませてくれその後のお好み焼きは自分の息を吹き掛け冷まして食べさせてくれた。
その後、黙々とお好み焼きを食べる私を見て少女は微笑んで見ていた。ある程度食べ終えると私は少女にあることを聞くことにした。
「ねぇ、ちょっといい?」
「ん…ん?えぇ!?日本語喋れたの!?」
「誰も喋れないとは言ってない…」
少女の反応にそう返し私はさっき聞こうとした事を言ってみる。
「何で…助けたの?」
「それは…私ね昔から人が困ってるのを見ると体が勝手に動いちゃって、それでよく周りからお人好しだ~いい人ぶってる~なんて言われてさ。でもそんなことを言われてもさやっぱり人が困っているのなんて見過ごす事なんて出来ないから。」
「…つまりはそのお人好しが働いたって事?」
「そうなっちゃうね。アハハハ。」
私の言葉に頬を掻きながら苦笑いする少女。
私は困ってるのを見過ごす事が出来ない、その少女の言葉に私はズキッと心が痛む。
そして自覚した。この子は私とは対極の存在だと。
「別に馬鹿にはしてない。だけどあんたに一つだけ忠告しておく。」
「忠…告?」
「行き過ぎた良心は時として誰かの心を傷付ける。それだけは心に刻んでおくといい。」
近くに綺麗に折り畳まれた私の衣服を見つけ私はそれに着替え立ち上がる。
するとけたたましいサイレンが鳴り響いた。
「なにこれ?」
「ノイズ警報だよ!まさか知らないの?」
「う、うん。」
「そんなことよりまずは逃げよう!」
少女は私の手を取り引っ張ると階段を下りてその先にいた年配の女の人と共に外へ出た。すると外では色んな人達が逃げていた。
「さすがに誰かが時間稼ぎしないと皆死ぬな。」
「え?何言ってるの?」
「悪い。二人で逃げて。」
私は少女の手を離して逃げている人達とは逆方向に走っていった。
ある程度走ると商店街の入口へと出てそこにはノイズが壁や道路一面にいた。
「今回は小型ばっかりか。でもさすがに空中にいる奴はきついかもな。」
そんなことを言いながら胸からペンダントを取り出した。そして聖詠を口にしようとしたがむせてしまいそのすきにノイズが攻撃して私は避けようにもすぐには動けなかった。
「おぉぉぉぉ!」
ノイズの攻撃が当たる直後、赤いTシャツの男が現れ目の前の地面を足の踏み込みだけでノイズの攻撃を防いだ。そして赤いTシャツを着た男は私を抱えて屋上まで飛んだ。
「大丈夫か?」
降ろされた屋上で聞いてきた。すると空のノイズが攻撃してき私は即座に聖詠を歌う。
「Balwisyall Nescell gungnir tron」
聖詠を口にしガングニールを纏い攻撃してきたノイズをカウンターで炭へと変えた。
「この通りだ。私なんかより他の奴らの救助に向かって。」
「しかし!君一人だけでこの数を相手になど!」
「じゃあなに?あんたが代わりに戦う?触れれば一撃で死ぬ弱いあんたが。」
「クッ!」
私は反論しようとした男を制しノイズを自分だけに向かせるように大声を出して屋上を飛び降りた。
「俺たちには君も守らせてくれないのか。立花響君。」
男は私の戦う姿を見てそう呟いた。
「これでラスト!」
ノイズを町から遠ざけ丘辺りに誘い込んで倒し最後に残ったタコ型ノイズの触手を避け、腰のバーニアを吹かし足のジャッキを引き延ばした。
タコ型ノイズの長い頭部にボレーキックの要領で蹴りを入れそれと同時に引き延ばしたジャッキを高速で戻しその威力で跡形もなく消し飛ばす。
「ただのノイズが私に勝とうなんて百万年早いね。」
ガングニールを解除し、私は空を見上げる。
見上げた空は太陽により緋色へと染まり落ちゆく太陽は海すらも染め上げていた。
「名前、聞いとけばよかったかな。」
あの子は無事に逃げたのだろうか。そんな心配をしながら町を見つめる。
すると河原に二人の少女がいるのを見つけ私はそれが昨日あった少女と先程助けてもらった少女だと気付く。
「行き過ぎた良心は時として誰かの心を傷付ける…その逆はもっと酷い。堕ちすぎた邪心は常に誰かの心を傷付け続ける。」
仲良く笑い合う二人を見つめ私は、静かに去って行く。
この町から争いの種を消し去る為に。
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