Fate/Grand Order 創作特異点 極限閉塞闇夜 平城京   作:三代目盲打ちテイク

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第二節 平城京
第二節 1


「ガッハハハ! おら、のめのめ!」

 

 戦いが終われば、宴会。

 平城京までは目と鼻の先であったが、先の戦の功労者たちをねぎらうべく宴会が始まっていた。

 

「こんなところでまた酒盛りとは……」

「そういうなよ阿礼、どうせ都に入っちまえばこんなこともできなくなるんだ。だったら最後にぱーっと行こうぜ?」

「まったく、そういう言い方があなたの小賢しいところなのです。

 藤丸殿、彼はこういう奴なのであまり気にしないでください」

「いえ。こういうのは嫌いじゃないから……」

 

 死者もいた。少なからず被害が出たというのに、皆が笑っている。

 

「正直者ですね。でしたら、この宴の最中、大伴を見ておくと良いのです。きっと、この理由がわかりますよ」

「?」

 

 それは一体どういうことなのだろうか、と聞く前に、

 

「お、お館様ー!」

 

 千代女の声が耳にとどく。切羽詰まった声であったために何事か起きたのかと藤丸がそちらを見たら。

 

「えっと、たのしそう、だね?」

 

 男衆に囲まれて酒を注がれては飲まされて悲鳴をあげてる千代女がいた。

 

「せっしゃ、しにょびだからと、ひくっ、あまりのめませにゅといっているのに、いっぱいにょめとぉ、おやかたさまぁ」

 

 なんとも酔っぱらった様子で若干呂律が回っていない千代女。

 どうにもこの時代の酒などは神秘が現代以上に濃いらしい。あとは日本というのは酒で神を酔わせる逸話が多いのもあって、どうやら酒という概念が非常に強いらしい。

 そのためサーヴァントでもある程度影響を受けるようだ。

 

 これ以上はあまり飲みたくないらしいのだが、まじめな彼女は断れずに飲んでいる。サーヴァントだから死ぬことはないだろう。

 それに、どいつもこいつも楽しそうなのだ。彼らの感謝の示し方なのだろう。それを断るというのも悪い。それに、こういった時でもないと千代女は藤丸から離れてゆっくりできないだろう。

 

 そのために酒でつぶすというのはいささか乱暴すぎるだろうが、それくらいがちょうどよい。彼女は少し気真面目で責任感が強すぎる。

 少しは羽目を外しても文句は言われないだろう。倭建命によれば、今のところこちらに近づいてくるものはいないという。

 

「問題ない。何かあっても、主を護る」

「ありがとう倭。今回はちゃんとこっち側にいるんだね」

「主がいた方が良いと言っただろう。それを忠実に遂行しているだけだ」

 

 小碓命から倭建命へ、彼の霊基は変容している。それが宝具効果であり、彼本来の霊基はこちらだとも言われた。

 人の形をした命令を遂行するだけの、道具。

 

「……」

 

 けれど。

 

「どうした、主。なぜ笑う」

「……いや。みんな楽しそうだなって」

「宴はいい。笑みがある。護ったのだと私の『心』が言っている」

「そうだね」

「おーう。なにこんなとこで油売ってやがる。さっさとおまえらもこっちきて食えや飲めやで、騒げよ」

 

 大伴がどんと肩に手を回す。

 

「大伴さん」

「おう、よくやったな。すごかったんだろ? 聞いたぜ」

「いえ、全部ヤマトがやってくれました」

「おう助かったぜ」

「何も聞かないのだな」

「何を聞けって? アンタがそれなりにデカくなってることか? おいおい。そいつを聞いてなんになるよ。何の得にもなりゃしねえし。この国にゃ、人の姿になり変わる神様やら化生やらたくさんだ。今更大きくなったくらいで何を驚けってんだ。

 それにだ、兄ちゃんらはオレらに協力した。ならもう同胞ってことでいいじゃねえか。気にすることはなんもねえ。それで裏切られたらそん時だな。なに、阿礼のやつがなんとかしてくれるさ。ガハハハハ!」

「まーた、適当なこといってやがりますねこいつは」

 

 阿礼も大伴の言葉を聞きつけてやってきたようだ。

 

「だって、そうだろ? なんだかんだ、右大臣様にまでなったしな! っと、それじゃあオレはっと」

 

 ひとしきり騒いだあと、大伴は一人宴の席を離れる。

 藤丸はこっそりとそれについていった。

 

「ついてきたな?」

「バレてたか。どこへ?」

「ちょいとな。こっちだ。テメェが来ても誰も文句は言わねえよ」

「?」

 

 彼についていくと、そこにあったのは塚だ。

 お墓のようなもの。彼らの弔いのあと。

 そこにはいくつもの酒やら食料やらが供えられている。千代女や倭建命のものもあるのだろう。

 

「ここは……お墓?」

「ああ、そうだな。ここに眠ってる。すっかり遅くなったちまったが、ま、許してくれや」

 

 そう言って大伴は酒を供える。藤丸も彼と同じように供えて祈りをささげた。

 

「オレがもっとしっかりしていれば……」

「なに言ってんだ。兄ちゃんはなにも悪くねえよ」

「でも……」

(アン)ちゃんはほんと難儀な性格してるな。気にしなくていいんだよ。兄ちゃんらは旅人だ。いろんなところを回っただろ。場慣れしてるのをみりゃそれなりに修羅場をくぐったはずさ。ならこういったことは日常茶飯事だろう」

「そうだけど……」

 

 それでもあきらめたくはないし、割り切ることは出来そうにない。それでもやるべくことがあるから前に進んでいる。

 死にたくないから前に進んでいる。明日を投げだすことは、藤丸立香にはどうやったって出来ないのだから。

 

「だったら笑って送ってやるのさ。そうすりゃ、お天道様になって見守ってくれる。泣いて送っちゃあいつらに悪いだろ?」

「……そっか」

「おう、そうだそうだ。別れは笑って、が一番だ。湿っぽい最期なんざ、御免被る」

 

 何があろうとも、別れは笑って送り出してやろう。そうじゃねええと彼岸で迷う。迷わしてはいけない。そうなればこの時代、魑魅魍魎にとりつかれた亡者が国を亡ぼす。

 だから、笑って、騒いで、みんなで送るのだ。

 

「はは。よし、じゃあ、戻って騒ごう!」

「応! 飲んで騒いで、明日にゃ都だ。案内してやるよ。阿礼は忙しいだろうが、ま、少しくらいいいだろ」

 

 夜は更ける。

 朝日が昇るまで、ずっと笑い声が響いていた。

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 明日も早く、平城京の正門、羅城門へ一行は辿り着く。塀や堀もあり侵入は容易ではないが、阿礼がいれば何一つ問題なく平城京へ入ることが出来た。

 

「うわぁ、凄いな」

「人でいっぱいでございますな」

「…………」

 

 今の時期はちょうど人が多い時期だという。確かに現代とは比べるととても人通りは少ないが、それでもこの時代では最大の国際都市となる都である。

 遷都して未だに日が浅いが、その片鱗は今でも見られる。いいや、多すぎるくらいか。

 

「なんだか、どこかで見たような人が多い気がするような?」

 

 露店に立っているのは、カルデアにもいる大江山の鬼に似た女性。

 

「あらあら。そんなにうちのこと見て。ふふ、いけませんよて。うちには旦那がおるさかい。坊ちゃんはこれで堪忍しておくれやす」

「あ、ありがとうございます」

 

 色気だけがヤバイ。とにかくヤバイ。

 あとロリじゃない。うん、似てるだけの人だ。

 

「お館様……」

「違うからね!?」

「問題ない。毒は入っていない」

「そういうことでもないからね!?」

「おー、いいじゃねえの。おーい、店主、オレにもいっちょめぐんじゃくれないかね?」

「おや、そいつは駄目だねぇ。右大臣様を護衛してきた大将様だ。金は持っているんじゃないかい?」

「おっとバレてら」

 

 などとどうにも似たような人がいる気がするのはどういうことだろうか。たんに似ただけの人か、あるいは――いいや、考えるのはあとだ。

 

「えっと、ここまでありがとう。オレたちは宿でも探すよ」

「そうかい? なんなら阿礼の屋敷に泊まってってもいいんだぜ? 俺らはそのつもりだしな」

「また、こいつは家主のことをまったく意に介しませんね。でも、貴方なら良いです。どこか、あの人のような雰囲気を感じますので」

「お、これは脈ありか? 兄ちゃん、和歌でも送ってみたらどうだ?」

「ふざけてるなら放り出すです。一先ずここで別れてまた、使いのものをやるです。大伴を残していくので、宿が決まったら言うのです」

 

 そう言って阿礼は護衛たちと平城京の大路を来たへと向かっていった。平常宮という天皇の座す場所へ征くのだろう。いわば政治の中心に顔を出すようなもの。

 彼女を見送ってから。

 

「さて、それじゃあ宿を探すかね。金はどんだけ持ってる?」

「あまり」

「だろうな。だろうな。そこでだ、阿礼から預かってる。まあ、兄ちゃんたちへの礼の一部だな。それなりにいいとこに泊まれると思うぜ」

「いいのかなぁ」

「気にすんな。助けられた礼だからな。受け取らにゃこっちが困っちまう」

「それじゃあ、遠慮なく。それにしても宿か。どういったところがいいかな」

「こちらには赤子もおります。なぜかお館様から離すと泣きますので、良いところが良いかと」

 

 竹林で拾った赤子は、藤丸から話すと泣きだして手が付けられなくなる。そのため、誰かに預けるのは難しく藤丸がいつも背負うことになっている。

 

「引き取ってくれる人がいるといいんだけど」

「ですね」

 

 などと話していると、先ほどの露店の女店主がやってくる。

 

「坊ちゃんら宿を探しとるん? 実はうち宿なんやけど泊っていかん?」

「いいのかい?」

「良いに決まってるやろ。ほな、行こか」

「オレの意見は?」

「はっはっは。男なら流されるままよ!」

 

 それでいいのかなぁ、などと思いながらも彼女について行けば、かなり大きな宿へと案内される。

 

「へぇ、随分といい宿じゃねえか。最近出来たのかい?」

「ええ。最近出来た宿なんで、客がおらんの。お兄さんは有名人やさかい。うちに泊まったって宣伝させてくれるなら、この坊ちゃんたちの宿代まけても良いよ」

「良いぜ。そういうことならな」

「ほな、行こか。部屋は一等よい部屋にしてあげるさかい。ああ、赤子のことは気にせんでええよ。うちらみんな赤子はだーいすきやから」

 

 その姿と声で言われるとぞくりとしてしまうが、スムーズに拠点が見つかるのは良いことだ。

 

「此処はいいところだ」

「ヤマト?」

「此処はいい。霊脈の上だ。それに吉兆の上でもある。ここなら魔性は近づけない」

「倭殿の意見に賛成で御座る。通りの隅で御座いますし、他に大きな建物がないので、上からも入られないでしょう。サーヴァントは別でしょうが」

「ならここにしようか。でもその前に――」

 

 女性には言っておこう。

 

「オレたちが泊ってると危険かもしれません。それでも大丈夫ですか」

「あら、そないなこと、気にせんでええよ。いろんな人が都にはおるさかい喧嘩なんぞしょっちゅうやし。なにより、愉快なことがおこるんならうちは大歓迎どす。むしろずぅーっと泊っていってくれても構わへんよ」

「なら、これからしばらくやっかいになります」

 

 露店の店主で女将だった女性。名は朱というらしい。朱さんの案内で、藤丸らは部屋に通される。三階の一番いい部屋だ。

 

「こんないい部屋に泊まっていいんだろうか」

「いいのいいの。気にすんなって。さて、それじゃあ、俺は阿礼のやつにここのこと伝えてくるから、ま、自由に観光するなりしてきたらどうだ? 都にゃいろんなもんがあつまる。アンタらの目的がなんであれなにかしら役に立つんじゃないか?」

「そうするよ。ありがとう」

 

 大伴を見送って、荷物を置く。

 

「じゃあ、さっそく見て回ってみようか」

「きゃっきゃ!」

「赤子も行きたいと行っておりまする」

「それじゃあ行こうか」

 

 宿を出て、平城京をぶらつく。相変わらずあの夜からダ・ヴィンチちゃんたちからの通信はない。果たしてここで何が起きているのか。

 聞き込みなどをするまえに、まずはここになにがあるのかを見て回る。

 

「うーん、めぼしいものはないか」

「はい」

「おいしい?」

「おいしいでございまする。申し訳ありません、拙者ばかり」

「良いの良いの。オレも食べたかったし」

 

 色々見て回る途中で色々と買ってしまった。この時代の食べもの。酒もうけりゃ、野菜も魚もうまいときた。そりゃたべにゃ損だ、損だと言われてしまえば、そりゃ食う以外の選択肢はない。

 千代女の交渉で安く買えるのもあって、結構散財してしまった。それに、店主たちは情報通だ。色々な人と関わるだけあって、この平城京で起きている様々なことを知っている。

 

「まだ、其れらしい情報はございませぬが、必ずや」

「まあまだついたばかりだし。焦らず行こう」

「おやおや、可愛らしいねぇ。そちらさん旦那のツレですかい」

「つ、ツレ!? い、いえ、拙者は――」

「おや、違う? お似合いだってのにねぇ」

 

 ふと、道端の薬売りから声をかけられる。陽気そうな薬売りだ。

 

「あなたは?」

「某は、しがない薬売りですよ。お似合いの夫婦さんがいらっしゃるから、精に良い薬なんてどうかと思いましてね? しかし当てが外れたねぇ。まさか夫婦じゃないとは。それじゃあ、これからかい?」

「そうです」

「お館様!?」

「おお、そうかいそうかい! そいつはめでたいねぇ。よし、んじゃ。こいつを持っていきな」

 

 そう言って渡されるのは薬を包んだもの。

 

「これは?」

「唐じゃ愛の妙薬って噂の薬ですさ。こいつを女にかがせりゃ、一発で閨にいけますぜ。ああ、お代は結構。是非、今夜にでも使ってみて下せえ。是非にね、是非に。それじゃ、某はこれにて」

 

 そう言って薬売りはそのままひょこひょこと去って行ってしまった。どこへ行くのか見ようとした次の瞬間には、人波に紛れてわからなくなった。

 

「…………主、あの男には気を付けた方が良い」

「倭? 今までどこに」

「何か妙な気配がして隠れていた。あの男、少し妙な気がする」

「薬は危険かな?」

「危険はない。主が使うと良い」

「いや、オレは使う相手がいないし」

 

 

 ともあれ、妙なことはこれ以外に起きず、夕刻となったので宿へと戻った。

 ふと薬包みを開く。そこには薬は入っていない。だた文があった。

 

 ――異邦の魔術師。もしこの夜を終わらせる気があるのなら、指定の場所まで来い。

 

 ――と。

 




平城京の様子なんぞ、詳しくわからないので、いろいろとヤバイ設定がてんこ盛りだったりしますが、そんなの関係ねぇ、書きたいこと書くぞ!
あ、途中で出てきた酒呑に似ている女将は酒呑と違ってロリーじゃなくて、髪が長いです。

あと平城京の街にはいっぱい藤丸君がどっかで見たような人たちがいますが、これもまたこの特異点の根幹に関わる設定だったりします。
今作で語られるかはわかりませんが。

あと、うたわれるものって良いよね。
あの雰囲気好きな私は、この特異点をわりとそんな感じにしている。
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