忘れ傘とグリモわーる   作:ホワイト・ラム

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さてさて、今回から第2部的な話です。
第一部はオルドグラムの性格や能力を描写しましたが、これからは本格的に目的を持ち動き始めていきます。


魔術師と魔術具とばらまかれた物たち

それは嘗ての遠い、遠い昔の話――まだ魔術が学問として存在していた頃の話――

 

とある小さな国があったとさ。

その国は周りの大きな国に囲まれて居た。

世は戦いの時代、血で血を争い領土を奪い合う争いの時代。

その小さな国の王は狡猾であった。

 

「魔術師どもを集めろ。戦いには薬が必要だ。魔術師たちに薬を作らせるんだ。

他の国に売り払い、我が国は貿易で財を成すのだ」

王の手腕により、小国に魔術師は大量の薬を作り売った。

外の国からくる魔術師も分け隔てなく取り込み、新たな魔術、新たな薬、新たな人員を手にした。当然集まるのは金銀財宝。

そして、その宝物で小国が戦争を裏から操り始めた頃――その魔術師は何処からともなく現れた。

悪い悪い、黄金の力を操る邪悪な魔法使い。

 

 

 

「我らが魔術師達よ、何時までも王の傀儡で良いのか?争いを操る道具で良いのか?

我ら魔術師は力を統合すべきだ。王を打ち倒し、魔術の為の国を作るのだ。

我らが自由に魔術を研究するための理想郷を作るのだ」

邪悪な魔術師が語る言葉は、甘く抗いがたい誘惑。

不思議な魔術で貴重な金をいくらでも生み出します。

これさえあれば、いくらでも研究ができます。

領土が欲しければ、いくらでも奪えばいいのです。魔術師たちはそれができました。

 

魔術の為の国。その言葉に魔術師たちは食いついた。

人は興味に生きる物、人は禁忌を破る物、魔術師たちはお互いの秘術を教え合い、高め合い、無限に魔術に対する探究を始めた。

邪悪な魔術師の、こころの内も知らぬまま。

怪しい笑みを浮かべた邪悪な魔術師に利用されたまま……

 

「魔術師たちよ。何をしている!!」

王が気が付いた時にはすでに遅し――

 

国を壊し尽くす事すら可能な最悪の魔術は完成していた。

 

「王よ、王よ、見るが良いこの力を!」

 

「そうだ、これが我らの力!!」

 

「貴様など、『王』という飾りに過ぎない!!」

 

「この国は、我らの物だ!!」

魔術師たちは、おごり高ぶります。

まだ見ぬ、自身のための国への思いを胸に高ぶらせます。

まずは何をしようか?隣国を滅ぼし巨大な国を作ろうか?魔術を研究するための宮殿を作ろうか?実験に使うための奴隷を集めようか?

 

「いいや、違う。この国は私の物だ」

邪悪な魔術師が、その本性を見せ醜悪な笑みを浮かべます。

 

「ふははは!お前らこそが我が傀儡よ!

お前たちでは、私の足元にも及ばない!

いでよ、我が魔法具たちよ!」

 

邪悪な魔法使いの号令に、様々な道具たちが立ち上がります。

心を持たない、魔術を埋め込まれた道具。善も悪もなく邪悪な魔法使いの指示に従い他の人間たちを倒していきます。そして倒された人は新たな魔法の材料になるのです。

 

邪悪な魔術師は狡猾な魔術師、自身の魔法の為の材料として、王様も、貴族も、平民も、魔術師すらも自身の魔法の餌にしてしまいました。

まるで巨大な怪物が、人間を食べる様にあっけなくみんなみんな、邪悪な魔術師に食べられてしまったのです。

 

残ったのは抜け殻の国。邪悪な魔法使いだけが生き残る国でした。

 

しかし、いくら邪悪な魔法使いがすごくても、一人では生きてくことができません。

だけれど邪悪な魔法使いは止まりません。

たった一人で作った魔法の宮殿で、たった一人で魔術の研究を続けます。

 

それから100年、悪い魔法使いが病気で死んで今度こそ、その国は誰も居なくなったのでした。

 

 

 

 

 

「何これ……」

小傘がげんなりしながら、一冊の古ぼけた絵本を閉じる。

タイトルは『黄金の魔法使い』という、外国の物と思われる本だった。

 

「先日紅魔館から借りてきた本だ。

我がどうにも記憶に穴があるのでな、我と目されている魔術師の童話を触りとして借りてきた。

無論、貴重な魔導書を貸し出せぬという意味のあるだろうがな?」

あまり面白みは無かったと、話すオルドグラムだが――

 

「ねぇ、この『邪悪な魔法使い』ってオルドグラムの事?」

 

「……おそらく、そうだな。全く記憶は無いんだが……

我なら、この魔法使いと同じことを考え実行に移すだろうな」

 

ぞわゎゎ!!

 

「へ、へぇ……そうなんだ……」

小傘が露骨にオルドグラムと距離を開ける。

 

「小傘よ――」

 

「ひゃ、ひゃい!?お、お願いです!!殺さないで!!

な、なんでも言う事聞きますから!!オルドグラム様万歳!!オルドグラム様、最高!!」

がくがくと震え焦点の合わない目で、万歳と続ける小傘。

その様を見たオルドグラムが一歩、小傘を壁際に追い詰める様に歩を進める。

 

「怯えるな。怯えることなどない。

まずこう云った物語とは、得てして大きく脚色される物だ。

それに、最後は登場人物は全滅した、とあるが本として出回っている以上、全滅はあり得ない。

大方、魔術師、王の間で起きたイザコザを大きく拡大して書いたに違いない」

 

「な、なら……私の事、魔法の実験材料にしない?

傘の部分を取り上げて新しい魔法の道具にしない?

心も体もオルドグラム色に染めて、ただただオルドグラムに忠誠を誓うだけの人形に改造しない?」

涙目で、怯えながら小傘が問いかける。

 

「絶対とは言わんが。まぁ、しないだろう。

あと、お前我をどう思っているのか、今度しっかり話し合う必要があるな……」

まさかの言葉に、オルドグラムが若干困ったような顔をする。

 

「それで、さ。オルドグラムはこれからどうするの?

また、この本みたいに……その、悪い事……するのかな?」

怯える様に、願うように小傘がオルドグラムに問いかけた。

 

「ふぅむ……目的か……

当面の目的は、我が作品を蒐集する事だ。

残念ながら、我自身多くの部分が不足している。

魔導書として封印した間、多くの物が失われたのだろう。本来ならば、決してこの失われし部分は手には入らんが、幸運なことにここは忘れられたモノたちの楽園だ。

我が長い時を超え、ここに現れたように、我の力もまたここに集まってくるだろう。

それらを集め、我は我を完全に復活させる……まぁ、そんなところだ」

 

「そっか、自分が欠けてるのって嫌だもんね。

私も何時も持ってる傘が無くなったらって、考えると――」

小傘が困ったように話しだす。

 

だがその内心は大きな喜びに満ち溢れていた。

 

(よかった……捨てたり、誰かを困らせたりしないんだ……

これなら、ずっと私のそばに居るよね?

ってあれ?なんで、私そばに居て欲しいなんて思うんだろ?)

自身のたどり着いた思考を振り払うように、首を横に大きく振った。

 

 

 

 

「さてと!そうと決まれば今日はお祝いだね!!

何か豪華な物を作るから待ってて!!」

何かを誤魔化すように、小傘が買い物袋を手にして家の外へと走っていく。

オルドグラムが声をかけるより早く、まるで逃げるように出て行ってしまった。

 

「ふむ、まぁ良いか。そういえば、()()()もどうにかしないとな」

オルドグラがグリモワールを手にして、魔術を発動させる。

 

「これは、魔力消費が大きいからあまり使いたくないのだが……

まぁ仕方あるまい。礼には礼で答えねば、な。

魔術式(プログラム)起動――『転送させる』」

グリモワールが青い光を放ったと思うと、空中に複雑な魔法陣が形成されていく3秒も掛からず空中には非常に複雑な、魔術のサークルが形成された。

 

「我の使う異端5属性の内の二つ……『生体』そして『魂』。

それらを加え、魔術式(プログラム)に統合させれば――!!」

 

カッ!!と光が瞬き、魔法陣が起動した。

そして円となっている部分の魔術式がゆっくりと扉の様に開き――

 

「へ?わっ!?ぐへぇ!?」

空中――魔法陣の中から正邪が落下してきた。

 

「おお、正邪よ。この前ぶりだな」

 

「こ、このやろ!?つぎは一体何を――って旦那!?

オルドグラムの旦那ぁ!!なんで、ここにってか、ここは?」

きょろきょろと辺りを見回す。

どうやら紅魔館の地下にある牢では無い様だと、安心した様だった。

 

「ここは小傘の家だ、我がお前を魔術でここまで呼んだ。

ふぅ……移動系の術は魔力消費が大きいのが難点だな」

オルドグラムが自身の魔力の枯渇を感じて、召喚した椅子にもたれ掛かるように座る。

 

「えーっと、そんなにその術は魔力とやらを食うのか?

少し、使えればいろんなことが出来そうなんだが……

どういう原理なんです?」

ワープという言葉を正邪は知らないだろうが、うまく使えばかなりの事ができると興味本位で聞いてみる。

 

「ほう、魔術に興味があるか。だが我は弟子を取る気はない。

しかしだ。興味を持った以上教えよう。

『移動』とは一見単純なようで、非常に難しい術だ。

AからB、物を一定の地点で動かすのに必ず距離の分の時間が掛かる。その距離を限りなくゼロにして瞬間で距離を移動したようにする。それがワープだ」

てきぱきとホワイトボードに、様々な文字を書きつつオルドグラムが説明する。

 

「あ、あの……旦那?殆ど意味が……」

 

「この紙を見てくれ。これ自身がこの空間と仮定しよう。

端と端から線を描くとこの線の部分が、移動しなくてはならない距離だ。

だが、紙を折り曲げ紙の表と裏でAとBの地点が接合するようにする。

後は、この部分に小さく穴をあける。そして物体を小さく切り刻み、目的地点で再構成すれば――」

 

「あー!旦那ストップ!!ストップ!!もういいです、もう充分ですハイ。

えーと、あたしはちょっと用があるからこれで失礼します!!」

正邪はオルドグラムの説明を聞き終わる前に、逃げるように走っていった。

 

「ふん――正邪め。逃げたか。まぁいい、我が力が理解されないのもいつも通――い!?」

オルドグラムが自身の脳裏に走ったノイズに、頭を押さえる。

記憶の砂嵐の向こう。

無数の人間と相対する、自身の姿が浮かぶ。

全身から血を流し、足元すらおぼつかない自分。

 

『ふぅわははははははは!!愚か者どもめ!!!我が偉大さが、我が力が理解できんとは!!

我が力は貴様らを大きく凌駕する!!終わらんさ!!貴様らが、いくら束に成ろうとも!!我の体が砕け散ろうとも!!必ずや、神すら奪う力を手に戻ってくる!!』

そして、ありったけの魔力を、自身の持つ魔導書に注ぎ込み――

 

「オルドグラム?どうしたの?」

小傘が、心配そうにオルドグラムを見る。

どうやら買い物から帰ってきたようだった。

 

「小傘か……すまない。少しぼーっとしていた様だ」

無理して笑顔を作りオルドグラムは不器用に笑った。

 

 

 

 

 

カタカタ、パキッ、ポキッ!

幻想郷の様々な場所で――製作者の目覚めを感じた道具たちがいた。

 

その道具たちの仕事は様々。

奉仕する物。守る物。助ける物。救う物。癒す物。

破滅を導く物。奪う者。邪魔する物。貶める物。破壊する物。

 

嘗てとある魔術師のたっぷりの興味と探究心を込めて作られた道具たちが、ゆっくりと新たな主人との出会いを求めて目覚めだす。

それは縁か運命か、道具と持ち主となるべく存在はひかれあう。

 

ほら、ここにもまた一人。

 

「あれぇ~これなんだ?なんだか、面白そうだな!」

小さな少女が泉に流れているとある道具を手にする。




道具のアイディアが足りねーよ……
いや、ストックはあるんですが……募集しようかな?
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