忘れ傘とグリモわーる   作:ホワイト・ラム

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さてぇ、今回は以前応募した、魔道具が正式に登場です。
少し大きな規模となりました。

夏の暑さに気を付けながら、呼んでくださいね。


魔術と鏡と暴かれた秘密

とある部屋で、オルドグラムが自身の足元にうずくまる人物を見下ろしていた。

 

「あ……あ、う……あ……」

その相手は小傘だった。だが、何時もの快活な印象を与える表情は曇り、何かを企んでいるような青赤の2色の瞳も、どこか色あせた様に見える。

元気な声を聴かせる口からこぼれるのは、小さな意味をなさないつぶやきのみ。

 

「心が壊れたか……脆いな。妖怪も……」

嘲るような言葉に、ほんのわずか、ほんのわずかだけ同情の感情がこもって聞こえた。

 

「さて……いかにしてここから抜け出すかな……」

オルドグラムは部屋の外に広がる、先の見えない廊下を見て目を細めた。

 

 

 

 

 

幻想郷の一角、霧の湖の近くに居を構える妖怪の一派がいた。

吸血鬼が主を務める、赤い異様な屋敷――名を紅魔館と言った。

 

そこに、居候する魔女が一人――

 

「パチェ、精が出るわね」

年のころ10と言った少女が、自身の屋敷の中の図書室へと足を運ぶ。

彼女はこの屋敷の主レミリアスカーレット。背中から生えた蝙蝠の様な羽が彼女が人外の存在だと如実に表している。

 

「あら、レミィ……」

浮かない顔をするのが、レミリアの友人のぱちゅパチュリー・ノーレッジだ。

数冊の本に、古ぼけた南京錠が机の上に置いてある。

 

「それは?例の魔術師の?」

 

「ええ、探したら奥から出てきたの。

まだ、断定はできないけど、なんていうか『雰囲気』が似てるのよ」

 

「雰囲気?」

パチュリーの言葉をオウム返しするレミリア。

いつの間にか、出現していた紅茶に口をつける。

 

「魔導士の癖って言うのかしら?

独特の雰囲気が有るのよ……もちろん断定できる物じゃないけど、これはきっとあの男の道具よ」

いつもより意思の強い光がパチュリーの瞳に輝いている。

無理もない、魔女に魔法使いは皆、魔術のことになると皆、目の色を変える。

800年前にあったとされる、魔法の一種。

レミリアの友人が強い興味を持つのには十分だった。

 

「どこにもおかしい所は無いから、動くはずなのよ……

魔力もちゃんと通したし……」

パチュリーが南京錠を取って、錠前を差し込んで回す。

一瞬だけ、光が漏れて南京錠の鍵が開くが、それ以外の変化はない。

 

「どれ……」

興味を持ったのか、レミリアも同じく錠前を回すがやはり一瞬の光が出るだけで、何も起こらない。

 

「普通の古いカギじゃないの?」

2、3回して興味が無くなったのか、レミリアがカギを返す。

 

「咲夜」

 

「はい、お嬢様」

レミリアが声を上げると、同時に彼女の後ろに銀髪の髪をしたメイドが立っていた。

この屋敷で彼女を知らぬ者などいない、メイド長。

十六夜 咲夜だった。

 

「貴女、何か感じることは無い?」

 

「申し訳ありません……特に何も……」

彼女も特に、気づくことは無かった。

 

「ふぅん?妖怪()魔女(パチェ)人間(咲夜)でもダメか……

何かが根本的に間違っているんじゃ……」

レミリアが、目を細め考える。

 

「以前、オルドグラムの魔術道具のリストを見たことが有るの。

その中にの『偽室錠』っていう道具に似ている気がしたから、何か関連があるかと思ったけど……はずれみたいね。

最終手段として、本人に聞いてみるかしら?」

 

「言われてみれば、それが一番の近道かもね」

レミリアが笑って見せた。

冗談めかして話すパチュリーだが、それも十分に考えうる作戦だ。

幸いなことに、何度かオルドグラムはここの図書館を利用している。

普通は遥か昔の道具の製作者に聞くなど、出来る訳が無いのだが、幸運なことにその製作者は存在している。

 

「そう言えば、その魔術師とやらには遭った事が無いな。

屋敷の主とて顔合わせ位すべきだが……

ま、これも今回だな――!?」

レミリアの視界の端、突如机の上の南京錠が輝きだした!!

さっきまで何をしても、動きは無かったはずだが――

 

『プログラム起動 ウツシダス・うつしだす・映し出す!!+アルファ!!スーパー!!』

その瞬間、まばゆい光が部屋全体を包み込んだ。

そして、その一瞬後には、レミリアも、咲夜もパチュリーもみな姿を消していた。

 

カチャン!

 

最後に、何かを封じ込めるような動作で、机の上の鍵が閉じられた。

 

 

 

 

 

 

 

パチュリーが散々話していた件の人物、オルドグラム。

彼は実のことを言うと、紅魔館のすぐ目の前にいた。

 

「要件は本の返却だ、出来るならあの魔女と話もしたい……」

 

「う、うう……本当に大丈夫なの?」

小傘のとって出来るなら、近づきたくない場所の一つである紅魔館の門の目の前、そこに半場無理やり連れてこられて、小傘が不安そうにオルドグラムの影に隠れる。

 

「無論だ。我は無理やり侵入する訳ではないのだぞ?

ちゃんと要件があり、正面から入る。客人に対して、非礼を行いはしないだろう」

ちらりとオルドグラムが、門にもたれて眠る美鈴を見る。

 

「ふむ、開けてはもらえんな……起こすのは気の毒だしな。

ムッ!!小傘、来い!!」

 

「なら、日を改めて――うひゃあ!?」

小傘の意見など知らぬ!とばかりに、オルドグラムが小傘の首筋を掴み自分事飛び上がった。

そして門を超えて、手入れされて玄関口に降り立つ。

 

「オルドグラム!?侵入だよ!!コレ、侵入!!」

場合によっては大変なことになるというのに、オルドグラムはそのまま走り出し、蹴破るように館の入口の扉を開いた。

 

その瞬間、光のカーテンの様な物が廊下の向こうから跳んできた!!

 

「なに、なに、なにアレ!?」

必死になって、小傘が手足をバタつかせるが相手は光。

逃げることも出来ずに、二人は光の中に取り込まれた。

 

 

 

 

 

「ん……なんとも、無い?あれ?」

小傘が自身の体を見たり触ったりして、自身の無事を確かめる。

特に変わった所は無い様だが……

 

「あれ、なんか……あれ?」

違和感を感じて、小傘が立ち上がる。

 

「ほう、気が付いたか。

建物自体が左右逆転している……そしていない住人に、過剰なまでの魔力……

これは……微か、微かにだが記憶がある……これは『アレ』だな」

一人納得したオルドグラムが、数度うなづく。

 

「コレ、オルドグラムの作った道具に関係ある物なの?」

 

「ああそうだ。安心しろ、この道具は人を殺傷する為の機能は備えていない。

本人の不注意以外でケガをすること自体、稀だ」

 

「そうなんだ……前みたいな、危ないのじゃないんだね?」

小傘の脳裏には、ひとりでに宙を舞う妖刀の姿が思い浮かぶ。

あれは調べた結果、オルドグラムの道具の一つであると判明している。

 

「で?この道具は、何をする道具なの?」

自身の身に危険が無いと分かれば次に気になるのは、この道具の効果だ。

紅魔館を左右反対とはいえ、丸々コピーして召喚したのだ、相当大がかりな仕掛けだと期待が膨らむ。

 

「プログラムは少々特殊でな。写し取る能力にプラスして――

丁度良い、実際に体験してみろ」

説明を途中で切り止め、オルドグラムが『メイド控え室』と書かれた部屋の扉を開ける。

 

「ちょっと!?勝手に入っちゃまずいよ!」

 

「この空間はエントリーを済ませた者以外は入れん。

何、所詮は魔術で作り出した空間だ。壁を崩そうが、床を踏み抜こうが咎める者は誰ひとりもおらんさ。

ん、あったな」

オルドグラムが部屋の隅に置かれた三面鏡を見る。

 

「鏡の中で、鏡を見たらどうなると思う?

小傘、やってみろ」

 

「え、なんか嫌な予感がするんだけど……」

オルドグラムの言葉に、何か感じ入る物があったのか、小傘が露骨に警戒するが……

 

「遠慮はいらん。さ、思う存分始めるが良い」

にこにこと笑いながら、小傘の首筋を掴んで閉じている三面鏡へと、近づけていく。

 

「はーなーしーてー!!なに、何が起きるの!?」

 

「ふっはっはっは!面白い事だ!!」

 

「いやー、いーやーあー!!」

オルドグラムが三面鏡を開くと、そこには怯えた小傘が写った。

 

「あーあーあーあー……あれ?何もないよ?」

手を振ってみるが、それでも帰ってくるのは自身の姿。

これと言って特殊な何かが起きている様には見えなかった。

 

「ひょっとして……私、担がれたぁ!?

本当にただの鏡!?」

後ろを振り返ると、今にも笑いだしそうなオルドグラムがいた。

 

「もう、脅かさないでよ!!すごくびっくりしたんだから――」

 

『はぁ~、暇だなぁ……』

 

「!?」

小傘が突如聞こえた、()()()()に小傘が勢いよく振り返る。

鏡の中、その中で小傘が縁側に横になって、暇そうにあくびをしていた。

 

『あーあー……なんか、面白い事無いかな~』

 

「あれ……これ、この前の――あ!?ストップ!!とめて!!オルドグラム!!

これ今すぐ止めて!!」

小傘が急に慌てだし、必死になって鏡に映る映像を止めようとする。

しかし――

 

「無理だな。今の我では、このプログラムを停止させることなど出来ぬ」

 

「なら、見ないで!せめて見ないで!!お願いだから!!

ほら、探索しよ?こんなのつまらないから!!」

必死になってオルドグラムのマントを引っ張るが、肝心のオルドグラムはそんなの興味は無いらしい。

のんびりと、まるで映画を見るような感覚で、映し出される小傘の様子を見て居る。

 

『……あ、そうだ!!』

鏡の中の小傘が立ち上がり、居間へと進んでいく。

そして、部屋の一部に畳んである服へ近づき……

 

『オルドグラムは、いないよね?なら、ちょっとくらい……』

きょろきょろと周囲を確認して、その服を手にする。

 

『おお……!』

赤い服に、黒い無数のベルト、そして表裏で色がちがう赤黒のマント。

 

「だめー!!これ以上はダメ!!」

小傘が飛び上がり、必死になってオルドグラムの目を隠そうとするが止められない。

 

「邪魔だ」

 

「あう!ひどい……」

容易く跳ね除けられ、転んだ拍子に尻もちをつく。

そんな現実の小傘が、涙目の状況でも鏡の中の小傘は上機嫌だ。

 

『ふんふんふふ~ん』

のんきに鼻歌なぞ歌いながら、自身の身に着ける服を脱ぎ捨てていく。

 

「いやぁ!!だめぇ~!!ほんとにダメだからぁ!!」

突如始まった自分のストリップに必死に対応しようとするが、無残にも映像は止まることをしならない。

やがて、下着姿になった小傘が、畳んであったオルドグラムの服に袖を通す。

 

『ん~、ズボンは長いから要らないや……

ボタンを留めて、マントと……うわぁ……ベルトを巻くのめんどくさいな……』

数本のベルトを拾うと、自身の腕や胸、そして素肌の足にそのまま何本も巻き付けていく。

そして着替え終わると、クルリをその実をひるがえして見せる。

 

『えっへっへへ……小傘グラム参上!!

なんちゃって……』

ポーズをとると、そのまま顔を真っ赤にして、舌を出しておどけた。

そのシーンが写ると、鏡は再び元の鏡へ戻っていった。

 

「ほう、面白いな……まさか、一人であのようなことを……ん?」

オルドグラムが小傘に意識をむけると、一人部屋の隅で、両膝を抱えて涙を流していた。

 

「ううっ……ひどい……

乙女の秘密を覗くなんて……なんて道具……なんて無常……」

 

「この道具の名は『鏡の迷宮』だ。

特殊なプログラムを施した魔道具で、錠前の形をしている。

それに鍵を差すことで、この空間にエントリーされる。

複数人同時に連れ込みむことも出来、鏡に3度写ると、その写った者の過去の隠したい記憶が再現される!!素晴らしいだろ!!」

 

「素晴らしくいりませんよ!!」

尚も膝を抱えつつ、涙を流す小傘をオルドグラムがやさしく肩を抱いた。

 

「小傘よ……」

 

「ふん!謝っても許さないんだから!!

まったく迷惑な――」

 

「もう3度写ると別の記憶が再現されるぞ」

小傘の肩に置いた手が力を帯びる!!

 

「オルドグラム!?ちょっと!!」

ずるずると小傘を引っ張り、鏡の前に連れていく!!

 

「やめて!!お願いだから!!ねぇ!ねぇ!!」

 

「安心しろ、死ぬことは無いし、生きていない我は鏡に写らないぞ」

はははと笑いながら、オルドグラムが尚も引っ張る!!

 

「やめて!!本当に、やめてぇえええええ!!!

いやぁああああああああああああああああ!!!」

 

 

 

 

 

数分後……

「あ、あう……あ……」

心の壊れた小傘が、茫然と涙を流し床に力なく倒れる。

 

「さて、脱出するか」

 

「少しは、心配しなさいよぉおおおおお!!」

全く気にも留めないオルドグラムに、怒りで復活した小傘がつかみかかった!!

 

「さぁー、脱出の為にエントリーをさがすぞー」

 

「うわ!?露骨にキャラ変えてきた!!そんな明るいキャラじゃないでしょ!?」

嫌な思い出をたっぷり作り、小傘はこれ以上自身の心に、傷が出来ないうちに脱出することを決意した。




次回に続きます!!
募集自体はまだまだ、というか無期限で行うので気分が乗った人は、私の活動報告へGO!
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