すいません。
なかなか、満足のいく形に成らずに……
今度からはまた、早くお届け出来る様に頑張りますね。
無数の妖怪たちが社会を築き、独特の文化や風習を持つ場所――妖怪の山。
鬼と呼ばる種が頂点に君臨していたのは、今はもう昔。
現在はその繰上りで、頂点に成った天狗たちが暮らしている。
そして、今数人の獣の耳を生やした、天狗たちが自身とは違う種の天狗を追う。
「おえ!!追うんだ!」
「くっそ!なんで、こんな事に……」
「カラス天狗はまだか!?我々だけでは、見失うぞ!!」
何かが、山の空を猛スピードで飛んでいく、一瞬遅れた風が周囲の木々を大きく揺らし、雲を千切れ飛ばす。
風さえも遅れてやってくるその妖怪には、黒い翼が生えていた。
鴉の様な翼を広げ、焦点の合ってない瞳に異常なほど大きく口を開け、笑い声を高らかに上げる。
『じゆだ。そらだ。ようかいのちからだ』
その天狗は、体中に黒い霧の様な物を纏わせ飛んでいた。
その霧は一瞬、一瞬人の顔の様な物を作り、そのたびに天狗の作る風で霧散していた。
「無駄だ。追いつける訳がない……」
そんな様子を見ながら、オルドグラムが小さくつぶやいた。
今の彼は自身をマントで包み、数本のベルトで体を巨大な木に縛り付けていた。
僅か数分前、あの天狗と対峙したとき、相手が自身の道具を持っている事に気が付いた。
その道具はいわば失敗作。製作者であるオルドグラムですら、意図しない2次的な効果があり、それは致命的な欠陥と呼べた。
その欠陥は、悪い意味で妖怪と非常にマッチし……
「さて、どうする?」
自分の対しての言葉だが、正直な話何もする手立てがない。
小傘と離れているため、大きな魔力補給は出来ず、現在の装備で微々たる量の魔力を生産は可能であるが、それでもあの妖怪を退治し、秘密裏に道具を回収するとなると非常に厄介なことになる。
「…………チぃ」
小さく舌打ちをして、他の妖怪が来る気配を感じ、マントをかぶる。
暗い影の中で、まるで小動物の様に身を隠す。
オルドグラムの性格上、決して行いたくない行為だが仕方がない。
ゆっくりと、足音が近づいてくる。
そしてピタリと、オルドグラムの隠れている前で止まる。
「見つけたよ」
その声は非常に良く知っている声だった。
「ああ、そうか……そうだったな……他でもない我がそれを持たせたのだったな……」
少し困ったような顔をして、影から身を乗り出したオルドグラムが口角をわずかに上げる。
「オルドグラム……
手にオルドグラムの渡したモノクルを手にしながら小傘が、眉を顰める。
力なくうなだれるオルドグラムの小傘が手を差し出す。
「……なんだ?」
「『なんだ?』じゃないでしょ!?助けに来たんだから!!」
少しいらだったように、小傘が地団太を踏む。
足元の泥が跳ねて、オルドグラムのズボンを汚す。
「ぬぅ……貴様、我の――」
「今怒ってるのは私!!」
オルドグラムの言葉を遮って、小傘が憤る。
一瞬だけ見せた怒りの表情に珍しくオルドグラムが驚いた。
「前さ、今日みたいに風がすごい吹いてた日……
その日って夜オルドグラム、一人で出ていったよね?
本を自分でもって、実体化して……止めに行ったんだよね?
自分の道具が勝手に暴走したのか、誰かが勝手に使ったかは知らないけど……」
小傘の言葉に、オルドグラムが再度驚いた。
「知っていたのか」
以前魔理沙が、道具の一つで暴走したことが有った。
オルドグラムは自身の作った道具を回収する為に、一人小傘を置いて立ち向かった。
大量の魔術を使い、薄氷に薄氷を重ねた、しかし幾重にも巡った策があっての勝利だった。
「なんで、私を無視するの?」
小傘の2色も瞳が、じっとオルドグラムをにらむ。
「……無視などしていない。貴様は戦いには不向きだ。
我は魔力の量にも限りがある。貴様を守る分の魔力は無いのだ。
となれば、貴様を置いていくのは当然だろう?
この国の言葉では『適材適所』だったか?合理的で良い言葉だ」
「ッ~~!」
反射的に小傘に怒りがわいた。
言いたいことはあるが、ありすぎて逆に言葉として出てこなかったのだ。
「わ、たしは!!」
「戦えない。吸血鬼の館の事を忘れたか?
あのフランドールとかいう吸血鬼が、お前を最初から狙っていたら我に勝ち筋は無かっただろう」
冷酷なまでに、真実を述べるオルドグラム。
悔しいが小傘に言い返す事は出来なかった。
「我はお前に関与させたくなかったのだ。
前にお前が我の実験施設に入ってきた時もそうだ。
記憶が無いため、完全には言えんが我の道具は、危害を加える物が多い様だ。
紅魔館の魔女の言っていたように、我は相当な悪人だったのだろう。
その悪人の道具が暴走している。お前を巻き込む訳にはいかんだろ?」
冷徹な言葉の次は、冷ややかな優しい言葉。
だがその言葉は……
「その言葉、半分嘘でしょ?
本当は自分が悪人かどうかなんて、興味ないんでしょ?
ただ、『今』を自分のしたい様に生きてるだけでしょ?
そのために、魔力の生命線である私を捨てたくないんでしょ?
そうだよね……いろいろ分かってる魔女とかよりも、弱ってる妖怪言いくるめた方が早いもんね……」
小傘は泣いているように見えた。
だがそれが涙なのか、妖怪が暴れ不安定になった雨なのかもわからない。
オルドグラムは無言で立ち上がる。
そして、背を向けた歩き出した。
「待って、ねぇ……待ってよ!!」
小傘が逃げるオルドグラムに追いすがる。
「なんだ。我に不満があるなら、ここで見送った方が正しいのではないか?」
「さっき半分嘘って言ったけど、半分は本当なんだよね?
私の事、実は何だかんだ言って守ってくれてるし……
本当は道具の事なんか、無視しても良いハズだよね?
幻想郷には、問題を解決する巫女だっている。その巫女に道具を集めさせて、後から奪っても良い。けど、それをしないって事は、多少は優しいんだよね?」
「貴様はおろかだな。我の心の内など、知りようもない。
貴様の言葉が、正という確証などどこにもない」
オルドグラムがそう話す。
彼の眼もとは、シルクハットに隠れうかがい知ることは出来ない。
「私は、オルドグラムについていきたいから。
このまま、バイバイなんて絶対にイヤ!!
これは、私がしたい事だよ。オルドグラムは叶えてくれるんでしょ?」
小傘の言葉にオルドグラムが困ったような顔をする。
「だがな。事実今は手が無いのだ。
あの妖怪を放っておくのは、我も好ましい状況ではない。
貴様を連れていくことは……」
「オルドグラム。私に作戦が有るの」
言い淀むオルドグラムに、小傘が自らの作戦を話す。
それは、小傘にとってとてつもなく危険な作戦だった。
「貴様の策、悪くはない。少なくとも
だが本当に良いのか?場合によっては……」
「大丈夫だって。あの妖怪にも出来た事なんだよ?
なら、私たちにだって出来るよ」
決して揺るがない。と言いたげな小傘の言葉にオルドグラムがついに折れた。
「分かった。ならばやろう。そして我らは二人で家に帰るのだ。
そうだな……明日の朝食でも考えて買い物も行こうか」
「うん、うん。私、あのくろわっさん?が食べたい」
「いいぞ?あの程度、また作ってやろう」
二人が微笑みあい、そして急にまじめな顔になる。
ここからは、すべてがうまくいく可能性の低い世界。
そこに、今から二人で踏み出す。
「
初めて聞くはずの異国の言葉。だが小傘には何となくその言葉の意味は理解出来た。
「うん……出来てる」
小傘の言葉を聞き、オルドグラムの姿が一瞬にして、霧散する。
そして、小傘の腰にぶら下げた魔導書から、無数のベルトが小傘に絡みついた。
(こんな時も、このベルトなんだ……)
そんな無関係な事を何処か他人事の様に小傘が考えていた。
そして、そのままゆっくりと意識は溶けていった。
「ふぅー……少し、動かすかな?」
意図しない自身の声に、小傘が目を覚ました。
不思議な感覚。自分がそうしようと思っていないのに、体が動き言葉を発する。
「はぁ!!」
右足で地面を蹴り、風を受けて宙に浮かぶ。
(なにこれ……速い!?)
それはいつも小傘が飛ぶスピードよりもずっと速く、そして高かった。
「ほぅ、一応は意識は残っている様だな」
自身の口から、自分に向けて言葉が発される。
(オルドグラム……?)
「ああ、一応は成功したようだな。理論上は可能なだけで危険な賭けだったが。
だが、時間が押している。早めに決着をつける」
空中を飛ぶ小傘の服が変わっていく。
赤黒のマントに、胸や足を締めるベルト。頭にも同色のハット
手にはいつもオルドグラムが持っているシルバーのステッキ。
「おっと、これを忘れていたな」
最期に右目にモノクルを付けると、オルドグラムの恰好をした小傘が完成する。
(うっ……何時ぞやの、嫌な記憶が……)
河の水面に写った自身の姿を見て、オルドグラムに暴かれた過去を思い出す小傘。
「今回はあの時の様な、ガワだけとは訳が違うぞ?
我の力たっぷりと見せてやろう」
その言葉を放った瞬間、目の前に小さな黒い靄が見え始める。
煙が風で流された時の様に、一定の方向に行くに従い濃度が濃くなる。
「このモノクルは、様々な物を見破るのに使える。
《彷徨灯》を探した時の様に、今回は呪を探している」
こつこつと、指先で右目のモノクルをつついた。
(あ!あそこ!!)
小傘の視線の先、めちゃくちゃに剣を叩きつける天狗がいた。
完全に目の焦点は合っていなく、その足元には数人の白狼天狗が倒れていた。
「ふむ、追手に来た嘗ての者達を返り討ちにしたか。
留飲は下がったか?」
「まだだ。さがらない。おれたちをおびえさせたようかいを。ぜんめつさせる」
「だろうな。力を手にした者は皆、
天狗が跳躍した。手に持った剣と、足元の剣をもう一本はじいて拾い、2本で剣で切りかかってきた。
体の持ち主が速さ自慢だったのか、小傘の目では追いきれないスピードだった。
だが、オルドグラムにとってはそうではなかった様だ。
「甘い」
オルドグラムが、右腰のステッキを引き抜き剣を二つ同時に受け止める。
だが、力に押され小傘が後退する。
「ふむ、腕力に頼ってはダメか。基本スペックが違う」
ため息をつきながら、オルドグラムの時よりも短くなって手足を見る。
(ちょっと!?それ、どういう意味――)
追撃とばかりに、天狗が剣を交差させる様に切りかかってきた。
左右の同時攻撃。これならステッキ一本で防御するのは無理だろう。
「戦い方を変えるという事だ」
小傘の背負うマントが纏まって、一本のムチの様にしなり地面を叩いて上空へ身を翻す。
「腕力ではない。より技巧的に、より繊細に、より相手の急所を狙う戦い方へと」
小傘の放ったステッキが、妖怪の肩に突き刺さる。
「いたい。いたいぞ。うでをやられた」
「ああ、そうだ。まずは腕を奪った。これで剣は振れまい。
そして、これでチェックだ」
オルドグラムのマントが、天狗の右足に絡みついた。
そしてミシミシと嫌な音を立てる。
「こんどは。あしか」
(あっ……)
一瞬だけ感じた小傘の感覚。
その感覚は、オルドグラムの言葉が嘘でない事の何よりの証拠だった。
「ぎぃ。まだ。つばさが――」
「無駄だ」
オルドグラムの言葉に反応したように、ステッキの頂きが光る。
「なにが!?」
「何も。ただ、手元を照らす為の機能を遠隔で使用しただけだ。
それよりも貴様――
そう、さっき小傘が感じた感覚。
それは相手の妖怪が驚いたことにより、お腹が少しだけ膨れる感覚。
「我は魔力が不足しているんだが……今は、特定の条件さえ叶えれば半永久的に魔力を手にする方法を持っている。
その条件とは、貴様が驚く事だ。
出来るか?恐怖せず、怯えず、驚愕せず……我を倒せるか?」
相手の妖怪の恐怖が、伝わってくる。
オルドグラムの言葉一言一言を聞くたびに、相手は明確に怯えているのが分かる。
「いやだ。おれたちは。じゆう……うぴ!?」
オルドグラムのステッキが、妖怪の胸元を切った。
そして、地面に『魍魎獄』が転がった。
それと同時に、天狗に取り付いていた、悪霊たちが霧散し箱に戻った。
「回収完了だ」
オルドグラムは箱を、本の中に押し込めるとページを閉じた。
「お、わった……の?」
オルドグラムが小傘の体から抜け出ると、小傘が安どする。
「わた、し……やくに、たった、よね?
オルド……グ、ラムの……」
妖怪の根幹ともいえる部分に作用された為か、小傘が意識を失う。
「ああ、十分だ。お前は我の予想よりずっと、勇敢だった」
倒れそうになる小傘を抱きとめてオルドグラムが話す。
「さぁ、帰ろうか。お前の家へ」
オルドグラムは小傘を抱き上げると、魔力残量が少ないのにも関わらず、そのまま歩き出した。
数日後……
「う、うーん……なんか、変な感じ……あれ?」
不思議な不快感に包まれ、小傘が目を覚ます。
「おお、小傘よ。目覚めたか」
「オルドグラム……?」
しょぼしょぼする目で、目の前の人物を見る。
辺りを見回せば、何時も居る自分の家ではない様だ。
おそらくだが、ここはオルドグラムの本の中にある部屋の内の一つなのだろう。
「えっと……私?」
「しばらくの間、昏睡が続いてな……
覚えているかはわからんが、数時間前に一度目を覚ましているのだぞ?
まともな会話は成り立たなかったがな」
オルドグラムが順番を追って説明してくれた。
どうやら、もう5日も昏睡していたらしい。
やはりオルドグラムの心配は正しかったのだろう。
「……そう……」
「やはり、妖怪は精神に寄る部分が大きい様だな。
残念ながら妖怪を倒す術は、しているが助ける術は知らんのでな……
歯がゆそうにオルドグラムがため息をついた。
「ううん、良いんだよ……私が望んだことだもん。
それに、オルドグラムの役に立ててうれしいんだ。
ねぇ知ってる?付喪神は持ち主って決めた人に使われるのが、大好きなんだよ?」
頬を朱に染めながら、小傘が布団で顔を隠しながら言う。
「ほほぉー、なるほどなるほど。では妖怪に対抗する術を知る貴方は一体何者なのか?私とーっても、気に成っちゃいますねー。出来れば、そこんところ詳しく。
教えてもらっちゃったりなんか、出来ませんかねー?ああ、もちろんいい雰囲気になった所でしっぽりしてからと、言うのであれば待つのもやぶさかでは無いのですけど――」
酷く陽気な声。明るく軽快で警戒心を持たせないような声が響く。
「いい!?」
まさかの第3者の言葉に、小傘がおかしな声を上げる。
その声の先には――
「どーも、どーも、小傘さん。まさかの展開にこの射命丸 文。
驚きを隠せませんよ?一体どこでこんな、ちょっと渋めのお兄さん拾ってきたんです?お二人の出会いは?付き合うきっかけは?週に何回程同衾してます?」
鎖で縛られ天井からつるされながらも、ぺらぺらとしゃべる続ける天狗を見て、小傘は頭を抱えた。
「処分するか?」
「うん……そっちの方が良いかも……」
「あ、えちょっと!?小傘さぁあああん!?」
研究所に大きなため息が響いた。
シリアスは疲れる……
ギャグ作品を書いてる方が、気楽でいいんですよね。
けど、ギャグものばっかりじゃ、精神病みますからね。