上手い人は、こんな回必要無いのですが……
文章力というか、表現力が欲しいですね。
「さて、どうすべきか……」
「どうすべきって……」
実体化させたオルドグラムの研究室の中、二人が視線だけをずらして意見を交換する。
だが何度やってもため息が出るばかりだ。
その元凶は――
「これは記者魂が叫びますよー!!叫びまくりですよ!!
取材、取材をしなくてはなりません!!」
ギシギシと、音を立てる縄を揺らし、どこかで見た事のあるおもちゃ様な動作で、天狗が揺れる。
「小傘よ。実は我には、ちょっとした趣味が有ってな。
妖怪や、魔物などの体の一部をはぎ取りコレクションしているのだ。
吸血鬼はもとより、悪魔、ワーウルフなどもある。
だが、日本の天狗は持っていなくてな?」
「あ、うん。いいよ、薬漬けにして瓶に入れておいてよ」
力なく小傘がそう言う。
その瞬間、射命丸が自身の目を大きく見開いた!!
「ちょっと、小傘さん!?何勝手に、ゴーサイン出してるんですか!?
ダメダメダメ!!この人マジですよ!?
あ、ほらぁ!!すっごいでっかい瓶、呼び出してますよ!!」
射命丸の言葉の様に、オルドグラムは一抱えもある瓶を取り出して、ステッキを振る。
「天狗、名前は?出来れば、年齢も教えて欲しい」
「あやや、そっちのおにーさんは、私に興味が――」
オルドグラムの言葉に、射命丸が縛られたまま身をよじる。
コイツはまだ話せると思っていた様だが――
「瓶に書くのにいるからな」
「あっ……これ、マジな人だ……」
一部の遊びも冗談も感じない言葉に、実に数世紀ぶりに射命丸は人間を怖いと思った。
「えー、この度はとんだご迷惑をおかけしました……」
おろされ、縄をほどかれ、射命丸が小傘の部屋で正座する。
「……仕方ないとはいえ……なるほど、妖怪に持たせるには少し危険すぎる道具だったな」
オルドグラムが思い出すのは、前回回収に成功した『魍魎獄』の事。
「ねね、あの道具って、結局何だったの?」
「私も気になりますね!ぜひぜひ、ご教授をお願いできますか?」
面白そうだ!と言わんばかりの目をして、射命丸が身を乗り出す。
ちゃっかりその手には、メモ帳が握ってあるので、取材する気は満々なのだろう。
「分かった、わかった。そう、身を乗り出すな」
オルドグラムがネタ帳を指で押しかえし、射命丸に距離を置かせる。
彼にしては、珍しく困惑の感情が見えた。
(あ、ぐいぐい来るタイプは苦手なのね……)
そんな事を小傘が考えていた。
「あ、そうそう、前見せたあの力も出来ればお願いします。
ね?『黄金の魔術師』さん」
「射命丸、貴様……まさか」
『黄金の魔術師』の名を聞いた瞬間、オルドグラムが固まった。
「あやや……私もうろ覚えだったんですが、オルドグラムの名には少し覚えがありまして……
遥か彼方の地で暗躍した魔術師だそうで……前年ながら、詳しいご活躍は知りませんが、ね?」
含みのある顔を射命丸がする。
「これが、今回の事件の大本に成った道具の『彷徨灯』と『魍魎獄』だ」
『封』と書かれた札を張った二つの道具をオルドグラムが机の上に並べる。
片方は、夜道を照らすランプで、もう片方が箱根細工のようにも見える正方形の箱だった。
「ほうほう、これがオルドグラムさんの発明ですか……
えっと――」
興味を感じたのか、危険だと分かっていながらの、射命丸が手を伸ばす。
「触るな!妖怪には危険だ。特に『
我も知らなかった新たな欠陥だな……
この道具は、欠陥ばかりか……」
オルドグラムが、魍魎獄を本の中にしまう。
「そう言えばさ、前にもそんな事言ってたけど、どういう欠陥なの?」
そちらには小傘も興味があったのか、素直に聞く。
それは射命丸も同じ様で、無言でメモ帳を開く。
「……これは、我がとある権力者に頼まれ作った道具だ。
その権力者は臆病でな、常に何かに怯えていた。
ある時は友の裏切りに、ある時は家族の本性に、ある時は死者の霊に……
『疑わしきは罰せよ』の精神で次々と消していった。だが、最後に問題が残る。
死霊への恐怖がぬぐえなくてな。そこで我に白羽の矢が立ったのだ。
幸い魂への干渉は研究の一環でしていたのでな、我としてもより深く研究したかったので、渡りに船と呼べる状況だったのだ。予算は潤沢、魂の研究に使う『材料』も工面してくれるというので、断る理由はなかったのだ」
「オルドグラム……」
オルドグラムの言葉に、小傘が黙る。
分かっていたが、彼の過去の悪行を聞くと心が痛んだ。
その横で、射命丸は熱心に取材を続けている。
こんな事を聞いて、顔色一つ変えないのは天狗としての精神の違いか、それとも経験の差か、はたまたオルドグラムに対する思いの違いか。
「この箱は幽霊を呼び集め閉じ込める箱だ。閉じ込め戦わせ、対消滅させるという設計だったのだが……」
その様な
魂たちは決して対消滅などしなく、むしろ……
「それって……」
「意図しない形での『蟲毒』ですね」
それは危険な呪。
オルドグラムに制作を依頼した、その人物がどうなるか言われなくても分かるだろう。
「そう、この国には、そのような儀式――いや、『呪』が有るのだったな。
死霊同士を戦わせ、最後に残った一体が全ての力を取り込んだ強大な力を得る。という物だ。
道具自身も長い時を超えて、無数の魂を取り込んでしまったのだ」
「呪……そういえば、前も眼鏡で探してたよね?」
「あやや、私とした事が、見事に取り込まれちゃいましたからね~
あ!けどその後、小傘さんと一つになった貴方が来たんですよね?
どうですか、初めての経験は?彼が自身のナカに入ってきた感想は?
見だしてしては……」
「なんだか、にゅあんすがおかしくないかな!?」
何処となく質問に答えていけない気がして小傘が、否定する。
「一つといえば、天狗お前もだぞ?
妖怪に我の魂を融合させたものに大して、貴様のは無数の魂、人間から動物霊まで様々だ。
どうだ、魍魎獄で分離させたとは言え、一時的に1000人単位の存在と一つになった気分は?」
「あ、えっと……やっぱり良いです……
お、お二人ともではここら辺で、私は失礼しますねー!
妖怪の山にもちゃんと話をしなくては!!」
そう言い放つと、逃げる様に小傘の家から外に飛び出した。
羽を広げ、凝り固まった体をほぐす。
「いいですねぇ、いいですね!!これだけの情報が有れば、明後日ほどには貴方たちは人里の有名人ですよ。
こんなに、創作意欲がわくのは数年ぶりです」
わくわくと、まるで新しいおもちゃを買てもらった少年の様な顔で、射命丸がメモ帳に書き込んでいく。
その内容はすさまじく脚色された、誤解を招きかねないほど薄められた真実なのだが……
「えっと、それ……明日の新聞に……書かないよね?」
「何言ってるんですか?書かない訳ないじゃないですか。
実はこっそり子供に人気のある小傘さんにこんなお相手が、いると知れればおおくの少年が涙を流しかねませんが、これもマスコミの仕事。仕方のない事ですね」
射命丸がクルリと、指でペンを回した。
「では、では、お二方とも、幸せな一日を過ごしてくださいねー!ばははーい!」
聞くことは済んだと言わんばかりに、射命丸がすさまじい勢いで遠くの空へと飛んでいく。
「ほう、早いな。あれが『魍魎獄』でグレードが下がらなかった場合の本来の速度か。なるほど、最速の妖怪という触れ込みも伊達や酔狂ではないらしい。
翼の仕組みが気になる、興味深いな」
そうって、オルドグラムは小さくなっていく射命丸を見ていた。
「ちょっと!!どうするの!?あんなに逃げられたらもう捕まえられないし、このままじゃ明日から外出られないよ!!」
困ったように小傘が話すが、オルドグラムは涼し気な顔だ。
「確かに多少は、脚色されるようだな……
メディアにはそれは珍しい事ではない。奴らの仕事はニュースを知らせることでは無く、ニュースを売ることだ。
より刺激的で、より食いつきの良い記事を書くことに躍起になるには自然な事だ。
だが――奴は、少しやりすぎた。すでに手を打っておいた」
そう言って、マントをひるがえし家の中へと入っていった。
「ねぇ、なんにもしてないけど本当に大丈夫なの?」
不安げな顔で小傘がオルドグラムを見る。
このままでは有ること無いことを書かれたほぼ、ねつ造新聞が里中、妖怪の山中にばらまかれてしまう。
小傘としては、一刻も早く取り止めさせたいが、オルドグラムは優雅に鈴奈庵で借りた本を読んでいる。
手を打つと言いながら、何かをした様には見えない。
「安心しろ。お前には我が付いているのだぞ?
さて――そろそろだ。ん、来たか」
「え、あ!虫!!」
オルドグラムが開けた窓の隙間から、見た事の無い蝶の様な虫が入ってくる。
それはひらひらと羽ばたき、差し出したオルドグラムの指に止まる。
「何それ?それも魔道具なの?」
「ご名答。これは成長する魔道具『
使用プログラムは『読み語る』で、卵から成虫を通して使う道具だ。
見ていろ。面白い事が起きるぞ」
オルドグラムの手の先の、読食中が羽を広げ動きを止めた。
そして羽の形が歪み、人の唇の様になった。
『スクープ!唐傘お化けに、恋の予感!!
先日の取材で、なんとあんまり怖くない事で有名な、唐傘お化けこと、多々良 小傘氏になんと同棲して言いる、男性がいるとの事。
男性の名はオルドグラム・ゴルドミスタで、魔法使いの様です。
道具と、魔法使い、この恋愛の行方は――』
『スクープ!!多々良 小傘の新たな持ち主現る!!
「毎晩私を使ってください、ご主人様!」「ご主人さまを満足させるのは、道具の役目です」
爛れに爛れた、傘とそのご主人の夜の生活は!?』
「もうやめて!!もういいから!!」
小傘が必死になって読食虫を抑える。
「あの天狗め……!
下らん戯言を並べよって」
オルドグラムが不機嫌な顔をする。
「で、どうするの?このままじゃ、新聞にされちゃうよ……」
「安心しろ。読食虫は文字通り、読み喰らう虫だ。
お前の不安は全て、杞憂になるだろう」
「どういう事?」
小傘が不思議そうに首をかしげる。
妖怪の山――射命丸の部屋。
「さぁーて!こっからバリバリあの二人の事を書いていきますよ!!
情報は鮮度が命!
まずは情報の整理…………え?」
新聞を書こうとネタ帳を開くが、何も書いていない。
「あやや?こっちは新調した方、だったかな?
けど、このくたびれ具合は……?」
背筋にイヤな物が走るのが分かる。
ゆっくりゆっくりと、嫌な予感が現実味を帯びていく。
「あ、あるはず、部屋のどっかに、いや、何処かに落とした……のかも……」
射命丸が、自身のネタ帳をめくる。
手に馴染む感覚、何度も触った為表面についた、細かな傷。
それは、間違いなく射命丸の愛用のネタ帳であることを主張しており……
「ない、ない、ない!!なんにも書いてない!?
なんで、なんでなんですか!?わ、私のメモ~~~!!」
射命丸の絶望の言葉が、むなしく仕事場に響いた。
『人里の闇!!米問屋の若旦那の、異常な愛人関係!!※この内容は削除。ボツ』
『退魔師養成所、主人は反妖怪派の過激派!!現在、違法薬物を使用しており※これよりの取材は危険と判断。ボツ』
『八雲 紫とその博麗神社の関係性※上層部からの圧力、更には自身の危険が迫ったことにより中止。外部への露出厳禁、非常に危険』
「お、オルドグラム!?な、なんか、聞いちゃダメなことまで話し出したよ!?
ねぇ!!ねぇやばいんじゃない!?これ、ダメな奴じゃない!?」
「小傘よ、禁忌を恐れるだけでは、進歩は――」
「早く消して!!消されるから!!私たちが消されるから!!」
小傘が必死になって叫んだ。
読食虫は、文字だけを食べて音声として再生する虫。
嫌がらせや、機密情報の破棄、または盗む事も出来る。
オルドグラムが射命丸メモを指で押し返した時に、保険として卵をくっつけていたんですよ。