忘れ傘とグリモわーる   作:ホワイト・ラム

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さて、今回は募集した道具をさっそく出してみました。
皆さん、ちょっとしたアイデアが湧いたら、活動報告へGOです。

いつでも待っていますよ。

……流石に、ボタン一つで地球破壊とかは使えませんが……


覗きと追跡と魔法使い

「はぁあ……」

湯舟の中、白い入浴剤を溶かした湯の中で小傘が声を上げる。

同居人の魔術師が作ったという、この白い入浴剤には人間をリラックスさせる効果が有るらしいが、どうやらそれは妖怪である自分にも十分有効な様だった。

 

「んんっ……!」

湯舟の中で背伸びをすると、毎日の疲れが消えていく様だった。

 

「はぁ……気持ちい……」

お湯の中で、自身の手や足を優しく揉む。

以前オルグラムの趣味で作った風呂に入れてもらったことが有るが、豪華すぎて逆に落ち着かなかったことが有る。

 

大理石で作られた10人ほどの人間が入れる湯舟に、日本庭園をイメージしたという飛び石と白い小石を敷きつめた床。

壁などという物は一切なく、無限に広がる森林の中というシチュエーション。

ヒノキで囲われた小屋の中のサウナに、滝を使った水風呂。

凡そ一人で使うべきでない風呂をオルドグラムが本の中に所持していた。

正直な話、いろいろと装飾華美で派手好きな彼の性格が表れていた。

 

「けど、やっぱりこっちの方が落ち着く……」

自身は徹底的に小市民なのだな。と思いながら小傘が小さくあくびをする。

入浴剤の効果か、リラックスして温まった体が心地よい。

 

がさっ――

 

「!?だ、だれ!?!」

突如聞こえた、風呂の外からの物音に小傘が体をこわばらせる。

 

カシャ!カシャ!

 

「?……ひぃ!?」

一瞬なんの音かは分からなかったが、その音が以前射命丸が持っていた、相手の姿を写す道具の出す音だと思い出し小傘が慌てて自身の体を腕で隠す。

さっきまでのリラックスした空気は一変、小傘はすぐにその場所から逃げ出した。

 

「お、オルドグラム!!!そと、外に……!」

 

「どうしたのだ?小傘よ」

本を睨んでいたオルドグラムが、小傘に気が付く。

 

「おふろ!カメラ、外、音!誰か!!」

 

「落ち着くのだ。順序を追って話せ」

要領を得ない小傘にオルドグラムが落ち着くように促す。

 

「えっと、さっき外でカメラのシャッターの音が……!?」

 

「ふむふむ。それで走って来たのか」

 

「え、走って――ん!?」

その時漸く、小傘は自身がタオルすら身に纏わず全裸で異性の前に立っている事に気づいた。

 

「いぃ――やぁ!!いや!!オルドグラムのバカ!!スケベ!!変態!!

少しは顔を背けるとかしたらどうなの!?」

慌てて脱衣所に駆け込み、タオルで体を隠して戻ってくる。

 

「フン。またこのパターンか。何度も言って居るだろう?

我は貴様の様な貧弱な体の妖怪など眼中には無いのだ」

 

「それでも、少しはその、照れるとか、ドキドキするべきなんじゃない!?」

今思えば、自身は体を全く隠していなかった。

あんな態度をとっているが、オルドグラムは自身の体を隅々まで見せてしまった事に成る。

妖怪とは言え、小傘はオルドグラムを異性として意識する事は多々ある。

正直な話、オルドグラムは見た目は悪くないのだ。

確かに性格は、自尊心が異様に肥大化していて、おそれを知らず自分一人で突き進み、酷く利己的で、他人の迷惑を考えず、その癖人当たりだけは良くて……

 

「あれ?オルドグラムって意外と、どうしようもないダメな人……?」

 

「貴様……何を言っているのだ?」

小傘の言葉にオルグラムが露骨に機嫌を悪くする。

 

 

 

 

 

「それで?痴漢が出たという事で良いのか?」

 

「そう!そうだよ!!」

服を着て、オルグラムに改めて相談をする。

 

「我に言わせれば、貴様の貧相な体を撮った所でなんの面白さも無いが……

いや、寧ろ妖怪の、しかも物から出でた存在に、欲情可能な人間が居るのなら、歓迎すべき――」

 

「べ!別に、私の体におかしいトコなんて……ないし……」

反射的に言い返すが、その言葉にさっき自身が肌を晒してしまった事を思い出し、赤面する。

 

「とりあえず、これは乙女の柔肌の危機なんだから。

オルグラム!!犯人を見つけて退治して!!」

 

「頼みと言うなら断わりはしない。

――まぁ、なぜ我が自らの力を、こんな事に使わなくてはいけないのかという、釈然としなささはあるが……」

気が進まない態度を露骨に見せながら、オルグラムは立ち上がった。

 

 

 

「ふむ……一番新しい足跡……は……」

着替えた小傘を連れてオルグラムが風呂の外、小傘が手袋を脱いで地面の足跡を見る。

 

「そんなので、何か分かるの?」

小傘は疑うような目で、オルグラムを見る。

 

「分かるさ。ここまで来て停止した新しい跡、そして地面を強く蹴り走り出した足跡が犯人の物だ。カメラを所持しているという情報もある。見つかるのは時間の問題だ。

魔術を使うまでもない。数個の推理で十分だ。

少なくとも、妖怪の山の天狗――ええと、名前は……まぁいい。奴ではない。あ奴らは下駄を履いていた。これは草履だ。

となれば、犯人はやはり里に住むモノ好きの――む?」

オルグラムが急に動きを止める。

 

「オルグラム?急いだほうがいいんじゃない?

今はまだ新しいけど、里の中心に行けばドンドン新しい足跡が出来ちゃうよ?」

 

「足跡が消えている。それも、突然にだ」

 

「え!?」

オルグラムが指さす先、地面が足跡の形にへこみ、途切れてしまっている。

 

「飛んだって事?」

 

「飛行したのではない。跳躍したのだ。

人間とは思えん脚力でだ……

チぃ、何処へ行った?屋根に飛び移ったか、はたまたただ単純に跳躍し、人群れに入ったか……妖力は感じない。やはり人間か……」

難しい顔をするオルグラムを、小傘が心配そうに見る。

 

「逃げられた……?」

 

「馬鹿を言うな。我を誰と心得る?

偉大なる魔術師、オルグラム・ゴルドミスタであるぞ?

なぁに、多少魔力を消費するだけだ」

オルグラムが笑みを浮かべる。

その顔には、自身の力を見せつけたいという願望が見て取れる。

 

「魔力……また、少しお腹がすくなぁ……」

小傘の小さな、抵抗など完全に無視してオルグラムが魔術の展開を始める。

 

「魔術異端五属性の一つ!!『物質の音(マテリアル・サウンド)』」

オルグラムが自らのステッキを地面にさす。

そして耳を当てた。

 

「小傘よ。お前も聞くのだ」

 

「え、あ、うん……」

オルグラムに促され、小傘が耳をステッキに当てる。

 

とぉーん……  たったったった………  ザッ……ザッ……

 

「え、なになに!?」

地面にまるで水滴を取らしたかのような、音が聞こえてくる。

 

「地面に響く足跡の『音』を集めている。

さて、人里の近くで風呂屋がある場所はっと――」

オルグラムと小傘がしばらく、耳を傾ける。

 

ザッ!ザッ!!

 

「ん?」

その中、ひと際大きな足跡が聞こえる。

 

「相手は、見つかる事など最初から計画の中に織り込み済みだった。

つまりは見つかっても、逃げ切る自信があるという事だ。

勿論だ。あれほどの跳躍力だ、人間では追い付けん。

だが、跳躍力が高いという事は――」

 

「地面に大きな足音が残るって事だね!!」

 

「その通りだ。行くぞ、小傘。モノ好きの顔を拝みに行こう」

 

 

 

 

 

「うっひっひっひ……」

とある男が、風呂屋の女湯の裏で鼻の下を伸ばしている。

肥満体系で禿げ上がった頭には、汗がにじんでいる。

時折、目に汗が入り煩わしそうに眼鏡をずらしている。

 

舌で唇を舐め眼鏡のレンズをカメラにかざす。

そして――カシャカシャ!!カシャカシャ!!

出来る限りのスピードで、カメラのシャッターを押す。

 

「きゃー!!」「いやぁあああ!!」

女湯の中で、シャッターの音に気が付いた客の悲鳴が聞こえる。

男は女たちの怯える声に満足し、笑みを浮かべ眼鏡をかけなおした。

 

「精が出るな」

 

「!?」

一体いつから居たのか、洋装の男が男に声をかける。

 

「見つけたんだから!!この変態!!」

小傘が男から、カメラをひったくろうとした時、男が目の前で飛び上がった。

そして、そのまま風呂屋の煙突へと捕まる。

人間では到底不可能な、身体能力だった。

 

「む!?この身体能力――並みの人間ではないな?」

その時、オルグラムが男のかけている眼鏡を見て、一つの可能性に行き当たる。

 

「うぃぃひぃいいいいい!!!」

男は空中で、体を720度ほど捻りながら、近くの家の屋根へと着地する。

そして、酷く興奮した様子で両手を広げたポーズをとる。

 

「Damn magic(覗き魔)か……」

 

「だま……まじ?何それ?」

オルグラムのつぶやいた言葉に、小傘が聞き返す。

 

「Damn magicだ。貴様に分かりやすい名を付けるなら――『出歯亀ガネ』とでも言うかな?」

 

「…………名前からして、ロクな物じゃないのは分かった」

オルグラムの言葉に対して、小傘がため息をつく。

 

「以前、物質を透過する眼鏡が欲しいという依頼を受けてな。

作ったのだ。ちなみに服だけも透過可能だ」

 

「バッカじゃないの!?どうして絶対に悪用される道具の制作の依頼を受けたの!?」

巡り巡ってやはり、今回も元凶だったオルグラムに小傘が怒気を荒げる。

 

「金を積まれた。当時は、研究費用が足らなかったのだな。

それと、我が創作意欲が刺激されたのだ。

人体を透過せずに、『服のみ』を透過させる!!

天才である我も、人体の衣服の判別の手段には、苦戦したものだ……

結果として、人体にも影響を与える事にし、その副次的効果で超人染みた身体能力も同時に発現しているぞ」

 

「あー、そうだよね!!自分が面白いと思えば、やっちゃうよね!?」

小傘が諦めながら話す。

 

「む!逃げた、追うぞ!!」

小傘など一切気にしないと言いたげに、オルグラムが走り出した。

 

 

 

「小傘よ、行くぞ?グライダー!!」

オルグラムが小傘を抱き上げ、それと同時に背中のマントを広げる。

広がった、マントはベルトを伸ばし、それを骨として凧の様に飛び上がった。

 

「うわわ!?はやい!!」

 

「逃がすと厄介なのでな」

上空から見て、男は跳躍を繰り返し遂には里の外まで逃げていく。

そして、魔法の森に入った直後――

 

「逃がさんぞ……制空権は我にある!!」

 

「いい!?」

男の目の前にオルドグラムが降り立った。

そして無数のベルトが、男に纏わりつき拘束した。

 

「そのカメラ、帰してもらうから!」

 

「その声は――」

小傘が男からカメラを奪った時、男が驚きの声を上げる。

 

「こいつは、貴様の欲望の被害者の一人だ」

オルグラムが男に説明する。

 

「あー!例の鍛冶屋の……!

あれは、正直言ってハズレだったな……

うーん、人によってはまちまちだから一概には言えないけど、俺はもっと悩まし気な体身体をしてる方がイイ!!

たまに里に遊びに来る仙人様しかり、寺子屋の俺の初恋の慧音先生だったり、ああ、竹林に居るっている不老不死の永琳先生もイイなぁ~

服の下からでも分かるナイスなバストの膨りゃ――み”!?」

縛られた男の顔面に、小傘の下駄がめり込んだ。

 

「…………ほぉう」

 

「………………死ね」

オルグラムが今まで聞いた事の無いような、底冷えするような声で小傘が男の顔面にめり込ませた足を持ち上げる。

プルプルと小傘が怒りに震えて、カメラを地面に叩きつける!!

 

「あー!俺のカメラ――」

 

「どいつも!!こいつも!!ああ、もう!!もう!!」

全力で力を込めて、小傘が男を、男のカメラを踏みつぶした!!

 

 

数秒後――

「落ち着くのだ、小傘よ!!」

 

「うわーん!!どいつもこいつも!!

胸ばっかり!!バインバインがそんなに偉いのか!!

たしかに、私は子供体系だけど!!だけど!!」

オルグラムが必死に抑えるのも聞かず、何度も小傘は男に蹴りを叩き込もうとする。

遂にはオルグラム本人が背後から小傘を捕まえ、逆に男を守る形へとなっている。

 

「ず、ずびばぜんでしだ……」

ボロボロになった男から、出歯亀ガネが落ちる。

小傘に蹴られ、最早原型はとどめてない。

 

「貴重な道具だが……使い道も無いのでな。まぁいいか」

自身のモノクルを触りながらオルグラムがため息を漏らす。

その時――

 

「あーあ、せっかくボクが貸してあげた道具。壊しちゃったの?」

幼い少年の声がした。

 

「え?」

小傘は驚いた、ここは入口とは言え魔法の森だ。

人間は勿論、妖怪にも有害な植物が多数生息している。

そんな中、その少年は森の奥から姿を現した。

革靴に、白いシャツに黒い半ズボンとサスペンダー。

切りそろえられた、髪には清潔感がある。

 

「魔法……つかい?」

小傘は見慣れない少年への、感想を口に出していた。

 

「そう、そう。そうだよ。初めまして、お嬢さん?

()()()()()()()()()。通りすがりの魔法使いさ」

 

「え?」

少年は酷く聞いた事のある、名を自らの名前として名乗った。

 

「偽物が……その名を名乗る意味、理解しているのか?」

オルグラムが絞り出す様に声を漏らす。

小傘は知っている。

オルグラムは自身の能力に絶対の自信を持っている事を。

そして、それと同時に自身の力を勝手に使われることに、非常に強い怒りを覚える事を。

 

 

 

「あはっ、そっか……そっか、そっか。そっか。

君もオルグラムを名乗るんだね?」

 

「『も』だと?『オルグラム』は我一人!

錬金術師にして、比類する者無き至高の魔術師たる我が名を語るなど許しはしない!

オルグラム・ゴルドミスタの名は我が研鑽の証である!!」

オルグラムが少年の言葉に、怒気を強める。

 

「う~ん、面白い。うんうん、面白い。面白い。

ゴルドミスタか……初代はそう名乗ってたのか。

なら、ボクはそうだね……君と区別する為にも、新しい名前が必要かな?

オルドグラㇺ……そう、新しいオルドグラㇺ……ううん?つぎ、継ぐ存在……

決めた!ボクは『オルドグラム・ネクジェート』。ネクとでも呼んで呼んで貰うかな?」

ネクはそう言って笑って見せた。

 

「ふざけるなよ……!

偽物風情が!!我が名を名乗ろうとは!!」

オルグラムが怒気を強め、腰のステッキを引き抜く。

 

「まだまだ。まだまだ、だよ。

ボクはまだ成長途中なんだ。だから、君とは戦えない」

ネクはそう言って、ズボンのポケットからオレンジ色のランプを取り出した。

そしてネクは火を吹き消すような動作で、ランプに息を吹きかけた。

 

ふっ

 

その瞬間、オルグラムの目の前が真っ暗になる。

あのランプを中心に、すべての『光』が封じられたようだった。

 

「ボクの新しい発明品さ。ここは良いね。うん、良い、良いよ。良い。

凄く、すごくクリエイティブな気分に成れるんだ。初代オルグラムの遺産だけじゃない。ボクの作った新しい発明品はどんどん生まれてくるよ」

暗闇の中、ネクの楽しそうな声が聞こえる。

 

「くぅ……! 

眼が見えん……!」

視力を奪われたオルグラムが、困惑する。

 

「心配しなくても、10分もすれば視力は戻るよ。

そしたらまたボクの発明を見てよね?()()()()

煽るような言葉を残してネクは去っていった。

 

 

 

 

 

「オルグラム。そこ、木が有るから」

 

「うむ……」

視力を一時的に失ったオルグラムが小傘に手を引かれ、歩いていく。

よたよたと、その歩みは非常に頼りない物に思えた。

何時ものオルグラムを知る小傘からは、到底信じられない弱りきった姿。

 

「大丈夫だから、私が、私が付いてるからね?」

 

「ああ、家まで頼む」

これから来るネクとの争いを感じて、小傘は自らの怯えを隠してオルグラムの手を握った。




偶にはショタも悪くない……
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