忘れ傘とグリモわーる   作:ホワイト・ラム

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さて、さて、今回も投稿です。
全開出て来たネク君は今後どう関わっていくのか、お楽しみに!


魔術師と小傘と魔導具使い

魔法の森。

 

その中に、霧雨魔理沙の営む魔法道具店はあった。

店と言ってもそう名乗っているだけで、そもそも客人など来はしない。

当たり前だ。ここは『魔法の森』人間はおろか妖怪にさえも有害な魔法植物が群生する場所。

わざわざ危険を冒してまで、買い物に来るもの好きは居ない。

寧ろ居たとしても、店主である魔理沙が大人しく道具を売ってくれるかという疑問もあるが……

 

「さぁて……今回はどうかな?」

フラスコの中で、一本の毒キノコが揺れる。

彼女こそが、この店の店主の魔理沙だ。

天才的な才能こそないが類まれな努力の達人であり、彼女の派手な魔術は皆、地道な努力の積み重ねにある。

研鑽、研究、そして累積。

それこそが魔理沙を魔法使い至らしめている。

 

「よぉい、次はこれを――」

魔理沙がキノコを取り出し、エキスが出た液体をゆっくり火から上げる。

そして、その隣にある大き目の壺へと持っていこうとする。

 

「慎重に……慎重に……落ち着け、落ち着け……」

 

「邪魔をするぞ!!」

 

ドォーん!!

 

「あわわわわ!?なにすんだよ!!」

突如店の扉が開き、男が姿を見せる。

魔理沙はうっかり、フラスコを取り落としそうになって慌てる。

 

「ふぅむ?魔法植物か……」

部屋の中に充満する香りで、内容を一瞬にして理解する。

 

「あ、お前は――」

魔理沙はその男の顔に見覚えがあった。

そうだ。アイツは――

 

「オルドグラム……!」

 

「ほう、我を覚えていたか小娘。

精進をしている様だな。結構、結構」

オルドグラムが部屋の中を見回しながら周囲を物色する。

 

「あ、おい!!勝手にレディの部屋を漁るな!!」

 

「紅魔館の魔女との交換条件でな、とある情報と引き換えだ。

貴様が勝手に借りていった魔導書132冊の返却の催促――もっと言うと強制的な回収に来たのだ」

オルドグラムが数冊の本を本棚から取り上げる。

 

「はぁ!?ふざけんな!!人聞きが悪いぜ!借りたまま返さないだけだぜ!!

死ぬまで借りるだけなんだからな!!」

 

「魔法使いの前に人としての、基礎を覚えるべきだな。

異端五属の一つ【液体の舞(ダンス・リキッド)】」

オルドグラムが床を杖で突いた。

その瞬間、魔理沙の持つ液体が分離してシャボン玉の様に浮かぶ。

 

「お、おい!?何して――」

 

「ちょっとした、調合だ。

気にするな」

魔理沙が止めようする瞬間、シャボン同士が弾けて液体が気体へと変化した。

そして、それはガスとなって魔理沙の鼻をくすぐった。

 

「あ、こ、れ……ねむ、く……くー……くー」

 

「我特製の睡眠薬だ。即効性と持続性が高いのだ。

さて、頼まれた物を探すか……すこし、骨が折れそうだが……」

やれやれとため息をついてオルドグラムが、本を探し始めた。

 

 

 

 

 

数時間前――

 

「小傘よ、我は今まで腑抜けていた様だ」

部屋の真ん中、オルドグラムが真剣な面持ちで口を開く。

 

「この世界において、天敵と呼べる存在の少なさ。

何より、我自身の停滞。

それによって、招かれた前日の醜態――後悔ばかりである」

にせオルドグラム――ネクと名乗った少年の一件を気にしたオルドグラムは、小傘に話した。

それは、何だかんだ自分に自身を持っていたオルドグラムの珍しい、反省であもあった。

 

「うん、あの子……そのままにしておけないんだよね?」

オルドグラムはプライドが高い。

特に自尊心が高く、自分というものに絶対の自身を持っている。

そんな自身の名を勝手に語るあの少年は許せないのだろう。

 

「それもある――だが、同時に我は『我のかけた部分』をそのままにしておいたツケが来たというのもある」

 

「かけた部分……」

オルドグラムは以前から言っていた。

自身の魂を本に宿し、この時代に復活したと。

だが、その本の一部に欠損が見られると。

 

「我は、この欠損が原因で記憶と力の一部が不完全だ。

故にあの偽物が何なのか分からん。

以前の、魔法使いの様に我の力の一部を拾ったのか、それともただ単に我の名を語るだけの偽物なのか……

確証を得る事が出来ないのだ」

オルドグラムが歯がゆそうに話した。

 

「うん、知ってる。だから、今まで集めていたんでしょ?」

 

「そうだ」

そのかけた部分は、魔導具であったり、あるいはページその物だったりするらしい。

以前からオルドグラムは不思議な道具を探し、自身の一部であるなら回収し、更に紅魔館の図書室で自身の魔導書の一部の情報を探している。

 

「紅魔館で数ページ。そして鈴奈庵で埋もれるように少量のみ。

我が今まで回収できたのは全部で5ページにも満たない。

我は我がかけらを集めなくてはならない!」

オルドグラムが決心を新たに、立ち上がる。

 

「うん!私も手伝うよ!!

オルドグラムのかけら、集めようね。

まずは何からする?なんでもするから、言ってね」

小傘もヤル気満々と言った様子で胸を張る。

 

「うむ、ならば――貴様は人を驚かせて来い」

 

「うん、オルドグラムの為に人を――あれ?」

小傘がオルドグラムの言葉に肩透かしを食らう。

 

「え?なんか、いつもと変わんない……?

もっと、こう……情報の収集とか、町の噂とか、良いの?

オルドグラムはどうするの?」

 

「我は殴り込みに行く」

 

「わーお……」

思った以上にバイオレンスな返答に小傘が、小さく口を開く。

 

「紅魔館の魔女曰く、魔法の森の魔法使いが我のかけらを持っている可能性があるのだ。

我はそこへ行き交渉を済ませ、ページを入手してくる」

 

「交渉……うん!頑張ってね!!私応援してるから!!」

オルドグラムの性格、おそらく魔理沙であろう相手の性格、どちらをどう考えても、暴力の臭いがする。

弱小妖怪である自分が行ったらどうなるか、想像しただけで震えてくる。

小傘は、絶対についていかないと心に誓った。

 

 

 

 

 

「けど、どうしようかなぁ……」

驚かす=墓地という非常に安直な理由で、小傘は墓地の一角に姿を隠している。

おそらく戦闘に成ればオルドグラムは魔力を消費する。

となれば、自身の妖力が使われるのは分かり切ってる。

それはつまり――

 

「余裕がないって事だよね……」

最近はオルドグラムの自動魔力精製に小傘自身も助けられていた。

調理をする為のキッチンの召喚や、新しい道具の制作、果てには風呂や生活の一部にまで魔力を使っていた。

そこはいいのだ。オルドグラムが自分で善意を持ってやってくれた事なのだ。

だが、それらは()()()()という事態を想定していなかったからだ。

 

「ダメだよ、オルドグラム……

昔に戻っちゃ……」

断片的に聞かされる過去の話。

オルドグラムは悪をなす魔法使いであり、時には一国すらも滅ぼし自らの欲望だけに生きたという。

だがそれは、少なくとも小傘には信じられない事だ。

彼は傲慢で自分勝手だが、最低限自分を慮ってくれる。文句を言いながらも頼めば結局は助けてくれる。

決して、過去の話に聞く様な冷酷な殺人者ではないハズだ。

 

「今の、今のままで居て欲しいのに……」

小傘はそんなオルドグラムが過去の姿に戻ってしまうのでは?

と心配していたのだ。

 

ジャリッ……

 

「誰か、来た!」

砂利を踏む音に、小傘が反応する。

そうだ、今は不安がっていても仕方ない。

小傘は自らに与えられた役目を果たすべく、物影から勢いよく飛び出た!!

 

「驚け~!!」

 

 

 

「あれ、この前のお姉さんじゃないかぁ」

飛び出した人物は、ついこの前見たばかりの存在だった。

小傘より低い身長に、洋装を纏った身なりの良さそうな少年。

そして、腰のホルスターに収められた真新しい魔導書。

 

「アナタは!?」

小傘はその人物の顔を見て、驚いて飛び上がった。

その人物こそ――

 

「偽グラム!!」

 

「偽グラムは酷いなぁ。ボクだってオルドグラムなんだよ?

ただ、君と一緒にいる初代と混同されるから詭弁上『ネク』って名乗ってるだけなのに……」

つまらなそうに、ネクが唇を尖らせた。

 

「偽グラムか……確かに、あっちにツイてるならボクはそうなる、かな?

けど、むかつくなぁ。

たかが妖怪風情がボクを『偽物』呼ばわりかぁ。

少し、教育が必要かな?」

 

「!?」

ネクの言葉を聞き、小傘がその場から離れる。

何をしてくるか分からない。

だが、すぐ近くに居るのは危険だと判断した。

 

「ああ、無駄無駄。

その距離じゃ、逃げ切れないよ」

ネクが右手を上げる。

その手には青い宝石がはめられた指輪が有った。

 

「プログラム起動――」

 

『プログラム発動――トジコメル。とじこめる。閉じ込める』

小傘が認知出来ていたのはそこまでだ。

 

 

 

「なに?――っ!?」

一瞬のラグの後、小傘は知らない場所にいた。

何の光も感じない。温かさも寒さも感じない。音も香りも無い。

まるで五感が全て消失した様な『虚無』。

一瞬遅れて多大なる恐怖が小傘を襲う。

 

(た、たすけて、オルドグラム!)

声を出そうにも、自身の体が動きもしない。

ただ、まるで『物』に成ってしまったかのように、体が動かない。

 

「――はっ!?」

次の瞬間、小傘は地面の倒れる形で意識を取り戻した。

土の臭いがする、手に木の葉を触る感覚がある、当たりの景色が見える。

そんな当たり前の事が、酷く小傘に安心感を与えた。

 

「あっはっはっは!傘のお姉さん驚きすぎだよ。

可愛いなぁ」

カラカラとネクがこちらを見て笑った。

 

「わ、私に何をしたの!?」

怯えながらも小傘が声を荒げる。

 

「ん~?ちょっと、捕まえただけだよ。

いろいろ調べたかったし……」

そう話すネクの足元には、砕けた青い石が落ちていた。

先ほどの指についていた指輪の青い宝石の様だ。

 

「調べた?」

小傘の言葉に、待ってましたと言わんばかりにネクが説明を始める。

 

「妖怪なんて、突き付ければ人間の感情が生み出した存在にすぎない。

ならば本来質量なんて存在しないハズなんだ。

ならば一時的に体を溶かして、別の入れ物に入れる事も理論上可能なハズだ。

だって感情に質量は存在しないんだから。

まぁ、その結果として小さな仮の体を用意するのはこっちが勝手にやることさ。

ボクとしてはそのほうがじっくり観察も出来るからね」

 

あっけらかんとネクが話す。

勝手に説明したがる部分はオルドグラムを大いに思い起こさせるものが有った。

だが、本人は非常に簡単に話すが、その内容は小傘にとっては気分が悪くなる物ばかりだ。

 

「捕まえて調べて、力を取り出して、利用する。

言葉にすれば、それだけだね」

 

「それだけ――!?

あ、あのランプ!!」

言葉の途中で小傘が有る可能性に行き当たった。

この前オルドグラムの目から一時的に光を奪ったランプ。

『光を奪う』そんな能力を持つ妖怪に小傘は心当たりが有った。

 

「あはっ、うん。その子も()()()()よ」

まるで昆虫採集でもしているかのような、ネクの言葉。

 

「うんうん、けどお姉さんもさっきまでボクにつかまっていたんだよ?

あのまま、力を取り出してボクの作る道具の一部にしても良かったんだよ。

まぁ、お姉さんの能力は詰まんなくてハズレも良いトコだったから、捨てちゃったんだけどね?」

 

 

「――ッぅ!」

小傘が自身の体をかばう様に、両腕で体を抱きしめた。

本人は意識していないだろうが、ネクの態度、言葉、考え方、そして在り方すべてが小傘を傷つける。

 

「あはっ!かわいいなぁ」

ネクが一瞬だけ好戦的な目を向けた瞬間、再度小傘の体に冷たい物が流れる感覚が走った。

それだけで、小傘の体は動けなくなってしまう。

何らかの魔術なのだろうか?

 

「え、う、えあ……!?」

言葉を発そうとしたが、舌が上手く回らない。

まるでドロの中に居るように、酷く緩慢でもどかしい。

そんな小傘の視界の端を、鉄で出来た銀色の蝶が飛んでいった。

 

「無駄だよ。今の君はボクの許可が無ければしゃべる事も、動く事も出来ないんだよ?

妖怪の闊歩する世界で、妖怪の対策を練らないなんて、怠慢以外のなにものでもないよね?」

ネクは自慢げに、自身の周囲を優雅に飛ぶ銀色の鉄で出来た蝶を、指先に止まらせた。

 

「確かにボクは初代の様な多様性のある魔術は使えない。

『液体』『気体』『固体』『肉体』『魂』の異端魔術五属性だって使いこなすことは出来ない。

けど、豊富な魔導具たちがボクにはある。

閉じ込めて、削って、抉って、潰して、燃やして、溶かして、斬って、刻んで、凍らせて、歪めて、落として、嬲って、解体(バラ)して、晒し者にしてもいい。

さぁて、どうしようか?」

 

「ぅぶ……」

数ミリ前に顔を寄せ、ネクが小傘の顔を覗き込む。

 

「お姉さん、見た目は結構可愛いし、物が意思を持ったっていう現象には興味があるからなぁ……

()()()()()()()()()()?」

ネクが笑いながら右手を持ち上げる。

小傘が必死になってネクを睨みつけるが、効果はない。

それどころか、ネクは必死になって抵抗する小傘の様子を楽しんでいるようにさえ見えた。

 

「むぅ~~!」

小傘が動かない体を必死になって動かそうとする。

 

「あっはははは!面白いね。お姉さん」

ネクが小傘の顎を掴んで、自らの方を向かせる。

小傘よりも身長が小さいネクの方向を無理やり向かされる。

 

「けど、いいや。どうやらすっかり初代の物気取りらしいし……

前の持ち主の癖が付いた道具なんて、要らないや」

その瞬間、ネクが消えた。

それと同時に小傘の体が動くようになった。

 

「っぷはぁ!!はー、はぁー……」

 

「またね。お姉さん。ボクの物に成りたくなったら、誠心誠意お願いするなら考えてあげるからね?」

何処かからネクの声が聞こえた。

非常に、非常に嫌な物を残しネクは消えていった。




うざい上に、特有の残酷さがあるショタキャラは良いですね。
うん、書いてて楽しい。
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