お付き合いください、今までありがとうございました。
では、魔術師オルドグラムの旅の終着をご覧ください。
ザザザザ……ザザザ……ザザザ……
壊れたラジオのノイズの様な雨音が屋根を、壁を、小傘の心を叩く。
(…………ねむい……)
オルドグラムが姿を消して1月、『黄金の魔術師』を名乗る見知らぬ男の姿が幻想郷の空に映し出され、演説をして3週間、そしてその事態に解決に向かった巫女とメイドと剣士と魔法使いが行方不明になり、人々の中に『巫女は敗北したのでは?』という噂が立ち始め最早2週間が過ぎようとしていた。
空は雨雲に飲まれ止む事の無い雨が降り続き、朝と夜の感覚がなくなり1週間が過ぎようとしていた。
「…………」
ぼおっと、外を見ても雨雲と雨が降り続いているだけ。
傘としてのサガとしては、嬉しさを感じていたが今回はそんなモノを感じる心すらない。
「……すん」
小さく鼻を鳴らすと、再び寝床に倒れた。
何も、何もヤル気が起こらない。
「また、置き去り?」
悲しみか、怒りか、その言葉を零すが誰もその言葉を聴き届けてはくれなかった。
何時だったか、自身の持ち主に置き去りにされたのが小傘の始まりだった。
オルドグラムという男に、小傘は今また置き去りにされてしまった。
唯一彼の残した、真っ白になった魔導書を小傘がさみし気に抱く。
世間様は大忙しだ。
突如現れた魔法使いに平和は脅かされ、解決の手段は一向に見つからず、原因不明の雨に覆われ昼と夜の区別さえ無くなってきている。
今が何時なのか、それに加え自分が何なのか、それすらもだんだんと曖昧になってきている気がする。
コンコン
小さな、本の小さな音に小傘の意識が向かう。
「誰?」
僅かな隙間から、一匹のカラスが覗いていた。
「ああ……新聞屋の所の」
射命丸が連れていたヤツだと、小傘が思い浮かぶ。
「どうしたの?お使い?」
カラスは倒れるようにして、部屋の中へと体をすべりこませた。
一枚の折り曲げられた、写真がカラスの足に括り付けられている。
「お仕事の依頼かな?」
カラスからその紙を抜き取ると、小傘が目を見開いた。
「コレ!?」
それは幻想郷の異変解決者たちと向き合う見た事の無い男の写真だった。
巫女に、魔女に、メイドに、剣士に囲まれても一向に笑みを崩さない男。
異変ともいえる事態に、文屋の射命丸が動かないハズは無かった。
そして、今も終わらない異常な天候を考えると射命丸、ひいては彼女たちはこの男に敗北した事に成る。
だが、小傘にとってそれ以上に気になるのが、この男の持つ本の表紙。
異国の言葉で書かれた、濃いこげ茶色の羊皮紙で作られて魔導書。
オルドグラムが持っていた物とソレは同じに見えた。
写真の裏、そこにはその場所の名前が走り書きされていた。
小さくうなづくと、小傘は家に残った魔導書を手に走り出した。
パキッ!
小傘が廃棄場の枝を踏みつけ、音を鳴らす。
誰も、誰も居ない。
「あの噂は嘘だったの?」
小傘の心に安心と落胆が同時に襲い来る。
振り切る様に、小傘が頭を振り自身の頬を叩く。
だが隠しきれない落胆を見せながら、後ろを向いた。
その瞬間――!
「おやおや、それは私の
何処かへ行ってしまったと思ったが、君が持っていた様だね?」
その声に再度小傘が振り返る。
「オル――」
もういないハズの人物。
思わずその名を口にしてしまうほどに『彼』は似ていた。
若い、オルドグラムよりも若く青年と呼ぶにすら早いと思わせる肉体。
だがその口調は老人の様に落ち着きに満ちていた。
彼は何時もの『オルドグラム』の様に、優雅に座り紅茶のカップを傾けていた。
緑のローブに、白い右足、赤い左足に分かれたズボン。
右手は青色で左手。
小傘は反射的に、その色がオルドグラムの言っていた五属性に関係あると直感的に感じていた。
「その魔導書をなぜ君が持っているかは分からん。
正直な話、ソレの内容は全て
その為に不要な物だが――せっかく持ってきてくれたんだ。
ありがたく頂いて行くよ?」
オルドグラムがその手を小傘に向ける。
「イヤ」
小傘が魔導書を腕で隠す様に抱く。
「おや?私にそれを返しに来たのではないのかな?
さてさて、不要とは言ったが他者にそれを持っていかれるのは不快だ。
さぁ、心変わりして返しなさい」
さっきよりも魔術師が語気を強くする。
だが、小傘は首を横に振るだけだ。
「はぁー……やれやれだ。
少し前に私の邪魔をしに来る愚か者が居たが……
此処はずいぶん私を不快にさせる人物が揃っているな!
あの者たちの様に異界に封じるだけでは、ダメか」
魔術師が手に持ったカップ握りつぶす。
掌からこぼれ落ちる紅茶、それはとめどなく溢れやがて巨大な水がうねり始める。
「出でよ、異端五属性――《
水が小傘を包み込む。
そして洗濯機の中の様に、何度何度もひっかきまわす。
「ぷぅは!?」
水の中から、引きずりだされ小傘が地面に倒れる。
「さぁ、自らの愚かさを理解したか?」
「げふっ、げふっ……」
小傘が水は吐いた。
「その本を置いて、逃げろ。
今回だけは見逃してやる」
魔術師の言葉通り、小傘は水の本流の中で手から魔導書を離していなかった。
「いや……」
魔導書を再度握り直し、魔術師を睨みつける。
「出でよ《
黒い煙が蛇、或いは龍の様に小傘に迫る。
「ごっほ!?ごほごほ!!」
眼と喉に刺激が走る。
「ほう、貴様『妖怪』という奴か。並みの人間ならば昏倒するタイプのガスだが……
コレクションしておきたかったが、貴様は要らんな」
「た、たすけて、オルドグラム……!」
「私が君を?悪いがそのタイミングはもう、終わったんだよ。
君はもう、死ぬしか無い」
「助けて、オルドグラム」
「はぁー、気安く私の名前を呼ばないでもらおうかな?
今更命乞いをした所で遅いんだよ」
「オルドグラムは、乱暴で、自分勝手で、他の人を気遣ったりしない。
けど、偶に優しくて、約束はちゃんと守って、それで……それで、私にとって大切な相手なの!!」
「気でも狂ったか!?妖怪風情が!!!
貴様など、私は知らん!!」
魔術師が無数の動物の牙を呼び出す。
小さく《
「肉片に成り給え」
無数の牙が小傘に迫った。
何処か知らない、遠くて近い場所。
そして現実の虚構の狭間で、『彼』は漂っていた。
〈ここは……どこだ……われは……だれ……だ?
いや……われ……とは……なん……だ……〉
自我も薄れ、このままこの世界に溶けていく。
『彼』はそんな状態で、自我を綻ばせつつあった。
「ねぇ、ボウヤ。レディを待たせるのは紳士として恥ずべき行為ではないかしら?」
空間の後ろ、白と黒の球体を無数に体に付けた女性、ドレミ―が逆さまになり腕を組みながら佇んでいた。
その姿を『彼』は知っていた。
〈どれ……みー……〉
「あらあら、ボウヤったらその姿……
自分すら夢の中に溶けて行っているのね」
ドレミがつぶやく。
「思い出しなさい。800年前、貴方はこの夢の世界で自我を持ち始めた。
存在自体も忘れられた魔導書に芽生えた意思、それは自身が魔導書であることも忘れ、自分を形成しましたわ。
そして今、道具は失われ、貴方も消えるハズ……
けど、まだ消えない。
貴方はまだ、誰かの記憶に残ってる。
この夢という無意識の領域で、貴方を思う『誰』かが貴方をまだ、この世界につなぎ留めているのですわ」
〈わ、れ……は?ダレ……だ?〉
「呼ばれていますわ、お行きなさい。
貴方は彼女を助けるのを約束したハズですわよね?
魔術師は契約を守る者なんでしょ?」
ドレミーが手を掲げると、空間が纏まって一つの枕へと形を変える
「夢の世界の一部を固定する道具……
貴方から取り上げていた物が、こんなタイミングで役立つとは思っていませんでしたわ」
ドレミーの投げ渡す枕を〈誰か〉が受け取る。
その瞬間、何処か遥か彼方から自身を呼ぶ声が聞こえる。
たすけて……×××××!!たすけて×××××!!
その声は彼を呼ぶ声。
彼は覚えていた。
この声を聴いたのならば、駆け付けなくてはいけない。
〈我は……そうだ……我の、我の名は――〉
「行きなさいな、
『助けて!オルドグラム!!!』
小傘の叫びをかき消す様に『獣』が無数の口を開いた。
その瞬間、小傘の持つ魔導書が光を放った。
銀色の光が瞬き、ケダモノの牙を打ち倒した!
黒い服装に無数に巻き付く赤いベルト。
同じ配色のシルクハットとマントに、右目を覆うモノクル。
手に持つステッキは銀色で鳥を象った飾りは蒼玉を讃えている。
「我の名を――呼んだか?」
「オルドグラム!」
夢にまで見たその姿に、小傘が喜色の笑みを浮かべる。
「何者かな?君は?私の名を勝手に語るなど……実に不愉快だね」
魔術師がオルドグラムをにらむ。
オルドグラムもまた魔術師をにらんだ。
「我が名は黄金の魔術師、『オルドグラム・ゴルドミスタ』
契約に則り、この少女を守護する者だ」
「なにから、何まで私を不快にさせる!!」
魔術師が腰のグリモワールに手を伸ばす。
その瞬間、オルグラムもまた腰のグリモワールを撫でる。
瞬時に両人の間に黄金の光の波が形成されて、互いに打ち消し合った!
「はぁ!」
魔術師が手を広げると、空中に無数のナイフが現れる。
その全ての切っ先がオルグラムを狙い、放たれる!
「むぅん!」
翻るマントは生物の様にうねり、オルドグラムを包む。
そしてその流れがナイフを弾き飛ばした。
「こちらからも――だ!」
オルドグラムがステッキを投げた。
「うぁ?!」
魔術師は長剣2本を召喚して、辛うじてそれを受け流す。
「魔術師が実体剣に頼るとは、な」
オルドグラムが走り、魔術師に向かい虚空に手刀を放つ。
「異端魔術、気体の元素『
見えない風の刃が、魔術師の額に亀裂を生じさせた。
「ぐぅあ!?なぜだ?なぜ、私が私の偽物に押されるのだ?」
「それは我が偽物だからだ。
この我はただの我ではない、夢の世界に漂う力を『理想』を形にした存在。
我を呼び出す者が我の強さに疑問を持たなければ、我は無限に強くなる!!」
「馬鹿な!?超えるだと?私を、私の模造品ごときが!!計画の齟齬で生まれたバグごときが!!」
オルドグラムが魔術師の攻撃を難なくはじく。
そして、何時もの様に杖を振り上げ、魔力が空を揺らす。
「いっけぇえええええ!!!!!
負けないで!!!オルドグラム!!!」
「ああ、そうだ!!我が!!我こそがオルドグラムだ!!」
魔力が、閃光が、きらめきが、小傘の叫びが走り魔術師の後ろに、オルドグラムが降り立った。
「わ、私が……わた、し……に……」
オルドグラムと魔術師が背中合わせに同時によろける。
魔術師が足に力を失い、オルドグラムにのしかかる様に倒れる。
「あ、わたし、のゆめが……」
魔術師が虚空に手を伸ばし、力なく垂れさがる。
「ねぇ、なんで魔法を極めようとしたの?どうして、町を滅ぼしたの?」
小傘が倒れる魔術師に尋ねる。
「なぜ?なぜ……だった、かな……もう、ずいぶん昔の事……」
「私、あなたの記憶を見た事があります……
前にオルドグラムが消えた時、魔導書の中であなたの記憶を見ました。
あの場所が大好きだったハズなのに」
小傘が倒れる魔術師を見下ろす。
打ち付ける雨が、小傘によって遮られる。
「そうだぁ……思い出した……私は、
失った『誰か』を取り戻すために……
友だったか?妻だったか?母だったか?父だったか?兄だったか?妹だったか?
それを奪った世界が許せなかった……傷を抱えてのうのうと生きる世界が……
そして、それすら忘れてしまう私が……許せなかった……
命を作る魔術は、何時からか、奪う力に変わってしまったのか……」
魔術師の体が消え始める。
「ふはは……ふははは……私は、もう忘れてしまった。
なのに、空っぽな、大きな空洞の執念だけが、残ったのか……
ははは、ははは、そうか……
私は自らを忘れ、周囲からも忘れられ……今に至るのか……
そうか……わたしは、いつのまにか……わたしをわすれてしまって……いたのか……そうだ……」
名前すら、存在すら、自分すら忘れられた魔術師が静かに目を閉じる。
小傘はようやく、オルドグラムがこの場所にやって来たのか分かった気がした。
「名もなき影は、この舞台から降りよう……
これでようやく私は、解放される旅たてる……
我が魔導書よ……よく聞け。
私の旅路はここで終わる。
お前は『オルドグラム』の名を知る最後の証人だ!
お前がたった今より、新たなる『オルドグラム』だ!
妖怪でも、道具でも、亡霊でも構わん。
『オルドグラム』の名はたった今から、貴様の物だ」
倒れ伏す魔術師が目を見開き、自身の魔導書を指さす。
「その名、喜んで拝命する」
オルドグラムが跪いて帽子を脱ぎ、最敬礼の姿勢を見せた。
再度目を開くとき、悲しき魔術師の魂はこの世にはもう無かった。
「終わった……終わったの?」
「ああ、終わった。魔術が解かれこの雨ももう止むだろう。
今頃捕まっていた他の人間どもも解放される頃だろうな」
オルドグラムが地面に落ちた魔導書を小傘に投げ渡す。
「わわ、いきなり危ない――っ!?それは!!」
オルドグラムの手が光の粒子となってほどけていく。
「もうじき、朝が来る。800年以来ずっと止まなかった『オルドグラム』の雨は止み、永い永い夜は終わりを告げた。
そして――その終わりは
オルドグラムが穏やかに笑う。
「オルド……グラム……」
「分かっていたハズだ、我はあの時もう消えていたのだ。
それをお前が、我を呼び寄せてくれたのだ。
ふふふ、最悪の魔術師が出来なかった死者の蘇生を、こなすなど末恐ろしい奴だ」
オルドグラムが小さく笑みを浮かべた。
「だが、そのおかげで我は『オルドグラム』の名を継承出来た。
いや、そんな事すら些細に思えるほど我の中にはたくさんの思い出が詰まっている。
真っ白だった我の中は、お前たちによって埋め尽くされた様だ。
ああ、なんと……なんと幸福なのだ……
何もなったハズの我が、こんなにも……こんなにも……後悔が残った……」
小傘があふれる涙をぬぐった一瞬、その一瞬後にはもう誰も居なかった。
雨あがりの、道具の廃棄場で倒れる数人の少女と、何時までも泣き続ける妖怪が一人、朝日に照らされていた。
不思議と、悲しさは無かった。
小傘はたった今、ついたった今、自身の彼岸を叶え消えていった『道具』に敬意の念さえ抱いていた。
「さよなら、オルドグラム」
小傘の言葉に呼応する様に、厚い雨雲の間から太陽が顔を見せていた。
小傘の家に、一冊の本が置かれている。
ずいぶん広くなった家で、小傘がため息を着く。
残ったのは一冊の本だけ。
嘗て『ソレ』は偉大なる魔法使いの魔導書で、後に魔法使いの復活装置となり、さらには永い年月をかけて意思を持った付喪神で――
小傘にとっては何時の間にか、大切なモノとなった本。
この世界の魔術に関する者からすれば至宝だが、魔術を知らない小傘にとっても大切なモノだった。
「800年か」
この本が作られ、自我が生まれるまで800年の月日が流れている。
「あとまた、800年経てばまた会えるよね?」
小傘がグリモワールの表面を撫でる。
オルドグラムは消えた。
だだ、その根幹にあった道具は残ってる。
またいつか、会えるのか?
それはきっと、誰にも分からない。
ドン、ドン!
「今日はお休みだよー」
叩かれる扉に向かい、小傘が声をかける。
「そういえば、オルドグラムが居ないからまた鍛冶の仕事も大変だなぁ……あれ?」
ポロリと涙が、その手にこぼれ落ちる。
「なんで、だって、私納得したのに、800年待てば、良いハズなのに……」
ドン!ドンドン!ドンドン!!
扉のノックは大きくなる。
相手は相当慌てている様だが、当の小傘は今日は仕事をする気にはとてもなれない。
客商売としては失格だが、今日は帰ってもらうか無いだらろう。
「だから、今日はお休みなの!」
「貴様の都合など、我には関係ない!」
扉の向うから、声がした。
その声を聴いた瞬間、小傘は飛び出していた。
「ようやく、開けたか」
多くの里の人間が着ているような、着流しを身に着け鋭い眼光を宿す『少年』がそこにいた。
「おるど……グラム?」
何時もは自分が見上げていたハズの彼にしては、ずいぶん小さい。
確かに面影はあるが、それにしてった小さい。
「いつまで呆けているつもりだ?」
頭二つ分ほど小さく成った彼が小傘の脇を抜けて、部屋の中へと入っていく。
「おお、我が魔導書。
探したぞ」
オルドグラムが魔導書を取り出した紐で縛る。
「いつまで、呆けている積りだ?とさっき言ったのだが?」
「な、なんで!?どうしてここにいるの?
なんでちっちゃいの!?」
「我の――いや、『オルドグラム』の最後にして究極の魔術だ。
『魂』を根源に『肉体』で包み骨という『物質』で支え、『血液』で満たし『酸素』を全身に回す。
『魔術師オルドグラム』に極めた異端なる5属性の最奥は、一人の人間を作り出す事に有ったのだ。
貴様の予想は物の見事に的中してた事になる。
魔力の不足分で、若干サイズは縮んだがな……」
「じゃ、じゃあ、オルドグラムは人間になったの?」
「魔力で作られたがそういう事だ。
さて、小傘よ。明日から忙しくなるぞ?」
小傘の言葉にオルドグラムが答える。
「我は人として転生を果たした。
しかし、魔力も何も持たない人間なのだ。
恐ろし事に、人間の寿命は80年ほど……
我の望みを叶えるには圧倒的に足りん!!
明日よりゼロから再スタートだ」
オルドグラムがビシッと指を小傘に向ける。
「えー、どうしようかな?
魔法が使えないんじゃ、私が助ける意味無いしな~」
ワザとイジワルを小傘がいう。
「むう……」
「な~んて、うそうそ!びっくりした?
小傘おねーちゃんが、オルド君を助けてあげるんだから!」
嬉しくなって小傘が、笑みをこぼす。
「誰が姉だ?誰が『君』だ?」
不機嫌そうにオルドグラムが言う。
「生まれたての、『オルド君』だよ?
私がお世話してあげなきゃね。
大丈夫、ベビーシッターは得意だから!」
小傘が後ろからオルドグラムを抱きしめる。
「我を愚弄するか?!」
「はいはい、そういうのはちゃんと魔法使いになってから言おうね?」
「なって見せるさ!我に不可能などない!貴様に借りを続けるなど、我の矜持が赦しはしない!
我は必ず、大魔導士へと返り咲いてやるわ!!
我が、我こそが黄金の魔法使い!オルドグラム・ゴルドミスタなるぞ!!」
「えへへ、キョウジ?とかどうでも良いよ。
それよりも『お帰りなさい』が言えるのが嬉しい!」
「ちっ、『ただいま』と言っておいてやる」
小傘の笑みに毒気の抜かれ、バツが悪そうにオルドグラムがつぶやいた。
「えへへへ、お帰り!」
小傘の笑顔につられて、オルドグラムが不機嫌そうにだが笑った。
消えたまま終わりにしようかと思いましたが、おねショタが書きたくなったのでこのエンドに成りました。
まぁ、こっちの方がハッピーエンドでしょう。