忘れ傘とグリモわーる   作:ホワイト・ラム

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さてさて、今回はあのお店。
一度は行ってみたいな~という願望がありますねぇ!

因みにヤツメウナギはウナギとは違う種類の魚らしいです。


魔術と歌声と夜の屋台

雨降る夜の幻想郷。オルドグラムのグリモワールを腰にぶら下げた小傘が、傘を差しながら町の外を歩く。

 

「あ~あ、すっかり遅くなっちゃった……

だからもっと早く帰ろうって言ったのに!」

 

「ふっ、我としたことが夢中になってしまったわ」

無縁塚で大量に手に入れた外界の道具を思い出しホクホク顔でニヤつく霊体化したオルドグラムをジト目で見ながら、小傘が文句の一つでも言ってやろうかとして止める。

相手は、おかしな魔術師だ。何か言ってもやり込められるのが落ちだろう。

その時にさらに自分が不利になる約束をさせられてもおかしくない。

というか、今日の無縁塚への外出もオルドグラムの口車に乗った結果だったのだ。

 

「わっと、雨が強く成って来た」

風に煽られ、顔に雨粒が付いた小傘が袖で顔をぬぐった。

 

「そうか、頑張れ。我の本体を濡らすなよ?」

 

「この……!」

霊体化したオルドグラムが、小傘に心の籠っていない激励を飛ばすがその言い方では逆にこちらを煽っている様にしか聞こえなかった。

さらに、言葉を飲み込み小傘が帰りを急ぐ。

 

 

 

今夜は満月。

本来ならその怪しい光に誘われ妖怪たちを活発化させる魔性の球体が姿を見せるハズだが、厚い雨雲に隠れててその姿は見えない。

寂しい一人の夜道は、心なしか暗くいつもより視界が狭い。

「えっと、今の場所的に考えて――こっちが近道だよね!!」

 

小傘が、足を向ける方向を変えて再度雨の中走り出す。

 

……らら♪……ららん♪……ららら♪

 

「む?小傘」

 

「何よ?」

 

「何か聞こえないか?」

オルドグラムがそっと小傘に耳打ちする。

 

「『何か』って?」

 

「歌のような物……か?」

そう言ったオルドグラム自身にも、詳しくは分からない様だった。

ただ何かが聞こえた気がするという、確証もないひどくあやふやな感覚だった。

 

「はぁ、怖がらせようとしてる?悪いけどそんなんじゃ――」

 

「向こうの方角だな。近づいてる……のか?」

霊体のオルドグラムが指さす方角は今しがた、小傘が進行方向を変えた先だ。

 

「え”……!」

オルドグラムの言葉を聞き小傘が足を止める。

表情を固めたまま、苦い顔をする。

 

「どうした?行かないのか?」

 

「ま、迷うといけないから、方角を変えて――!?」

その時、小傘の耳にもはっきりと歌声が聞こえてきた。

 

らら♪ラララら♪ララ♪

 

「例の歌、聞こえたな、今度は確かだ。近いな」

 

「わーわーわ!!聞こえない!!聞こえないモン!!もうお家帰る!!」

耳を抑えて、大声を上げて小傘が半べそで子供のような言葉を使い、来た道へと帰ろうとする。

だがどんなに力を入れても足が動かない!!

まるで金縛りにあったように、突如小傘の足が固まってしまった!!

 

「!???!!なんで!?なんで足が――」

 

「それは我の力だな」

見ると小傘の足にはオルドグラムが全身の至る部分に巻いているベルトが、巻き付いていた!!

そして、ゆっくりと操り人形を引っ張る様に小傘の体を動かし始めた!!

 

「ちょっと!?ナニコレ!!こんなの出来たの!?」

 

「知らんのか?幽霊は他者に憑りつけるのだ。

我も最近知ったのだがな」

そう言って、最近鈴奈庵で写本してきた幻想郷縁起の一部を見せる。

 

「全く!!碌な事にならないんだからぁ!!」

むしなく響く小傘の声を無視して、オルドグラムが小傘の足を操る。

 

「むぅおおおぉおおお!!そっちにはぁ!!!いかせないいいいいい!!」

 

「早くしろ、とりあえず我が濡れるのは避けるのだ」

はたから見れば完全にひとり問答だが、小傘本人にはまさに死活問題だった。

だがオルドグラムはそんな事関係ないとばかりに、すさまじい勢いでなおも突き進む!!

 

「ららら、ラララん♪ららら♪」

 

「ほら、ほら聞こえて!!聞こえてるから!!」

 

「む!近いぞ、急ぐのだ!!」

叫ぶ小傘を他所に、オルドグラムは小傘の足に力を入れさせ走らせる。

 

「もうやだぁ!!もうやだぁ!!お願い、何でもするからコレ以上は――」

必死に懇願する小傘を無視して、オルドグラムはどんどんと進んでいく。

そしてついには――!

 

「あ、い、いらっしゃい……」

茂みをかき分けて走った先に有ったのは、暗い中にたたずむ一見の赤提灯のついた屋台。

羽をはやした一人の妖怪が、困惑気味に暖簾を開けて顔を見せる。

小傘は彼女を知っていた。

ミスティア・ローレライ。人里でもたまに見かける妖怪で、『夜雀』という種族の妖怪で相手を視界を悪くする力を持つという。

この悪い視界も、不気味な歌も彼女の仕業だったのだ。

 

「あうあうあう……怖かった……怖かったよぉ~~!!」

ひとしきりの問題が解決したことで、小傘が安心して全身から力を抜く。

 

「あ、あはは……膝が笑ってる……あっと!?」

愛想笑いを浮かべる小傘が、安堵からか膝を崩し尻餅をついた。

 

ボちゃん!

 

「ひゃうん!?」

当然地面は雨で濡れており、小傘のスカートが泥水で濡れてしまった。

 

「ああ……」

 

「あう……下着までびっしょり……」

ミスティアが可哀そうな顔をして、小傘がもういやだとばかりの顔をする。

 

「えっと、ちょっと寄ってく?少し安くしますよ?」

同情的な視線を受け、小傘が立つ。

 

「おじゃまします……」

濡れてしまったことで、逆に急ぐ必要がなくなった小傘が、一言謝りを入れ屋台の備え付けの椅子に座る。

 

「まあ、これはサービスだから」

濡れた体を心配してかミスティアが、熱燗を一本差し出してくれた。

気が付けばある程度傘で防いだとは言え、雨で濡れた体はしっかり冷め切っている。

おちょこに入れて、小傘がほっと一息つく。

「えっと、とりあえずヤツメウナギで」

 

「最近少し温かく成って来たと思えば、また寒いのに逆戻りですね」

小さく鼻歌を歌いながら、ミスティアが注文されたウナギをたれにつけて、焼き始める。

 

「そうそう、一体どうなってるんだか!」

少し語気を荒くして、小傘がおちょこに2杯目を付ける。

 

「そう言えば、さっき騒いでいた様ですけど、誰かいたんですか?」

 

「え、え!?ちょ、ちょっとね?」

小傘が慌てた様に話を誤魔化そうとする。

さっきまでは夜であることも加味して、誰も居ないと思って、結構な大声を上げてしまった。

聞かれたとなると、なかなか気恥ずかしい物がある。

 

「あ、ああ!この新聞丁度、読んでなかったんだよね!!

へ、へぇ~、紅魔館の湖の水が急速に減ってるんだぁ~」

誤魔化す様に、数日前の新聞に目を通す小傘。

なんと言うか、ミスティアの目を見るのが兎に角つらかった!!

 

「ふははは!我が居たのだ!」

小傘の本が勝手に開くと、夜の雨降る虚空に黒と赤のマントが飛ぶ!!

そしてそれは開店する様に店の周囲を飛び回り、棒状に姿を変えその中からオルドグラムが出現した。

 

「おー、手品師ですか?」

キョトンとしながら、ミスティアが遠慮がちに拍手をする。

その時ミスティアの目には驚きと、何かよからぬ物を見てしまったという後悔の念が感じられた。

 

「ちょっと!なんでもう少し静かに出られないのよ!!」

 

「派手さが必要な時代なのだよ。地味な存在ではすぐに忘れられてしまう。

どうだ?お前の傘も電飾等で飾って――」

 

「絶対に止めて!!」

小傘が傘の部分をかくまう様に、抱きしめる。

 

「そうか、なら仕方ないな。

にしてもなるほど、なるほど……これは興味深い!」

しげしげとオルドグラムが、ミスティアの屋台を見る。

 

「えっと、お客さん屋台って始めて?

あ、その恰好外来人でしょ?外界じゃもう珍しいかもねー」

その様子はまるで初めての店に来た子供の様であり、ミスティアをひどく困惑させた。

だが今までの客商売で培ったコミュニケーション能力で、何とか持ち直した様だった。

小傘はなんだか恥ずかしくなって、再度ミスティアから目をそらした。

 

「この様な食事処があるとはな……」

 

「あっはっはは、ちょっと規模が違うかな?」

微笑むミスティアが無言で、ヤツメウナギの在庫を確認し始める。

この雨だ、偶然通りかかった客を逃がす積もりなどないだろう。

 

「小傘よ、夜も更けた。今宵は此処で食事としよう」

酷くわくわくした様子でオルドグラムが、話す。

彼は好奇心が旺盛だ。この屋台の様に見たことのない物を見せられ大人しく帰るとは思えない。

子供の様に自由で、大人の様に強か。そしてその両方を行使するだけの能力がある事を小傘は知っていた。

 

「んもう、勝手なんだから。

第一、今月ピンチで――」

 

「なら、我が払おう。店主よ、釣りは要らん」

 

コロン

 

オルドグラムが、机の上に数個の光る石を置いた。

それは透明でキラキラと輝いている。

 

「これって――?」

 

「金剛石とこの国では呼ばれているんだったか?」

オルドグラムが見せたのは、小粒だがダイヤモンドの塊だった。

 

「」ドサッ

 

「あれ、お客さん?」

いきなりの貴金属の登場で小傘が白目を剥いて倒れる。

最近は仕事も少なく、オルドグラムという扶養家族も増え、小傘は爪に火を灯す生活をしていた。

していたのに――

 

「ど、どこから持ってきたのよ!?う、売れば大金持ちじゃない!?」

小傘は外界の書物で、これらが高値で取引されているのを知っている。

それをコロンと数個、渡したのだ。文句が出ない訳など無かった!!

 

「この里の技術で加工は出来るか?それにこれは魔術で石炭を加工に失敗した物だ。

天然ものではない……」

 

「そ、それでも!!」

 

「店主よ、これで足りるか?」

詰め寄る小傘だが、オルドグラムはすべてをミスティアに渡してしまった。

 

「はい、じゃあ、ジャンジャン飲んでいってくださいね。

今夜は食べ放題、飲み放題ですよ~」

思わぬ大収入に、ミスティアが極上の酒の蓋を開け、注ぐどころか丸ごとこちらに渡してきた。

どうやら、全部飲んでも構わないという事なのだろう。

流石は客商売をしている妖怪、上客を逃がさない術を心得ている。

 

「どんどん、焼きますからねー」

 

「はっはっは!愉快愉快!」

ミスティアが次々と、酒や食べ物を出してくる。

 

「ほら、小傘も飲め」

 

「う、う~ん……もういいや!!たのしんじゃえ~!!」

勿体ない気もするが、まぁ仕方ないと小傘が吹っ切れた!

 

「もっと私にもお酒と、ウナギ!!!」

半場ヤケになって、酒瓶をそのまま口につけて煽りだす。

雨の中、誰も来ない屋台の中で日が昇るまで、二人はどんちゃん騒ぎをつづけた。

 

「うぅうお~、もっとぉ~」

 

「ふむ、これはいかんな。店主よ、また来るぞ?」

呂律が回らず、まともに立てなくなった小傘をオルドグラムが背負う。

くるくるとマントに包んで、立ち上がった。

 

「ありがとうございますね~」

まさかの売り上げに、ミスティアがホクホク顔で去っていく二人を見送る。

丁度日の出で、斬れた雨雲の上が明るくなり出した。

 

「ふぅ、夜通し騒いじゃったな……明日の仕込みをしないと――」

去っていった二人を見送り。

ほんの僅かに、残ったヤツメウナギの在庫を数え始める。

 

「え~と、1、2の――」

その時、一陣の風が屋台の暖簾を揺らす。

 

「え――?」

何かが、木々の間から飛び出してきた。

 

 

 

 

 

『プログラム――――集める・あつめる・ア・ツ・メ・ル』

 

「え?」

何かが聞こえた気がして、ミスティアがその声の方を向く。

こんな時間だが誰か来たのだろうか?

そんな事を考えている時間はすぐに無くなった。

 

ビュルルルル!!

 

「うわっ!?」

吹いたのは一陣の風。

凄まじい勢いで、ミスティアの体が彼女の意思と関係なく宙に浮く。

 

「わた、たたた!?」

飛ぼうにも、すさまじい風によって空中で錐もみする為、上下左右どちらが空でどちらが地面かもわからない。

だがそんな時間も長くは続かなかった。

 

ドシャ!

 

「痛ぃ!?」

突如風は、その力を失い、ミスティアを解放した。

泥水

不幸か幸せか分からないが、ぬかるんだ泥水の中に落ちたおかげで顔や体は泥まみれだが、深い傷を負う事は無かった。

だが心配なのは、やはり自分の屋台だ。

この風でバラバラになっては居ないかだろうか?

そう思い立ったミスティアが慌てて顔を上げ、自身の屋台を探す。

 

「あった!良かったぁ……」

少し探すと、屋台はさっきと全く同じ場所に有った。

暖簾がわずかに揺れている以外は、何も変わりは無かった。

 

「なんともない……よね?――――あ”!?」

確認をするミスティアが声を上げる。

屋台に傷は確かに何もなかった。

()()()()()()()()()。だが、酒が無くなっていた。ヤツメウナギなどの食糧がなくなっていた。

現金には一切の手を付けづ、飲食関係の物だけが無くなっていた。

 

「なんで!?なんで!!」

混乱するミスティア。飲食関係だとという明らかな、人為的な意思を感じる荒らされ方にミスティアが、頭を抱えた。

 

 

 

「はぁ~美味しかった」

風呂に入り、着替えた小傘が窓際に立たずむオルドグラムを見る。

彼はなぜか、雨の中に手を出して何かを見ている様だった。

 

「何してるの?」

 

「いや、少し気になった事が有ってな」

 

「この雨?最近よく降るよね」

 

「ああ、そうだな」

小傘の言葉を話し半分に聞くオルドグラム。

その手には、かつて彼が作った魔力に反応して変色する紙が握られていた。

 

「ほぅ?」

オルドグラムが、雨水を受け変色した紙を見て興味深そうに眼を細めた。

雨に濡れた紙は、魔力の存在を示す赤い色に染まっていた。




みすちーの前で、焼き鳥食べたらどうなるの!?
的なネタをやりたかったけど流石に可哀想すぎて止めました……
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