アインズ様、家出する。   作:エタリスト永久

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超絶更新遅くなり誠に申し訳ございませんm(__)m



アインズ様は家出する。

目を開き辺りをゆっくりと見回す。

 少し前までベッドの周りで色めき立っていた守護者2名やその他4名、その後ろに控えていたメイド達はもういない。どうやらいつも天井に張り付いている八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジアサシン)達もいないようだ。

 

兎の耳(ラビッツ・イヤー)

 

 探知魔法の一つを声のでない喉を使って唱える。すると自室の扉の前にメイドが一人待機しているのが頭の兎耳から伝わってきた。が、ここは寝室であり、メイドがいる位置までは結構な距離があることから一先ず安心する。そして、上体を起こし、自由になった腕で喉元に張り付いている灰色のてらてらしたナメクジをペリっと剥がした。

 

(……やられた…)

 

 漆黒の長髪と黄金の瞳を持つ美女の顔が浮かぶ。

 

 アインズの当初の計画は、まずペストーニャに自身が原因不明の病にかかっていることを診断させ、それを守護者以下ナザリックの全僕達に告げる。次に病が伝染する可能性を憂慮し単身でナザリックの外で生活することを皆に宣言。僕想いであることを全面にアピールしつつ、己を犠牲にして病魔に一人立ち向かう勇敢さをみせつけられるからだ。そして最後はナザリックの皆に引き止められながらも涙の別れ、休暇の始まりというまさに完璧な計画のはずだった。

 

(本当にどうしてこうなったんだ…)

 

 ペストーニャに《完全なる狂騒》を使われ、よく分からない魔法をかけられて目が覚めるとベッドの上。周りでは僕達が皆泣いているし身体は動かない、声もでない。挙句の果には世継ぎの話で盛り上がっているのだ。

 

(…まさか俺の計画が全部アルベドにバレていたんじゃ!?)

 

 脳裏を恐ろしい想像が駆け巡る。もしそれが本当だとすると最悪だ。アインズが一ヶ月半かけて練りに練った計画がパーになってしまったのだ。それだけではない、至高の41人を絶対者として崇拝する彼らにとってアインズの側で働くというのは史上の喜び。それが出来なくなると分かっていたなら当然阻止しようとするはずだ。それが意味する所は監視。つまり今後のアインズの行動全てにおいて監視の目がつくということである。仕事をする時も、外出する時も、寝る時も、常に共を連れなくてはならない。そうなれば本当の自由など永遠に得られないだろう。

 

(もしそうだとしたらアイツの行動にも納得がいくよな。そうか…わかってきたぞ。それで子どもを作って俺をナザリックに止めようとしたわけか! …それにしては見張り役がメイド一人なのが気がかりだけど)

 

 アインズはもう一度探知魔法を発動させ辺りの様子を伺う。しかし、結果は同じであった。

 

(まぁ、アルベドのことだ。俺には想像も付かない対策を立ててるんだろう。とりあえずこれからどうするか考えないとなぁ…)

 

 アインズが今抱える問題――原因不明の病を患っているという誤解――を解かなければ現状は良くならない。このままでは本当に守護者と子どもを作らなければいけなくなる。

 

(そもそも、子どもを作るって言ったって俺アンデッドだからアレが無いしムリなんだけどなぁ。そこらへんアイツら分かってるのか? あぁ、せっかく自由になりたかったのにどんどん状況がわるくなってるじゃないかぁ…)

 

 思わずユグドラシル時代をともに過ごした守護者の親達に助けを求めたくなる。今のこの状況を皆が知ったらどう思うのだろうか。

 

 シャルティアを創ったペロロンチーノさんだったらやっぱり爆笑するだろうか。それで一頻り笑い終わったあとに「娘はやらん!」とか親父ヅラして言いそうだな…

 

 アウラを創ったぶくぶく茶釜さんなら激怒するだろうな。何回も何回も作り直して外見にも拘って創ってたから、普段の高い声が低音に変わって「モモンガぶち○す」とか言われそう…

 

 アルベドを創ったタブラさんは…いやその前に設定を変えたことを謝らないといけない。

 

 人であった頃の残滓から思わずはぁーっと息を吐き出したくなる。思えばこの世界に来てから溜息が多くなった気がする。しかし、溜息をついても状況が良くなるわけではないのだ。なんとかこの状況を抜け出す打開策を練らねばならない。

 

「あぁ…どうしたらいいんだよーーっ…!?」

 

 その時――寝室の扉が開く。

 

 ガチャ

「アインズ様!?…あれ、今お声が聞こえた様な気がしたんだけれど。気のせいかしら…」

 

 金髪のメイドは室内をぐるっと見渡す。しかしベッドは先ほど来たときと何ら様子は変わっていない。強いて言うならば、掛け布団の位置が高くなっている所ぐらいか。異常はないと判断したのか一礼して再び元の位置に戻っていった。

 

 ガチャン

 扉が閉められたと同時に掛け布団の裾から骸骨頭が飛び出した。

 

(…っぶねぇぇー! 八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジアサシン)達が居ないから完全に油断してた…。メイドがこっちに来てたことに気づかないなんて。しかし、早く行動を開始しないと危険だな…)

 

 アインズは先程の衝撃で冷汗びっしりな頭を必死に働かせ打開策を模索する。だが、良案などそんな短時間で出てくるはずもない。ましてや小卒営業マンの頭、知能指数などたかが知れている。

 刻一刻と時間だけが過ぎていく、次にメイドが見に来たらまた隠れないといけない。しかしそう何時までも寝たきりだと怪しまれる。そのうちペストーニャなどが見に来てまた魔法を使われたりしたらどうしようもない。はやく、はやく何とかしなければ…。

 

 しかしアンデッドとはいえ元人間、こんな時に限ってどうでもいいことを思い出したりする。ユグドラシルでの仲間との楽しい毎日。泣いたり、笑ったり、色んなことを語った。ときには喧嘩もした。

 

(くそ!今はこんなことを思い出してる場合じゃ…)

 

 ――――瞬間、アインズは天啓を得る。

 

 

『モモンガさん、家出少女っていいですよね』

 

 

 ーーーーーーーー

 

『魔導国首都エ・ランテル』

 

 元々はリ・エスティーゼ王国の直轄地だったそこは、先の戦争で驚異的な戦力を見せつけた魔導国に譲渡された。直後、民衆はアンデッドに対する恐怖心から過半数が逃げ出し、街は閑散としていた。しかし、今ではそんな恐怖心も薄れており、むしろ信頼感すら芽生えるほどになっている。「魔導王によるアンデッドの完全支配」「デスナイトによる無敵とも言える警備態勢」「漆黒の英雄モモンの存在」など理由は様々であるが、結果として皆が魔導国を認めるようになっていた。逃げ出した者達も徐々に戻ってきて街は以前のような活気に満ち溢れ、さらには他国から移住するものまでいるようだ。

 

 そんな街の一角、

 人目につかない路地裏にアインズは転移した。

 

 すぐにパトロール中のデスナイトがやってきたが、アインズだと分かると一礼して仕事に戻っていく。

 

(あぁー…、そういえばナザリックの皆には俺の気配?が感じ取れるんだっけ? デミウルゴスがそんなことを言ってた気がするな。一応、消しとくか)

 

 《完全不可知化》

 

 魔法詠唱と同時にアインズの姿が掻き消える。

 

(ふぅ…。これで一先ず安心だな。さて…と、とりあえず自由だぁぁあああ!!…ぁ……この世界に来て、初めての休暇!共を付けないこの解放感!…ぅ…支配者らしい振る舞いも必要ない!最っ高だっ!!!……っ…この機会を存分に楽しまないとなぁ~、うふふふ)

 

 アインズは喜びのあまり何度も何度も精神の沈静化を繰り返した。だいたい20回ほどは繰り返しただろうか。やっと落ち着いた。

 

「さぁ、まずは散歩と洒落込もうじゃないか」

 

 そう言って表通りの喧騒へと歩いていった。

 

 

 ~~~~~~~~

 

「デスナイトのおじちゃん!おはよお!」

「「おじちゃんおはよお!」」

「ウォオオオオ!!」

 

「今日もパトロールがんばってね!」

「これあげるー!」

「ウオオォォオウ?」

 

「昨日お母さんと一緒に作ったの!足のとこに結んであげるー!」

「ウオオオオオウォ!」

 

「ううん、いつもみんなのこと見守ってくれてるお礼だよ!じゃあ学校いってくるねー!」

「「ばいばーい!」」

「オウォオオゥォオ!」

 

 

(デスナイトが子どもと喋ってるってどんな光景だよ…。まあでも、親しまれているのは良いことだよな。以前は避けられまくりで、巡回中のデスナイトを見て卒倒した人で溢れてたっけ…。今でも若干大人達は避けぎみだけど、やっぱり環境の変化に柔軟な子どもは流石だな。…ていうか、デスナイトの言葉を理解してるのって凄すぎじゃないか!?)

 

 そんなことを考えつつも歩き続けていると、目の前が開けてきた。

 

(おっ、市場だな)

 

 そこはエ・ランテル内周部の中央広場で、この区画では最も広い場所だ。王国直轄地だったころから露店商が集まって店を開いていたのだが、魔導国になってからは国が市場として管理下に置いたのだ。その為、以前よりも大規模になり、主婦や冒険者だけでなく商人なども訪れるようになった。もちろん魔導国からも出店しており、広大な土地でアンデッドに作らせた食物や、フールーダ主導のもと開発したマジックアイテムの試作品、ドワーフのルーン工匠が製作した武器や防具、さらにはバレアレ家が開発した新型(不完全)の紫ポーションなど、様々な物を販売している。

 

 今は朝早いということもあって、冒険者を中心に人々で賑わっていた。

 

(懐かしいなぁ。俺もユグドラシルではギルドの皆とこうやって朝市に行って、珍しいアイテムを漁り回ったっけ…。まあ、大抵はクズばかりだったけど、たまにレアなアイテムとかもあって、そんときは大喜びしてはしゃぎまくったなぁ)

 

 懐かしい思い出に浸りながら歩いていくと、見知った顔があった。

 

(お、あれは"虹"の面々か? 随分な重装備だな。これから出掛けるのかな)

 

 そこには、魔導国のミスリル級冒険者チームの一つである"虹"が、重装備を着こんで荷物の最終確認を行っていた。

 

 

「みんな、装備の確認とアイテム補充は終わったか?」

「あぁ、大丈夫だぜ。防具の傷も工房のおっさんに直してもらったしな」

 

「こちらも準備終わりましたよ。それにしても紫ポーションを一人2個も持つ必要があるのですか?結構な出費でしたよ?」

「たしかに~、一つ金貨8枚だし凄く高いよね~」

 

「用心するに越したことはない。それに、依頼は“アーグランド評議国“付近の探索だ。あそこは亜人達の棲だし、噂によるとドラゴンも生息している。油断はできない」

 

「まじでっ!?それやべーじゃん!?俺達死ぬじゃん!」

「勿論、遭遇した場合には即時撤退するつもりだがな」

 

「まっ、そんときはあたしが皆に飛行(フライ)かけてあげるから安心して~」

「はぁ、アホですか貴女は、ドラゴンは空を飛べるんですよ?」

 

「あ…そか~。忘れてた、てへ」

「忘れてたじゃねーよ!俺達の命が懸かってんだからなぁー」

 

「はいはい、みんな出発するぞ!」

 

 虹のリーダー、モックナックの一声でメンバー達は荷物を担ぎ上げエ・ランテル正門に向かって歩き出す。

 

 評議国といえばまだ噂程度にしか情報が広まっていない国だ。肝心なところは三大国(リ・エスティーぜ王国、バハルス帝国、スレイン法国)でも上層部ぐらいしか知り得ないだろう。そんな情報が冒険者などに回ってくるはずがない。

 

 だが、これから何が待ち受けているか分からないというのに彼らの表情は明るかった。

 

 ―――未知を既知に変える、それは簡単な事ではない。

 

 未知に接するという事は常に死と隣り合わせということでもある。これまで冒険者が名ばかりの職業だったのもこれが原因だ。そんな依頼などすればそれは死んでくれと言っているのと同義。まず組合に請け負ってさえ貰えないだろう。本当の意味での冒険など夢のまた夢。

 

 金を稼ぐためモンスターを狩り続ける毎日。

 

 心の何処かでは"いつか必ず!"と思っているが気づけば初老間近。己の限界を感じ引退していくのだ…

 

 しかし、そんな彼らの運命を大きく変えたのが魔導国であった。魔導国が冒険者に求めたモノ、それは"未知を既知に変える"こと。その為に組合を取り込んで"冒険者"を後押しのだ。

 

 その証拠にこれから死ぬかもしれない彼らの表情は希望に満ち溢れていた。

 

(…ほぅ、評議国の探索か。いやぁ、冒険者も"冒険者"らしくなってきたじゃないか! これこそ俺の求めてたモノだよな、うん。…そうだ、ちょっと組合に行ってどんな依頼が来てるか見てみるか。せっかく自由な時間が出来たんだから一人でのんびり冒険者気分を味わうのも悪くない)

 

 『飛行(フライ)

 

 

 

 ーーーーーーーーー

 

「はぁ…」

 

 ナザリック第九階層ロイヤルスイートの絢爛豪華な廊下に佇む一人のメイド、リュミエールは憂鬱だった。彼女の自慢である星の瞬きを宿したような金髪も今日はどこか弱々しげである。

 それもそのはず、今ナザリック地下大墳墓は、あの"1500人の襲撃"を受けて以来の非常事態に陥っているのだ。主を蝕む謎の病。メイド長のペストーニャからその言伝を聞いた時は悲しみで涙が止まらなかった。もしこのまま治す方法が見つからなかったらなど考えるだけでも恐ろしい。

 

 それに加え、こんなときに限って"アインズ様当番"が回ってきてしまった。別に当番が嫌な訳では決して、決してないのだが、守護者統括アルベド様から病の伝染を防ぐため一人で番をしろという命令が下されたのだ。

 こんな時にたった一人でいるのがどれだけ心細いことか。せめてシククスかフォアイルがそばに居てくれたら幾分か救われただろう。

 

 ちらりと左手首につけた腕時計を確認する。

 

「…そろそろ時間ね」

 

 リュミエールは自身の背後に構える扉を開き、執務室の奥にある寝室へと向かう。

 

 コンコン

 

 静かな室内に硬質な音が響く。

 

 ―――やはり、主からの返事はない。

 

 心が締め付けられるような悲しみをこらえて、扉に手を掛ける。

 

「アインズ様、失礼致します」

 

 油のよく差された分厚い扉がゆっくりと開き、執務室の光が寝室へと漏れ、内側を照らしていく。

 

(…ん?)

 

 入った瞬間、何かちがう。そう感じた。だがその違和感の正体がわからない。

 即座に思考を巡らせる。

 

 言葉遣いが間違っていたかしら…

 

 それとも扉の開き方が違った…とか

 

 ―――いいえ、完璧だわ。

 

 Lv.1のホムンクルスであるリュミエールには戦闘メイド(プレアデス)や守護者のような戦闘能力はない。それは至高の四十一人それぞれに仕える為に生み出されたメイドとしての役割がある為だ。それゆえ視力も人間と同等、またはそれ以下であり暗視などの能力はない。故に、すぐには気付かなかった。

 

 暗闇に目が慣れるのに数秒、その事実に気付いた瞬間背筋が凍る。

 

「ぁ…アインズ様が、いらっしゃらない!?」

 

 つい先程まで、正確には10分前まで主が寝ていたベッドにその御姿がない。明かりを付け、室内を見渡してみるがやはり居ない。それ以前にあの痺れるように偉大な気配(オーラ)が感じられないのだ。

 

 先程の違和感の正体に気づきつつ、自分の間違いであってほしい、勘違いであってほしいと祈るような気持ちでベッドの下を覗き、掛け布団やシーツなどもひっぺ返して探す。だがその願い虚しく(アインズ)はどこにもいなかった。

 

 心臓の鼓動が早く鳴り、冷汗がじわりと滲み出る。

 この失態は自分の死程度では償えない。

 

「と、とにかくすぐに知らせないと!」

 

 ―クシャ

 

(…え?)

 

 そう思い駆け出そうとした時、自分が一枚の紙切れを踏んづけていることに気がついた。

 

 

 リュミエールはその輝かしい金髪を振り乱し走る。いつもであれば絶対に走ったりはしない第九階層ロイヤルスイートの廊下を一心不乱にひた走る。途中何人かの同僚とすれ違い驚愕の表情で呼び止められたが、そんなことに構っては居られない。「一刻も早くこの事態を報告せねば」その思いだけが彼女を強く動かした。

 

 目指すは同階層、守護者統括アルベドの部屋。

 

 ドンドンドン

 

「ア、アルベド様!…はぁはぁ、大変です…失礼します!!」

 

 ドアを開けると執務机から顔を上げこちらに向かって微笑む漆黒髪の美女の姿があった。しかしその表情とは裏腹に彼女の黄金色の瞳は冷たく輝き、苛立ちの色が込められているのが容易に分かる。

 

「どうしたの、リュミエール」

 

 リュミエールは焦りの余り自分がメイドにあるまじき行為をしていたことに気付き、急いで身だしなみと息を整える。しかし、何故こんなことになってしまったのか自分でも説明がつかない。主が転移魔法を使って何処かへ転移したのか、或いは何者かに連れ去られたのか。ただ分かるのは、今から口に出す事実がどれ程の重みなのかということ。

 

「大変失礼致しました、アルベド様。先程13回目の"アインズ様確認"を行ったのですが……あの、その、消えておられました」

 

 緊張のあまり言葉が詰まる。

 

「………何が、消えていたのかしら?」

 

 恐らく意味が分かったのだろう。ナザリック最高の頭脳を持つデミウルゴスとまではいかないが彼女もかなりの賢者。アルベドの瞳にはすでに苛立ちではなく、はっきりとした殺意の色が込められている。

 

 守護者統括の本気の殺気をただの一般メイドであるリュミエールが耐えられるはずもない。あまりの恐怖に顔から血の気が引いていき、喉奥が締まっていくのを感じる。

 

 

「アインズ様が…い、いらっしゃいません、でした」

 

 ―――その瞬間視界が暗転した。

 

 

 ーーーーーーーー

 

 第九階層、アルベドの部屋

 

 

「話はさっき伝言(メッセージ)で伝えた通りよ。アインズ様が家出なさったわ」

 

 部屋にはパンドラズ・アクター、ヴィクティム、ガルガンチュアを除く各階層守護者が集められていた。皆、表情は険しい。

 

「それで、家出なさったという証拠がコレですか」

 

 デミウルゴスが手に取ったのは、アインズが書き残したという手紙だ。本日のアインズ様当番であるリュミエールが発見したという。

 

「そうよ。それで貴方はどう考えるのかしら?」

「…ふむ」

 

『ナザリックの皆へ

 

 一週間ほど(ナザリック)を出ます、探さないでください。

 

 P.S.病気は超位魔法《星に願いを/ウィッシュ・アポン・ア・スター》で治した。心配するな。』

 

「なるほど、そういうことですか」

 

 手紙を机に置き、まるですべてを察したかのように彼が呟いた。残りの者達も手紙を回して読んでいく。

 

「何かわかったの?デミウルゴス」

「ぼ、ぼくは、なにも分からなかったよ…」

「教エテクレ、デミウルゴス」

 

 デミウルゴスは丁寧にアイロンがけされたシャツの襟をピンと伸ばし皆の一歩前にでる。

 

「分かりました。私が考えるに、追伸の部分はアインズ様が仰られているので心配する必要は無いでしょう。それよりもこの"探さないでください"という部分が重要です」

 

「そう、やはり貴方もそう考えるのね」

 

 微笑をもらしながらアルベドが答えた。しかし、残りの者はみな理解できていないのか困惑の表情である。

 

「ど、どういうこと、ですか?」

 

「恐らく、アインズ様は我々を試しておられる。一つは、至高の御方が誰もいらっしゃらなくなった場合、ナザリックをどう動かしていくのか。もう一つは、未だ行方がわからない他の至高の御方々を、今後どう捜索していくのか。この"探さないでください"というのは条件だよ、マーレ。アインズ様は我々にヒントを与えて下さったのだよ」

 

「な、なるほど…で、でも探さずに見つけるなんてどうしたらいいんですか?」

 

「ただの家出だとおもいんすが」

 

「……シャルティア、君はもう少し賢くなるべきだよ。司書長にでも頼んで、知識を与えて貰うと良い。まあ、それも君の創造主ペロロンチーノ様の御意思なのかもしれないが」

 

「…てめぇ、ペロロンチーノ様を侮辱するとは覚悟できてんだろぉなぁぁああおい!?」

 

「シャルティア!今はそんなことをしてる場合じゃないわ。デミウルゴスも挑発は止しなさい。それで、マーレの質問に答えてくれるかしら」

 

「分かりました。なに、簡単なことです。"探さなければ良い"、つまり"誘き出せば良い"のですよ」

 

 守護者達の顔に理解の色が浮かんでいく。

 

「な、なるほど!」

「さすがデミウルゴス、あったまいい!」

「ナルホド、ソウイウコトカ」

 

――たった一人を除いて

(どういうことでありんしょう…。)

 

 そんなことを知ってか知らずか最上位悪魔(アーチデビル)は不敵な笑みを浮かべる。

 

「その顔は何か案があるようね、デミウルゴス」

「ええ、もちろん」

 

 

 デミウルゴスの口が歪んで耳まで裂ける。

 

「ゲヘナ再始動です」

 

 

 




シクスス「リュミエール!しっかりして!」
フォアイル「…おねがい死なないで。目を覚ましてよ…」

ペス「だたの貧血よ……ぁわん」

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