ミュージック   作:かなりかならま

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展開が遅い!と思われるかもしれませんがご了承下さい。


「…そんな勇気ないっすよ。」

俺、音村楽は勉強はからっきしダメで趣味はバンドをやったり、聞いたり。あとは作曲とかもしていた。高校卒業後は専門学校へと進学。それも無事に卒業後、何社か採用試験を受けた中、最終的に俺はなんとゲーム会社に採用されることとなった。あの大手、芳文堂の傘下である子会社イーグルジャンプである。世間の認知度は高くはないもののゲームマニアならば一度は聞いたことある名前だろう。 そこで俺はいわゆるゲームのBGMを作るチームに配属されたのであった。

 

会社へは電車で片道30分最寄りの駅で下車して徒歩10分程。道行く人は前を見ずにケータイという名のネットとつながる小さな窓を覗き込んでいる。まったく危なっかしい…俺は40分かけて会社へとたどり着く、そこからエレベーターでオフィスのフロアまでひとっ飛び、オフィス内の自分の配属された班のブースへと足を運びそして自分のデスクへとつこうとしたその時

 

「あらっ!楽ちゃんじゃなぁい!」

 

そう言いながら俺のもとへピアスをつけたかん高い声の男が駆け寄ってくる。

 

「げっ。」

 

思わず、げっ。と声を出してしまった。それよりまずい、直ぐに逃げなければ。

 

ガッ。

 

「ウフフ…いきなり逃げるなんて酷いじゃない?」

 

瞬間、その不吉な笑みを浮かべる男に腕を掴まれてしまった。なんとも生温かくて少し気持ち悪い。寒気さえ感じた。俺は若干目を逸らしかながら苦笑いをしてしまう。

 

「お…おはようございます。花さん…」

 

花さん。俺の属するチームと他数チームをまとめるリーダーだ。こう見えて社長だから恐ろしい。見た目、軽いスキンシップ、そして口調からも伺えるあっち系漂う雰囲気、俗に言うオネェだ。いや、ゲ…これ以上はやめておこう。

 

「あら?元気ないわねぇ?どうしたの?」

 

花さんは俺の顔を覗き込む様にして言った。

 

「いやいやー。元気ですよ」

 

体調はもちろん元気だ。だがしかし、心の方が元気ではない。

 

「ふーん…恋かしら?」

 

「え!?い、いや?どうっすかね?」

 

「冗談よ!まあ、今日も1日頑張って頂戴ね!楽ちゃん!」

 

初出勤の日から目をつけられたのか花さんはなんか俺に対してグイグイくる。ただ単に、俺が新入社員だから気を使ってくれているだけだと願いたい。いやそうであるにきまってる。そうで無いと困るのだ。

 

「よお。音村。朝っぱらから大変だなぁ…花さんにつかまっちまうとは!」

 

そう言いながら、俺より少し背の高い男がこちらに向かって歩いてくる。

 

「うおっ。す、菅原さん!おはようございます」

 

急だったからびっくりした…声をかけてきたのは俺と同じチームの2年上の先輩である菅原さんだった。金髪が似合うチーム内では年が一番近くて話しやすい先輩だ。いや、舐めているとかでは無く。菅原さんは自分のデスクへと移動し、椅子へと腰を下ろす。そしてこちらに向き直る。

 

「そう言えば、今どんな感じ?例の同期の奴とは?」

 

菅原さんはニヤニヤしながらそう言った。

 

「別にどんな感じも何もないっすよ!?」

 

俺は若干声を張り上げて言った。同期、そう俺には同期の人間が一人いた。その子はなんと高卒の女の子。それでたしか、グラフィックチームに属していたはずだ。

実を言うと俺はその子に恋をしてしまっている。自分でもびっくりだ。まさかまだ未成年のガキに…というのは言い過ぎだけれども、たしかに彼女の見た目は子供っぽいし、あとはまあ、明るい性格だ。

 

「とか言っちゃてさー?実際は?」

 

「本当に何も無いっすよ。でもまあ?お、俺だっていつまでもじっとしているわけじゃないですよ?」

 

俺は強がりながらも胸を張る様に見せて言った。

 

「ほーん?」

 

ほーん?って、そんな軽く流されちゃうのかよ。

 

「じゃあ聞くがお前、彼女のどんなところが好きなの?」

 

菅原さんは続けて言った。”どんなところが好きなの?”よく聞かれるありふれた質問だが、これが意外に難しい質問だったりする。そして俺は少し考え

 

「うーん…何というか。”なんか好き”なんすよ。あっそれと、ちょっぴりドジだったり天然だったりして可愛いやつなんすよ。なんだか守ってあげたくなっちゃう…みたいな?」

 

と、答える。

 

「なーに、真剣に答えてんの。キモいぞ〜?」

 

な…自分から聞いてきたくせになんなんだよ。菅原さんは小馬鹿にした口調でそう言った。

 

「ほかには?」

 

立て続けに菅原さんは質問を重ねる。

 

(ほかにはって……えっと…)

 

「あっ。でも初日とかびっくりしましたよ。その子、トイレ行く時に社員証オフィス内に忘れちゃってですね、扉があかなくて、扉の前で座り込んでた時があったんですよ。彼女には悪いっすけどその時はちょっとキュンときたというか…!」

 

「ははは!なにそれ。ドジレベルちょっぴりどころじゃないだろ!」

 

「く……菅原さんにはこの愛おしさがわからないんすか……」

 

「…」

 

ん?なんだろうか?菅原さん急に黙って…

 

「告んないの?」

 

「…そんな勇気ないっすよ。」

 

そう、勇気などない。実を言うとおれは高校時代は男子校であったため高校3年間で女子とはまともにしゃべっていないのだ。本当に女子との喋り方を忘れたレベル。俺の友達は帰り道お弁当屋さんのおばちゃんをみて、あっ、女だ。と呟くレベルで女という生物がイレギュラーとなっていた。いや、まあおれは流石にそこまでではないが……つまりはコミュ力も人並みで恋愛なんてしてこなかった俺にとって告白なんてできるわけもなかった。

 

「してみろよ。ここ社内恋愛禁止なんてきまりないんだしよ。それに…俺は勝算あんじゃねぇかとおもうけどな。」

 

「勝算?ハハ。何を根拠にっすか?」

 

「え?いや…まぁ、お前容姿良い方だと思うし。なんたって今お前はモテ期じゃねーか!」

 

「そんなこと…って、え?モテ期?」

 

「ほら。花さん!」

 

「菅原さんまじでやめて下さい…」

 

全く本当に勘弁して欲しいものだ。結構キツイ…はぁ。朝っぱらからなんか話してたら喉乾いたな。

 

「おい、音村どこいくんだ?」

 

「喉乾いたんで飲みものを…菅原さんも何か飲みます?」

 

「おぉサンキュ。じゃあコーヒー頼む。」

 

「了解です。」

 

俺が入社してから今日で、丁度三週間程度。俺が同期の子が好きだっていうのが先輩にばれたのは昨日の話だ。いや、どちらかといえば俺自身が彼女が好きだと気づかされたって方が近い気がする。昨日、俺がたまたま食堂で同期の子と鉢合わせて話していたところを先輩に見られていてしまっていて、ほんの少し先輩が、あの子のこと好きなの?と俺をからかってきたのだ。もちろん、男子校出身であるおれは恋愛の理想は語れてもリアルな恋話など滅多にしてこなかった。そんな俺はその冗談を真剣に捉えてしまったのだ。結果、少し考えてから俺は頷いた。コクリと。自分でもまじで社会人かよって思ったさ。

 

なんか、人ってこんなにも惚れるのって一瞬なんだなって思った。だって出会ってからまだ三週間しか経ってないんだから。そもそも、俺のストライクゾーンは黒髪ロングのおしとやかなお姉さんタイプのハズだった。少なくとも高校時代はそう語っていた。でも俺が惚れたその子は明るく、元気な、ツインテールの女の子。ビックリだ。

 

「あっ!音村君、おはよー!」

 

そうそう、そして丁度こんな声だった。

 

(ん?)

 

「っ!?」

 

振り返るとそこには同期の子こと涼風青葉の姿があった。彼女はスーツを身に纏い、バックを手に提げていた。

 

「お…おう。涼風おはよう。」

 

俺は若干目を逸らしながら挨拶を返した。

 

「うん!今日もお仕事頑張っていこう!」

 

「おう。」

 

そのままテクテクと彼女は自分のデスクへと向かってあるいて行く。

 

「…ふぅ。」

 

そう、彼女とはこの程度。チームも違えば当たり前だ。むしろ年が違うのにタメ口きける間柄になれたことを褒めて欲しいくらいだ。それにまず、俺だって働きに会社にきてるんだ。恋愛するために来ているわけではない。でもこの”おはよう”でどれだけ俺が1日頑張っていけるのかを涼風は知らないだろう。

別に俺は彼女に助けれられたから、あるいは何か特別な出来事があったから涼風を好きなったわけではない。”なんか好き”なのだ。今思えば一目惚れだったのかもしれない。でもなんか少し違う気もする。雰囲気っていうのかな、オーラが好き。本能的に好なのだ。そしてもっと彼女のことを知りたい。

 

「どうぞ、菅原さん。」

 

「おぅ。悪りぃな。」

 

頼まれたコーヒーを菅原さんに渡し俺も腰を下ろす。すると菅原さんがいきなり口を開いた。

 

「なんか、アレだな。音村お前こっちじゃなくてグラフィックチームに配属されたら良かったのにな。」

 

「…まだその話続いてたんすか。正直、それは嫌です。」

 

コーヒーをすすりながら苦笑いで言った。

 

「なんでだよ?その子グラフィックチームだろ?」

 

「常に同じ空間にいるとか俺の身が持ちませんよ。それにあそこのチームたしか全員女性ですよね?男一人で乗り込んだらハブられていじめられちゃいますって。」

 

「ハハハ!かもな。でも俺らチームみたいに全員男!よりマシなんじゃないか?」

 

確かに、出会いが無いってのは事実かもしれない。やはり合コンとか誰かが企画したりするんだろうか。

 

「そう言えばたしかにそうですね。あとなんかこの会社、偏ってますよね。チーム内の男女比。同性同士だと気兼ねなくいけるし面倒じゃないから。とかっすかね?」

 

「まあ、それはあるだろうな。あと聞いた話だが大きな力が働いてんだとよ…オネエ社長の。」

 

「つまり…花さん直下のチームは男が採用されやすいと…」

 

「そういうこった。」

 

嘘みたいな話だが妙に信ぴょう性が高い気がするのは気のせいだということにしておこう。たぶんそうだ。

 

「まあ、それじゃあ地道にやっていくしかねぇな。あっ、そうだ!じゃあ今日昼飯誘ってやれよその子に。」

 

食事へ誘うか、菅原さんにしてはまともな提案をしてきてくれたな。それにどこか店に入っちゃえば二人っきりか……うん、悪くない。いや、俺も妄想だけならいくらだってできる、あとは俺の度胸の問題か。

 

「菅原さん、自信ないんすけどどうやって誘えばいいと思います?」

 

「お前ほんと、それはただのヘタレだぞ二十歳にもなって…」

 

「いいから!頼みます……!」

 

「うーん…まあ普通に今日お昼ご一緒しませんか?でいいんじゃないの?」

 

「なるほど。」

 

シンプルに直球なのが一番いいかと思い、早速社内メールを送ろうとパソコンに触れる。

 

カタカタカタカタ…

 

「おい、音村。お前さ、男なら口で直接!ダイレクトに!言いに行けよ…」

 

菅原さんはため息をつきながらそういった。まあたしかに、自分の口で誘えもしないんじゃあ、もうその時点でお察しかであろう。よし。ここは昼休みになった瞬間にダッシュでグラフィックチームにいって涼風を昼飯に誘ってやれう。なにがなんでも。

 

「わかりました。この音村楽、菅原さんに男みせてやりますよ。」




音村楽

主人公。黒髪身長172㎝ 二十歳 趣味…作曲や音楽を聴くこと。

菅原さん

金髪のチャラ男臭ただよう身長178㎝ 二十二歳 趣味…ミニサボテン集め。

花さん

原作にも登場している。オネエ?で音村楽の属するチームが男ばかりとう状況を作り出した張本人。ちなみにグラフィックチームが女ばかりなのは葉月しずくの仕業である。
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