ミュージック   作:かなりかならま

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忙しくてペースダウンのひたちひたすらです


「青葉ちゃん”楽君”は来れるって?」

お手洗いからもどるとそこには、ニヤリと口角を上げるはじめさんとゆんさんの姿があった。ひふみ先輩に限っては顔を赤らめ両手で顔を覆っているしまつだ。そんな様子に私は首を傾げる

 

「えっ?皆さん……どうかしました?」

 

「青葉ちゃんがお手洗い行っとる間さっきスマホ鳴ってたで、多分音村君やないか?」

 

ゆんさんはそう言って私がひふみ先輩の近くの机に置いてあったスマホを手に取り私に渡してくれた、なんだかそのスマホはなんか冷たくてすこし嫌な感じがするのは気のせいだろうか

 

それでも気のせいだとスマホのロック画面を開く。そこには確かに音村君からのメッセージが届いていた。

 

「青葉ちゃん、”楽君”はこれるって?」

 

私はギクリと肩を動かしそう言ったはじめさんの方へ振り向いた。同時に胸の鼓動がすこしずつ早まっていく。いやいや、ちょっとまってはじめさん。楽君って今言いましたよね?

 

スマホを見られた?いや、でもロックがかかってるしそれは無いか。私が半信半疑になっているその時、ひふみ先輩が口を開いた

 

「あ、青葉ちゃん……ごめん……ロック画面の通知が……見えちゃって……私が驚いて声を出しちゃって……それで……」

 

ひふみ先輩は両手の指の隙間から私を覗き込み、すこし引かれてるとも取れるような口調で私に謝罪をする

 

「名前で連絡先を登録してるなんて、青葉ちゃんも乙女やなぁ……」

 

ゆんさんは目を輝かせながらこちらを見つめる。

 

「ひゃあああ!?ち、違いますっ‼︎コレは……あっ、そう!私の知り合いに楽君って子が実はもう一人居て‼︎」

 

恥ずかし過ぎる。顔から火が出そうだ。私は物凄い早口でゆんさんに涙目になりながらも嘘をでっち上げ、その場に座り込む。

 

最悪だ。本当は勿論私の中で音村君は一人だけで、ホント、ちょっとした出来心で、浮かれてやってしまっただけなのだ。

 

恋愛なんてしてこなかった……勇気の無い私には今はこれ位しか出来なくて、あの日やっとの想いで連絡先をきけたのがあの時の私にとって最大限の告白で……

 

「わ、分かったから!青葉ちゃんちょっと落ち着きや!」

 

「うぅ……すいません私ったら」

 

恥ずかしさの中に焦りが出てきた私をゆんさんがなだめる。そして私の泳ぎまくっていた目は止まり

 

「すまんな、さっきの今で。それで?どうやったんや?」

 

ゆんさんはイタズラな顔で私を見つめる。

 

やっぱり恥ずかしいけど、先輩たちは偶に、いや、かなりおせっかいで私を茶化してくるけど気を使ってくれることもあるわけで、なんか心強くて暖かい。

 

軽く微笑み私は彼からのメッセージに目をやる

 

ーーごめん、さっき風呂のあと丁度背景班の人にいきなり飲みに誘われちゃったから行けない。

 

私はちょっと安心しつつも少し凹む。まぁ、いきなりだったし普通は無理だよね。

 

「ごめんなさい。彼ちょっと無理みたいです」

 

「そっかぁ……残念やな」

 

私は一息ついて返信のメッセージを打つ

 

ーーそっか!私こそいきなりごめんね

 

そのあと私はちょっと黙り込みながらスマホの上で指を動かす。確か背景班には女性しか……

 

ーー因みに今誰といるの?

 

しかし、私にそのメールを送信する勇気は無かった。

 

いつまでも彼が私の近くに居てくれるとは限らない。なんか、その今音村君と飲んでいる人に嫉妬しているのが分かった。別に、音村君は私のものでもなんでもないのに。

 

「あ、青葉ちゃん?どうしたんや?」

 

すると、黙り込んでいる私の顔を覗き込み心配そうな顔でゆんさんがこちらを見つめる。

 

「あっ!?す、すいません。あはは。なんかボーッとしちゃって!あ、私ちょっと喉渇いちゃったんで飲み物買ってきます!」

 

私は、財布を手に取りその場を後にした

 

「行ってもうた。そ、そんなに音村君が来ないのがショックなんやろか……」

 

「さぁ……」

 

「そういう……わけじゃあ……なさそう……だけど……」

 

 

 

 

 

 

 

社員旅行も最終日、スキーも案外悪く無かったし露天風呂も気持ちよかった。結構満喫した気がする。音響班の部屋からなんか小腹がすいたという理由でおれは近くのコンビニへと向かおうと扉を開き外へ出たその時、おれのケータイが鳴った。

 

今は夜9時。一体誰からだと思いスマホの画面を見ると涼風 青葉 の文字が。俺は歩きながらスマホを耳に当てる

 

「もしもし?」

 

一体どうしたのだろうか。いつも連絡はメールだし電話をかけてくるなんて珍しい。

 

ーー音村君、急にごめんね!涼風です!

 

「うん、どうしたんだ?」

 

ーー今日今夜、私と飲みに行きませんか‼︎

 

「え、お……おう」

 

何やら今日の涼風はよほど飲みたいのか、なぜかはわからないが相当気合いが入ってるな。思わず、ついこの前飲んだばかりだけどオーケーをだしてしまった。いや、思わずもなにもトランプ断っちゃっているし何より涼風もいるし行くに決まっているのだが。

 

ーーホント!?ありがと!じゃあホテルのエントランスで待ってるね

 

涼風は、そう言い残し電話を切る。

 

「涼風の奴、ストレスでもたまってんのかな……」

 

というか、この前も背景班の人達と飲みに誘われたが、初対面の人達飲むってのは意外と気を使うものだ。正直結構疲れた。でも、ここだけの話いくら涼風がいるとは言えキャラ班に俺一人放り込まれトランプよりはマシだった。

 

でも、今日キャラ班と一緒に酒を飲むこととなってしまった。いや、決して嫌では無い。ウン。別に今までキャラ班の先輩方には実際顔を合わせたし、しっかりと挨拶だってできたのだしダイジョウブ……いや、正直に言おうキツイ。まず大体普通、こういうのは男の方が気を使うんだ。でもこれを境にコミュ力の向上を試みればいい。コレがポジティブシンキングだろう。今日はちょいネガな俺とはおさらばだ。涼風が来るんだから。

 

 

「あ!こっちこっち!」

 

ホテルから出ると涼風が手を振って俺を呼んでいる。しかし、おかしいな。涼風の周りには誰もいない。遅れてくるのだろうか

 

「よう。やっぱり外は寒いな」

 

「本当だねー。ありがとね来てくれて」

 

笑顔で涼風は俺の背中をポンと叩いた。ほら、やっぱり来て良かった。

 

「キャラ班の先輩方は?」

 

俺は周りを見渡し涼風にそう問いかけると涼風はなにやらキョトンとしている様子だ。

 

「え?いないよ」

 

「いないのか?」

 

「もともと私はそのつもりだったよ」

 

「なんで……もしかして皆んな疲れちゃってるのか?」

 

「違うよ!」

 

涼風は大声でそう言った

 

「じゃあなんでだよ?」

 

すると、涼風はなにやら下を向いてなにやらボソボソと呟いている。俺はそれに「なんだって?」と耳を傾けた。

 

「り、理由なんていらないんじゃない?」

 

俺は少しはっとして俯いた涼風を見つめる。すると続けて涼風は

 

「せっかくの最終日、君と二人で来たかったんだよ。それだけ」

 

涼風はなにを思ってか俺が夏祭りに涼風をさそったあの日に言った言葉をほとんどそのまま俺に投げかけた。じゃあ俺も言わなきゃな。あの時の涼風みたいに

 

「ありがとよ」

 

「さっ!行こ!」

 

涼風はそういって手を後ろで組みテクテクと歩みを進める。

 

「……」

 

もしかして涼風も俺の事ーー

 

「音村君どうしたの?」

 

「あ、あぁ。今行く」

 

ーーまあ、そんなわけ無いか。それに涼風は好きな奴いるんだもんな。

 

 

 

少し歩き、涼風の提案である居酒屋へと入店した俺たちはメニューを手に取っていた。そして俺は先程から気になっていたのだが涼風は確か未成年。何故居酒屋をチョイスしたんだ?まぁ、別にいいけど

 

「涼風、酒飲めないだろ?なんでここがいいなんて言ったんだ?」

 

「そ、それは羨ましかったから……」

 

すると涼風はなにやらワタワタし始める。

 

「う、羨ましい……?」

 

(まずい!?嫉妬しちゃって私も居酒屋が良かったとは言えない)

「そうそう!風呂上がりのお酒とか憧れちゃって!あはは……」

 

「そ、そうか。でも、我慢しとけって。俺も今日は酒頼まないからさ」

 

「いやいや!私のことは気にしないで!」

 

「そ、そうか?」

 

電話で”飲みに行こう”と言われた時にすでに少し違和感があったのだけれどまあ、そんなことはどうでも良いか。俺だって18とかの時は酒ってどんな味なんだろうってきになってたし。

 

結局俺はビールを頼んでしまい。その後料理が並んで行く。ちなみに涼風はオレンジジュースを注文した様だ。

 

「乾杯」

 

「かんぱーい!」

 

グラスを軽くぶつけ俺たちは喉を潤した

 

「涼風は、旅行楽しめたか?」

 

「うん、とても」

 

「スキーとかどうだ?できるようになったか?」

 

「あ、そう!聞いて聞いて!私結構滑れる様になったんだよ!」

 

「ホントか!凄いじゃん」

 

「えへへ、ひふみ先輩のおかげなんだ」

 

「ひふみ先輩って初日に俺があったポニーテールの?」

 

「そうそう」

 

やっぱ涼風とだと話が弾む。すると必然的に酒も進むわけで。別に酒が特別強いわけでは無い俺は段々と酔っても来る。

 

「やっぱ、音村君といると楽しいや」

 

そうふわっと微笑む涼風。相変わらず可愛いやつだ。でもやっぱりそういう事を自然に言ってくるのは涼風が天然だからなのかな。そもそも一緒に居て楽しい奴は他にもいるだろうしな……

 

「俺もだよ。楽しい」

 

それでも柄にもなく俺はそう呟く。なんか最近そんな事が多いかもな。でも俺がこんな事言うのはお前だけだ、涼風

 

って、なに考えてんだか俺は。酔ってるな……なんつーかもう少し飲んだらバレそうだな。

 

好きって。

 

「クスッ。音村君酔ってきたでしょ」

 

しかも、涼風にもバレてるしな。今日はこの辺にしておこう。

 

「かもな。気分は良い。」

 

「無理しちゃダメだよ?」

 

「ハイハイ」

 

俺はグラスに残った最後の一口を流し込む

 

「って言いながら飲むの!?」

 

「残すのはダメだからな」

 

「あはは……あっ、そうだ!」

 

涼風はなにか思いついた様子で手持ちのカバンをなにやらゴソゴソと漁り始めた

 

「はい!」

 

すると涼風は小さい紙袋を俺に手渡した。

 

「なんだこれ?」

 

「遅くなっちゃったけどさ、最初音村君とご飯に行った日おごってもらっちゃってお礼するって言ったっきり私結局なにもしてあげれてなかったから。それに夏祭りの日も迷惑かけちゃったし、それも含めて……」

 

「えー、別にいいのに」

 

「いいんだよ!私の自己満足!まぁ、中身は大した事無いけどね」

 

「そうか……うん、ありがとう。開けていいか?」

 

「どうぞ!」

 

中身は、雪だるまのストラップだった。キラキラして、青いマフラーをしていてなんか可愛らしい。

 

「へぇ、可愛いな。ありがとう気に入ったよ」

 

「良かった。ふふふ……そして実はこれ、この青葉もお揃いのを買ってしまいました!」

 

涼風はそう言うと赤いマフラーをした雪だるまのストラップを俺に見せびらかした。

 

お揃い……か。なんか俺となんかがお揃いになっていいのかな。嬉しかった。プレゼント自体もそうだが、俺と涼風だけの共通点ができた事が嬉しかった。

 

「大切にする」

 

「私も」

 

「よし、じゃあ時間も時間だしホテルにもどるか」

 

「そうだね。あっ、私その前にお手洗い行ってからでいいかな?」

 

「いいぞ」

 

俺はレシートを手に取った。また来れるのはいつだろうか社員旅行。少し楽しみだ。

 

 

*おまけ

 

「ごめんごめん!ただいま」

 

「よし、じゃあいくか」

 

「えっ?ちょっとまってお会計は?」

 

「あぁ、もうしといたから大丈夫」

 

「そんな!?いくらだった?」

 

「いやいや、財布しまえって。別にいいよ気にしなくて」

 

「うぅ……せっかくお礼したばかりなのに」

 

「気にしなくていいぞ、これは俺の”自己満足”なんだからな」

 

「ぐぬぬ……それさっきの私のセリフ」

 

「俺も満足、涼風も満足。」

 

「じゃあ私だって”自己満足”で今から半分の額音村君にわたすね」

 

「いやいやいいって」

 

「いやいや」

 

「いやいやいや」

 

「いやいやいやいや」

 

 

 

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